カテゴリ:万華鏡-江戸に咲く-
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04/18/2011(Mon)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」18最終話
それから何度となく美月の中に放った夜も朝を迎えると漸く静かに眠った。
「おに……野獣……エロ魔神……ばか……スキ」
美月は眠る夜の胸の中から顔を上げて文句を言いながらキスをした。
「ン……るせぇ……」
夢現の夜は足を絡め、腕で美月を強く抱え込んだ。
漸く昼過ぎに起きた二人は久し振りにゆっくりと過ごした。動けない美月の為に夜が塩結びを作って部屋へ戻ってきた。
「悪いな。俺はこれしか出来ねェ」
「いいよ。ありがとう……後でシーツとか全部洗濯しなきゃだ」
「あぁ……昨夜は散々俺の腹の上で腰振りながら放尿してたもんなぁ」
美月が真っ赤になってコメ粒を吹き出した。
「あれはッお前が色々するからだなッ」
「勿体ねェ。米を吹くな、米を」
一通り洗濯も美月が指示をしながら夜に作業をしてもらい、お風呂にも浸かって綺麗になった二人は晩酌の用意をした。
最近はこうして二人で旨いつまみを作って窓を開け、明かりを消して晩酌をするのが好きになっていた。月が出ている時には必ず月見酒をする。
二人で過ごすそういう時間はとても貴重で心を満たしてくれるように感じた。
二人で着物を来てお酒に映る月を飲み、美月の目の前で煙管を吹かす夜を見ていると江戸に戻ったようにさえ思える。
「何も、聞かないんだな……貴之の事」
「別に……何も無かったと思ってるからな」
カンッ、と煙管の灰を落とす音が心地よく響く。
それから何日か経った時だった。たまたま時間が合って美月と夜が買い物をしていると、あの幸迩という男が夜を見付けて駆け寄ってきたのだ。
「夜―っ」
美月はビクリと身構えて夜よりも一歩前へ出た。
そんな美月を見た幸迩がハッとして夜にではなく美月に近づいて来た。
「あなたはっっ! ……も、もしかして夜の極上の恋人ってこの人!?」
「極上っ……」
(夜の奴、そんな事をっ……)
「そうだよ。何だ、美月の事知ってんのか?」
夜が話かけても美月よりも少し小柄な幸迩はジッと下から美月の顔を食入るように見つめている。
「あぁぁぁ…そうだったんだぁ……そうかぁ……なんだぁ……」
「あの……何でしょう」
残念そうにボヤく幸迩に美月が怪訝そうに尋ねる。
「いやね、前に夜とホテル行った帰りにあなたに会って、僕、勿論好きな人いたんですけど、あ、その人と上手くいって今付き合ってるんですけど、でも貴方に惹かれてしまったというか……抱きたいというか……すっごい綺麗ですっごい好みだったんですよぅっ」
可愛く清楚な顔した幸迩が強い力で美月の白い手を握ってきた。
「え? ……えっ?」
美月は幸迩のギャップにも驚いたがまさかあのすれ違った時感じた纏わりつく視線はそういう事だったのかと思うと更に複雑な気持ちになった。
「チッ……だからお前を美月に会わせたくなかったんだよ。オイ、手ェ離さねェか、幸迩ッ」
「えぇぇぇぇっ……まさか貴方が夜の恋人だったなんてぇぇ……そりゃあ極上でしょうねぇ……ハァハァ」
「オイ、てめぇ何ハァハァしてやがるッ……手を離せッ! 大体てめェ今ネコだろうがッ」
「恋人専門のネコだよぅっ! 気質はタチだもんっ」
二人のじゃれる姿を見て、美月はそれまで心配して泣いていた自分が阿呆のように感じて溜息をついた。
そして同時に夜への信頼を再確認してとても安心出来た。
(雪之丞さんと……)
「似ても似つかないやっ」
可笑しそうに笑う美月の笑顔がそこだけキラキラと宝石のように輝いて見えた。
「うっ……美し過ぎるっっ」
「てめェ幸迩ッ…美月の顔をこれ以上見るんじゃねェッ…美月! 笑顔を止めろッ今直ぐだ!」
またこういう不安な事態が訪れたとしても、美月は夜を信じ抜いていられるように自分を磨こうと強く思った。
――先ずは夢を叶える。そしてそこから夜と一緒にまた夢を作っていく。
END
<<前へ
結構長くなりましたー!(驚)
短いお話が書けない症候群です(-ω-;)
最後までお付き合い頂いて本当にありがとうございましたっ!!
喧嘩しつつも何かと楽しくやっている二人ですv
そして二人の変態ぶり、エロぶりも健在のようで(笑)
心配なのは美月がお医者さんになった時、夜が薬剤師になった時ですね。
ドクタープレイになりそうです(笑)
二人には末永く仲良くエッチに過ごして貰いたいです♪
ネクタイの方を中断しての久々の毎日の連載にお付き合い下さった方々にお礼申し上げます。
本当にありがとうございました。今まで続けて来られたのも読んで下さる、励まして下さる方々がいたからだと本気で思っています。毎日感謝の気持ちで一杯です。
これからもマイペースではありますが、更新を続けていけたらと思います。
これからもどうぞ宜しくお願いいたします!!ヾ(*´∀`*)ノ゛
ではまたネクタイの方の更新を続けてまいります☆
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「おに……野獣……エロ魔神……ばか……スキ」
美月は眠る夜の胸の中から顔を上げて文句を言いながらキスをした。
「ン……るせぇ……」
夢現の夜は足を絡め、腕で美月を強く抱え込んだ。
漸く昼過ぎに起きた二人は久し振りにゆっくりと過ごした。動けない美月の為に夜が塩結びを作って部屋へ戻ってきた。
「悪いな。俺はこれしか出来ねェ」
「いいよ。ありがとう……後でシーツとか全部洗濯しなきゃだ」
「あぁ……昨夜は散々俺の腹の上で腰振りながら放尿してたもんなぁ」
美月が真っ赤になってコメ粒を吹き出した。
「あれはッお前が色々するからだなッ」
「勿体ねェ。米を吹くな、米を」
一通り洗濯も美月が指示をしながら夜に作業をしてもらい、お風呂にも浸かって綺麗になった二人は晩酌の用意をした。
最近はこうして二人で旨いつまみを作って窓を開け、明かりを消して晩酌をするのが好きになっていた。月が出ている時には必ず月見酒をする。
二人で過ごすそういう時間はとても貴重で心を満たしてくれるように感じた。
二人で着物を来てお酒に映る月を飲み、美月の目の前で煙管を吹かす夜を見ていると江戸に戻ったようにさえ思える。
「何も、聞かないんだな……貴之の事」
「別に……何も無かったと思ってるからな」
カンッ、と煙管の灰を落とす音が心地よく響く。
それから何日か経った時だった。たまたま時間が合って美月と夜が買い物をしていると、あの幸迩という男が夜を見付けて駆け寄ってきたのだ。
「夜―っ」
美月はビクリと身構えて夜よりも一歩前へ出た。
そんな美月を見た幸迩がハッとして夜にではなく美月に近づいて来た。
「あなたはっっ! ……も、もしかして夜の極上の恋人ってこの人!?」
「極上っ……」
(夜の奴、そんな事をっ……)
「そうだよ。何だ、美月の事知ってんのか?」
夜が話かけても美月よりも少し小柄な幸迩はジッと下から美月の顔を食入るように見つめている。
「あぁぁぁ…そうだったんだぁ……そうかぁ……なんだぁ……」
「あの……何でしょう」
残念そうにボヤく幸迩に美月が怪訝そうに尋ねる。
「いやね、前に夜とホテル行った帰りにあなたに会って、僕、勿論好きな人いたんですけど、あ、その人と上手くいって今付き合ってるんですけど、でも貴方に惹かれてしまったというか……抱きたいというか……すっごい綺麗ですっごい好みだったんですよぅっ」
可愛く清楚な顔した幸迩が強い力で美月の白い手を握ってきた。
「え? ……えっ?」
美月は幸迩のギャップにも驚いたがまさかあのすれ違った時感じた纏わりつく視線はそういう事だったのかと思うと更に複雑な気持ちになった。
「チッ……だからお前を美月に会わせたくなかったんだよ。オイ、手ェ離さねェか、幸迩ッ」
「えぇぇぇぇっ……まさか貴方が夜の恋人だったなんてぇぇ……そりゃあ極上でしょうねぇ……ハァハァ」
「オイ、てめぇ何ハァハァしてやがるッ……手を離せッ! 大体てめェ今ネコだろうがッ」
「恋人専門のネコだよぅっ! 気質はタチだもんっ」
二人のじゃれる姿を見て、美月はそれまで心配して泣いていた自分が阿呆のように感じて溜息をついた。
そして同時に夜への信頼を再確認してとても安心出来た。
(雪之丞さんと……)
「似ても似つかないやっ」
可笑しそうに笑う美月の笑顔がそこだけキラキラと宝石のように輝いて見えた。
「うっ……美し過ぎるっっ」
「てめェ幸迩ッ…美月の顔をこれ以上見るんじゃねェッ…美月! 笑顔を止めろッ今直ぐだ!」
またこういう不安な事態が訪れたとしても、美月は夜を信じ抜いていられるように自分を磨こうと強く思った。
――先ずは夢を叶える。そしてそこから夜と一緒にまた夢を作っていく。
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短いお話が書けない症候群です(-ω-;)
最後までお付き合い頂いて本当にありがとうございましたっ!!
喧嘩しつつも何かと楽しくやっている二人ですv
そして二人の変態ぶり、エロぶりも健在のようで(笑)
心配なのは美月がお医者さんになった時、夜が薬剤師になった時ですね。
ドクタープレイになりそうです(笑)
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04/16/2011(Sat)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」17話
☆18禁です
「んああああぁぁあんっ」
美月の甘い叫び声は天井にまで響きわたった。その振動は夜の下半身に心地よく響く。
「やっぱりいいな……お前」
「やっ…何っ……誰と比べてるっ…んんっ」
「馬鹿、違う。久々だから改めて凄いと思ったんだ、お前の身体。おかしな勘違いをするな」
夜は怒ったように肉の切っ先をズンッと突き入れた。
「あっ…アアーッ」
途端に美月のアーモンド型の瞳から宝石にも似た涙が飛び散った。
「おっき…ぃ…大き過ぎるぅ」
「お前はいつもそう言って喜ぶ」
夜は喜悦で艶めかしい笑みを浮かべながら腰を激しく叩きつけた。
大きくて段差のある夜のカリ首はゴリッ、ゴリッと美月の前立腺に沿って引っ掛けられる。その度にビクン、ビクンと美月の丸い尻が跳ねるのが堪らない。
夜は後ろから硬くシコった美月の乳首を赤く腫れる程に抓ってやると、美月は堪らずベッドのシーツにしがみついた。すかさず夜の手がツルのように伸びてきてカンザシを抜き差ししてくる。
同時に色々と攻め立てられる美月は狂ったように声を枯らし、唾液を垂れ流した。
「イクっ…イクっ」
「じゃあ最後は自分でイってみせろ。お前の好きな動きで好きな時に」
気持ち良さで歪めた顔は不満そうに涙を溜めて後ろを向いて来た。
(可愛い顔)
美月のもっちりとした白くて丸い尻がたどたどしく上下する。速度を上げて突きたいのに腰がガクガクとして動けない。
「うっ…ぅっ……」
「どうした……何泣いてるんだ」
夜が優しく後ろから美月の顔を後ろに向けてキスをした。
「っく……イきたいっ……のにっ……上手におしりっ…動かせないのっ…ひっ…っく」
(あぁ……可愛くて、このまま噛み殺してしまおうか……)
夜は美月の細く透明感のある首筋に歯を立てた。ゆっくりとその柔らかな肉に犬歯を突き立てると、真っ赤な美しい液体がとろりと流れ出た。
その液体をまるで肉食獣のように旨そうに舐めると、夜は一気にゾクゾクと総毛立った。途端に美月の中に埋まっている肉棒の質量もミチッと増えた。
「ぃやぁあぁあぁんっ…も…イかせてぇえええーッ」
美月の叫びを合図に夜は更に速度を上げて息つく暇も与えず凶器で内部を挿し続けた。
「ハッっ……!!」と息を飲んだ美月が全身を大きくビクつかせ、数秒金縛りにでもあったように硬直した。次の瞬間、美月の内部は物凄い伸縮を始め、夜の肉塊を吸収しようと吸いついて来た。
「おいッ息しろ美月ッ」
美月は絶頂を極めると息が自然と止まってしまう。自然現象のようだが息を止めて全ての神経を快楽に集中させる事で極楽が見えるというのだ。
危険なのはそのまま意識を手放す事だ。だが、皮肉にもその状態の美月の中は“極上”だった。
気持ち良過ぎて発狂しそうになる。
そして何度も中で達している美月を容赦なく仰向けにして夜自身も終わりに近づく。
夜の激し過ぎる攻め立てで、美月の身体は手すりに押し付けられていた。ガタガタと揺れる手すりは今にも壊れそうだ。
「出すぞ」
夜はカンザシを掴んでピストンさせる。
「きゃあぁぁあぁっ…すご…また出っ……イっちゃうっ、イクぅううんんぅぅぅーッ」
夜は美月の肩を掴むと苦しい程奥に入れて熱過ぎる液体を勢いよく放った。美月の内部は肉棒の根元から吸いついてまだまだ絞り出そうと絡みついてくる。
「あっ……あぁあぁ…まだ出てっ…すごい夜……んんっ」
喋る美月の唇を塞いで蕩けそうな舌を蹂躙する。
美月の中からゆっくりと引き抜いた後暫く経ってから、開きっぱなしの入り口からタラタラと白濁の液体が大量に流れ出てきた。
美月はぐったりとしながらもその液体を指で掬ってはまた中へと戻した。
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ハッと起きて携帯から( ;´Д`)
ハァハァε-(。_。;)ノ┃木┃ ←
次最終回です(^_^;)
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「んああああぁぁあんっ」
美月の甘い叫び声は天井にまで響きわたった。その振動は夜の下半身に心地よく響く。
「やっぱりいいな……お前」
「やっ…何っ……誰と比べてるっ…んんっ」
「馬鹿、違う。久々だから改めて凄いと思ったんだ、お前の身体。おかしな勘違いをするな」
夜は怒ったように肉の切っ先をズンッと突き入れた。
「あっ…アアーッ」
途端に美月のアーモンド型の瞳から宝石にも似た涙が飛び散った。
「おっき…ぃ…大き過ぎるぅ」
「お前はいつもそう言って喜ぶ」
夜は喜悦で艶めかしい笑みを浮かべながら腰を激しく叩きつけた。
大きくて段差のある夜のカリ首はゴリッ、ゴリッと美月の前立腺に沿って引っ掛けられる。その度にビクン、ビクンと美月の丸い尻が跳ねるのが堪らない。
夜は後ろから硬くシコった美月の乳首を赤く腫れる程に抓ってやると、美月は堪らずベッドのシーツにしがみついた。すかさず夜の手がツルのように伸びてきてカンザシを抜き差ししてくる。
同時に色々と攻め立てられる美月は狂ったように声を枯らし、唾液を垂れ流した。
「イクっ…イクっ」
「じゃあ最後は自分でイってみせろ。お前の好きな動きで好きな時に」
気持ち良さで歪めた顔は不満そうに涙を溜めて後ろを向いて来た。
(可愛い顔)
美月のもっちりとした白くて丸い尻がたどたどしく上下する。速度を上げて突きたいのに腰がガクガクとして動けない。
「うっ…ぅっ……」
「どうした……何泣いてるんだ」
夜が優しく後ろから美月の顔を後ろに向けてキスをした。
「っく……イきたいっ……のにっ……上手におしりっ…動かせないのっ…ひっ…っく」
(あぁ……可愛くて、このまま噛み殺してしまおうか……)
夜は美月の細く透明感のある首筋に歯を立てた。ゆっくりとその柔らかな肉に犬歯を突き立てると、真っ赤な美しい液体がとろりと流れ出た。
その液体をまるで肉食獣のように旨そうに舐めると、夜は一気にゾクゾクと総毛立った。途端に美月の中に埋まっている肉棒の質量もミチッと増えた。
「ぃやぁあぁあぁんっ…も…イかせてぇえええーッ」
美月の叫びを合図に夜は更に速度を上げて息つく暇も与えず凶器で内部を挿し続けた。
「ハッっ……!!」と息を飲んだ美月が全身を大きくビクつかせ、数秒金縛りにでもあったように硬直した。次の瞬間、美月の内部は物凄い伸縮を始め、夜の肉塊を吸収しようと吸いついて来た。
「おいッ息しろ美月ッ」
美月は絶頂を極めると息が自然と止まってしまう。自然現象のようだが息を止めて全ての神経を快楽に集中させる事で極楽が見えるというのだ。
危険なのはそのまま意識を手放す事だ。だが、皮肉にもその状態の美月の中は“極上”だった。
気持ち良過ぎて発狂しそうになる。
