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妄想列車 27最終話

 あれから世界の各地でポツポツとリツカたちのグループが活動しているのがニュースになる度に笑みが零れるようになった。
 リツカはちゃんと世界のどこかに存在している。その実感だけで幸せを感じた。
 まるで夢のようだったあの一瞬がまるで映画でも思い出すように鮮やかに蘇る。
 あれから随分と経ったのにまだ感触が生々しく思い出せる。
 言い寄られた相手に触れられた途端に、俺自身が一番その違い過ぎる感覚に拒絶反応を覚えて驚いた。
 このままずっと一人なのかな。そんな事を思いながら溜息をついて過ごしてきた。
 そして何の気なしに会社に行った時だった。
 いつものようにPCを立ち上げると一つの見た事のないウイルスが画面上を泳いでいた。芋虫のように這い回るそれは突如青く光る蝶になって自由に飛んで、そして消えた。
 最後に光る麟粉が『LOVE YA』と文字になって消えた。
「ははは……」
 こんな事するの、リツカしかいない。
 多分一番最初に寄生した時に同時に悪戯で時限式のものを埋め込んだんだ。
 それにしてもこんな時に……。
 『愛してる』かよ。
 全く害のないものに化けて潜んでいたようだ。
 実際に害がないからこうして巧妙な悪戯になったのだけど。


 リツカがいなくなったその時から、冬休みや夏休みには有給も使って海外旅行をするようになった。
 毎回行く場所はリツカたちの騒がす国だった。
 我ながら女々しいと思う。きっとリツカはもう俺なんて忘れて健たちと共に毎日を必死になっているに違いないのに。

(今年の夏休みはヨーロッパの方か)

 今年の夏も、ついこの間ニュースでリツカたちが賑わせていた国だった場所を適当に回ってみる事にした。

(もう今年で最後にしようかな……)

 そんな事をモヤモヤと思いながらも休暇に入った途端に慣れた様子で空港を通る。
 十時間以上掛って着いた中東から移動しつつヨーロッパへと入って行った。
 徐々に変わる人々の顔と景色が面白い。
 去年は中南米の方だった。色々と怖い体験もしたがリツカには未だ逢えてはいない。別にそれでも良かった。そもそも逢えるなんて思ってない。
 もしかしたらこの辺りをリツカが通ってたかもしれない。そう思うだけでキュッと胸が締め付けられた。

 俺って案外ロマンチストだったんだな。
 気色悪い。

 太陽は寧ろ日本よりも痛い位照りつけるヨーロッパだが、湿気の少ない空気のお陰で日陰に入れば涼しい。
 古い路面電車に乗りながら、別に何の劇場に行くでもなしに街をボーっと見て回った。
 たまにはこういうのもいいな。
 分からない言葉は街の心地よい雑音と一緒だ。
 照りつける太陽の光を一分でも長く吸収しようと、真っ白な肌を所構わず出して歩く欧米人と、少しでも光を浴びない様に日傘を差して歩く日本人の対照的な姿に思わず吹き出してしまう。
 
 プラハからイタリアへ入った俺は、フィレンツェからミラノへ移動するのに電車の切符を買った。
 意外と空いていて、向かい合う四人席に一人で窓際に座る事が出来た。
 窓の外にはだだっ広い丘や草原が広がっていて、真っ白な雲の向こう側には灰色の雨雲が待ち構えていた。
 目の前を通り過ぎる羊や牛をボーっと見ながらウトウトと居眠りをする。
 そういえば外国で居眠りをしたらスリに狙われるって書いてあったな。
 寝ちゃダメなんだけど……気持ちいいなぁ。
 いいかなぁ。
 目を瞑っていると、隣に人が座った気配がした。少し目を開けるが、眠気で顔を横に向ける気力がない。
 隣の人は別にスリという訳でもなさそうだ。きっと席がそこだったのだろう。
 再び目を閉じると、今度は何やら隣の人の太股がぴたりと俺の太股に当たった。
 
(足……広げ過ぎじゃね? 暑いんですけど……)

 隣の奴は俺が足をどけても尚、くっついてくる。

(げ……痴漢か?)

 それでも無視していると、男はとうとう俺の尻に手を伸ばしてきたので思わず「オイッ!」と大きな声を上げて手を掴んだ。
「お前ッ……っ……え……?」
 掴んだ手の主、痴漢野郎を睨みつけると、そこには少し長めで茶色の髪の美男子が痛そうな顔で笑みを作っていた。
 俺はその顔を見て言葉が出なかった。
「イテテ……ちょっと見ないうちに随分力が強くなったんじゃないか? シン」
 髪が長くなったせいか、色が茶色のせいなのか、雰囲気が違って見える。
「リツカ……なのか? うそだろ……何でこんな所に……」
 俺が喋ると、リツカはシッと人差し指を唇に当てて静かにするように促してきた。
「俺はただの痴漢野郎だよ。だからお前は臆病で何も言えずにされるがままの乗客だ」
「は?」
 何言ってんだ? リツカの奴。
 久々にあって嬉しさと困惑と腹立たしさが混じって言葉が出て来ない。
 リツカ……痩せた。何か落ち着いたような……大人っぽくなったというか……。
 急に信じられない再開とリツカを目の前にした事でドキドキしてきた。
 リツカはそんな俺を見てクスリと笑うと、そのまま顔を近づけてそっと唇を塞いできた。
「あっ……んっ」

 体中に電気が走った。

(リツカのキスだ……リツカだ……本物……だ)

 唇が離されて、俺はゆっくりとリツカの顔を見た。
 リツカも余裕のない顔をしている。
 そして突然抱き寄せられて俺の心臓は飛び上がった。本当にまさかの再会だ。
「逢いたかった、シン……ずっと……ずっと見てたよ」
 耳元で小さく話かけてくる。身体中がゾクゾクして俺の死んでいた神経が一斉に花開く。
 熱い。身体中が熱いよ。
「見てたって……どうやって……」
「衛星でさ。お前がこっちに来るのが分かって、どうしても我慢できなくて……でも堂々と逢う訳にもいかないから……結局は痴漢のフリって訳だよ」
「あは……あははっ……リツカは最初だって痴漢みたいだったじゃん」
「そうか……ははっ」
 俺、今リツカと触れ合って、笑い合って、喋ってるんだ。
 信じられなくて、俺を抱きしめるリツカの腕を撫でると、耳の中にヌルッと舌が入ってきた。
「あんっ」
「バカ……そんな声出したら……くそ……こっち来いシン」
 リツカの後を追う様に、俺はドア付きの個室になっている一等席へと吸い込まれていった。
「結局最初と同じ電車の中だね……あっ」
 話かける俺を無視して理性を失った様なリツカが俺の服の中に冷たい手を入れる。
 リツカの唇が俺の熱い耳に付けられた。
「逢いたかった……シン」
 内緒話をするようなリツカの声が鼓膜に直接届いて、気が遠くなる程感じた。
「俺もっ、逢いたかったよリツカ!」
「また、こうして『偶然』逢っても怒らないか?」
 怒らないに決まってるじゃないか。
 だって、これを期待してたんだから。
 例え静かに表で戦っている相手だったとしても、今はただの行きずりの関係って事で。
「怒らないからっ……だから到着するまでずっと抱いていて! ……気を失ってもずっと!」
 リツカがいなくなってからも電車に乗る度に妄想していた事が爆発する。
 いつか、長く一緒にいられるといい。そういう日が来るといい。
 それまではなるべくこうして長い距離の列車にでも乗る事にしようかな。
 寝台列車とか。
 俺がそっとそんな事をリツカに耳打ちすると、リツカの口元に妖しい笑みが浮かんだ。


END




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最後までお付き合い下さいましてありがとうございました(*´∇`*)
リアルで途中色々とありましたが、皆さまの励ましのお陰で完結する事が出来ました。
本当にありがとうございました!!
一度は離れた二人ですがやっぱりどうしても好きだったみたいです(//∀//)
男として曲げられないものがあるなら、たまにはこういう逢い方でも
いいんではないでしょうか(笑)
我慢、出来ないのも自分ですものね。
でもいつか二人には堂々と一緒にいられる日がくるといいなって思います!
最後まで読んで下さった皆さま、本当にありがとうございました!!