そして何度も中で達している美月を容赦なく仰向けにして夜自身も終わりに近づく。
夜の激し過ぎる攻め立てで、美月の身体は手すりに押し付けられていた。ガタガタと揺れる手すりは今にも壊れそうだ。
「出すぞ」
夜はカンザシを掴んでピストンさせる。
「きゃあぁぁあぁっ…すご…また出っ……イっちゃうっ、イクぅううんんぅぅぅーッ」
夜は美月の肩を掴むと苦しい程奥に入れて熱過ぎる液体を勢いよく放った。美月の内部は肉棒の根元から吸いついてまだまだ絞り出そうと絡みついてくる。
「あっ……あぁあぁ…まだ出てっ…すごい夜……んんっ」
喋る美月の唇を塞いで蕩けそうな舌を蹂躙する。
美月の中からゆっくりと引き抜いた後暫く経ってから、開きっぱなしの入り口からタラタラと白濁の液体が大量に流れ出てきた。
美月はぐったりとしながらもその液体を指で掬ってはまた中へと戻した。
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04/16/2011(Sat)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」16話
☆18禁です
夜は目の前に美しく金色に輝く月下桜文様の一本足簪(かんざし)が手渡された。かなりの高価なもので抱月の想いの深さが分かる。そしてこのデザインのものも、町中の花魁たちがこぞって手に入れようとするも、どこの誰が作っているのかすら分からないという幻の錺師、“遊惰”のものだ。
「さすが抱月だ。美月、お前もこの滑らかな感触が忘れられないのも無理はねェな」
「はや……くっ」
美月は夜の上で腰を突き出し仰け反った。
「仰せの通りに……若君」
夜は簪の先を舐めると、立ち上がった美月の鈴口にそっとそれを差し込んだ。
「んあぁあぁっん」
美月の身体に尿道口からしか味わえないビリビリとした快感が下半身に麻酔をかける。
「如何された若君……これはまだほんの入り口。これから奥へと進みますよ」
夜は楽しげにカンザシをゆっくりと奥へ進ませる。
「ひぃっんっ……もっ…もうそれ以上はっ…あああ―ッ」
美月の太股の内側がピクピクと痙攣しているのが見える。夜はサディスティックな笑みを浮かべて仰け反る美月の丸い尻の間に自分の凶器を突き付けた。
「やっ、やあっ」
「慌てんな。別に挿れねェよ」
後で楽しもうととっておいた夜の大き過ぎる凶器が、今一番欲しくて仕方のない秘部に当てられる。
「ゆっ、指でっ……前と一緒に…してっ」
「じゃあ……遠慮なく」
夜は身体に掛けられたローションを指に纏わせると、美月の蕾にヌルリと挿れ込んだ。
「あぁ…ぁ…ぁ……」
「まぁ……お前は最初から一本じゃ足りねェよな」
夜はすかさず指を二本挿れ、三本挿れ込んだ。同時にカンザシもゆっくりと引き抜き、そしてまたスルリと奥まで挿し込んだ。
「ホラ……綺麗に活けられてるぜ?」
「きゃあぁっんっ」
美月の鈴口から大量の水分が刺さったカンザシの間から噴き出た。そして理性の飛んだ美月は狂ったように自分から腰を上下して夜の指を出し入れし始めた。
「いいぜ、美月……俺の上で漏らしながら狂い咲くお前はとても淫乱で美しい」
「ぅぁ…あ……ぁ……はぁっ」
垂れ下がる細やかな薄紅色の桜がシャラシャラと音を立てて鼓舞している。
夜がズルリと指を引き抜くと、泣きそうな顔をして縋り着いてきた。
「や……ど…してっ……抜いちゃ…やだぁ……ね、夜っ…よるぅっ」
欲しくて欲しくてどうしようもない美月は狂った小さな獣のようだ。とても滑稽で愛おし過ぎる。泣きながら夜の唇をペロペロと舐め、カンザシの刺さった欲望をヌルヌルと腹に擦りつけてくる。
それでも夜が動かないと、美月はカリカリと夜の耳を噛んできた。美月の熱い吐息が夜の鼓膜を心地よく愛撫する。
「美月、自分で挿しなさい。お前の好きにしていいと言ったろう?」
ハッと顔を上げた美月はおずおずと身体を下へと移動させ、夜の巨大な凶器の根元を持って立たせた。そしてたっぷりとローションをそこに掛けて暫くグチャグチャと上下に扱いたり亀頭を口一杯に含んだりと遊んだ。
そして中腰になってゆっくりと夜の切っ先を内部へと突き刺していく。
久し振りのそれは夜の尋常ならざる質量を改めて感じさせた。驚いた美月の内部が歓喜にざわめく。
「痛……ぃっ…痛いのに…気持ち…ぃよぉ…あぁん」
圧迫感が下腹部に最初の鈍痛を運び、ビチビチに広げられた入り口は慣れるまでキリキリとした痛みを与えた。美月がそれを楽しむ男だという事を、夜は十分理解していた。美月が懸命に腰を下ろしている間に、夜は上半身を起こしてカンザシをグリグリと回して美月の肉棒の中をかき混ぜてやる。美月は鼻にかかった艶っぽい息を漏らしながらその動きに合わせて腰を回す。
ついに夜の全てを飲みこんだ美月は何も動いていないのにガクガクと腰が揺れ始めた。
「いっ…やああああああっ」
「もう中でイったのか? お前はいつもそうだ…全く…ホラ、寝てないで動けよ。じゃないと俺がヤるぞ?」
夜の大きさと長さと形は美月の一番の場所をそのままでも十分圧迫する為に、擦らなくても中でイける。だから擦られると美月自身はいつも自我を失う程に乱れる。
今回のような機会はもう二度と来ないかもしれないと、自分を奮い立たせて腰を上下前後に揺らし始める。
美月が反り返ると、立ち上がった乳首が異様に目立って夜を誘うように見える。夜はついその尖りを摘まんで引っ張り上げた。
「あああんっ…ああんっ」
美月は歓喜の声と共にベッドのスプリングを利用して更に腰を高く飛ばした。
美月の中が螺旋を描く様にして夜の肉塊を絞り体内へとその全てを吸収しようとする。夜の肉棒は毛細血管の一本一本すら気持ちいい。
抗えない本能はついに自制を無視して腰を美月の動きに合わせ始めた。美月が飛べば腰を引き、降りてくればグッと質量を増して突き入れる。
部屋にパンッ、パンッ、と言う肌のぶつかる音が響く。
「悪ィ、美月。ここまでだ」
「え?」
夜は美月の細い首を掴むとベッドに押し倒し、後ろから美月の尻を掴み左右に強く開いた。ほんのりと赤く色づいた菊の蕾はポッカリと口を開きっぱなしにして内部をヒクつかせていた。そして夜は力一杯赤紫に膨張した凶器をそこに突き刺した。
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長いRは私の特徴です;スミマセン;
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夜は目の前に美しく金色に輝く月下桜文様の一本足簪(かんざし)が手渡された。かなりの高価なもので抱月の想いの深さが分かる。そしてこのデザインのものも、町中の花魁たちがこぞって手に入れようとするも、どこの誰が作っているのかすら分からないという幻の錺師、“遊惰”のものだ。
「さすが抱月だ。美月、お前もこの滑らかな感触が忘れられないのも無理はねェな」
「はや……くっ」
美月は夜の上で腰を突き出し仰け反った。
「仰せの通りに……若君」
夜は簪の先を舐めると、立ち上がった美月の鈴口にそっとそれを差し込んだ。
「んあぁあぁっん」
美月の身体に尿道口からしか味わえないビリビリとした快感が下半身に麻酔をかける。
「如何された若君……これはまだほんの入り口。これから奥へと進みますよ」
夜は楽しげにカンザシをゆっくりと奥へ進ませる。
「ひぃっんっ……もっ…もうそれ以上はっ…あああ―ッ」
美月の太股の内側がピクピクと痙攣しているのが見える。夜はサディスティックな笑みを浮かべて仰け反る美月の丸い尻の間に自分の凶器を突き付けた。
「やっ、やあっ」
「慌てんな。別に挿れねェよ」
後で楽しもうととっておいた夜の大き過ぎる凶器が、今一番欲しくて仕方のない秘部に当てられる。
「ゆっ、指でっ……前と一緒に…してっ」
「じゃあ……遠慮なく」
夜は身体に掛けられたローションを指に纏わせると、美月の蕾にヌルリと挿れ込んだ。
「あぁ…ぁ…ぁ……」
「まぁ……お前は最初から一本じゃ足りねェよな」
夜はすかさず指を二本挿れ、三本挿れ込んだ。同時にカンザシもゆっくりと引き抜き、そしてまたスルリと奥まで挿し込んだ。
「ホラ……綺麗に活けられてるぜ?」
「きゃあぁっんっ」
美月の鈴口から大量の水分が刺さったカンザシの間から噴き出た。そして理性の飛んだ美月は狂ったように自分から腰を上下して夜の指を出し入れし始めた。
「いいぜ、美月……俺の上で漏らしながら狂い咲くお前はとても淫乱で美しい」
「ぅぁ…あ……ぁ……はぁっ」
垂れ下がる細やかな薄紅色の桜がシャラシャラと音を立てて鼓舞している。
夜がズルリと指を引き抜くと、泣きそうな顔をして縋り着いてきた。
「や……ど…してっ……抜いちゃ…やだぁ……ね、夜っ…よるぅっ」
欲しくて欲しくてどうしようもない美月は狂った小さな獣のようだ。とても滑稽で愛おし過ぎる。泣きながら夜の唇をペロペロと舐め、カンザシの刺さった欲望をヌルヌルと腹に擦りつけてくる。
それでも夜が動かないと、美月はカリカリと夜の耳を噛んできた。美月の熱い吐息が夜の鼓膜を心地よく愛撫する。
「美月、自分で挿しなさい。お前の好きにしていいと言ったろう?」
ハッと顔を上げた美月はおずおずと身体を下へと移動させ、夜の巨大な凶器の根元を持って立たせた。そしてたっぷりとローションをそこに掛けて暫くグチャグチャと上下に扱いたり亀頭を口一杯に含んだりと遊んだ。
そして中腰になってゆっくりと夜の切っ先を内部へと突き刺していく。
久し振りのそれは夜の尋常ならざる質量を改めて感じさせた。驚いた美月の内部が歓喜にざわめく。
「痛……ぃっ…痛いのに…気持ち…ぃよぉ…あぁん」
圧迫感が下腹部に最初の鈍痛を運び、ビチビチに広げられた入り口は慣れるまでキリキリとした痛みを与えた。美月がそれを楽しむ男だという事を、夜は十分理解していた。美月が懸命に腰を下ろしている間に、夜は上半身を起こしてカンザシをグリグリと回して美月の肉棒の中をかき混ぜてやる。美月は鼻にかかった艶っぽい息を漏らしながらその動きに合わせて腰を回す。
ついに夜の全てを飲みこんだ美月は何も動いていないのにガクガクと腰が揺れ始めた。
「いっ…やああああああっ」
「もう中でイったのか? お前はいつもそうだ…全く…ホラ、寝てないで動けよ。じゃないと俺がヤるぞ?」
夜の大きさと長さと形は美月の一番の場所をそのままでも十分圧迫する為に、擦らなくても中でイける。だから擦られると美月自身はいつも自我を失う程に乱れる。
今回のような機会はもう二度と来ないかもしれないと、自分を奮い立たせて腰を上下前後に揺らし始める。
美月が反り返ると、立ち上がった乳首が異様に目立って夜を誘うように見える。夜はついその尖りを摘まんで引っ張り上げた。
「あああんっ…ああんっ」
美月は歓喜の声と共にベッドのスプリングを利用して更に腰を高く飛ばした。
美月の中が螺旋を描く様にして夜の肉塊を絞り体内へとその全てを吸収しようとする。夜の肉棒は毛細血管の一本一本すら気持ちいい。
抗えない本能はついに自制を無視して腰を美月の動きに合わせ始めた。美月が飛べば腰を引き、降りてくればグッと質量を増して突き入れる。
部屋にパンッ、パンッ、と言う肌のぶつかる音が響く。
「悪ィ、美月。ここまでだ」
「え?」
夜は美月の細い首を掴むとベッドに押し倒し、後ろから美月の尻を掴み左右に強く開いた。ほんのりと赤く色づいた菊の蕾はポッカリと口を開きっぱなしにして内部をヒクつかせていた。そして夜は力一杯赤紫に膨張した凶器をそこに突き刺した。
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長いRは私の特徴です;スミマセン;
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04/15/2011(Fri)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」15話
☆18禁です
美月がまだ少し戸惑いを見せていると、夜が美月の細い手首を強く引いた。美月がバランスを崩して夜の胸元へ倒れ込むとまだしっとりと水分を含んだ夜の胸元に唇が触れた。
途端に今まで我慢していた分と、求めていた気持ちと安堵感から火がついたように何かが込み上げてきた。
「美月、やせ我慢するな。好きにやればいい」
夜の甘く低い声を聞いて美月の息が荒くなってきた。
「あ…ぁ…っ」
美月は服を着たまま夜の首筋にしゃぶりついた。さっき嗅いだ香りは消え、いつものシャンプーの香と夜自身から出るスッとしたフェロモンの芳香でクラクラした。
美月は夜の身体にがむしゃらにキスマークを付けた。噛みつきながらきつく吸っているので痛い筈だ。だが夜は腹を減らした子供でもあやす様にそんな美月の頭を愛おし気に撫でていた。その間にも夜は夢中になる美月の服を器用に脱がしていく。
夜が美月の薄くてあまり下着の意味をなさないような布を剥ぐと中から硬くなり過ぎて先の方から涙する高ぶりが勢いよく出てきた。
「ひっ…んんッ」
少し布に擦れただけでも美月の腰が激しくビクついた。今にもイッてしまいそうな美月の顔が余りに艶っぽくて思わずそのふっくらとした唇をペロリと舐めた。
「はぅっ」
美月は息を荒げて夜の身体をよじ登ってきた。夜は、美月が何をしだすのかと不思議な顔をしていると、酔ったような顔をした美月が破裂しそうな肉棒を口に捻じ込んできた。突如突っ込まれた美月の肉棒は決して小さくはない。口一杯になるそれを夜は上手く喉奥まで飲み込んでやった。
「あああっっ」
美月は好きなように欲望の塊を夜の喉奥に突っ込んで腰を振っていた。
「よる……おしり、揉んでっ」
言われた通りに首元で卑猥にうねる白くて丸い美月の尻を爪を立てて揉んでやる。
「いっ…やぁあんっ」
夜は同時に口内で好きに暴れる肉欲の動きに合わせて舌や歯で攻めると美月から高い声が上がった。
夜はチラリと横に目線を流すと幅広の姿見に美月の痴態が映し出されていた。
ベッドの柵に掴まって好きなように自分の口に突き入れる美月の腰がとてもいやらしい。美月も時折横を向いてその光景に酔っていた。
熱い塊が急に喉奥でグッと硬く大きくなった途端、何も言わず突然肉棒を引き抜かれた。そして次の瞬間、熱い液体が夜の顔に何度も掛った。
美月は恍惚とした顔で夜を見下ろしてニヤけた。
「顔に掛けられたなんざ初めてだよ」
夜は口元に垂れてくる液体を舌先で舐め取った。
「フ、フンっ……こんなもんじゃ収まらないんだからなっ」
まさか夜の顔に掛けられる日が来るとは思わなかった美月は射精したばかりとは思えない硬さを取り戻していた。
自分の精液で汚した夜は思った以上に艶っぽく攻めているのに攻められている感覚に堕とされた。
夜がティッシュで顔を拭いている間に美月はローションを取り出した。
「冷てッ」
美月は無言でビシャビシャとローションを夜の腹の上に絞り出した。冷たくて身を捩る夜を無視して、美月は砂遊びをする子供のようにヌルヌルと液体を夜の身体全体に広げた。
夜の綺麗な筋肉が余計にくっきりとその凹凸を際立たせ、雄の色香が強烈に浮き立つ。
美月は夜の太股に跨って自分の昂りを前後に擦りつけた。その気持ち良さにうっとりとしている美月はそのまま好きなように夜のつま先や膝、二の腕などに擦りつけていった。
そして夜の凸凹した腹筋にゴリゴリと押し付けると、途端に腰の動きも早くなった。
「いっ…ぃんっ…ハッ…ハッ」
美月の柔らかな玉袋がヌルヌルと腹の上で動いて夜も気持ちが良かった。
美月が夜の乳首を巧みに細い指先で弄って立たせる。既に我慢も限界に来ている夜もこれ以上されると理性が千切れそうだった。
そんな夜を知ってか知らずか美月は自分の鈴口を夜の胸の尖りに入れ込んできた。
「お、おいっ…何をっ」
美月は亀頭を少し押し潰す様にしてクパッと鈴口を広げ、夜の立ち上がった乳首を入り口に入れ込んで感じていた。
「ああんっ…あっ、コレっ…もっとっ……イイのぉっ」
「好きだなお前、ここ。でもこれじゃ届かないだろう。アレ、貸してみろ」
夜がそういうと美月は「ハァァっ」とうっとりした笑みを浮かべて早速カンザシを取ってきた。
<<前へ 次へ>>
いやぁ…変態全開でスミマセン(笑)
美月が。
そして昨日は沢山の拍手をどうもありがとうございました!!(ノД`)・゜・
過去作の方にもありがとうございます!!