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妄想列車 26話

 いつの間にか脳内にすり込まれている時の何気ない音楽みたいに、頭の中にリツカの「愛してる」が響いている。
 俺達は溶けあう程に抱き合った後、リツカはギュッと強く俺を腕の中に抱きしてめていた。
 俺もリツカの身体を強く抱いていた。
 いっそこのまま石像化してしまえばいいのに。
 暫くそのままでいたリツカがそっと俺の腕を剥がした。

 いやだ。

「離れないでっ……!」
 目頭が熱い。
 嫌な雰囲気が漂っている。
 辛そうな顔のリツカが俺の頭を撫でながらキスをすると、俺は堪らず涙の粒を何滴も零した。
 リツカは黙って泣きながら見つめる俺に背を向けて着替えた。
「ねぇ……リツカぁ……俺、お前が好きなんだよ……っ……」
「……」
 どうしようもなく好きな気持ちと同じ位に意地でもやり通したいものがある時、誰しもこんなにも身が引き裂かれそうな痛みを感じているのだろうか。
「リツカがいなくなったら俺……死ぬかもしれないよ?」
 半分本当で、半分脅しのつもりだった。
「……お前は死なないよ。やる事があるだろうが」
 そんな事、知ってる。
「……今思ったんだけどさ、多分、信念のあるリツカが俺はとても好きなんだよな……皮肉な事にさ」
 それが例え真逆のものだったとしても。
「俺、リツカが好きだからって、全てリツカの言う通りに合わせるような事はしたくない……」
 可愛い従順な女の子のようになれればいいと思う。
 でも出来ない。
 俺は、男だから。
「そうだな……俺もそうだ。そんな可愛い顔して、目的に向かう時に輝くお前がすごく好きだ……多分これからもずっと」
 鼻の奥がツンと痛い。
「やだなっ……そんなお別れみたいな言い方」
 知ってる。
 もう離れる時なんだって。
「しっかり守れよ。納得するまで戦ってくれ」
 リツカが俺の身体を押し潰すように強く抱きしめた。
 息苦しいよ、リツカ。
「またさっ……こっそり帰ってきたりする?」
 鼻声になった俺は今まだ感じるリツカの温もりを確かめるように肩を抱き締める。
「分からない……けど、来るかもしれない」
「また逢える?」
「……分からない」
 ブワっと涙が溢れた。
「……シンっ……」
 リツカに初めて感情的に唇を吸われる。
「んっ……ハァっ……んぁっ」
 噛みつくようなキスだ。
 リツカの唾液が流れ込んでくる。それを俺は必死に飲み込む。
 きっと俺はこれ以上、リツカ以上に人を愛する自信はない。
 リツカが俺を押し倒して、俺の涙はコメカミの方へ流れ落ちた。そしてリツカの姿はそのまま視界から去り、玄関のドアがカチャリと閉まる音が遅れてした。
 今の今までリツカと触れ合えていた事が信じられない虚無感に襲われる。
 数秒前が奇跡のようだった。

 そしてリツカたちは嵐のように消え去った。
 暴露された内容はあやふやに世間の疑心暗鬼を煽るようなニュースになり、皆昔の事件を思い出す事となった。俺がいち早く動いた事もあってそれ位で事は済んだ。あらかじめ阻止出来る内容は阻止できたからだ。
 先輩にだけは素直に事情を話すと、少し難しい顔をしていたけど理解して黙ってくれた。
 もしかしたら先輩も健の事を好きになっていたのかもしれない。そんな気がした。
 厳戒態勢の日々が続き、誰も残ってはいないリツカたちの事を日本中血眼になって探す警察を、俺は心の中で嘲笑していた。
 もし居たら俺だって血眼になって探している。
 リツカとの思い出の部屋は引っ越した。ご飯も食べずに思い出にしがみ付いてやつれていく俺を見兼ねた先輩が引っ越しを促してくれた。
 それでも、今でも思い出してしまうのは電車の中だった。あの時の感覚を呼び起こして鳥肌が立つ。
 そして胸が張り裂けそうに苦しくなる。
 そんな生活を続けて二年が経った。




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やっとUP出来ました(ノД`)・゜・
遅くなってすみません!
まだ痛み止めは手放せないですが順調に回復してます!
手直しにも時間がかかってしまいました;
明日抜糸します(>ω<)レントゲンとかも撮って検査するので緊張です。
保険入ってたので入院費出るといいな~(笑)
色々やる事あるもんですね(^_^;)

そして!結局離れてしまった二人ですが…。
お互い好きでも一緒に居られない男二人。
次回最終回です(>ω<)

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妄想列車 25話

「リツカ……リツカっ……あぁぁぁ」
 リツカにしがみつくようにして首に手を回して抱きつくと、途端に腕にピリっとした痛みが走った。
「痛っ」
「バカ! まだガラスがあるんだよ!」
 何だか全身がピリピリと痛い。色んな場所を切っていたようだ。
 リツカが自分と俺の洋服をそっと脱ぎ、ガラスを取り除く。
 でも俺はそれどころじゃない。
「ハァっ……ハァっ……リツカっ……んんっ」
「ちょっ……待てシンっ……お前怪我してるしガラスがまだっ……んっ……っふ」
 もうダメだ。
 我慢できないんだ。
 リツカが欲しくて気が違いそうなんだ。今すぐお前の大きいのを挿し込んでグチャグチャに俺の中を掻き回してくれ。
「リツカ……っあっ」
「……はぁ。ったくしょうがない奴だな、お前は」
 リツカの唇に吸いつき、舌を挿し込んで勝手に味わっては感じる俺はそのままリツカは押し倒して上に乗っかっていた。
 俺は自分のものをリツカの股間に擦りつけるように腰を動かして息を荒くしていた。
「もう一度言ってっ」
「好きだよ、シン」
「ぁっ……はぁっ」
 リツカは上に乗る俺の後頭部を掴むと、思い切り口を塞いだまま俺を立ち上がらせてリビングの方へと移動した。
 乱暴に口を塞がれたかと思うと髪を引っ張ってそっけなく離される。その繰り返しで俺の股間はもう射精する寸前だった。
 今何を決断しないといけないかなんてきっとお互い考えたくなかったのだろう。
 とにかく互いを欲していた。