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美月がまだ少し戸惑いを見せていると、夜が美月の細い手首を強く引いた。美月がバランスを崩して夜の胸元へ倒れ込むとまだしっとりと水分を含んだ夜の胸元に唇が触れた。
途端に今まで我慢していた分と、求めていた気持ちと安堵感から火がついたように何かが込み上げてきた。
「美月、やせ我慢するな。好きにやればいい」
夜の甘く低い声を聞いて美月の息が荒くなってきた。
「あ…ぁ…っ」
美月は服を着たまま夜の首筋にしゃぶりついた。さっき嗅いだ香りは消え、いつものシャンプーの香と夜自身から出るスッとしたフェロモンの芳香でクラクラした。
美月は夜の身体にがむしゃらにキスマークを付けた。噛みつきながらきつく吸っているので痛い筈だ。だが夜は腹を減らした子供でもあやす様にそんな美月の頭を愛おし気に撫でていた。その間にも夜は夢中になる美月の服を器用に脱がしていく。
夜が美月の薄くてあまり下着の意味をなさないような布を剥ぐと中から硬くなり過ぎて先の方から涙する高ぶりが勢いよく出てきた。
「ひっ…んんッ」
少し布に擦れただけでも美月の腰が激しくビクついた。今にもイッてしまいそうな美月の顔が余りに艶っぽくて思わずそのふっくらとした唇をペロリと舐めた。
「はぅっ」
美月は息を荒げて夜の身体をよじ登ってきた。夜は、美月が何をしだすのかと不思議な顔をしていると、酔ったような顔をした美月が破裂しそうな肉棒を口に捻じ込んできた。突如突っ込まれた美月の肉棒は決して小さくはない。口一杯になるそれを夜は上手く喉奥まで飲み込んでやった。
「あああっっ」
美月は好きなように欲望の塊を夜の喉奥に突っ込んで腰を振っていた。
「よる……おしり、揉んでっ」
言われた通りに首元で卑猥にうねる白くて丸い美月の尻を爪を立てて揉んでやる。
「いっ…やぁあんっ」
夜は同時に口内で好きに暴れる肉欲の動きに合わせて舌や歯で攻めると美月から高い声が上がった。
夜はチラリと横に目線を流すと幅広の姿見に美月の痴態が映し出されていた。
ベッドの柵に掴まって好きなように自分の口に突き入れる美月の腰がとてもいやらしい。美月も時折横を向いてその光景に酔っていた。
熱い塊が急に喉奥でグッと硬く大きくなった途端、何も言わず突然肉棒を引き抜かれた。そして次の瞬間、熱い液体が夜の顔に何度も掛った。
美月は恍惚とした顔で夜を見下ろしてニヤけた。
「顔に掛けられたなんざ初めてだよ」
夜は口元に垂れてくる液体を舌先で舐め取った。
「フ、フンっ……こんなもんじゃ収まらないんだからなっ」
まさか夜の顔に掛けられる日が来るとは思わなかった美月は射精したばかりとは思えない硬さを取り戻していた。
自分の精液で汚した夜は思った以上に艶っぽく攻めているのに攻められている感覚に堕とされた。
夜がティッシュで顔を拭いている間に美月はローションを取り出した。
「冷てッ」
美月は無言でビシャビシャとローションを夜の腹の上に絞り出した。冷たくて身を捩る夜を無視して、美月は砂遊びをする子供のようにヌルヌルと液体を夜の身体全体に広げた。
夜の綺麗な筋肉が余計にくっきりとその凹凸を際立たせ、雄の色香が強烈に浮き立つ。
美月は夜の太股に跨って自分の昂りを前後に擦りつけた。その気持ち良さにうっとりとしている美月はそのまま好きなように夜のつま先や膝、二の腕などに擦りつけていった。
そして夜の凸凹した腹筋にゴリゴリと押し付けると、途端に腰の動きも早くなった。
「いっ…ぃんっ…ハッ…ハッ」
美月の柔らかな玉袋がヌルヌルと腹の上で動いて夜も気持ちが良かった。
美月が夜の乳首を巧みに細い指先で弄って立たせる。既に我慢も限界に来ている夜もこれ以上されると理性が千切れそうだった。
そんな夜を知ってか知らずか美月は自分の鈴口を夜の胸の尖りに入れ込んできた。
「お、おいっ…何をっ」
美月は亀頭を少し押し潰す様にしてクパッと鈴口を広げ、夜の立ち上がった乳首を入り口に入れ込んで感じていた。
「ああんっ…あっ、コレっ…もっとっ……イイのぉっ」
「好きだなお前、ここ。でもこれじゃ届かないだろう。アレ、貸してみろ」
夜がそういうと美月は「ハァァっ」とうっとりした笑みを浮かべて早速カンザシを取ってきた。
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美月が。
そして昨日は沢山の拍手をどうもありがとうございました!!(ノД`)・゜・
過去作の方にもありがとうございます!!
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04/14/2011(Thu)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」14話
「え?」
夜の言葉を聞き返すと、すかさず貴之が美月を自分の背中の後ろに隠した。
「嘘つけッ。なら何でホテルになんて行くんだよッ! 何で教室で違う男のケツ弄ってんだよッ!」
さすがにそこまで知っていた貴之たちに夜も驚いて切れ長の瞳を少しだけ大きく見開いた。
「悪いが、前に俺がアンタを一目見たいっつって美月とアンタの大学へ忍び込んだんだよ。そしたらずっとあの男といやがるし、挙句イチャイチャとお楽しみを始めやがった!! 美月がそれを見てどれだけ傷ついたか分かってんのかテメェッ」
外で大声を張り上げる貴之の声に近所の人たちがチラチラと家の中から外を覗く影が見えた。
「貴之、も、もういいから……警察呼ばれちゃう」
美月は貴之を引っ張ってその場を離れようとした。夜の事は信じたかった。だが自分の目で見たものをどう塗り替えていいか分からない。
「美月、戻って来い。ちゃんと説明してやる」
美月は夜の視線から逃げるように背を向けた。貴之も美月を抱えるようにして小走りに連れ去ろうとする。
「信じろ、美月。俺はお前しか愛してねェ。嘘をついたら、そしたら俺は切腹してやる」
夜の声が後ろから響く。
「切腹? 何言ってんだあいつ?」
精神でも病んでいるんじゃないかというような目つきで貴之は夜を見る。だが美月は青ざめていた。夜の言っている事が冗談ではないからだ。きっと本当に腹を切るだろう。
「お前がもし、アイツを触ったこの指でお前を触って欲しくないというのなら、今ここで切り捨てる」
「夜ッ」
美月は血の気が引いて振り返った。
「美月ッ、やめろ、あいつヤバいって! お前を脅してるんだよッ」
「違うッ……夜はっ……本当にっ」
戻ろうとする美月の腕を貴之が強く掴む。
「本当だったら益々ヤバいだろ!? あいつイカれてんだよッ」
「違うよッ!! だって……だったら俺だって十分イカれてるッ」
美月は懐から短刀を取り出す夜を見て叫んだ。
「夜ッやめてッ。話し聞くからーッ」
美月がそう叫び、貴之と揉めている間に夜は音も無く二人に近づき手を伸ばした。
「あっ!!」
まるで猫を捕まえるように簡単に美月を摘まみ上げて肩に担ぎ、貴之の足元に落ちている美月の鞄を手に取ると、「世話になった」と貴之に一言言って美月をさらって行った。
「もう降ろしてっ…夜っ」
玄関に入ると夜は美月を下ろした。電気も点いていない位玄関先はいつもよりもシンとして静かだ。
夜は美月の手を引いて二階へ上がった。
美月の部屋へ入ると夜は美月をベッドへ座らせ、自分も隣へ座った。窓から差し込む街の光が夜の顔をハッキリと見せていた。
そっと触れられる夜の手は冷たくて熱くなった頬が気持ちがいい。
「心配かけて悪かった。アイツには、好きな奴がいるんだそうだ。アイツの名は幸迩(ユキジ)と言うんだが、元々タチなんだ。それで、好きな奴がタチだから自分はネコになるのに手解きをして欲しいと言われたんだ」
「え……あの人、タチだったの?」
「あぁ」
余りの意外性に美月は何だか拍子抜けした。
「でっ、でもさっ…だからってあそこまでする事ないじゃんかッ」
美月は再びあの光景を思い出して怒りと涙が溢れ出た。
「うん……そうだな。つい、茶屋での感覚でしてしまったが、もうしない」
夜の長い指が美月の涙を拭う。
「俺、すっごい傷ついた」
「うん」
「すっごい悲しかった」
「あぁ」
「でも夜しか愛せないって、思って……」
「悪かった……だから……」
夜はゆっくりと美月のベッドに横たわった。美月は夜が何をしているのか見当がつかなかった。
「俺はお前が悲しんで誰に頼り、何をしたかは聞かない。怒る権利もないしな。だから、今日はお前の好きにしろよ」
「は?」
好きにしろと言われるのなんて初めてだった美月は困惑して顔を赤くした。いつもは有無を言わさずメチャクチャにされる側の美月はそれに慣れてしまっている。
だが美月も男だ。攻めてみたいという欲求も勿論あった。いつもは許されないその欲望が思い切りぶつけられる事を考えると、自然と喉がゴクリと鳴った。
それを見た夜はクスっと笑って着流しの前を肌蹴てみせた。
「どうぞ、お好きに」
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実は美月よりも先にこっちを描きあげてましたw
お礼画像にも背景付で追加してますv
さて、夜を好きにしていいというお許しが出た美月!
どうする!?
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夜の言葉を聞き返すと、すかさず貴之が美月を自分の背中の後ろに隠した。
「嘘つけッ。なら何でホテルになんて行くんだよッ! 何で教室で違う男のケツ弄ってんだよッ!」
さすがにそこまで知っていた貴之たちに夜も驚いて切れ長の瞳を少しだけ大きく見開いた。
「悪いが、前に俺がアンタを一目見たいっつって美月とアンタの大学へ忍び込んだんだよ。そしたらずっとあの男といやがるし、挙句イチャイチャとお楽しみを始めやがった!! 美月がそれを見てどれだけ傷ついたか分かってんのかテメェッ」
外で大声を張り上げる貴之の声に近所の人たちがチラチラと家の中から外を覗く影が見えた。
「貴之、も、もういいから……警察呼ばれちゃう」
美月は貴之を引っ張ってその場を離れようとした。夜の事は信じたかった。だが自分の目で見たものをどう塗り替えていいか分からない。
「美月、戻って来い。ちゃんと説明してやる」
美月は夜の視線から逃げるように背を向けた。貴之も美月を抱えるようにして小走りに連れ去ろうとする。
「信じろ、美月。俺はお前しか愛してねェ。嘘をついたら、そしたら俺は切腹してやる」
夜の声が後ろから響く。
「切腹? 何言ってんだあいつ?」
精神でも病んでいるんじゃないかというような目つきで貴之は夜を見る。だが美月は青ざめていた。夜の言っている事が冗談ではないからだ。きっと本当に腹を切るだろう。
「お前がもし、アイツを触ったこの指でお前を触って欲しくないというのなら、今ここで切り捨てる」
「夜ッ」
美月は血の気が引いて振り返った。
「美月ッ、やめろ、あいつヤバいって! お前を脅してるんだよッ」
「違うッ……夜はっ……本当にっ」
戻ろうとする美月の腕を貴之が強く掴む。
「本当だったら益々ヤバいだろ!? あいつイカれてんだよッ」
「違うよッ!! だって……だったら俺だって十分イカれてるッ」
美月は懐から短刀を取り出す夜を見て叫んだ。
「夜ッやめてッ。話し聞くからーッ」
美月がそう叫び、貴之と揉めている間に夜は音も無く二人に近づき手を伸ばした。
「あっ!!」
まるで猫を捕まえるように簡単に美月を摘まみ上げて肩に担ぎ、貴之の足元に落ちている美月の鞄を手に取ると、「世話になった」と貴之に一言言って美月をさらって行った。
「もう降ろしてっ…夜っ」
玄関に入ると夜は美月を下ろした。電気も点いていない位玄関先はいつもよりもシンとして静かだ。
夜は美月の手を引いて二階へ上がった。
美月の部屋へ入ると夜は美月をベッドへ座らせ、自分も隣へ座った。窓から差し込む街の光が夜の顔をハッキリと見せていた。
そっと触れられる夜の手は冷たくて熱くなった頬が気持ちがいい。
「心配かけて悪かった。アイツには、好きな奴がいるんだそうだ。アイツの名は幸迩(ユキジ)と言うんだが、元々タチなんだ。それで、好きな奴がタチだから自分はネコになるのに手解きをして欲しいと言われたんだ」
「え……あの人、タチだったの?」
「あぁ」
余りの意外性に美月は何だか拍子抜けした。
「でっ、でもさっ…だからってあそこまでする事ないじゃんかッ」
美月は再びあの光景を思い出して怒りと涙が溢れ出た。
「うん……そうだな。つい、茶屋での感覚でしてしまったが、もうしない」
夜の長い指が美月の涙を拭う。
「俺、すっごい傷ついた」
「うん」
「すっごい悲しかった」
「あぁ」
「でも夜しか愛せないって、思って……」
「悪かった……だから……」
夜はゆっくりと美月のベッドに横たわった。美月は夜が何をしているのか見当がつかなかった。
「俺はお前が悲しんで誰に頼り、何をしたかは聞かない。怒る権利もないしな。だから、今日はお前の好きにしろよ」
「は?」
好きにしろと言われるのなんて初めてだった美月は困惑して顔を赤くした。いつもは有無を言わさずメチャクチャにされる側の美月はそれに慣れてしまっている。
だが美月も男だ。攻めてみたいという欲求も勿論あった。いつもは許されないその欲望が思い切りぶつけられる事を考えると、自然と喉がゴクリと鳴った。
それを見た夜はクスっと笑って着流しの前を肌蹴てみせた。
「どうぞ、お好きに」
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04/13/2011(Wed)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」13話
そうして事情を知った夜は少しの間、幸迩が慣れて好きな相手と結ばれる前まで後ろの解し方やウケの心得などを教える事になった。
夜にしてみれば、茶屋の子供たちへの手解きの延長線という感覚だった。
幸迩の必死のお願いと、その純粋で直向きな恋心を応援したくて承諾をした。一応美月には言おうとしたが、今はお互い干渉し合わない時期だという事で事後報告をしようと思った。
江戸にいた時もケジメをつけてきたのだ。ここでもこれが最初で最後にしようと思っていたのが、まさかこんなに悪化する事態を招こうとは思いもよらなかった。
シャワーから出た夜は簡単に身体を拭いて着流しを羽織って出てた。
美月のあの甘美な声と陶器のような肌に触れられると考えただけで、着物の下では欲望が硬く大きく成長してきた。
「美月、出たぞ。……美月? どこにいる?」
いくら呼んでも探してもいない。
夜の艶やかな長めの黒髪が水を滴らせて首筋に落ちる。
家中を探してもどこにも見当たらない。嫌な予感がして美月の部屋へ入り枕元を漁った。
「ない……」
枕元にある小箱に入っている筈の「カンザシ」がない。カンザシは抱月から貰った美月の宝物の一つで、無くすのが嫌だからと言っていつもこの小箱に入れてある。持ち歩いているのはもう一つの宝物の石鹸の欠片だ。たまに些細な事で喧嘩をすると、いじけた美月はいつもこうやってカンザシを持って出て行く。だが今回は何の揉め事もした記憶がない。問題があるとすればそれは一つ。大きな問題しか思い浮かばなかった。
「まさか美月の奴知って……」
夜は「チッ」と舌打ちをすると玄関に無造作にあった草履を突っ掛け、家を飛び出して行った。
美月は少ない手荷物を貴之の手から取ると立ち止まった。
「貴之……あの、やっぱり俺お前の家に世話になるにはちょっと……」
「美月。今は一人でいない方がいい。……ていうか、俺がお前を一人に出来ないんだよ」
貴之は美月の柔らかい身体を抱き寄せた。
「こうして無理にでも人肌に触れてた方が癒されるんだよ」
「あっ……ちょっ……貴之」
抵抗はしていても確かに何だか安心出来る。独りで冷たい地面に立っているより、こうして寄りかかれる温もりがあるだけで屋根のある建物の中にいるような気分になる。
もしかしたら貴之もこうして美月と決別をした時に誰かに癒されたのかもしれない。だから知っているのかもしれないと思った。
美月は抵抗を止めて大人しく貴之の背中に腕を回した。
辺りは人影がなく、不規則に並んだ白い電灯がその真下だけをほんのり明るく照らしていた。
薄暗い道路の真ん中は美月と貴之だけの広い部屋のような空間を作っていた。
先の事を考えずに今は癒されてもいいかなとタバコの香りが少しだけする貴之の胸の中に顔を埋めていた。
遠くからザッ、ザッ、とぶっきらぼうな音が聞こえた。
靴音とは違う何かを引きずるような音に美月も貴之も顔を少し上げた。
暗がりから何かユラユラとした大きな影が見える。二人は一瞬何か分からない恐怖心が内部から込み上げて互いを強く抱き締め合った。
「美月……何してんだ」
暗がりから電灯の下まで来た影を見た美月はハッとした。まるで初めて会った時の夜のようだった。
一瞬で夜に惹き込まれる。魂が夜に引きずられる。
「お前……知った顔だな。俺はそいつの男の夜ってんだ。お前、名は何て言う」
夜は張りつめた低い声で貴之に質問した。
(何で夜が貴之を知ってるんだ?)
「俺は美月の前の男だ。貴之だ」
“前の男”なんて言い方をするとは思わなかった美月はギョッとして貴之の顔を見上げた。貴之は豹に睨まれた犬のように内心は気押されつつも目一杯去勢を張っていた。
「タカユキ……そうか。お前だったか。最近美月とやけに連絡を取っていたのは」
「夜、どうして貴之を知ってるの」
美月は途中で夜に問いかける。
「部屋にそいつの写真があったんだよ。昔の男だって直ぐ分った。だから顔だって忘れちゃいねェよ」
痴話喧嘩になりそうなところで貴之が身体で美月を隠す様に前へ出た。
「オイ。そんな事より俺たちはもう知ってるんだからな……てめぇが他の男と浮気してるの、ちゃんと現場押さえてんだよ。今更なにしに来たんだ」
夜は着流しの袖口の中で腕を組みながら数秒間を置いた。そして軽く溜息をつくと、真っ直ぐと美月だけを見て話かけた。
「美月。黙っていたのは悪かった。後で言うつもりだった。だが最初に言っておくが、俺は浮気なんざしちゃいねェよ。アイツとはヤってねェ」
<<前へ 次へ>>
昨夜はPCがウイルスにかかってまた何日もPC使えないかと焦ったんですが
どうやら復元したようです(-ω-;)
お騒がせいたしました;
でも数日前の状態に復元したので書き溜めた記事がまた消えまして…。
(p_q*)シクシク
終盤なのでまた夜・昼UPしようかと意気込んでいた矢先でした |||||( _ _)|||||
また頑張ります(>ω<)
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夜にしてみれば、茶屋の子供たちへの手解きの延長線という感覚だった。
幸迩の必死のお願いと、その純粋で直向きな恋心を応援したくて承諾をした。一応美月には言おうとしたが、今はお互い干渉し合わない時期だという事で事後報告をしようと思った。
江戸にいた時もケジメをつけてきたのだ。ここでもこれが最初で最後にしようと思っていたのが、まさかこんなに悪化する事態を招こうとは思いもよらなかった。
シャワーから出た夜は簡単に身体を拭いて着流しを羽織って出てた。
美月のあの甘美な声と陶器のような肌に触れられると考えただけで、着物の下では欲望が硬く大きく成長してきた。
「美月、出たぞ。……美月? どこにいる?」
いくら呼んでも探してもいない。
夜の艶やかな長めの黒髪が水を滴らせて首筋に落ちる。
家中を探してもどこにも見当たらない。嫌な予感がして美月の部屋へ入り枕元を漁った。
「ない……」
枕元にある小箱に入っている筈の「カンザシ」がない。カンザシは抱月から貰った美月の宝物の一つで、無くすのが嫌だからと言っていつもこの小箱に入れてある。持ち歩いているのはもう一つの宝物の石鹸の欠片だ。たまに些細な事で喧嘩をすると、いじけた美月はいつもこうやってカンザシを持って出て行く。だが今回は何の揉め事もした記憶がない。問題があるとすればそれは一つ。大きな問題しか思い浮かばなかった。
「まさか美月の奴知って……」
夜は「チッ」と舌打ちをすると玄関に無造作にあった草履を突っ掛け、家を飛び出して行った。
美月は少ない手荷物を貴之の手から取ると立ち止まった。
「貴之……あの、やっぱり俺お前の家に世話になるにはちょっと……」
「美月。今は一人でいない方がいい。……ていうか、俺がお前を一人に出来ないんだよ」
貴之は美月の柔らかい身体を抱き寄せた。
「こうして無理にでも人肌に触れてた方が癒されるんだよ」
「あっ……ちょっ……貴之」
抵抗はしていても確かに何だか安心出来る。独りで冷たい地面に立っているより、こうして寄りかかれる温もりがあるだけで屋根のある建物の中にいるような気分になる。
もしかしたら貴之もこうして美月と決別をした時に誰かに癒されたのかもしれない。だから知っているのかもしれないと思った。
美月は抵抗を止めて大人しく貴之の背中に腕を回した。
辺りは人影がなく、不規則に並んだ白い電灯がその真下だけをほんのり明るく照らしていた。
薄暗い道路の真ん中は美月と貴之だけの広い部屋のような空間を作っていた。
先の事を考えずに今は癒されてもいいかなとタバコの香りが少しだけする貴之の胸の中に顔を埋めていた。
遠くからザッ、ザッ、とぶっきらぼうな音が聞こえた。
靴音とは違う何かを引きずるような音に美月も貴之も顔を少し上げた。
暗がりから何かユラユラとした大きな影が見える。二人は一瞬何か分からない恐怖心が内部から込み上げて互いを強く抱き締め合った。
「美月……何してんだ」
暗がりから電灯の下まで来た影を見た美月はハッとした。まるで初めて会った時の夜のようだった。
一瞬で夜に惹き込まれる。魂が夜に引きずられる。
「お前……知った顔だな。俺はそいつの男の夜ってんだ。お前、名は何て言う」
夜は張りつめた低い声で貴之に質問した。
(何で夜が貴之を知ってるんだ?)
「俺は美月の前の男だ。貴之だ」
“前の男”なんて言い方をするとは思わなかった美月はギョッとして貴之の顔を見上げた。貴之は豹に睨まれた犬のように内心は気押されつつも目一杯去勢を張っていた。
「タカユキ……そうか。お前だったか。最近美月とやけに連絡を取っていたのは」
「夜、どうして貴之を知ってるの」
美月は途中で夜に問いかける。
「部屋にそいつの写真があったんだよ。昔の男だって直ぐ分った。だから顔だって忘れちゃいねェよ」
痴話喧嘩になりそうなところで貴之が身体で美月を隠す様に前へ出た。
「オイ。そんな事より俺たちはもう知ってるんだからな……てめぇが他の男と浮気してるの、ちゃんと現場押さえてんだよ。今更なにしに来たんだ」
夜は着流しの袖口の中で腕を組みながら数秒間を置いた。そして軽く溜息をつくと、真っ直ぐと美月だけを見て話かけた。
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お騒がせいたしました;
でも数日前の状態に復元したので書き溜めた記事がまた消えまして…。
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04/12/2011(Tue)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」12話
玄関を出ると真向かいの家の壁に貴之が寄り掛かっていた。
「貴……之」
「やっぱり出てきたな」
貴之は美月の手荷物をそっと奪った。
「行こう」
夜は今日初めてシャワーを浴びていた。歩いていて汗ばんだのでホテルでついでにシャワーを浴びようとも思ったがなかなかそういう時間もなかったのだ。
こんなに美月と触れ合わない時間が長いのは江戸にいた頃に美月が突然消えた時以来だった。
毎日美月と同じ寝食を共にしているだけでどれだけ自制を課せられているか分からない。
人の何倍も性欲のある夜は日に幾度も美月の眠る隣の部屋で自慰をしなければならなかった。
寝静まった美月の部屋にそっと忍び込んではそっと唇を寄せた。悪戯にほんの少し舌先を入れ込むだけで無意識に吸いつくのが可愛くて仕方がなかった。
いっそ全てを無視して喉が切れてしまう程喘がせたいと思う自分を無理矢理に見えない檻へと閉じ込める。
大学へ通い始めて暫くした頃だった。
色々と困る事も多かった夜を助けてくれたのが『幸迩(ユキジ)』という男だった。
初めて見た時、雪之丞を思い出させるその容姿に懐かしさと驚きを感じた。話してみると雪之丞よりも遥かに元気でハキハキとした感じで寧ろ正反対の性格に、いつの間にか雪之丞を重ねても似つかなく見えていた。
だがそれどころではなかった。
「夜……僕ね、好きな奴がいるんだよぅ」
急にそう告白された。
「で、何だ?」
「僕こう見えてもタチなんだよね。でも好きになった人、あ、男なんだけどね? その人がタチ専門でさぁ……困ってるんだよぅ」
(太刀……たち……確か美月が言っていた“ちんぼう”を挿す側の奴の事か。タチか)
「お前、挿れる方なのか?」
夜はほんの少しギョッとした。仮にも姿形が雪之丞に似ているだけあって、想像をすると妙な違和感がある。
「うんっ! 僕、ガンガン行くよっ! 自分よりも大きくて筋肉ムキムキの人とかにも挿れるの好きっ」
「そ……そうか。それは、良かったな。じゃ」
夜はサッサと帰ろうとすると、意外にも強い力で腕を掴まれた。
「夜さ、ゲイでしょう?」
(芸……げい……あ、男が好きな奴の事か。“ゲイ”ってやつだっけか)
「いや、俺は“ばい”だ」
「そっちか。まぁ、どっちでも男がイケるんならいいやっ。経験豊富そうだからちょっと悩み相談受けてよぅ」
(フン。美月の奴、いつも俺を小馬鹿にしやがって……見てみろ。俺だってこうして現代の奴と会話が成立出来ているのだ。帰ったら自慢してやろうか)
夜は幸迩の話しを半分に、いつも小馬鹿にする美月をどうやって苛めてやろうかと考えてニヤついていた。
「ちょっと! 聞いてるの!?」
「あ? 何だやかましい」
「やかま……酷いね結構……僕に対してそんな態度とる人いないんだけどなぁ……まぁいいや。だからね、僕ネコになる練習したい訳っ。だから手伝ってくれない?っていってんの!」
「お前、ネコになりたいのか?」
「そうだよ」
「……それは、生物学的に無理だろう」
「……。……。違うっつーの!! そっちじゃないよ! 僕はチンコ挿れられたいけど初めてだから手解きしてくれって言ってんの!」
「何だ。そうか。ならそう言う風に早く言え。急に猫になりてェなんて言いやがるからコイツ馬鹿かと思ったぞ」
呆れた幸迩は少し腹が立って夜を無理矢理机の上に座らせた。
「何しやがる」
「ふふっ」
幸迩は先程とは打って変わって本物の“猫”のようにしなやかな体つきで夜の膝に跨った。
「僕を馬鹿にしてさ……君だって心の中じゃあ僕を抱いてみたいんじゃないの? 皆そう言うよ。結局僕が抱くんだけどさっ」
幸迩は自分の股間を夜のモノに擦りつけた。
「何コレっ、すっごいデカさ! 勃ってないのに……夜みたいなタイプを抱いた事ないんだよなぁ……ねぇ、一度さ…痛ッ」
調子に乗って誘っていた幸迩の髪が思い切り掴まれた。驚いた幸迩はその刃物のような夜の鋭い目線に身体がゾクリとして冷たい汗がジワリと湧き出た。
この時代でこんな事思うと尋常ではないのに、幸迩は本気でヘタしたらこの男に殺されるかもしれないと素直に感じた。
「鬱陶しい……それに、俺はお前ごときに性欲などかき立てられん」
夜が実際に人斬りをしてきた事など知る由もない幸迩だが本能が怯えさせた。
夜は強張る幸迩をそのまま投げ捨てて帰ろうとした。
「ご、ごめんって! お、怒らないでよぅっ、冗談なんだからさっ……もしかして夜、恋人がいるの?」
夜は足を止めて向き直った。
「極上の奴がいる」
そう言った夜が、今まで見た中でも一番真に近い顔に思えた。それは幸迩が人生で初めて見た表情だった。
鋭く妖しく、艶っぽくてサディスティックなのに深い愛情を感じる表情。この男は一体どんな風に恋人と愛し合うのだろう、どれだけの経験をしてきたのだろう、と幸迩の好奇心を煽った。
この男になら安心して自分の身体を託せる、そう実感した。
<<前へ 次へ>>
こういう事でした.。゚+.(・∀・)゚+.゚
そして長くなっているので頑張ってペースあげたいと思います;
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「貴……之」
「やっぱり出てきたな」
貴之は美月の手荷物をそっと奪った。
「行こう」
夜は今日初めてシャワーを浴びていた。歩いていて汗ばんだのでホテルでついでにシャワーを浴びようとも思ったがなかなかそういう時間もなかったのだ。
こんなに美月と触れ合わない時間が長いのは江戸にいた頃に美月が突然消えた時以来だった。
毎日美月と同じ寝食を共にしているだけでどれだけ自制を課せられているか分からない。
人の何倍も性欲のある夜は日に幾度も美月の眠る隣の部屋で自慰をしなければならなかった。
寝静まった美月の部屋にそっと忍び込んではそっと唇を寄せた。悪戯にほんの少し舌先を入れ込むだけで無意識に吸いつくのが可愛くて仕方がなかった。
いっそ全てを無視して喉が切れてしまう程喘がせたいと思う自分を無理矢理に見えない檻へと閉じ込める。
大学へ通い始めて暫くした頃だった。
色々と困る事も多かった夜を助けてくれたのが『幸迩(ユキジ)』という男だった。
初めて見た時、雪之丞を思い出させるその容姿に懐かしさと驚きを感じた。話してみると雪之丞よりも遥かに元気でハキハキとした感じで寧ろ正反対の性格に、いつの間にか雪之丞を重ねても似つかなく見えていた。
だがそれどころではなかった。
「夜……僕ね、好きな奴がいるんだよぅ」
急にそう告白された。
「で、何だ?」
「僕こう見えてもタチなんだよね。でも好きになった人、あ、男なんだけどね? その人がタチ専門でさぁ……困ってるんだよぅ」
(太刀……たち……確か美月が言っていた“ちんぼう”を挿す側の奴の事か。タチか)
「お前、挿れる方なのか?」
夜はほんの少しギョッとした。仮にも姿形が雪之丞に似ているだけあって、想像をすると妙な違和感がある。
「うんっ! 僕、ガンガン行くよっ! 自分よりも大きくて筋肉ムキムキの人とかにも挿れるの好きっ」
「そ……そうか。それは、良かったな。じゃ」
夜はサッサと帰ろうとすると、意外にも強い力で腕を掴まれた。
「夜さ、ゲイでしょう?」
(芸……げい……あ、男が好きな奴の事か。“ゲイ”ってやつだっけか)
「いや、俺は“ばい”だ」
「そっちか。まぁ、どっちでも男がイケるんならいいやっ。経験豊富そうだからちょっと悩み相談受けてよぅ」
(フン。美月の奴、いつも俺を小馬鹿にしやがって……見てみろ。俺だってこうして現代の奴と会話が成立出来ているのだ。帰ったら自慢してやろうか)
夜は幸迩の話しを半分に、いつも小馬鹿にする美月をどうやって苛めてやろうかと考えてニヤついていた。
「ちょっと! 聞いてるの!?」
「あ? 何だやかましい」
「やかま……酷いね結構……僕に対してそんな態度とる人いないんだけどなぁ……まぁいいや。だからね、僕ネコになる練習したい訳っ。だから手伝ってくれない?っていってんの!」
「お前、ネコになりたいのか?」
「そうだよ」
「……それは、生物学的に無理だろう」
「……。……。違うっつーの!! そっちじゃないよ! 僕はチンコ挿れられたいけど初めてだから手解きしてくれって言ってんの!」
「何だ。そうか。ならそう言う風に早く言え。急に猫になりてェなんて言いやがるからコイツ馬鹿かと思ったぞ」
呆れた幸迩は少し腹が立って夜を無理矢理机の上に座らせた。
「何しやがる」
「ふふっ」
幸迩は先程とは打って変わって本物の“猫”のようにしなやかな体つきで夜の膝に跨った。
「僕を馬鹿にしてさ……君だって心の中じゃあ僕を抱いてみたいんじゃないの? 皆そう言うよ。結局僕が抱くんだけどさっ」
幸迩は自分の股間を夜のモノに擦りつけた。
「何コレっ、すっごいデカさ! 勃ってないのに……夜みたいなタイプを抱いた事ないんだよなぁ……ねぇ、一度さ…痛ッ」
調子に乗って誘っていた幸迩の髪が思い切り掴まれた。驚いた幸迩はその刃物のような夜の鋭い目線に身体がゾクリとして冷たい汗がジワリと湧き出た。
この時代でこんな事思うと尋常ではないのに、幸迩は本気でヘタしたらこの男に殺されるかもしれないと素直に感じた。
「鬱陶しい……それに、俺はお前ごときに性欲などかき立てられん」
夜が実際に人斬りをしてきた事など知る由もない幸迩だが本能が怯えさせた。
夜は強張る幸迩をそのまま投げ捨てて帰ろうとした。
「ご、ごめんって! お、怒らないでよぅっ、冗談なんだからさっ……もしかして夜、恋人がいるの?」
夜は足を止めて向き直った。
「極上の奴がいる」
そう言った夜が、今まで見た中でも一番真に近い顔に思えた。それは幸迩が人生で初めて見た表情だった。
鋭く妖しく、艶っぽくてサディスティックなのに深い愛情を感じる表情。この男は一体どんな風に恋人と愛し合うのだろう、どれだけの経験をしてきたのだろう、と幸迩の好奇心を煽った。
この男になら安心して自分の身体を託せる、そう実感した。
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04/11/2011(Mon)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-11話
美月はそれから一言も話さずジッと道路を見つめたまま動かなくなった。
灰色。
黒。
こげ茶。
白。
そんな細かい色の凸凹を延々とただ見ていた。
たまに視界に捨てられたタバコが飛んで入ってきた。
まだ火が消えていないそれが青白い煙を上げながら徐々に燃え尽きていくのを見ていた。
貴之は動かなくなった美月の足元に座って、昔と変わらない銘柄のタバコを吸い始めた。多分同じ銘柄、だ。匂いが同じだと思った美月はそう決め付けた。
何を言っても動かないのを分かっても尚放っておけない性格の貴之を見て、あのまま現代にずっといても案外幸せな人生を送れたかもしれないなんて思ってしまった。
約三時間が経った頃、夜たちは出てきた。寄り添う様にして出てきた二人は明らかにホテルに入る前よりも距離が縮まっている事は見て分かった。
相手の男の子も頬が赤らんでさっきまでとは一変したとても色っぽい顔つきになっていた。まだ何かの余韻にでも浸っているようなそんな表情だ。
今そんな顔で街を歩けばきっと狙われてしまうだろう。
それでもホテルの前で少し話した二人は別々の方向へと歩き出した。
「何だ? バレないようにここで別れるってか?」
貴之の言葉が耳を掠めた。
美月は迷わず夜の方を追おうと歩き始めた。
真正面から今まで夜と肌を合わせていた男が近づいて来る。焦る貴之を無視して美月は道路の真ん中を堂々と歩いた。
男に近づいていくと、美月の視線に気付いたその人の方も目を合わせてきた。
すれ違う瞬間。
男の綺麗な黒い瞳が魅入るように美月を追いかけるのを感じた。そしてすれ違いざまに感じた妙に纏わりつくようなネットリとした視線。
気持ちが悪い。
そしてシャンプーの香りがした。
甘い恋人同士の触れ合いを思い起こさせるようなフルーツ系の香りがふわりと漂って来た。
吐き気がする。
もしかしたら向こうは既に美月を知っていたかもしれない。夜を手に入れたいと思うなら自然と一番近くにいる人間を調べるだろう。
美月は絡みつく視線を振り切って急ぎ足で夜を追った。
夜はそのまま家の方へ帰宅して行った。貴之は心配そうにしていたが、もうどうする事も出来ない自分は何かあれば自分の所へ来るようにと美月に強く言い聞かせて帰って行った。
美月は既に夜の居る家の中へと重い足を引きずって入った。
「美月? お前出掛けてたのか」
リビングから夜の声がした。台所でお茶を入れているらしい音が聞こえる。
美月は今自分がいつもと同じ顔が作れているかどうか分からなかった。頑張って口角を上げてみる。そのままリビングへ入ると夜が振り返った。
「どこ行ってたんだ?」
(夜は?……夜と同じ所だよ?)