「ああっん……リツカぁっ……早くっ……早く入れてっ……俺もう出ちゃうっ」
 いつも余裕で意地悪な笑みを含んだリツカではなく、少し余裕のない感じのリツカは初めてだ。
 それが何だか嬉しかった。
 リツカは俺のズボンを尻が出る位まで引きずり下ろした。
「あっ、ああんっ!」
 突然尻を持ち上げられて左右に分けられ、ヌルリと舌先がアナルに入って来た。
「あんっ……やっ……あんっ」
 俺がネクタイを外しワイシャツのボタンを外していると、リツカが「俺が戻って来るまで指入れて広げてろ」と寝室へ行った。
 ローション取りに行ったんだ。
「ああんっ…リツカーぁっ……早くっ……はやくっ」
 俺はイきそうになるペニスをギュッと強く握って抑えながらアナルに指を入れてグチュグチュに溶かしていた。
 戻って来たリツカはびちゃりとローションを派手に、自分の破裂しそうに赤いペニスに掛けた。
 リツカはアナルに入る俺の指を払い除け、射精を止めていた方の手も強引に離された。
 後ろから熱くて太いものがズンッとアナルに突き刺さった。
「いっ……やああーっ……ああんっ!」
 俺のペニスから勢いよく白濁の液体が絨毯に撒き散らされた。
 刺されただけでイクなんて……。
「いいぜ……イキまくれよ、シン。俺の顔を見て、俺のもので泣きまくれよ」
 リツカのペニスが今までにないほど膨張して俺の内側を擦ってきた。
 最初から俺の一番イイ所を集中的に突いてくる。
「もっ……中がっ……すごいっ……きちゃうっ!」
「愛してるよ、シン……愛してる」

(リツカ、すごい! 一杯汗をかいて凄い早さでペニスが中で動いてるッ)

 俺を力で押さえつけて、愛の言葉を優しく耳元で囁きながら乱暴に腰を叩きつけてくる。
「ああんんっ、またっ……またイクぅぅーっ! リツカっ……愛してるぅぅ」
 中が物凄いうねりだして、波のような快感で脳が痺れてきた。
 ブルブルと内腿が痙攣し出して腰の動きが一層いやらしく小刻みに動き出した。

(こんな動き、恥ずかしいのにっ)

「やっ……や……だっ……見ないでっ」
 リツカはその現象をくまなく見て興奮したのか、腰をしならせるようにしてピストンする。
 そしてリツカが俺の首の傷を舐めた瞬間、ドライオルガズムが襲った。
「ひっ……んあああぁーっ!!」
 飛び跳ねる俺の身体を抑えつけながら、リツカもビクッ、ビクッと中に射精する。
 ガクガクと痙攣の収まらない俺の腰を掴んだままリツカは少しの間息を整えていたが、俺を仰向けにすると再び腰を動かし始めた。
「あっ……あッ! すご……いっ……まだ出来るのリツカ?」
「まだ足りない」
「あっ!」
 リツカが俺の首筋に噛みついた。
 ピリッとした痛みに身体が震える。
 気持ち……いい。
 ちゅるちゅると音を立てて傷口から出る俺の血を吸っている。まるで吸血鬼みたいだ。
「あっ……あっ……もっと……飲んで……俺の血……」
 血を吸われながら犯されて興奮するなんて、俺はとんだ変態野郎だ。
 でも俺のDNAが少しでもリツカの一部に混ざればいい。
 俺の血がお前の体内を犯してやる。
「リツカ……俺、おいし……?」
「あぁ……。吸血鬼の気持ちが分かるよ」
 傷口をリツカの舌が少し広げる。
「あああーッ」
 俺は痛ければ痛いほど強く自分の中で快感を感じた。
 リツカの頭にしがみ付き、腰を上下に動かす。
 顔を上げたリツカは、本当に吸血鬼みたいに唇を血に染めていた。
 とても綺麗だ。
 俺はそれをペロペロと舐めながらまたイった。




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こんなん予約投稿してますが
只今入院中です…(-ω-;)
なのでお返事遅れてしまうのでコメント欄閉じさせて頂いてますm(_ _)m

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妄想列車 24話

「え……」
 健が俺の言葉を理解出来ないというように聞き返してきた。PC画面には、何もメッセージは出て来ない。
「俺は……行かない……よ」
『何でだ』
「俺のやるべき事は……リツカたちとは反対だから……」
「あはっ……あははっ……そうだよね!? そりゃそーだ!」
 健がさも可笑しそうに声を上げて笑った。
「もし君が僕らの組織に寝返ったとして、捕まったら真っ先に死刑だよね! ちょっと前までは考えられない罪の重さだ!」
『健、仕事だそうだ。ボスの所へ急いで行け』
 それまで嘲笑っていた健は急に険しい顔になって俺を睨んだ。
「リツカは渡さない……安心しなよ。俺が一生リツカ守って生きていくから。アンタも早く忘れなよ。じゃあね」
 そう言い残して健の足跡が玄関の方へと遠ざかって消えていった。
 俺は何だか眩暈がして床へ崩れるように座った。

「リツカ……会いたい」
『無理だ。お前が一員になれば今すぐにでも迎えに行ってやれる……だから頼むシン』
「会いたいよ……今すぐ抱いてよ……」
 機械に向かって懇願して、涙を流して。俺は何だかとても虚しい。
 俺の泣き声は聞こえているのに、リツカの肉声を聞く事が出来ない。ただ浮かんでくる文字を見つめるだけだ。
「俺の事好き? リツカ……今まで一度も言ってくれなかった……」
 リツカからの返事はない。

 ねぇ、言ってよ。

「俺の事好きだから誘ってくれてるんでしょ? ……っ……俺の事……好きならさっ……俺とそんな所辞めて俺と一緒にいればいいじゃんッ」
 離れたくない。
 だってどんどん好きになっていって制御出来ないんだ。
「言ってよリツカ!!」
 声が荒れる。子供みたいに大声を張り上げて必死にバカみたいにお願いをしてみる。
「どうしたら好きって言ってくれるの……」
『……』
「俺の事、身体の相性が良かっただけだった? だからキープしたくて言ってるの?!」
『……』
「最初から騙そうとして近づいたんだろうッ!?」
『……』
 返事のないリツカに、俺はカナヅチで頭を殴られた様な気がした。

 結局リツカは俺よりもそっちを選ぶんだね。
 挑発されても好きって言えないなんて、正直だよ、リツカ。

 もうイヤだ。
 
「あああああッー!!」
 やり場のない怒りと悲しみで俺は側にあった機械を殴った。
 機械は大きな音を立てて吹っ飛び、俺の拳から血が流れた。
 リツカが黙って聞いているその部屋を飛び出し、キッチンに逃げ込むとワインの瓶を床に叩きつけて割った。
 ガラスのコップも陶器のお皿も次々に割った。
 割っても割っても心は晴れなくて、目の前に静かに並ぶものは全て叩き落とした。
 ガラスの破片が飛び散って首筋や顔を切っていく。
 痛みなんか感じない。
 ただ胸の中に黒く渦巻く何かが俺を飲みこんでいく。痛みも一緒に飲み込んでいく。
「ああああーッ」
 叫び声が割れた。
 その時、後ろから力強いものが俺の身体を抱きしめてきた。

「シン!!」

「……っ!!」

 誰だ。
 離せよ。
 爆発しそうなんだよ。

「ぅ……あ……っ」

「落ち付け、シン! 俺だ! こっち見ろ!」

 リツカ……。
 違う、リツカは来る筈ない。

「シン!! 暴れるな! 血がっ……」

 血? 誰の?
 あぁ。俺のか。

 でも、別にいい。今はこのドロドロした何かを血と一緒に流れ出したいから。
 散らばるガラスの破片を蹴り上げて、キラキラとした鋭い雨を降らした。

 何て綺麗。まるで流星群みたいだ。

「シン!」
 一緒にいる誰かが俺を抱え込むと、そいつがそのガラスを一気に被った。
「痛ッ……っ」
 男の呻き声が耳元に響いた。

 あれ……痛くないや……。

 抱え込まれた腕の中で俺は顔を上げると、もう一人の男の額から血が頬まで垂れてきた。
 俺はそれをそっと舐めてみた。
「ッ……!」
 驚いて俺を見た顔は、リツカだった。