「うん……その辺を散歩。肩、凝っちゃったからさ」
「そうか」
美月がソファに座ろうと踵を返した時、一番欲しい温もりが背中から美月の身体を包み込んできた。
「よ……」
抱き締められた腕が嬉しかったのに、同時に香ったフルーツのようなシャンプーの香りが美月の脳細胞を死滅させていった。
気持ちの悪くなるような甘ったるい香り。さっき同じ香りを嗅いだばかりだ。
美月は目を閉じた。
「夜……」
「ん?」
「ばーか」
「何だよ」
「風呂、入って来いよ」
美月がその気になったと思った夜は艶っぽい笑みを口元に浮かべて美月の項にキスをした。
夜がその日二度目となるシャワーを浴びている間、美月は必要なものだけ持って家を出た。
「ごめんね……ばいばい」
<<前へ 次へ>>
(ノД`)・゜・
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そんな細かい色の凸凹を延々とただ見ていた。
たまに視界に捨てられたタバコが飛んで入ってきた。
まだ火が消えていないそれが青白い煙を上げながら徐々に燃え尽きていくのを見ていた。
貴之は動かなくなった美月の足元に座って、昔と変わらない銘柄のタバコを吸い始めた。多分同じ銘柄、だ。匂いが同じだと思った美月はそう決め付けた。
何を言っても動かないのを分かっても尚放っておけない性格の貴之を見て、あのまま現代にずっといても案外幸せな人生を送れたかもしれないなんて思ってしまった。
約三時間が経った頃、夜たちは出てきた。寄り添う様にして出てきた二人は明らかにホテルに入る前よりも距離が縮まっている事は見て分かった。
相手の男の子も頬が赤らんでさっきまでとは一変したとても色っぽい顔つきになっていた。まだ何かの余韻にでも浸っているようなそんな表情だ。
今そんな顔で街を歩けばきっと狙われてしまうだろう。
それでもホテルの前で少し話した二人は別々の方向へと歩き出した。
「何だ? バレないようにここで別れるってか?」
貴之の言葉が耳を掠めた。
美月は迷わず夜の方を追おうと歩き始めた。
真正面から今まで夜と肌を合わせていた男が近づいて来る。焦る貴之を無視して美月は道路の真ん中を堂々と歩いた。
男に近づいていくと、美月の視線に気付いたその人の方も目を合わせてきた。
すれ違う瞬間。
男の綺麗な黒い瞳が魅入るように美月を追いかけるのを感じた。そしてすれ違いざまに感じた妙に纏わりつくようなネットリとした視線。
気持ちが悪い。
そしてシャンプーの香りがした。
甘い恋人同士の触れ合いを思い起こさせるようなフルーツ系の香りがふわりと漂って来た。
吐き気がする。
もしかしたら向こうは既に美月を知っていたかもしれない。夜を手に入れたいと思うなら自然と一番近くにいる人間を調べるだろう。
美月は絡みつく視線を振り切って急ぎ足で夜を追った。
夜はそのまま家の方へ帰宅して行った。貴之は心配そうにしていたが、もうどうする事も出来ない自分は何かあれば自分の所へ来るようにと美月に強く言い聞かせて帰って行った。
美月は既に夜の居る家の中へと重い足を引きずって入った。
「美月? お前出掛けてたのか」
リビングから夜の声がした。台所でお茶を入れているらしい音が聞こえる。
美月は今自分がいつもと同じ顔が作れているかどうか分からなかった。頑張って口角を上げてみる。そのままリビングへ入ると夜が振り返った。
「どこ行ってたんだ?」
(夜は?……夜と同じ所だよ?)
「うん……その辺を散歩。肩、凝っちゃったからさ」
「そうか」
美月がソファに座ろうと踵を返した時、一番欲しい温もりが背中から美月の身体を包み込んできた。
「よ……」
抱き締められた腕が嬉しかったのに、同時に香ったフルーツのようなシャンプーの香りが美月の脳細胞を死滅させていった。
気持ちの悪くなるような甘ったるい香り。さっき同じ香りを嗅いだばかりだ。
美月は目を閉じた。
「夜……」
「ん?」
「ばーか」
「何だよ」
「風呂、入って来いよ」
美月がその気になったと思った夜は艶っぽい笑みを口元に浮かべて美月の項にキスをした。
夜がその日二度目となるシャワーを浴びている間、美月は必要なものだけ持って家を出た。
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04/10/2011(Sun)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」10話
昼過ぎ。
美月は着替えた状態でベッドの中にいた。布団を鼻の辺りまで被って少し苦しいのを我慢していた。
カチャリと部屋のドアが開いて夜が入って来るのが分かって少し緊張する。
相変わらず忍者のように足音を立てない男だ。闇夜に居る時は瞳が夜行性の動物のように怪しく光ってまるで黒豹だ。
夜の気配に気付かないうちに、そっと被っていた布団を下げられて身体がビクッと動きそうになる。
「行ってくる」
そう囁いた低く艶っぽい声に胸がきゅんとなる。そして寝ているフリをしている美月の唇にそっとキスをして夜は出て行った。
玄関のドアが閉まる音を聞いた美月は布団から這い出し、急いで夜の後を追って家を出た。
「美月っ」
少し早めに家の側で待機していて貰った貴之が小声で名前を呼んで合流してきた。
「ごめん貴之……ありがとな」
「バカ。いいんだよ……俺だって気になるし、本気だった奴にはやっぱ幸せになって貰わないと諦めつかねーし」
貴之はあっけらかんとした物言いで美月の絹糸のような髪を無造作に掻き回した。
(ありがとう)
夜は昔と変わらず野暮ったい歩き方をしていた。変わったのは履物だ。
下駄から靴になった。あのカランコロン、と響く音が懐かしい。
最寄りの駅前に来ると、見た事のある綺麗な子が夜を見付けて駆け寄ってきた。
薄茶色のキャスケットを被り、見た事のある有名なロゴのTシャツを着ていた。裏原宿の方で店舗を構える有名なストリートブランドのものだと言う事は美月にもすぐに分かった。
上に着た薄い春色のシャツが色白の顔をよく引き立たせている。斜めがけした焦げ茶色のビンテージっぽい鞄も良く似合っている。
バランスが難しそうな少し短めのカラーパンツを、その体型を上手く活かして着ていた。人目でお洒落な子だと分かる。
(でもそんな事したって夜には通じないぞ)
美月はイライラしながら人ごみに紛れて近づいていった。
「夜っ。えへへ。どう……かな? 可愛い?」
「あぁ……いつもと違って見える……なかなか可愛らしい」
他の人を褒める事などしなかった夜が見た目を美月以外で認めたのは初めて聞いた。
美月は悔しさと悲しさで既に逃げ出したい衝動に駆られてきた。自分は一体何をしているのか、情けなくさえ思えてくる。
「ハァ……」
無意識に出た溜息で美月の心の内を悟ったのか、貴之がポンと肩を叩いた。
「俺はお前の方がずっと可愛いと思うぜ?」
「な……」
「恥ずかしい事言うな!」と言いたい所だったが、それ以上に嬉しかった。励ましてくれているのが分かる。
美月はグッと顔を上げて再び二人を追った。
案の定、抱月が言っていた場所辺りに二人は移動していた。
昼過ぎからこんな怪しい繁華街に何の用だ、と考えても思い浮かぶのは一つしかない。
既に視界に入って来ている建物はホテルばかりだ。
「ねぇ、夜の家じゃやっぱりダメなの? 同居人がいるだけなんでしょ?」
「ダメだ」
「けちっ」
周りの妖しい雰囲気に気押されてか、少し不安気に夜の腕を掴んでいた。
二人の雰囲気は美月から見たらもう恋人のように見える。
(家には、俺がいるからダメ……って事でここか。ははっ……それは俺、邪魔だろうなぁ)
惨めな気持ちは美月をどんどん小さく縮こませる。
そして二人は適当なホテルのエントランスへと吸い込まれていった。
「美月……。もう、これが現実だ」
貴之の優しい声が頭の上でする。
「あ……あ、でももしかしたら映画鑑賞とか」
「美月」
「まったり昼寝に付き合うとか」
「美月ッ」
「ゲームとか」
美月の身体は突然強い力で抱き締められた。それだけで泣きそうになった自分が既に現実を認めている事を再確認してしまうようで涙を必死に塞き止める。
「俺……二人が出てくるまで待つ……」
美月は自分が一体何をしたいのか分からなかった。分からないが、出てきた後の二人で決定的なものを自分に見せつけないとまだ何かに縋りそうだと思った。
「もう止めよう美月。これ以上は辛いだけだ。俺が……俺の事は別に好きじゃなくていい。だから俺に頼ってくれよ。俺、今一人暮らしだし、俺の所に来いよ。な?」
<<前へ 次へ>>
更新遅れましてスミマセン!
夜……本当に裏切っているのか…。
そしてツイッターやってます!
慣れてきたので良かったらお気軽にフォローしてやって下さいませv
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カチャリと部屋のドアが開いて夜が入って来るのが分かって少し緊張する。
相変わらず忍者のように足音を立てない男だ。闇夜に居る時は瞳が夜行性の動物のように怪しく光ってまるで黒豹だ。
夜の気配に気付かないうちに、そっと被っていた布団を下げられて身体がビクッと動きそうになる。
「行ってくる」
そう囁いた低く艶っぽい声に胸がきゅんとなる。そして寝ているフリをしている美月の唇にそっとキスをして夜は出て行った。
玄関のドアが閉まる音を聞いた美月は布団から這い出し、急いで夜の後を追って家を出た。
「美月っ」
少し早めに家の側で待機していて貰った貴之が小声で名前を呼んで合流してきた。
「ごめん貴之……ありがとな」
「バカ。いいんだよ……俺だって気になるし、本気だった奴にはやっぱ幸せになって貰わないと諦めつかねーし」
貴之はあっけらかんとした物言いで美月の絹糸のような髪を無造作に掻き回した。
(ありがとう)
夜は昔と変わらず野暮ったい歩き方をしていた。変わったのは履物だ。
下駄から靴になった。あのカランコロン、と響く音が懐かしい。
最寄りの駅前に来ると、見た事のある綺麗な子が夜を見付けて駆け寄ってきた。
薄茶色のキャスケットを被り、見た事のある有名なロゴのTシャツを着ていた。裏原宿の方で店舗を構える有名なストリートブランドのものだと言う事は美月にもすぐに分かった。
上に着た薄い春色のシャツが色白の顔をよく引き立たせている。斜めがけした焦げ茶色のビンテージっぽい鞄も良く似合っている。
バランスが難しそうな少し短めのカラーパンツを、その体型を上手く活かして着ていた。人目でお洒落な子だと分かる。
(でもそんな事したって夜には通じないぞ)
美月はイライラしながら人ごみに紛れて近づいていった。
「夜っ。えへへ。どう……かな? 可愛い?」
「あぁ……いつもと違って見える……なかなか可愛らしい」
他の人を褒める事などしなかった夜が見た目を美月以外で認めたのは初めて聞いた。
美月は悔しさと悲しさで既に逃げ出したい衝動に駆られてきた。自分は一体何をしているのか、情けなくさえ思えてくる。
「ハァ……」
無意識に出た溜息で美月の心の内を悟ったのか、貴之がポンと肩を叩いた。
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「な……」
「恥ずかしい事言うな!」と言いたい所だったが、それ以上に嬉しかった。励ましてくれているのが分かる。
美月はグッと顔を上げて再び二人を追った。
案の定、抱月が言っていた場所辺りに二人は移動していた。
昼過ぎからこんな怪しい繁華街に何の用だ、と考えても思い浮かぶのは一つしかない。
既に視界に入って来ている建物はホテルばかりだ。
「ねぇ、夜の家じゃやっぱりダメなの? 同居人がいるだけなんでしょ?」
「ダメだ」
「けちっ」
周りの妖しい雰囲気に気押されてか、少し不安気に夜の腕を掴んでいた。
二人の雰囲気は美月から見たらもう恋人のように見える。
(家には、俺がいるからダメ……って事でここか。ははっ……それは俺、邪魔だろうなぁ)
惨めな気持ちは美月をどんどん小さく縮こませる。
そして二人は適当なホテルのエントランスへと吸い込まれていった。
「美月……。もう、これが現実だ」
貴之の優しい声が頭の上でする。
「あ……あ、でももしかしたら映画鑑賞とか」
「美月」
「まったり昼寝に付き合うとか」
「美月ッ」
「ゲームとか」
美月の身体は突然強い力で抱き締められた。それだけで泣きそうになった自分が既に現実を認めている事を再確認してしまうようで涙を必死に塞き止める。
「俺……二人が出てくるまで待つ……」
美月は自分が一体何をしたいのか分からなかった。分からないが、出てきた後の二人で決定的なものを自分に見せつけないとまだ何かに縋りそうだと思った。
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04/09/2011(Sat)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」9話
「せっ……先生ッ」
「あれ? 美月くん。どうしたの?」
抱月の包み込むような懐かしい笑顔を見た途端、不安や寂しさが一気に崩壊して流れ出た。
次から次へと流れ出る涙をそのままにして、美月は抱月の胸の中に飛び込んだ。
「どうしたんだッ? とにかくこっちに」
驚いた抱月はこの時間人が使っていないCTスキャンのある部屋へと連れて行った。病院特有の全体的に白っぽい部屋に近未来的にも見える大きな機械が異様な存在感を醸し出していた。
抱月は部屋のドアを閉めると子供のようにすすり泣く美月の肩を黙って抱きしめた。
理由を聞かないでいてくれた事がとても嬉しい。
しばらくすると落ち着いてきた美月が抱月の胸の中から顔を上げた。少し上から見つめ返す抱月はとても愛おしそうに美月の頬を撫でて、そっとおでこにキスをした。
美月が片目を瞑ると涙がスルリと抱月の指を跨いだ。
「君が泣くと何だか勝手に体が動くな。……困ったなぁ、美月くんは男の子なのに……ごめんよ」
少し困った感じで、左手の薬指にはめられた指輪を光らせながらも美月の見えない心の不安をゆっくりとぬぐい去っていくように濡れた美月の睫毛にキスをする。
「せんせ……」
出来心だったのだろう。美月は甘えるように、蕩けた視線を絡ませた。それは抱月から見れば明らかにねだるように見えた。
目の前にある抱月の喉が上下に動くのが目の前で見えた。美月がもう一度視線を合わせると、抱月の瞳に痛い程に分かる欲の色が垣間見えた。
唇がゆっくりと引き合う磁石のように近づいていく。美月の脳は麻酔でもかけられたように麻痺していた。
だがふと互いの吐息を唇に感じた途端、磁石は跳ね返った。
「す……すまない、美月くん……私は」
「あ……あ、すみません、俺……甘えてつい……」
それでも抱月は美月を胸元からは離そうとはせず、美月もその中からは逃げなかった。
今の抱月は既に結婚もしていてノーマルだという事は知っていた。それでも抱月自身もこうせざるを得ないというのは、きっと今の抱月の中に未だ眠っている昔の彼が慰めに出てきたのではないかと思ってしまう。
美月はそう考えるだけで心がホッと暖かくなって、「ありがと、先生」と微笑む事が出来た。
「不思議だね……美月くんの瞳の中……何だろう。少しキラキラと光るモノがあって……万華鏡のようだ」
「うん……夜もね。この俺の目が好きなんだ」
落ち付いた美月は抱月の腕の中から離れた。
「あ、夜くんと言えばこの間見かけたなぁ。可愛い子と一緒に歩いているのを見かけてね。彼女でも出来たのかな?」
「え?」
やっと寝静まった赤ん坊が急に叫んだように美月の心臓が騒ぎだした。
抱月は彼女と言ったが、遠目から見てあの子の容姿ならば女と間違えても納得出来る。それに、数日前は夜の帰りが遅かった時でもあった。
「どこで……見かけたんですか……」
抱月の話しによると病院から少し離れた街にいたようだった。そこは例えば高校生なんかが行くような場所では無い場所だった。大人の繁華街で、どんな趣味の人も自然と集まる街だ。人々は妖しいネオンの光に集まる変わった色形をした夜光虫のようだ。
勿論、ホテルも沢山ある。同性同士で入れるホテルなんかもそこには沢山建っていて、需要の多さを物語っているようなものだ。
美月は愕然としながらもこの決定的にも思える情報にケリをつけようと唇を噛んだ。
夜の事を愛しているからこそ、証拠を突きつけられて現実を受け入れられるかどうか、美月自身がどう行動をするかをハッキリさせたかった。
抱月を目の前にして、するべき事としたい事が明確になれた。
その夜、美月は貴之に謝りと決心を電話で伝えた。
貴之は美月の夜への想いを理解し、もう二度とおかしな真似はしない代わりに明日は美月に付き合わせてほしいと言ってきた。
正直一人だと不安と緊張で足が竦みそうだった美月はそれを承諾した。
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「あれ? 美月くん。どうしたの?」
抱月の包み込むような懐かしい笑顔を見た途端、不安や寂しさが一気に崩壊して流れ出た。
次から次へと流れ出る涙をそのままにして、美月は抱月の胸の中に飛び込んだ。
「どうしたんだッ? とにかくこっちに」
驚いた抱月はこの時間人が使っていないCTスキャンのある部屋へと連れて行った。病院特有の全体的に白っぽい部屋に近未来的にも見える大きな機械が異様な存在感を醸し出していた。
抱月は部屋のドアを閉めると子供のようにすすり泣く美月の肩を黙って抱きしめた。
理由を聞かないでいてくれた事がとても嬉しい。
しばらくすると落ち着いてきた美月が抱月の胸の中から顔を上げた。少し上から見つめ返す抱月はとても愛おしそうに美月の頬を撫でて、そっとおでこにキスをした。
美月が片目を瞑ると涙がスルリと抱月の指を跨いだ。
「君が泣くと何だか勝手に体が動くな。……困ったなぁ、美月くんは男の子なのに……ごめんよ」
少し困った感じで、左手の薬指にはめられた指輪を光らせながらも美月の見えない心の不安をゆっくりとぬぐい去っていくように濡れた美月の睫毛にキスをする。
「せんせ……」
出来心だったのだろう。美月は甘えるように、蕩けた視線を絡ませた。それは抱月から見れば明らかにねだるように見えた。
目の前にある抱月の喉が上下に動くのが目の前で見えた。美月がもう一度視線を合わせると、抱月の瞳に痛い程に分かる欲の色が垣間見えた。
唇がゆっくりと引き合う磁石のように近づいていく。美月の脳は麻酔でもかけられたように麻痺していた。
だがふと互いの吐息を唇に感じた途端、磁石は跳ね返った。
「す……すまない、美月くん……私は」
「あ……あ、すみません、俺……甘えてつい……」
それでも抱月は美月を胸元からは離そうとはせず、美月もその中からは逃げなかった。
今の抱月は既に結婚もしていてノーマルだという事は知っていた。それでも抱月自身もこうせざるを得ないというのは、きっと今の抱月の中に未だ眠っている昔の彼が慰めに出てきたのではないかと思ってしまう。
美月はそう考えるだけで心がホッと暖かくなって、「ありがと、先生」と微笑む事が出来た。
「不思議だね……美月くんの瞳の中……何だろう。少しキラキラと光るモノがあって……万華鏡のようだ」
「うん……夜もね。この俺の目が好きなんだ」
落ち付いた美月は抱月の腕の中から離れた。
「あ、夜くんと言えばこの間見かけたなぁ。可愛い子と一緒に歩いているのを見かけてね。彼女でも出来たのかな?」
「え?」
やっと寝静まった赤ん坊が急に叫んだように美月の心臓が騒ぎだした。
抱月は彼女と言ったが、遠目から見てあの子の容姿ならば女と間違えても納得出来る。それに、数日前は夜の帰りが遅かった時でもあった。
「どこで……見かけたんですか……」
抱月の話しによると病院から少し離れた街にいたようだった。そこは例えば高校生なんかが行くような場所では無い場所だった。大人の繁華街で、どんな趣味の人も自然と集まる街だ。人々は妖しいネオンの光に集まる変わった色形をした夜光虫のようだ。
勿論、ホテルも沢山ある。同性同士で入れるホテルなんかもそこには沢山建っていて、需要の多さを物語っているようなものだ。
美月は愕然としながらもこの決定的にも思える情報にケリをつけようと唇を噛んだ。
夜の事を愛しているからこそ、証拠を突きつけられて現実を受け入れられるかどうか、美月自身がどう行動をするかをハッキリさせたかった。
抱月を目の前にして、するべき事としたい事が明確になれた。
その夜、美月は貴之に謝りと決心を電話で伝えた。
貴之は美月の夜への想いを理解し、もう二度とおかしな真似はしない代わりに明日は美月に付き合わせてほしいと言ってきた。
正直一人だと不安と緊張で足が竦みそうだった美月はそれを承諾した。
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04/08/2011(Fri)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」8話
夜の浮気現場を見た日から美月の携帯には毎日貴之から連絡が入るようになっていた。
心配してくれているようで優しい言葉を掛けてくれる。美月は勿論嬉しかった。以前ならきっと甘えていたに違いない。だが今となっては貴之には何も満たしてくれるものが見当たらないと感じてしまう。
美月を生かすも殺すも全ては夜が支配しているという事だ。
夜は携帯電話を持っていない。厳密に言うと、解約したのだ。携帯を持っているとひっきりなしに色んな人から連絡が入るので鬱陶しいと解約してしまった。
使い方に慣れないうちに、周囲の人たちに勝手に登録をされていたようだ。
「美月、最近誰と話してるんだ」
美月は自分の部屋で貴之からのメールに返信していると、いつの間に風呂から上がった夜が濡れた身体にタオルだけ腰に巻いて後ろに立っていた。
「べっ……別に普通に友達だよっ」
「そいつの名を言え」
変に勘が鋭いのは今も鈍ってはいないようだ。険しい顔で睨んでくる。だが、そんな鋭い顔よりも、濡れて艶めかしく光っている裸体の方が気になってしまう。
「た……タカユキだよ」
「……」
夜には昔の男の話しはあまりした事がない。名前くらい言ったところで大丈夫だと思った美月だったが、夜のしている事に比べたら大した事ないじゃないかと溜息が出た。
美月が忙しいからと言って距離を取ってもう五日となる。最初は気を使ってか、平気そうにしていた夜だったが、近頃はイライラしているような素振りを見せるようになってきた。
その証拠に、いつもよりも頻繁に窓を開けて煙管をふかしている。
「タバコはイヤなの?」と前に聞いたことがあった。すると、「手に重さが足りねェ」と言っていた。
やはり今でも夜には煙管がよく似合う。
「あぁ、俺土曜ちょっと用事があるから出てくるわ」
美月はドキッとして振り返った。
「なに……用事って……」
最近夜はたまにこうして用事があると言っては休みの日にふらりと出掛ける事がある。帰りも遅くなった。
原因は、分かっていた。
「いや、大した事じゃねェよ」
こうして少しずつ距離が開いていくのだろうか。“だるまさんが転んだ”の逆のように、ふと顔を上げて見ると夜の背中が遠くに行ってしまうように感じる。
美月は「どうして?」という理由が聞きたい気持ちと、聞いてしまったら後戻り出来ない予想をして一歩が踏み出せなかった。
夜の出掛ける前日の金曜に、美月は大学の帰りに何となく昔通っていた大学近くの公園に立ち寄った。
そこは昔時代を越える能力を受け渡された場所だった。
少し歩くと汗ばむくらいの気持ちのいい初夏だ。以前と変わらない木々は素知らぬ様子でサワサワと耳に心地よい葉のさざ波を奏でていた。
『過去に縋るのは今の生活が幸せじゃないんだよ』
誰かがそんな事を言っていたなと思い出して、自分の考えに悲しくなった。
(それじゃまるで俺が今幸せじゃないみたいだ)
昔座ったことのあるベンチに座って目を閉じていると、「美月っ」と声を掛けられて顔を向けた。
「やっぱりそうだった。さっきお前に似てる奴見かけたと思ってさ」
「貴之……」
そういえば前の大学は貴之と同じ大学だ。ここで会うのも不思議ではなかった。
美月はふと口の端だけで笑みを作った。
隣に座り、あれからの状態を静かに聞いてくれた貴之だったが、話を聞き終わると美月の頭を抱えた。
懐かしい貴之のタバコの香りがした。
久し振りに触れる貴之の温もりは、親や兄弟に抱き締められるような安堵感を感じた。美月はそんな事を思いながら素直に肩を貴之に預けた。
ふと貴之の影が近づいてきたので顔を上げると、貴之の唇が少し触れて驚いた。
「ちょっ……なっ」
抵抗をしようとした手をグッと捕まれる。
「……」
無言で迫る貴之が以前から知っている貴之とは別人のように強引で驚いた。前は嫌がる事は絶対にしなかったからだ。
だが今は強引さが美月の弱った心のバランスをグラグラと揺るがす。
「止め……ろって……貴之っ……やっ」
「俺が楽にしてやるからッ」
横から覆いかぶさるようにして美月の頭を掴み、唇を一瞬で塞がれた。夜とは違う感触に美月の舌が逃げ惑う。
「イヤだッ」
美月は振り切るようにしてその場から逃げ出した。
美月自身、自分で思っていた以上に拒否反応が出て驚いた。走りながら貴之に濡らされた唇をグッと手の甲で拭った。
夜を裏切る事は勿論嫌だったが、同時に抱月を想う心がそうさせたのもあった。
確かに繋がっていたもう一つの魂の相手だった抱月。その男ではなく、夜を選んでここまで来た。
それ故に絶対に夜と幸せになる義務があるのだと、自分を奮い立たせた。
こんな時、昔だったら抱月に甘えていたに違いなかった。
いつも存分に甘やかしてくれて、全てを愛し包み込んでくれたもう一人の運命の相手。
辛い時にはやはり会いたいと思ってしまうのはイケナイ事なのだろうか。
段々と薄暗くなって来た頃、美月は病院に来ていた。
(一目だけ。一目だけ会えば多分少しは落ち着くから……。)
その病院には抱月と同じ名前を持った先生の子孫がいた。とてもよく似ているその人は、かつて愛してた抱月の血を引いている。いや、今も彼を想う気持ちは確かにあった。
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病院へ…行ってしまいました…(´Д`A;)
連日沢山の拍手をありがとうございます(涙)
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心配してくれているようで優しい言葉を掛けてくれる。美月は勿論嬉しかった。以前ならきっと甘えていたに違いない。だが今となっては貴之には何も満たしてくれるものが見当たらないと感じてしまう。
美月を生かすも殺すも全ては夜が支配しているという事だ。
夜は携帯電話を持っていない。厳密に言うと、解約したのだ。携帯を持っているとひっきりなしに色んな人から連絡が入るので鬱陶しいと解約してしまった。
使い方に慣れないうちに、周囲の人たちに勝手に登録をされていたようだ。
「美月、最近誰と話してるんだ」
美月は自分の部屋で貴之からのメールに返信していると、いつの間に風呂から上がった夜が濡れた身体にタオルだけ腰に巻いて後ろに立っていた。
「べっ……別に普通に友達だよっ」
「そいつの名を言え」
変に勘が鋭いのは今も鈍ってはいないようだ。険しい顔で睨んでくる。だが、そんな鋭い顔よりも、濡れて艶めかしく光っている裸体の方が気になってしまう。
「た……タカユキだよ」
「……」
夜には昔の男の話しはあまりした事がない。名前くらい言ったところで大丈夫だと思った美月だったが、夜のしている事に比べたら大した事ないじゃないかと溜息が出た。
美月が忙しいからと言って距離を取ってもう五日となる。最初は気を使ってか、平気そうにしていた夜だったが、近頃はイライラしているような素振りを見せるようになってきた。
その証拠に、いつもよりも頻繁に窓を開けて煙管をふかしている。
「タバコはイヤなの?」と前に聞いたことがあった。すると、「手に重さが足りねェ」と言っていた。
やはり今でも夜には煙管がよく似合う。
「あぁ、俺土曜ちょっと用事があるから出てくるわ」
美月はドキッとして振り返った。
「なに……用事って……」
最近夜はたまにこうして用事があると言っては休みの日にふらりと出掛ける事がある。帰りも遅くなった。
原因は、分かっていた。
「いや、大した事じゃねェよ」
こうして少しずつ距離が開いていくのだろうか。“だるまさんが転んだ”の逆のように、ふと顔を上げて見ると夜の背中が遠くに行ってしまうように感じる。
美月は「どうして?」という理由が聞きたい気持ちと、聞いてしまったら後戻り出来ない予想をして一歩が踏み出せなかった。
夜の出掛ける前日の金曜に、美月は大学の帰りに何となく昔通っていた大学近くの公園に立ち寄った。
そこは昔時代を越える能力を受け渡された場所だった。
少し歩くと汗ばむくらいの気持ちのいい初夏だ。以前と変わらない木々は素知らぬ様子でサワサワと耳に心地よい葉のさざ波を奏でていた。
『過去に縋るのは今の生活が幸せじゃないんだよ』
誰かがそんな事を言っていたなと思い出して、自分の考えに悲しくなった。
(それじゃまるで俺が今幸せじゃないみたいだ)
昔座ったことのあるベンチに座って目を閉じていると、「美月っ」と声を掛けられて顔を向けた。
「やっぱりそうだった。さっきお前に似てる奴見かけたと思ってさ」
「貴之……」
そういえば前の大学は貴之と同じ大学だ。ここで会うのも不思議ではなかった。
美月はふと口の端だけで笑みを作った。
隣に座り、あれからの状態を静かに聞いてくれた貴之だったが、話を聞き終わると美月の頭を抱えた。
懐かしい貴之のタバコの香りがした。
久し振りに触れる貴之の温もりは、親や兄弟に抱き締められるような安堵感を感じた。美月はそんな事を思いながら素直に肩を貴之に預けた。
ふと貴之の影が近づいてきたので顔を上げると、貴之の唇が少し触れて驚いた。
「ちょっ……なっ」
抵抗をしようとした手をグッと捕まれる。
「……」
無言で迫る貴之が以前から知っている貴之とは別人のように強引で驚いた。前は嫌がる事は絶対にしなかったからだ。
だが今は強引さが美月の弱った心のバランスをグラグラと揺るがす。
「止め……ろって……貴之っ……やっ」
「俺が楽にしてやるからッ」
横から覆いかぶさるようにして美月の頭を掴み、唇を一瞬で塞がれた。夜とは違う感触に美月の舌が逃げ惑う。
「イヤだッ」
美月は振り切るようにしてその場から逃げ出した。
美月自身、自分で思っていた以上に拒否反応が出て驚いた。走りながら貴之に濡らされた唇をグッと手の甲で拭った。
夜を裏切る事は勿論嫌だったが、同時に抱月を想う心がそうさせたのもあった。
確かに繋がっていたもう一つの魂の相手だった抱月。その男ではなく、夜を選んでここまで来た。
それ故に絶対に夜と幸せになる義務があるのだと、自分を奮い立たせた。
こんな時、昔だったら抱月に甘えていたに違いなかった。
いつも存分に甘やかしてくれて、全てを愛し包み込んでくれたもう一人の運命の相手。
辛い時にはやはり会いたいと思ってしまうのはイケナイ事なのだろうか。
段々と薄暗くなって来た頃、美月は病院に来ていた。
(一目だけ。一目だけ会えば多分少しは落ち着くから……。)
その病院には抱月と同じ名前を持った先生の子孫がいた。とてもよく似ているその人は、かつて愛してた抱月の血を引いている。いや、今も彼を想う気持ちは確かにあった。
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04/07/2011(Thu)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-7話
☆文末辺りに肌色画像があります。周りに注意して閲覧して下さい。
夕方遅くに玄関から夜の帰宅する声が聞こえた。
「ただいま」
美月の手が大きく震える。
待っている間、料理をしようとしても、テレビを見ようとしても何も出来なかった。だから夜が帰ったら、何かをしている“フリ”をしようと思った。
「オカエリ」
声が掠れる。
「今日は早いな。……どうした? 何かあったか? 顔色が……」
これは知っている夜だろうか。知らない夜だろうか。今までと同じ静かな足音で近づいて来た。
「あ、うん。何でもないんだ。授業で解剖の事やってたからちょっと気分悪くて……もうすぐ、研修もあるし」
顔がまともに見られない。今直ぐ抱きつきたいと思う気持ちと、これ以上近づかないで欲しいという気持ちがぶつかる。
胸の中が静電気のようにパチパチと痛い。
「そうか……この時代ではあまり死体はないからな。無理するなよ」
夜の低く艶っぽい声が頭の上でする。美月の身体が拒否反応を起こしそうになる。
悲鳴を上げそうで口元に手を当てた瞬間、暖かくて大きな夜の手が美月の頭をポンポンと撫でた。
たったそれだけで、嘘みたいに震えは止まり嬉しさで息苦しくなった。
さっきまで他の誰かを抱いていただろう夜の手は、紛れもなく心底愛した男の手だった。
夜がスッと背中を向けてリビングへ歩き出すと、美月は床を蹴るようにして夜の背中を抱き締めた。
美月が見た時は、夜の背には“あの子”は触れてはいなかった。
「どうした美月?」
「少しだけ……このままがいい……夜は何もしないで」
縋るように夜の広く暖かい背中に頬を押し当てる。
――飽きられ……ちゃったのかな。
やっぱり雪之丞さんみたいな人がいい? 夜に好かれるにはどうしたらいいかな。
美月は痛む胸に、効く筈のない痛み止めの薬を規定量より少し多めに飲んで寝た。
約束の二日間は過ぎ、夜は部屋で勉強をしていた美月を後ろから強く抱きしめてきた。
夜はいつも壊れやすい飴細工でも抱くように初めは優しく、そして逃がさないように息苦しくなる程に強く抱きしめてくる。
「何だよ。待ってたのに。お前全然来ないしよ。何勉強してんだよ……もう、我慢限界来てるんだろう?」
夜の舌先が項を這う。
美月はゾクゾクと全身が総毛立つのを抑えるように腕をギュッと掴んだ。
「あのね、ごめん夜。今度は俺が試験入っちゃったんだ。だからもう少し後で……な」
「そうなのか? 何だよそりゃ……楽しみにしてたのによォ……」
(楽しみに? 本当?)