「……?」

「シン……もう、止めろ」

「……」

 リツカ、何でここにいるんだろう。

「好きだよ」

「……」

「好きだ、シン。ずっと言いたかったけど、自分でも信じられなくて……言ったら言ったで離れられなくなるし、こんな状態になってから言ってもしょうがないと思ったんだけど……近くにまで来てて……言わずにいられなくて飛び出してきた」

 リツカの暖かい手が俺の頬に触れて血を拭う。
「ぁ……ぁ……」
 暖かい舌が傷を癒そうと触れてきた。




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妄想列車 23話

 こんな事をするハッカー集団は一つしかなかった。誰でも知っている集団。2050年にリーダー格も一味全員投獄、或いは死刑となって全滅したとされていた。
 まだ一味の生き残りがいて活動をしていたなんて……。
 世界は提携してこういう輩が二度と活動出来ないような体制を整えてきたつもりだった。。
「俺さ……あの健くんって子とちょっと……遊んじゃって……もしかしたらあの子が……」
「は? 遊んだって……どういう……。え? 先輩もしかして!?」
「いやだってさ……変に可愛いんだよ、あの子。色っぽくてつい酒飲んで勢いでさ……。でもその時色々会社について聞かれたり世界がどうのって言ってた気がしたんだよ」
 健くんが? だとしたらリツカもって事になるじゃないか……。
「それはないよ! あの子変わってるから……」
 嘘だ。
「ん? うーん……」
 最後に忠告してきたリツカの言葉の数々を、俺はわざと思い出さないようにしていた。
 違う。リツカはそんなんじゃない。
 でもあんな事言う人そういるだろうか。
 俺はリツカに電話をひたすらかけた。それでもただただ鳴り響くベルの単調な音色しか聞こえてこない。
 夜、家に急いで帰った俺は隠れんぼでもしているように家中を探し回った。
 見つけた小型カメラと盗聴期の多さに膝から崩れた。

 見てたんだ……。

 俺は裏切られたのか?
 健と二人で俺を欺いて、ただその為だけに近づいてきたのか?
 あの出会いもわざとだったのか?
 暑い涙と汗が混ざり合って次々と流れ落ちて絨毯を濡らしていく。
 その時ピピッと別の部屋からパソコンの音が聞こえてハッとした。
「リツカ!?」
 飛び上がるようにしてコンピューターのある部屋まで走りドアを乱暴に開けると、そこには人の気配はなかった。
 ただ、自動的にPCが起動されていた音だった。

「何で勝手に起動してるんだよ……」
 画面上でカーソルが勝手に動いた。

(リツカだ……リツカが遠隔操作してるんだ)

 チャット機能のようなものが立ち上げられ、メッセージが出てきた。
『シン。俺たちと一緒に来い』
「……何言ってんだよ……リツカ……本当にあの集団の一員だったのか?」
『あぁ』
「盗聴機取り忘れたな……声聞こえてるんだ?」
『あと二つあるよ。お前の可愛い声がよく聞こえる』
「どうして……」
 騙されていた悔しさと悲しさで息が詰まった。
『俺達はこの事実を発表する前にもう国外へ出なくちゃならない。お前にも一緒に来て欲しい』
 一緒に……。
「俺は反対だよ。来て欲しくない」
 聞き慣れない声がふいに背後からして、俺はビクッと振り向いた。
 そこには愛想の良かった顔とはまるで反対の、敵意を剥き出しにした健がいた。
「な……なんで君がここにいるんだよっ!」
「え。だって鍵とかセキュリティとか別に俺に関係ないし。全部開けられるから」
『健! 何でお前がそこにいるんだ! 戻って来い!』
 リツカも健の声が届いているのか文章でもどかしく注意を呼び掛けている。
「君が清水先輩を使ってやったのか?!」
 俺の声が小刻みに震えていた。
「んー……僕があの先輩から情報を聞きだして、寝てる間に色々探らせて貰ってー、そんで道筋を整えた所にリツカが突破口を開いたって感じかな? ……だって……ねぇ? そのカメラだの盗聴器だのの量……あはは」
 笑われて、バカにされて、俺は怒りと恥ずかしさと情けなさでその場から逃げだしてしまいたかった。
「だからさ、リツカに本気になっちゃって今まで君みたいに泣く子は僕ずっと見てきたしさ。そう落ち込むなよっ」
 ポンと肩を叩かれて、俺はその手を思い切り叩き落とした。
 PC画面を見ると、『健、もう黙れ。シン、俺と来い』と書かれていた。
「俺がリツカと一緒に行っても……どうせこいつだって一緒なんだろ……」
 画面のリツカに押し殺すような声で言う。
『まぁ……そうだが別に24時間一緒って訳じゃない。安心しろ』
「ちょっとリツカッ! 何誘ってんだよッ! いつもみたいに黙って去ればいいじゃん!? こんなフォローいらないよっ」
 健が顔を赤くして嫉妬に狂っているのが分かった。
 そうか……この子、本当にリツカが好きだったんだ……。
 でもそれとこれは別の問題だ。
 リツカが好きだから行く、という単純な問題ではない。
 一緒に行くという事は俺自身がその組織の一員になるという事だ。

「行けない……」




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妄想列車 22話

「なぁ……お前さ。別の会社に移る気はないか?」
「え……? 何言ってんだよ突然」
「お前の会社、情報セキュリティ専門だろ? でも万全って訳じゃないし、いつどうなるか分からない。何かあれば会社自体ダメになるなんてハイリスクだろ」
 それは、そうだけど。
 でもそうならないように俺たちは日夜頑張って進化していっている。
「俺は今の仕事に誇りを持っているし、目的を持っている」
「目的って?」
 リツカなら……いいかな。
「国を……守る」
「……」
「ごめん。実は俺、極秘だから言えなかったんだけどSTSの職員なんだ。だから国のが守ろうとしている事を俺は守るのが使命だと思っている」
「機密情報内容……知っていると?」
「暗号化されてたけど……解読出来ちゃったから……。でも全てを知った訳じゃない」
 歴史の教科書に載っている事実が実は、事前に政府側が把握していて、既に承諾されたものだと知った時には愕然とした。
 ただ、意図していたものと違う方向に流れてしまった事も事実のようだった。それらの事を踏まえた上での国同士の慎重な取引。
 俺はその時暫く頭が真っ白になった。
 でも、もしかしたらそうせざるを得ない状況だったかもしれないし、それが最善の状況だったかもしれない。
 文章をもう一度読んで、俺はそう感じたんだ。
 でも人間の創り上げてきた歴史なんてそんなものだろう。国の真意とは、結局大勢の人々の織りなす考えという事なんじゃないかな。
 それを全て明らかにしたら、その時の真意は伝わらない気がした。
 だって物事の受け方は人それぞれだから。また意見の違う人同士で争いになる。
 俺はそれだったらこれからも母国を信じていきたいって思ったんだ。
 そして内容を知ったのはきっと俺だけだ。
 知っているという事を話した人間はいない。リツカだけだ。
「納得したのか? その内容に」
「ごめん、これ以上は言えない……けど、俺はとにかくこの国の国民で、国の心臓とも言えるものの番人になったから……守るだけだ」
 リツカが怒ったような、泣きそうな顔をしたのが引っかかった。
 そっと俺の頬を触るリツカの指が冷たい。
「会社、ダメになるぞ?」
「は? 何でそんな事リツカが言うんだよッ」
「俺は……お前と一緒に居たいみたいだ」
 みたい? 
 みたいってなんだよ。
「俺だってそうだよ! べつに居ればいいじゃんか! 俺は離れていかないよ!」
 電車が止まり、大勢の人たちの入れ替えが始まった。
 リツカは、「ありがとう」と優しい笑顔を向けてキスをするとそのまま降りて行ってしまった。
 
 そして会社に着くと、オフィスには殆ど人がいなかった。



「ハッキングされた!」
 俺は言われている事に現実味を持てなかった。
 人がいなかったので探し回っていたら、汗だくの上司が駆け寄ってきてそう言った。
「え……どうやって……」
「どうもこうも、最初におかしいと思っていた時から種を蒔かれていたらしいんだ」
 最近ではそういう技術も開発している奴がいるらしいという噂は聞いた事があった。
 ウイルスの卵とも言われている。人間が知らずに寄生虫に卵を体に産みつけられるようにハッカーは種を産みつけにくる。
 だが、その技術があったとしてもうちのような会社のセキュリティを先ずは掻い潜る事が条件だ。それも不可能に近い。
 種は見つかりにくいが単純なプログラムである為に、毎日行われる自動クリーニングシステムで除去されると同じ種はもう二度と進入させる事ができない。

 それだけ新しいプログラムを毎日作れる奴がいたって事か?

 とにかく、それが突破口となり、進入口を確保したハッカーはセキュリティの入り口にまでたどり着いた訳だが、問題はそこでの解読技術とその先にすんなりと入れた事実だ。
 社員でもない限り簡単に入る事は不可能だ。
 という事は社員が先に狙われ、ハッキングされたかミスをしたかになる。


 その日から俺たちはずっと家に帰れない状態が続いた。
 リツカに電話しても出ない。いつもなら必ず掛けなおしてくれていたのに、一番声の聞きたい時に声が聞けない辛さが更に精神的疲労を増幅させた。

「殆どの情報が盗まれた……もう、ダメかもしれない。これで国の情勢が悪化したら俺たちの責任だ」

 清水先輩が一週間で痩せた顔を俯かせてそう言った。
 俺は何も言えなかった。




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ヾ(´д`;)ノぁゎゎ

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妄想列車 21話

 俺はリツカの命令を直接鼓膜に響かせて命令を聞く。
「いいよ、シン。もっと喘いでくれ。そう……大きな声で。誰も見てないんだからもっと凄い格好をしてもいいんだよ」
 リツカの甘い誘惑が俺を大胆にしていく。
 まるでリツカに見られているような感覚になって俺の亀頭の先からは大量に液体が溢れてシーツにシミを作っていく。
「バイブの動きに合わせてもっと腰を振ってみせろ、シン。その方が可愛い……俺に四方八方から見られている事を意識してみろ」
「やっ……やだぁっ……見な……いでっ」
 リツカ、本当にどこかに潜んで見ているんじゃないだろうか。
 一人でこんな事をするのが恥ずかしくて体温が熱くなっていくのが分かる。
「んっ……んっ……」
 俺はバイブの動きに合わせて腰を上下に振った。バイブが俺に刺さったまま上下に揺れて中をかき回す。
「あ……ぁあっ…すごいよぉっ……リツカぁ」 
 リツカに見て貰いたい。そして直接触って欲しい。
 身体がそう嘆いて全身が汗だくになる。
「凄い声だ。俺もイきそうだよ」
「りっ……リツカもイクの……?」
「うん。イクよ。お前の声を聞いてその可愛い姿と顔を想像して……今グチャグチャに扱いているよ」
「ああんっ……それ欲しいっ」
 リツカの大きくて堅い乱暴なものが今入ったら絶対気持ちいい。
 俺を嘗めるように上から見て楽しむリツカの視姦が欲しい。
 俺は腰を振りすぎて落ちそうになるバイブを掴むと、それをリツカのものに見立てて思い切り抜き差しした。
「ぅ……あああっ……リツカぁっ……イクぅっん」
 四つん這いのまま片手でシーツを掴み、片手でバイブを挿しながら、シーツにペニスを擦りつけた。
「あっ……あっ! ……あんッ!!」
 俺はそのまま構わず白く濁った液体を吐き出した。
 ドクドクと波打つ肉棒からどんどんと出てくる旅に身体が気持ちよくて震えた。
 間を置かず、耳元でリツカの「はぁっ」という吐息が聞こえてリツカもイったのが分かって鳥肌が立った。

 それから俺は何か甘い会話をしのだろうか、とても気持ちよく寝てしまったようだ。
 頭の片隅に残るリツカの「ちゃんと布団に入って寝ろよ」という言葉がずっと心地よく響いている。
 優しい。
 何気ない一言が言える人と言えない人がいる。
 リツカは、優しい。

(そういえば明日までにやる仕事が残っていたんだっけ。身体、動くかな……)

「よい……しょ」
 俺はグチャグチャになっているシーツの間を泳ぐようにして何とかベッドから降りると、簡単にシャワーを浴びて出た。
 すでに丑三つ時を越えている時間帯だったが、部屋に置いてあるPCの電源を付けると同時に鞄に入っているノートパソコンの電源を付けた。
 そして俺はそのまま朝まで仕事をして出社した。
 
 次の日も、家に帰ると続けて仕事をする生活をしていた。
 ここのところ続いたおかしな現象に危惧した政府が俺たちにプログラムの作り直しを要求してきたのだ。
 これがもの凄く時間のかかる作業で、本当はいけないのだが俺は少しずつ家でも作業を進めていた。
 寝不足でフラフラと電車に乗ると、途端に睡魔に襲われて膝がガクンと落ちた。
「おい……寝るなよ」
 ガッシリと受け止めてくれた身体の心地よさに再び睡魔に教われそうになった。
 顔を上げると、リツカがいた。
「リツカ……?」
 いつの間俺の横に居たんだろう。
 リツカは寝ぼけ眼の俺を、人をかき分けて車両と車両の間の繋ぎ目の場所へと連れ込んだ。
 話しかけようとした俺の顎を乱暴に持つと、リツカは俺の唇を塞いできた。
 朝から濃厚だ。
 また性懲りもなく下半身だけは疲れ知らずに堅く立ち上がってくる。
「んっ……ふ……や……ぁん」
 リツカにたっぷりと可愛がって貰った俺の舌はトロトロと溶けるように柔らかくなった。
 リツカはいつもよりもしつこく俺を堪能していた。
「ど……したの、リツカっ……これ以上したら……もうっ」
 俺が何を言ってもリツカは俺を求めていた。
 両車両の窓から信じられないという奇異な視線が突き刺さるが、それどころじゃない。
 突然リツカがギュッと俺を抱きしめてきた。