「でも仕方ねェか。頑張れよ」
案外サッパリとしたものだ。他で欲求を満たしているからそんなお預けも苦ではないという事なのだろうか。
夜がグイッと美月の顎を上に持ち上げると、チュッと軽くキスをしてきた。
(残酷だよ。夜)
「おやすみ」
美月は直ぐに顔を机に向けて挨拶をした。夜が後ろで挨拶をする声が聞こえている途中なのにも関わらず、ボタボタと涙が落ちてきた。
雪之丞のように純情でなければと、ある筈のない試験を引き合いに距離を取った。
絶対に夜と別れたくはなかった。嘘をついてでも、我慢してでも一緒にいられるのであれば何でもするつもりだった。
捨てられる事がこんなに怖い事だとは思わなかった。
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スミマセン;急に裸体描いてしまいました(-"-;A ...アセアセ
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夕方遅くに玄関から夜の帰宅する声が聞こえた。
「ただいま」
美月の手が大きく震える。
待っている間、料理をしようとしても、テレビを見ようとしても何も出来なかった。だから夜が帰ったら、何かをしている“フリ”をしようと思った。
「オカエリ」
声が掠れる。
「今日は早いな。……どうした? 何かあったか? 顔色が……」
これは知っている夜だろうか。知らない夜だろうか。今までと同じ静かな足音で近づいて来た。
「あ、うん。何でもないんだ。授業で解剖の事やってたからちょっと気分悪くて……もうすぐ、研修もあるし」
顔がまともに見られない。今直ぐ抱きつきたいと思う気持ちと、これ以上近づかないで欲しいという気持ちがぶつかる。
胸の中が静電気のようにパチパチと痛い。
「そうか……この時代ではあまり死体はないからな。無理するなよ」
夜の低く艶っぽい声が頭の上でする。美月の身体が拒否反応を起こしそうになる。
悲鳴を上げそうで口元に手を当てた瞬間、暖かくて大きな夜の手が美月の頭をポンポンと撫でた。
たったそれだけで、嘘みたいに震えは止まり嬉しさで息苦しくなった。
さっきまで他の誰かを抱いていただろう夜の手は、紛れもなく心底愛した男の手だった。
夜がスッと背中を向けてリビングへ歩き出すと、美月は床を蹴るようにして夜の背中を抱き締めた。
美月が見た時は、夜の背には“あの子”は触れてはいなかった。
「どうした美月?」
「少しだけ……このままがいい……夜は何もしないで」
縋るように夜の広く暖かい背中に頬を押し当てる。
――飽きられ……ちゃったのかな。
やっぱり雪之丞さんみたいな人がいい? 夜に好かれるにはどうしたらいいかな。
美月は痛む胸に、効く筈のない痛み止めの薬を規定量より少し多めに飲んで寝た。
約束の二日間は過ぎ、夜は部屋で勉強をしていた美月を後ろから強く抱きしめてきた。
夜はいつも壊れやすい飴細工でも抱くように初めは優しく、そして逃がさないように息苦しくなる程に強く抱きしめてくる。
「何だよ。待ってたのに。お前全然来ないしよ。何勉強してんだよ……もう、我慢限界来てるんだろう?」
夜の舌先が項を這う。
美月はゾクゾクと全身が総毛立つのを抑えるように腕をギュッと掴んだ。
「あのね、ごめん夜。今度は俺が試験入っちゃったんだ。だからもう少し後で……な」
「そうなのか? 何だよそりゃ……楽しみにしてたのによォ……」
(楽しみに? 本当?)
「でも仕方ねェか。頑張れよ」
案外サッパリとしたものだ。他で欲求を満たしているからそんなお預けも苦ではないという事なのだろうか。
夜がグイッと美月の顎を上に持ち上げると、チュッと軽くキスをしてきた。
(残酷だよ。夜)
「おやすみ」
美月は直ぐに顔を机に向けて挨拶をした。夜が後ろで挨拶をする声が聞こえている途中なのにも関わらず、ボタボタと涙が落ちてきた。
雪之丞のように純情でなければと、ある筈のない試験を引き合いに距離を取った。
絶対に夜と別れたくはなかった。嘘をついてでも、我慢してでも一緒にいられるのであれば何でもするつもりだった。
捨てられる事がこんなに怖い事だとは思わなかった。
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04/06/2011(Wed)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」6話
何だか険しい表情のその男子学生に連れられて、夜が授業の終わった筈の空き教室へと連れこまれていったのだ。
美月の心臓は走るようにドクドクと音を荒げていた。
(イヤだよ、夜……。もう、深すぎる関係なんだよ、俺たち……。今更壊されたら、俺、生きていけないよ……)
「アイツ……何かあったら……容赦しねぇ」
横で美月の肩をしっかりと抱きとめて貴之が呟く。
(ダメだ! やっぱり俺っ)
「貴之ッ、俺やっぱ見ない……怖…ぃ……」
見たいけど見たくない。見て後悔するような事があったらと思うだけで全身が震えてくる。深く愛した分だけその人の過去に怯え、信用すら直ぐに揺らぐ。
自分は何てちっぽけで臆病な人間なんだと悔しくなる。
だが、目の前で見てきた夜の雪之丞への想いは、美月にとって大きなトラウマにも似た障害になるのも仕方のない事かもしれない。
そうこうしているうちに、中の二人の会話が聞こえてきた。貴之がほんの少しドアを開けたのだ。
美月は壁に凭れて中を見ないようにした。だがどうしても耳を塞ぐ事が出来ない。
「お前、昨日の夜はちゃんと自分で出来たのか?」
夜の低い声が中から聞こえてきた。途端にドクンッと胸に鈍痛が走る。
「う……ん。教えて貰った通りにしてみたけど……でも難しいよぅ」
甘えるような男の声が粘っこくて吐き気がする。
「ちっ……一体何の話しをしてやがるんだよッ」
まるで自分の事のように苛立つ貴之にほんの数ミリ心が救われる。
「今日ね、ローション、持ってきたんだよっ」
美月はその男の言葉にサ―ッと血の気が引いていくのを感じた。
「アイツッ!!」
ドアに手を掛けて殴り込みにでも行こうとする貴之の腕を掴んだ。
「ま…待って……もしかしたら何か……そういうんじゃないかも……しれないし」
(そうだ。勘違いはよくある事だ。早まっちゃいけない)
「じゃあ、見ててやるから自分でやってみな」
「う……うん……」
会話の内容はもう希望のないものだった。美月は勘違いの理由を見付けようと膝を抱える。
部屋の中は少し静かになったが、途端に横にいる貴之がギリギリと歯を食いしばり、握りこぶしを血管が浮き出る程に握っていた。
「はずか……し……んっ……俺っ、こんなっ」
「よく見える……そうだ。いいぞ。もう少し入れてみろ」
「やぁ……痛いよぅ」
甘ったるい声はハァハァと息を荒げていた。
「貴之……」
美月の大きな瞳からポタポタっと音を立てて涙が零れ落ちた。
「見るな……お前は見なくていい……もう、帰ろう」
貴之が窓をしめるように瞳を閉じた。
「ねぇ、貴之……多分、違うと思うんだよ……多分、俺の想像してるのと違う事、してるんだよね?」
「美月。帰ろう」
教室の中でガタリと机のずれる音がした。
「やっ……何すんっ……あっ」
「覚えの悪い奴だな。貸せ。俺がやってやる……突き出せよ」
(夜……夜……。夜が好きだよ。だから、大丈夫だよね?)
「美月ッ」
押さえようとする貴之を押し退けて美月は教室を覗いた。
「あっあっ……入っるっ……夜の指がぁっ……やぁっ…長…ぃよぅっ」
「我慢しろ。じゃなきゃもっと太いモン入れられねェだろう」
後ろ向きに押さえられてグチュグチュと卑猥な音を立てながら、見知らぬ男に美月の大好きな夜の長くて綺麗な指は出し入れされていた。
男の良い場所を突いたのだろう、机の上で大きく尻をヒクつかせたのが見えた。
夜がニヤリと笑った。その笑みは知っている。意地が悪い顔で、美月の事を愛でるように苛める時の顔だ。
「ぁああんっ……何っ?! いぃんっ」
「イイだろう。ここを“ちんぼう”で突かれるともっとイイんだぜ?」
「ああんっ……夜ぅっ」
貴之は美月の身体を抱えて持ち上げ、そしてそのまま校舎の外まで連れ出した。
近くの公園まで連れて来られた美月はベンチに座らされていた。
「美月。これ、飲みな」
急に掌に熱いものを感じて驚いた美月は、貴之が買って来た缶コーヒーを落してしまった。
「あ……あれ……ここ……」
「学校近くの公園だよ。大丈夫か? ずっと放心状態だったぞ、お前」
「あ、うん。平気……」
頭の中で夜に攻められていた子の喘ぎ声がサイレンのように鳴りやまない。
「お前、うちに来いよ。アイツと一緒に住んでるんだろ? ……辛いだろう」
「大丈夫」
「なぁ、美月。これからどうす……」
「大丈夫だから。ごめんな、貴之。ありがとう」
美月は立ち上がって歩きだした。一刻も早く家に帰りたかった。夜と住んでいる家へ。
美月は夜に逢いたかった。さっき見た美月の知らない夜ではなく、今まで愛してきたあの夜に。
(夜に傷ついて、夜に縋るしかないなんて……どうかしてる)
「美月ッ」
走り出した美月の後方で貴之が叫んでいたが、美月はそれを振り切って呼吸困難になる程走った。
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美月の心臓は走るようにドクドクと音を荒げていた。
(イヤだよ、夜……。もう、深すぎる関係なんだよ、俺たち……。今更壊されたら、俺、生きていけないよ……)
「アイツ……何かあったら……容赦しねぇ」
横で美月の肩をしっかりと抱きとめて貴之が呟く。
(ダメだ! やっぱり俺っ)
「貴之ッ、俺やっぱ見ない……怖…ぃ……」
見たいけど見たくない。見て後悔するような事があったらと思うだけで全身が震えてくる。深く愛した分だけその人の過去に怯え、信用すら直ぐに揺らぐ。
自分は何てちっぽけで臆病な人間なんだと悔しくなる。
だが、目の前で見てきた夜の雪之丞への想いは、美月にとって大きなトラウマにも似た障害になるのも仕方のない事かもしれない。
そうこうしているうちに、中の二人の会話が聞こえてきた。貴之がほんの少しドアを開けたのだ。
美月は壁に凭れて中を見ないようにした。だがどうしても耳を塞ぐ事が出来ない。
「お前、昨日の夜はちゃんと自分で出来たのか?」
夜の低い声が中から聞こえてきた。途端にドクンッと胸に鈍痛が走る。
「う……ん。教えて貰った通りにしてみたけど……でも難しいよぅ」
甘えるような男の声が粘っこくて吐き気がする。
「ちっ……一体何の話しをしてやがるんだよッ」
まるで自分の事のように苛立つ貴之にほんの数ミリ心が救われる。
「今日ね、ローション、持ってきたんだよっ」
美月はその男の言葉にサ―ッと血の気が引いていくのを感じた。
「アイツッ!!」
ドアに手を掛けて殴り込みにでも行こうとする貴之の腕を掴んだ。
「ま…待って……もしかしたら何か……そういうんじゃないかも……しれないし」
(そうだ。勘違いはよくある事だ。早まっちゃいけない)
「じゃあ、見ててやるから自分でやってみな」
「う……うん……」
会話の内容はもう希望のないものだった。美月は勘違いの理由を見付けようと膝を抱える。
部屋の中は少し静かになったが、途端に横にいる貴之がギリギリと歯を食いしばり、握りこぶしを血管が浮き出る程に握っていた。
「はずか……し……んっ……俺っ、こんなっ」
「よく見える……そうだ。いいぞ。もう少し入れてみろ」
「やぁ……痛いよぅ」
甘ったるい声はハァハァと息を荒げていた。
「貴之……」
美月の大きな瞳からポタポタっと音を立てて涙が零れ落ちた。
「見るな……お前は見なくていい……もう、帰ろう」
貴之が窓をしめるように瞳を閉じた。
「ねぇ、貴之……多分、違うと思うんだよ……多分、俺の想像してるのと違う事、してるんだよね?」
「美月。帰ろう」
教室の中でガタリと机のずれる音がした。
「やっ……何すんっ……あっ」
「覚えの悪い奴だな。貸せ。俺がやってやる……突き出せよ」
(夜……夜……。夜が好きだよ。だから、大丈夫だよね?)
「美月ッ」
押さえようとする貴之を押し退けて美月は教室を覗いた。
「あっあっ……入っるっ……夜の指がぁっ……やぁっ…長…ぃよぅっ」
「我慢しろ。じゃなきゃもっと太いモン入れられねェだろう」
後ろ向きに押さえられてグチュグチュと卑猥な音を立てながら、見知らぬ男に美月の大好きな夜の長くて綺麗な指は出し入れされていた。
男の良い場所を突いたのだろう、机の上で大きく尻をヒクつかせたのが見えた。
夜がニヤリと笑った。その笑みは知っている。意地が悪い顔で、美月の事を愛でるように苛める時の顔だ。
「ぁああんっ……何っ?! いぃんっ」
「イイだろう。ここを“ちんぼう”で突かれるともっとイイんだぜ?」
「ああんっ……夜ぅっ」
貴之は美月の身体を抱えて持ち上げ、そしてそのまま校舎の外まで連れ出した。
近くの公園まで連れて来られた美月はベンチに座らされていた。
「美月。これ、飲みな」
急に掌に熱いものを感じて驚いた美月は、貴之が買って来た缶コーヒーを落してしまった。
「あ……あれ……ここ……」
「学校近くの公園だよ。大丈夫か? ずっと放心状態だったぞ、お前」
「あ、うん。平気……」
頭の中で夜に攻められていた子の喘ぎ声がサイレンのように鳴りやまない。
「お前、うちに来いよ。アイツと一緒に住んでるんだろ? ……辛いだろう」
「大丈夫」
「なぁ、美月。これからどうす……」
「大丈夫だから。ごめんな、貴之。ありがとう」
美月は立ち上がって歩きだした。一刻も早く家に帰りたかった。夜と住んでいる家へ。
美月は夜に逢いたかった。さっき見た美月の知らない夜ではなく、今まで愛してきたあの夜に。
(夜に傷ついて、夜に縋るしかないなんて……どうかしてる)
「美月ッ」
走り出した美月の後方で貴之が叫んでいたが、美月はそれを振り切って呼吸困難になる程走った。
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04/05/2011(Tue)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」5話
「えっと……あれが、俺の彼……なんだ」
「え……えっ、マジ?」
貴之はもう一度目を凝らして夜を凝視した。
「お前……面食いだな……エロいっつーか、危ないっつーか、凄い雰囲気の野郎だな……」
「貴之っ、ちょっとこっち来てっ」
美月は何だか恥ずかしくなって貴之の袖を掴んで夜に見つからない場所へと移動しようとした。だが、貴之は「追おうぜ」と言ってそのまま次の授業へ進む夜の後をつけ出した。
美月もある程度は予測していた。夜はあれだけ江戸でも楼で男女共に魅了していた男だ。モテるだろうとは覚悟していたが、目の前で見るとやはりイラ立つものがある。
「美月、お前がそういう雰囲気になる理由が分かった気がしたよ」
「う、うるさいっ」
夜を追って教室へそっと入ると、夜に向かって親しげに手を上げる男がいた。
「ヨルっ、こっちだよっ」
(んだぁ!? アイツ!)