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(  Д ) ゚ ゚ → (*--)--*)ギュッ

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妄想列車 20話

 俺は今シンを裏切りながらもシンの知らないところで視姦していている。
 複雑な心境だ。
 それでも画面で艶めかしく動くシンのしなやかな肉体が無意識に俺を誘うようにその痴態を晒していた。
 シンはほんの少しボディソープを指に塗ると、ゆっくりと後ろの穴へ侵入させていった。
 中を洗うという理由を付けて切ない顔で前も弄りながら入り口を好きに弄っている。
「ふっ……ぅんっ」
 シャワーの音に紛れてクチャクチャという音がよく聞こえる。
「ああんっ……出ちゃうっ……だめっ……だめっ」
 ギリギリで射精しそうな自分を止めたシンはサッと身体を流すとフラフラしながら脱衣所へと出た。
 タオルで軽く身体を拭いて、そのままシンは寝室へ移動した。
「何だ……いつも風呂を出たらタオル一枚だけを持って裸か?」
 俺の鼓動が速くなる。これからシンが乱れる事を想像して血が熱くなる気がした。
 シンがベッドの上で四つん這いになり、尻を高く突き上げてローションを秘部へ垂らした。
「あぁ……」
 何ていやらしい。
 ベッドには四方八方にカメラを設置した。だがこれは期待以上だ。
 シンが指を入れ始め、慣れてきたところでクローゼットの中から妙にリアルなバイブを出してきた。
 やけに大きくて、肌色なのがまたいやらしい感じだ。
 シンはそれにたっぷりとローションを塗ると、後ろにそっと宛がった。そしてゆっくりと中に入れると、暫く「ふぅー……ふぅー…」と震えながら息をして焦らしていた。
 俺がそこに居れば中をわざと動かしてもっと焦らすのに。
 シンがリモコンを手にとってスイッチを入れると、くぐもった音でヴ―ンとバイブの音が響いた。
「あぁぁあんっ」
 シンに刺さったまま卑猥に回転するバイブは無機質に感情もなくシンを犯していた。
 そんなもので満足なのか?
「あぁっ……リツカぁっ……リツカぁっ」
 あんな機械で俺の代わりを求め感じているシンを見て、俺は何だか機嫌が悪くなっていった。
 そうだ……電話をしてみよう。
 俺は携帯を出すと、画面の中で腰を揺らすシンを見ながら番号をかけた。
 シンはバイブを刺したまま枕元に転がる携帯の表示を見た。そこに俺の名前が出ているのを見て顔がパッと明るくなった。
 可愛い。
「もしもし」
「シンか? 今何してる?」
 俺の質問にシンは急いでバイブのスイッチを切り、「んっ」という声を漏らしてそれを抜いた。
「え……別に何もっ。お風呂から出てベッドで横になってただけだよ」
「ふぅん」
 画面の中では疼く下半身を持て余してゆるゆると硬くなったペニスを触っている。
 見えているよ、シン。今俺と話しながらも触っているのも見ている。
 俺達は少し他愛のない話をして、そして俺はわざとそういう雰囲気になるように話をしむけた。
「なぁ、たまには電話でえっちしてみないか?」
「えっ……電話でって……どういう……」
「俺が命令出すからお前はその通りに動いてイクんだよ」
「えぇ……」
 困惑するような声を出していても、画面の中のシンはもう興奮して足を広げている。
「じゃあ先ずよく亀頭にお前の汁を塗りつけるんだ」
「う……うん……」
 画面で確認すると、シンはマイクイヤホンを電話に取り付けて両手を自由にしていた。
 やる気満々だな。
 シンは言われた通りに一生懸命カウパー液をクルクルと亀頭に塗りつけていた。これはかなりの焦らしになる為、我慢の出来ないシンは時折竿の方も扱いていた。
「どうせお前風呂の後に一人でしてたんだろう? バイブがあるなら自分で挿せよ」
「えっ……そんな事してないっ」
 まさかの的中にドギマギしたシンは顔を赤らめながらもバイブを自分のペニスに擦りつけた。
「いいから早く挿せよ」
「なっ……何で分かるんだよ……」
「お前の事なら何でもお見通しだからだよ」
 本当に全て見えているんだけどな。
 シンは俺の命令に従ってバイブを再びゆっくりと挿し込んだ。
「さっさとスイッチ入れて自分で抜き差ししろ」
 電話では無言だったが、画面の中ではシンは俺の命令に頷いていた。




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妄想列車 19話

 リツカの表情がどうも優れない気がするのはどうしてだろう。
 初めてリツカが俺の部屋に入った。
 俺ははりきって美味しいものを作ったのだけど。
「どうしたの? 何かあった?」
 俺は少し濃い目に煮込んだ煮物をテーブルに置きながら聞いた。
「あ……、いや。美味いなって思ってさ」
「そ?」
「うん」
 やっぱり何か変だ。妙に気を使っているというか優しいというか。
 俺達は他愛のない話をしながら飯を食べたあとに、いつものように抱き合った。
 だがいつものようにとはいかなかった。リツカの攻めがキツめだった。
 軽々と俺を抱っこするように抱えると、リツカは思い切り立ち上がった肉棒に俺を突き落とした。
 いつもよりも深く突かれて、俺は嬌声を上げっぱなしで喉がカラカラになった。
 だから気を失っている間に、まさかリツカが動き回っていた事など知る由もなかったんだ。




「設置、出来たの? リツカ」
「あぁ」
 シンの意識が飛ぶまでイかせまくった俺は、シンが寝ている間に家にあるパソコンを弄ってみたが、案の定厚いセキュリティロックが掛けられていて俺でも外す事は出来なかった。
 勿論、シンのパソコンを開けるなどとは思っていない俺は超小型盗聴器とカメラを至る所に設置した。
 一つ一つを付ける度に、罪悪感とシンをもしかしたら好きなのかもしれないと思っていた自分の気持ちが嘘だったのかも知れないという思いに押し潰されそうになった。
 俺は結局シンより仕事を取ったんだ。シンを気に入っていた気持ちはきっと身体の相性が良かったからだったのかもしれない。
 そう思う事にした。
 俺はこれから集中して仕事に取り組む。これが俺の使命なんだ。
「何か分かったら連絡を入れろ、リツカ」
「はい」
 ボスに頼んでリツカの部屋での様子は俺だけが観察できるように配慮して貰えた。
 これがせめてものシンへの心配りだ。
 それともプライベートでのシンを誰にも見せたくなかったのか。
 どちらにしてももうどうでもいい気持ちだ。
 深い溜息をしながらヘッドホンを付けると、ガチャリと玄関のドアが開いてシンが帰宅してきた。
 音が鮮明に聞こえる。
 幾つもの画面は、まるでパノラマのように全てを映し出して、その中をシンが歩き回っていた。
「シン……」
 話かけてみても勿論シンに聞こえる訳はない。それでも何だかいつも触れ合っているシンが目の前にいるようで声を掛けてみた。
 ふと顔をこちらに向けたシンにドキッとした。

(まさか聞こえた……訳ないよな)

 俺に見られているとは思ってもみないシンはまっすぐこちらに向かって来た。

(まさかバレてたか!?)