そのやたら親しげな男は少し小柄でとても可愛いらしく、まるでスズランのような笑顔の男だった。
清純そうで、真面目で人の良さそうな男だ。そして透き通るような白い肌に黒々とした瞳と髪がとても綺麗に生えて人目を引く。
――スズランのような笑顔……。
「おいおい……。モテる彼氏はやっぱ男も綺麗なのと一緒にいるのか? 何なんだ一体」
横で嫉妬混じりに文句を言う貴之の言葉を聞きながら、モヤモヤとした不快な気持ちが一気に美月の胸を包み込んだ。
授業が始まる前の束の間、その男はやたら至近距離で夜に話かけていた。その横で何だか楽しそうに微笑む夜にも腹が立つ。
(何話してんだッ)
小柄な男が何かノートを取り出し、夜にグッと近寄って何かを教えているようにも見える。
夜がノートを覗きこんで、小柄な男がふと顔を上げると余りの至近距離にビックリしたのか、小柄な男の顔が真っ赤になって俯いたのが見えた。
(……。コロス……。)
「み、美月? ……落ち付けってっ。目が座ってるゾッ」
横で焦る貴之の言葉など全く聞こえない美月は、何故か夜の隣にいる男の笑顔を見る度に胸が軋んだ。
清純そうで、ひた向きな感じで、それでいて芯の強そうな……。美月はそれをどこかで知っている気がした。
――雪之丞。
(あ……。そうか……雪之丞さんに似てるんだ、アイツ……そういえば雪之丞もスズランのような笑顔の子だった)
かつて夜が一生を共にすると誓った唯一の相手。
美月がそう見えるのだから、夜にだって雪之丞の面影が見えている筈だ。
男が恥ずかしげに笑う表情を見て、何だか愛おしそうに微笑み返す夜を見ると、とても不安になった。
――忘れられない、よな。
裏切る筈が無い、そう思っていた確信が揺らぐ。
夜は元々身体はオープンな男だ。それにオープンな世界の住人だった。無理矢理頼み込まれればある程度はしてしまうかもしれない。
(いや、もうした……かも……)
美月はグッと唇を噛む。
浮気は勿論嫌だ。だが、もっとイヤなのは……。かつて愛した人を渇望してしまう恐れ。
(俺は、未だに自信が持てないでいるんだな……。)
美月自身、正直に言って今でも抱月は好きだ。そんな立場で我儘を言っているのは分かっていた。
「なぁ、アイツさ、隣の男と仲良過ぎねぇ?」
貴之の言葉で再び夜に目をやると、男が夜の袖を掴んで甘えているように見えた。夜はそれを拒絶する訳でもなく、あやす様にその男の頭をポンポンと撫でてやっていた。
男の表情は蕩けるようにその白い肌を桃色に染めて、誰が見ても恋している事が一目瞭然だ。
――俺に我慢させておいて、何してんだよ。
――俺と暮らしていて、外でそういう事、してたんだ?
――今でも雪之丞が恋しい……のかな……。
美月は大きな瞳から浮かぶ涙が零れおちない様にするので精一杯だった。
「美月……」
自然と繋いでくれた貴之の手が無かったら、きっと涙は零れ落ちていたに違いない。
結局その後幾つか授業を受けた夜だったが、その全てに雪之丞に似た男がいた。
だが、ただ単にその男の片想いで夜と一緒の授業が受けたくて合わせていたのかもしれない、そう思って見ていた。
だが、全ての授業が終わって、事態は思わぬ方向へと転んだ。
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もう少ししたら増えます♪
「え……えっ、マジ?」
貴之はもう一度目を凝らして夜を凝視した。
「お前……面食いだな……エロいっつーか、危ないっつーか、凄い雰囲気の野郎だな……」
「貴之っ、ちょっとこっち来てっ」
美月は何だか恥ずかしくなって貴之の袖を掴んで夜に見つからない場所へと移動しようとした。だが、貴之は「追おうぜ」と言ってそのまま次の授業へ進む夜の後をつけ出した。
美月もある程度は予測していた。夜はあれだけ江戸でも楼で男女共に魅了していた男だ。モテるだろうとは覚悟していたが、目の前で見るとやはりイラ立つものがある。
「美月、お前がそういう雰囲気になる理由が分かった気がしたよ」
「う、うるさいっ」
夜を追って教室へそっと入ると、夜に向かって親しげに手を上げる男がいた。
「ヨルっ、こっちだよっ」
(んだぁ!? アイツ!)
そのやたら親しげな男は少し小柄でとても可愛いらしく、まるでスズランのような笑顔の男だった。
清純そうで、真面目で人の良さそうな男だ。そして透き通るような白い肌に黒々とした瞳と髪がとても綺麗に生えて人目を引く。
――スズランのような笑顔……。
「おいおい……。モテる彼氏はやっぱ男も綺麗なのと一緒にいるのか? 何なんだ一体」
横で嫉妬混じりに文句を言う貴之の言葉を聞きながら、モヤモヤとした不快な気持ちが一気に美月の胸を包み込んだ。
授業が始まる前の束の間、その男はやたら至近距離で夜に話かけていた。その横で何だか楽しそうに微笑む夜にも腹が立つ。
(何話してんだッ)
小柄な男が何かノートを取り出し、夜にグッと近寄って何かを教えているようにも見える。
夜がノートを覗きこんで、小柄な男がふと顔を上げると余りの至近距離にビックリしたのか、小柄な男の顔が真っ赤になって俯いたのが見えた。
(……。コロス……。)
「み、美月? ……落ち付けってっ。目が座ってるゾッ」
横で焦る貴之の言葉など全く聞こえない美月は、何故か夜の隣にいる男の笑顔を見る度に胸が軋んだ。
清純そうで、ひた向きな感じで、それでいて芯の強そうな……。美月はそれをどこかで知っている気がした。
――雪之丞。
(あ……。そうか……雪之丞さんに似てるんだ、アイツ……そういえば雪之丞もスズランのような笑顔の子だった)
かつて夜が一生を共にすると誓った唯一の相手。
美月がそう見えるのだから、夜にだって雪之丞の面影が見えている筈だ。
男が恥ずかしげに笑う表情を見て、何だか愛おしそうに微笑み返す夜を見ると、とても不安になった。
――忘れられない、よな。
裏切る筈が無い、そう思っていた確信が揺らぐ。
夜は元々身体はオープンな男だ。それにオープンな世界の住人だった。無理矢理頼み込まれればある程度はしてしまうかもしれない。
(いや、もうした……かも……)
美月はグッと唇を噛む。
浮気は勿論嫌だ。だが、もっとイヤなのは……。かつて愛した人を渇望してしまう恐れ。
(俺は、未だに自信が持てないでいるんだな……。)
美月自身、正直に言って今でも抱月は好きだ。そんな立場で我儘を言っているのは分かっていた。
「なぁ、アイツさ、隣の男と仲良過ぎねぇ?」
貴之の言葉で再び夜に目をやると、男が夜の袖を掴んで甘えているように見えた。夜はそれを拒絶する訳でもなく、あやす様にその男の頭をポンポンと撫でてやっていた。
男の表情は蕩けるようにその白い肌を桃色に染めて、誰が見ても恋している事が一目瞭然だ。
――俺に我慢させておいて、何してんだよ。
――俺と暮らしていて、外でそういう事、してたんだ?
――今でも雪之丞が恋しい……のかな……。
美月は大きな瞳から浮かぶ涙が零れおちない様にするので精一杯だった。
「美月……」
自然と繋いでくれた貴之の手が無かったら、きっと涙は零れ落ちていたに違いない。
結局その後幾つか授業を受けた夜だったが、その全てに雪之丞に似た男がいた。
だが、ただ単にその男の片想いで夜と一緒の授業が受けたくて合わせていたのかもしれない、そう思って見ていた。
だが、全ての授業が終わって、事態は思わぬ方向へと転んだ。
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04/04/2011(Mon)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」4話
あと二日――。
美月は言いつけを守りながら学校へ行ったのはいいが、今日は丁度休講が重なっていて午後が空いてしまった。
仕方ないので大学の図書館で自主勉強をするも落ち着かない。シンと静かなところで勉強するよりも、今は喫茶店のようなざわついた場所の方が集中出来るような気がした。
美月は大学を出てそのまま都内の行き付けの喫茶店に入った。
平日だというのに店内は若い人たちで溢れていて満席だった。美月は次の候補の店の事を考えていると、「美月?」と声を掛けられた。
横を向くと、少し高めの位置にはとても懐かしい顔があった。
「貴之……? 貴之か!?」
「やっぱり美月だった。直ぐに分かったよ」
貴之は同じ大学で美月が江戸に行く少し前から付き合っていた男だ。美月が夜を本気で好きになったと自覚した時、ケジメをつけようと正直に別れを告げると、貴之は美月が思っていた以上に自分を深く愛してくれていた事を知った。
「久し振りだな。今暇か?」
「あ、あぁ……丁度休講で」
「そうか! ならBLOONに行かないか? あそこ、穴場だから結構人少ないだろ? 結構皆夜はバーだが昼は喫茶店だって知らないからさ」
美月はお茶をする位なら、と誘いに乗って付いて行った。
「しかし久し振りだよな。その……例の彼氏とはどうなんだ?」
懐かしい元彼の横顔は何だか少し逞しくなったように見えた。
「うん。上手くいってるよ。今一緒に住んでる」
「そっか……」
貴之の少し安心したような切ないような表情が美月の胸を締め付ける。
「お前は? だれかと付き合ってるのか?」
「ん? ん―……まだ!」
明るく笑った貴之は前の大学にいた時に好きになった笑顔のままだった。皆に好かれて、明るくて包容力があって。一瞬懐かしい昔に戻ったような感覚になる。
「正直言って、お前みたいな綺麗なのと付き合っちまったらやっぱなかなか他が……な。ははっ」
照れたように言う貴之が何だか可愛らしい。そしてそんな事を言われて美月も正直に嬉しかった。
「あ……ありがとっ」
美月もどう応えていいか分からなかったが取り敢えず照れながらもお礼を言った。
「しっかしお前……前よりその……何て言うか……エロい感じに拍車が掛ってないか?」
「エロい!?」
「あ、いや、悪い意味じゃなくて! その、すげぇ綺麗で……そう! 色っぽくなっててドキドキするっつーか……あ! 別に気があるとかじゃなくてっ」
必死になっている貴之が何だか可愛く見えてクスリと笑みが零れた。夜を見ているせいもあってか、貴之が妙に子供っぽく初々しく見えてついからかいたくなってしまいそうになる。
(いや、ダメだ。仮にも元彼……。多分今欲求不満だからそう言う事を思ってしまうんだっ)
気を落ち着かせて美月は微笑んで見せる。
「ありがとな、貴之。俺、今スゲー幸せなんだ」
貴之は「あ――……」と言って目に手を当てた。
「やっべ……また好きになりそ……」
「えっ、ちょっ」
さすがに焦った美月だが、「大丈夫だよ」と苦笑して見せた貴之だった。
「そんなに綺麗にしたの、その彼氏だろ? 全く羨ましいぜ。あ、その彼氏今薬科大にいるんだよな? 見せろよ! 前に見せてくれるって言ったじゃん?」
貴之は急に思い出したようにそんな要求を言って来た。最初は戸惑った美月だったが、美月自身も夜に会いたいのと、大学でどんな生活をしているか正直気になっていたところだった。
そんな成り行きで二人は夜の通うS薬科大へと潜り込んだ。
大学は意外にも潜り込みやすい。美月も昔は休講の時など違う大学の友人のところで潜り込んで授業を受けた事もあった。
(ここが夜のいる大学……大学にいる夜……信じられないなぁ)
美月にとってはやはりあの江戸の街で春画の側でダラけた格好で店番をしている夜のイメージがある。
あの時は長髪で、無造作に一本に縛っていた。着流しを軽く着て煙管を咥えて、いつでも人を狙う猛獣のような雰囲気だった夜。
一時、抱月と夜とで二人同時に攻められた事もあった。
そんな事を連鎖的に思い出すだけで身体が火照ってきてしまう。
「夜くんっ」
美月の身体がビクッと反応した。
声の方を見るとやたら女に囲まれている夜の姿が見えた。
「うわ……すげーなあいつ……何だ?」
貴之は夜を見つけてそう漏らした。
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覚えてらっしゃるでしょうか…?
貴之さん(笑)初っ端から美月と二本扱きしてた子です(笑)
ブログ立ち上げて初が二本扱きってどうなんでしょう(-ω-;)
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美月は言いつけを守りながら学校へ行ったのはいいが、今日は丁度休講が重なっていて午後が空いてしまった。
仕方ないので大学の図書館で自主勉強をするも落ち着かない。シンと静かなところで勉強するよりも、今は喫茶店のようなざわついた場所の方が集中出来るような気がした。
美月は大学を出てそのまま都内の行き付けの喫茶店に入った。
平日だというのに店内は若い人たちで溢れていて満席だった。美月は次の候補の店の事を考えていると、「美月?」と声を掛けられた。
横を向くと、少し高めの位置にはとても懐かしい顔があった。
「貴之……? 貴之か!?」
「やっぱり美月だった。直ぐに分かったよ」
貴之は同じ大学で美月が江戸に行く少し前から付き合っていた男だ。美月が夜を本気で好きになったと自覚した時、ケジメをつけようと正直に別れを告げると、貴之は美月が思っていた以上に自分を深く愛してくれていた事を知った。
「久し振りだな。今暇か?」
「あ、あぁ……丁度休講で」
「そうか! ならBLOONに行かないか? あそこ、穴場だから結構人少ないだろ? 結構皆夜はバーだが昼は喫茶店だって知らないからさ」
美月はお茶をする位なら、と誘いに乗って付いて行った。
「しかし久し振りだよな。その……例の彼氏とはどうなんだ?」
懐かしい元彼の横顔は何だか少し逞しくなったように見えた。
「うん。上手くいってるよ。今一緒に住んでる」
「そっか……」
貴之の少し安心したような切ないような表情が美月の胸を締め付ける。
「お前は? だれかと付き合ってるのか?」
「ん? ん―……まだ!」
明るく笑った貴之は前の大学にいた時に好きになった笑顔のままだった。皆に好かれて、明るくて包容力があって。一瞬懐かしい昔に戻ったような感覚になる。
「正直言って、お前みたいな綺麗なのと付き合っちまったらやっぱなかなか他が……な。ははっ」
照れたように言う貴之が何だか可愛らしい。そしてそんな事を言われて美月も正直に嬉しかった。
「あ……ありがとっ」
美月もどう応えていいか分からなかったが取り敢えず照れながらもお礼を言った。
「しっかしお前……前よりその……何て言うか……エロい感じに拍車が掛ってないか?」
「エロい!?」
「あ、いや、悪い意味じゃなくて! その、すげぇ綺麗で……そう! 色っぽくなっててドキドキするっつーか……あ! 別に気があるとかじゃなくてっ」
必死になっている貴之が何だか可愛く見えてクスリと笑みが零れた。夜を見ているせいもあってか、貴之が妙に子供っぽく初々しく見えてついからかいたくなってしまいそうになる。
(いや、ダメだ。仮にも元彼……。多分今欲求不満だからそう言う事を思ってしまうんだっ)
気を落ち着かせて美月は微笑んで見せる。
「ありがとな、貴之。俺、今スゲー幸せなんだ」
貴之は「あ――……」と言って目に手を当てた。
「やっべ……また好きになりそ……」
「えっ、ちょっ」
さすがに焦った美月だが、「大丈夫だよ」と苦笑して見せた貴之だった。
「そんなに綺麗にしたの、その彼氏だろ? 全く羨ましいぜ。あ、その彼氏今薬科大にいるんだよな? 見せろよ! 前に見せてくれるって言ったじゃん?」
貴之は急に思い出したようにそんな要求を言って来た。最初は戸惑った美月だったが、美月自身も夜に会いたいのと、大学でどんな生活をしているか正直気になっていたところだった。
そんな成り行きで二人は夜の通うS薬科大へと潜り込んだ。
大学は意外にも潜り込みやすい。美月も昔は休講の時など違う大学の友人のところで潜り込んで授業を受けた事もあった。
(ここが夜のいる大学……大学にいる夜……信じられないなぁ)
美月にとってはやはりあの江戸の街で春画の側でダラけた格好で店番をしている夜のイメージがある。
あの時は長髪で、無造作に一本に縛っていた。着流しを軽く着て煙管を咥えて、いつでも人を狙う猛獣のような雰囲気だった夜。
一時、抱月と夜とで二人同時に攻められた事もあった。
そんな事を連鎖的に思い出すだけで身体が火照ってきてしまう。
「夜くんっ」
美月の身体がビクッと反応した。
声の方を見るとやたら女に囲まれている夜の姿が見えた。
「うわ……すげーなあいつ……何だ?」
貴之は夜を見つけてそう漏らした。
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