 心臓の鼓動が重く胸を叩いた時、シンはカーテンに手を伸ばして閉めた。

 なんだよ。びっくりさせやがって。

 俺はコメカミを流れる冷たい汗を拭った。
 シンはサッと簡単なご飯を作っては食べて、シャワーを浴びた。
 俺はあの時、自分の欲望からバスルームにもカメラを付けた。
 カメラも高機能の為、とても綺麗にシンの全てを映し出した。
 シンは丁寧に身体や頭を洗った後、素手にボディソープを付けて自分の気持ちの良い所をヌルヌルと触って感じていた。
 アイツ、風呂場であんな悪戯をいつもしていたのか。
 時折聞こえる「ハァっ」という吐息が直接ヘッドホンから鼓膜に響いて俺の股間は硬くなった。




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盗撮&盗聴プレイかっ!?∑(°ロ°*)

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妄想列車 18話

 力の入らない身体で焦ってモタモタしていた俺に、リツカはスッキリした顔で着替えをさせてくれた。こんな事で幸せをとても感じる。愛されてるんじゃないかって。
 でも何か心に霧が掛っている気がしてた。それが今分かった。
 俺はまだリツカに「好きだ」とも「愛している」とも言われていない。
 俺が健って奴に嫉妬してどっちの方が好きかって聞いた時は「お前だ」とは言われた……けどあの時だって最後まで言葉は言わせてくれなかったな。
 俺は別に女じゃないから年中愛の言葉なんていらない。
 女ってのは事ある毎に愛の言葉を欲しがる人が多いと世間一般では言うし、実際今まで付き合って来た女は俺に対してもそうだった。
 俺はどちらかというと言葉よりも行動で示して欲しい、と思っていた。そうすれば言葉と同じ位伝わると。
 でも実際に人を好きになると、いくら優しく抱かれても不安になるのは何故だろう。
 俺は今リツカの言葉が欲しい。
 催眠術だってマインドコントロールだって言葉が重要なんだ。それだけの力があるって事なんだろう。
 安心が欲しい。

 俺はリツカをとても愛している。

 俺達は電車が混んできた頃、足早に駅から出た。
 リツカは俺を家まで送ると興奮冷め止まぬうちに玄関先で頭を掴まれ、まだ一度も出していないように硬いペニスをしゃぶらされた。
 俺が出された熱い液体を全て飲み干すと、リツカはしゃがんでいる俺の頭を撫でて頬にチュッとキスして帰っていった。



「リツカ! リツカ!!」
 昨日は自分でも驚く程興奮してシンを辱めた。その余韻が今朝になってもまだ脳内を漂っている。
 そんな夢見心地の時に、健のけたたましい声で現実に引き戻された。
 急用があるのに、取り敢えず俺にキスをしようとしてきたので、俺は健の顔面を掴んで阻止した。
「何だ……うるさいな」
「何だ、じゃないよっ! アイツ、シンって奴嘘ついてたんだよッ」
「はぁ?」
「俺、調べたんだよアイツの事!」
 嘘? シンが俺に?
「シンって奴とあの先輩ってのね、STSの子会社なんかじゃなかった! アイツらが俺達の突破しようとしてるプログラム作ってたんだよ! 普通にSTSの心臓部の奴らだったんだ!」
 シンが……。
「これはチャンスだよ、リツカっ! もしかして知ってて利用してた!? だとしたらマジ凄いんだけどっ! だったら垂らし込んだ事別に怒らなかったのにっ」
 俺は、これから本当の事を打ち明けてアイツにも仲間になって貰おうと思っていた。
 これでは本当の事を打ち明けた時のシンの様子がどうなるかが予想出来ない。
 もしかしたら警察に訴えられるか。いや、アイツは俺の事が好きだと言った。警察に通報しないまでも、俺とは縁を切るだろうか。
 縁を切る……。
 俺はその言葉を思っただけで息苦しくなった。
 今までずっと色んな奴と関係を持っては縁を切ってきたじゃないか。
 一度会った相手には二度と会わない。会ったとしても他人で通す。
「リツカ。健から聞いたぞ」
 後ろにはボスが立っていた。俺はサッと身体が冷たくなった。
 健の奴、わざとなのか?
 ボスに言うという事でいよいよ逃げられない大事になった。
「よくやった。さすがだ。全てはお前に掛っている。頼んだぞ。もう時間もあまりない」
「え……時間?」
「あぁ。少し警察の方にも動きが出て来ているんだ。そろそろ成果を出して国を帰るぞ」
 いつもなら、普通に「はい」とスッキリした顔で言える筈だった。
 初めて「嫌だ」なんて子供じみた事を内側で思っている俺は、今どんな顔をしているだろう。


「はい……」




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妄想列車 17話

 くるりとひっくり返された俺は剥き出しの肌を透明な窓ガラスに押し付けられた。
「ぅ……あっ」
 冷たさがリツカの唾液で濡らされた乳首に刺激を与える。
「いやらしい奴だな、シン。自分から外に身体を見せつけるなんて」
「違っ……リツカがっ……あっ」
 喋る俺にお構いなしに後ろからリツカが俺のベルトをカチャっと取り外してズボンを下げた。
 
(ちょっ……! これじゃあほぼ全裸だよ!)

「リツカッ! やめろって! 次に誰か入って来たらどうする……っ」
「シ―っ……」
 慌てふためいて騒ぐ俺の耳元でリツカが子供をあやす様に言った。耳にかかるリツカの吐息で俺の下半身はまた硬くなった。
「俺はシンのそのエロい姿が見たいんだ……電車の中で裸で……すごいエロくて凄い綺麗だよ」
 リツカはずるい。俺がリツカの喜ぶ事を断れないのを知っている。
 何より、リツカに褒められるととても嬉しい。
 だが、段々とスピードが遅くなり次のホームが見えてきた俺は恐怖した。
「ねぇっ、もうすぐ次の駅だよ!? 服着てもいいでしょ!?」
「……ダメだよ」
 とうとう電車が止まり、ドアが自動的に開いた。俺は剥き出しの身体を隠すようにしゃがみ込んだ。

(どうしようっ、人が入って来たら警察呼ばれちゃう!)

 幸いにも誰も俺達の車両には乗って来なかったが、心臓がおかしな緊張でバクバクいっている。
 ドアが閉まり、再び走りだすとリツカが俺を再び立ち上がらせた。
「本当はこうしてさ……」
「やっ……!」
 リツカはいつの間にか持参してきたワセリンを手に取り、徐に俺の腰を引きあげてアナルに塗り込んできた。
「やっ……ぃ…あぁっ……嘘……でしょ!? こんな所でっ」
「最初に電車でキスしたお前にこうしたかったんだ」
 リツカは自分のズボンを少し下げて真っ直ぐに立ち上がったペニスを取り出し、そこにもワセリンを塗った。ヌルヌルと扱くリツカの姿はまるでオナニーをしているようで見ていて興奮する。
 リツカに指で弄られたあと、俺は腰をグッと強く持たれた事で入って来る事を悟った。
 俺の身体は条件反射のようにバランスを取ろうと銀色の手すりに掴まる。
 そして熱くて太い肉棒は小さな俺の入り口からグリグリと中へ侵入してきた。
「んぁぁあっ……挿れちゃっ……だめぇっ」
「そういう割にはちゃんと尻を突き出していて偉いぞ? シン」
「違っ……」
 肉棒がズンッと奥へ容赦なく突き刺されると、俺は全身が総毛立った。
「あぁぁあぁーッ」
 耳元でリツカの気持ち良さそうな「ハァァ……」という吐息が漏れた。少し後ろを向いてリツカを見ると、途端に唇を塞がれ腰を激しく動かしてきた。
「ああんっ……あっ…あんっ…あっ!」
 俺たちは淫乱に電車の中でセックスをする。
 暗くなった外から、さぞこの明るい車内がよく見える事だろう。いくら森が続いているからといって家が無いわけではない。きっと目撃している人だって居る筈だ。
 そう考えるだけで俺のペニスの先からは大量に透明の液体がダラダラと床に落ちていった。
「何だシン。お前こういうの興奮するのか? こんなにカウパー出して」
 リツカが俺のペニスを後ろから握って扱いて来た。
「あっ……あっ」
 気持ち良くて思わず腰を前後に動かす。俺は手に力が入らず、ズルズルと鉄の棒から手が滑り落ちていった。
 するとリツカは俺の身体を座席の前まで移動させ、吊革に捕まらせた。
「ちゃんと捕まっていなさい」
「あっ……ぅ……はぃっ」
 俺は大きく足を広げ掴まれた尻を突き出すと、リツカは再び大きくて太いペニスを出し入れしてくれた。
 奥に突き刺さる度に先程より大きく前後に身体が揺れた。吊革のギシギシという音が妙にいやらしい。
 リツカの腰が叩きつけられ、身体が前に飛ばされる。そして戻ってきた時に決まってリツカは俺の弱いスポット目掛けて亀頭を突き入れてきた。俺の膝はガクガクと戦慄いて思わず吊革を持つ手の力が抜けた。
「ああッ!」
 吊革から手が離れ、落ちそうになった俺の身体をしっかりと抱きとめたリツカはそのまま俺をソファに移動させた。
 俺はカーキ色のソファに膝立ちになると、リツカは覆いかぶさるようにして犯してきた。
 外が暗くなっている為、窓ガラスには俺達が反射してまるで鏡のように自分たちがよく見えた。
 リツカにヤられている俺はなんていやらしい顔をしているんだ。
 涎が口端から流れ、上気した顔でトロンとした目が潤んでいる。膨れ上がった乳首を後ろから引っ張られ、激しく前後に揺らされては叫び声を上げていた。
 俺を犯すリツカは窓越しに鋭く俺を見ていた。こうやって俺の表情を見て楽しんでいるに違いない。
 俺はリツカに舌を吸って貰おうと横を向いた時、サッと血の気が引いた。
 隣の車両に人が乗って来たからだ。
 どうやら気付かないうちに電車が駅に停車したらしい。見ればこっちの車両のドアも開いていた。
 あまりに夢中になっていた俺は何も気付かずにいたようだ。
「あっ……おれ、知らないで声っ」
「今頃気付いた? お前窓に映った俺を見てて夢中になってたろう? 何人かホームに人がいたから見られてたし聞かれてただろうなぁ」
「う……そ」
 恐る恐る隣の車両を見ると、やはり気付かない方がおかしい。こちらを信じられないという顔で覗きこんでいた。
「やだっ……リツカ、やめようっ! こっち見てるよっ! ……ねぇリツカっ」
 ドアが閉まり、再び電車が移動し出した。
 リツカは止めようという顔はしていなかった。代わりに、ゾクッとするような妖艶な笑みを浮かべて思い切りペニスを奥に叩き入れてきた。
「ひゃああんっ……だっ、だめって……ばっ」
「ほら、色んな人が見てるよ」
「い……やぁっ」

 (俺がリツカに犯されてこんなに感じているのを人が見ている……)

「俺がお前の中に出す所をよく見せてあげなさい」
 リツカはそう言って俺をソファに押し倒した。
 仰向けにソファに押し倒した俺の膝を腕に引っ掛け、リツカは上から被さって犯し始めた。
 俺は顔を上に上げて隣の車両を見ると、やはり先程の人が何やら携帯で打ち込みながらこちらを見ている。
「ほら、あっちの車両にも見ている奴がいるぜ?」
「やぁぁっ」
 恥ずかしさと興奮が混ざって俺のペニスがビクンビクンと激しく動いた。気持ち良さが中から押し寄せてくる。
「イっ……イっちゃうぅーっ……リツカっ、リツカっ」
 頂点を超えた恥ずかしさは興奮へと変換された。
 もう、卑猥な俺を見て欲しい。
「可愛いよ。シン」
 リツカは俺の首筋を強く吸ってキスマークを付けながら高速ピストンで射精をしようとしてきた。
「あぁぁあんッ! イクぅぅんんんーッ」
 リツカのペニスがこれでもかという程奥の位置で止まり、俺の中に液体が飛ばされた。そして俺のペニスからも大量の精子が飛び散って、俺の身体と座席を汚した。
 息が少し上がったリツカは、ふと顔を上げて隣の車両で見ていた見知らぬ人に口角を上げた。




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遅くなってすみません(;´Д`A ```
え~とうとう人が見てるのにヤってしまいました(笑)
捕まる前に逃げて~(笑)

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妄想列車 16話

「リツカはさ……将来、こうなりたいとか人生プランていうの? ある?」
 果たして俺はその人生プランの中に入っているのだろうか。
 俺は遠回しにこれからの事が知りたくてそんな聞き方をした。
「プランは……あるよ。俺は……仕事が好きだし、目的を持ってるんだ。……その、仕事の目的ってのが生き甲斐だし、それを目標に今まで生きてきたというか」
 意外にも真面目な意味に捉えて話したリツカに驚いた。そしてその内容にも驚かされた。
「へぇ……リツカってそんな仕事人間だったんだ?」
「ん? ……まぁ……そうかもな」
 リツカの表情が少しだけ複雑な笑みを含んだように見えたのは気のせいだろうか。
「でもそんな凄い目的って何?」
「ん―……社外秘だから詳しく話せないんだけど……でもグローバルな事だから人を助けるって行為だと思う」
 LTPデータでそんな海外向けの企画があるのだろうか。イメージがIT企業らしからぬリツカの物言いに違和感を感じながらも自分の事を考えた。
 俺にも確かに目的、というか使命感はある。俺達は国を守っているからだ。
「俺も……実は結構仕事にやりがいを感じてるんだ。俺達のしてる事が世の中に貢献出来てるって実感があるからさ」
「そうか……俺達の生き方は似ているのかもしれないな」
 見下ろしたリツカがとても嬉しそうに笑ってドキッとした。
 生き方が似てたら……一生パートナーになれるだろうか。

「俺、初めてリツカ見た時、マジで格好いいと思ったんだ……まさかこんな風になるとは、っていうか、あの時まさかキスするとは思わなかったよ」
「俺もお前見て可愛いって思ったよ。だから思わず確信的にキスしたんだ」
 リツカの指先が下から俺の唇に触れる。
 何だか恥ずかしくて頬が熱くなってきたのが分かった。
「でも、俺なんて普通の男だし……健くんみたいに俺から見ても可愛らしい子って訳でもないじゃん? リツカより少しだけ背が低いだけで小柄でもないし」
「別に俺は小柄が好みって訳じゃない。健は普通に可愛いけど、お前には変な色気がある」
 何だソレは。しかも変ってなんだ。
 俺はリツカがはっきりと「健は可愛い」と言った事に胸の苦しさを感じた。
「何、その顔。嫉妬してるの? ……俺、お前のそういう苦しい感じの顔にもそそられるんだけど。何ていうか、お前のその少し憂いのある顔としっとりとした雰囲気が堪らないんだ……それに、何か良い匂いがするし」
 褒められた俺は更に顔を赤くして恥ずかしさに上半身を仰け反らせた。
「にっ、匂いなんてないしっ!」
 思わず腕で顔を隠そうとした。
「欲しがる時とか、意地悪された時の表情なんて……思い出すだけでヤバいよ」
 リツカの色っぽい唇の間からチラリと赤い舌が動いたのが見えて下半身がズクンとした。
「バカっ、何言ってんだっ」
 リツカの目に欲望の光が爛々と見える。俺はその視線だけで愛撫されている様な感覚になって息が荒くなってくる。
 だがリツカは言葉と目だけで俺を攻めて、ついに帰りまで触れてくる事はなかった。


 俺は散々興奮させられたまま、帰りの電車を待つ駅の小さなホームで、ずっと硬くなっている下半身を鎮めようと外の木々を見ていた。
 外は薄暗くなって群青色の景色に囲まれていた。
 電車が到着した時だった。中に入り、ドアが閉まると同時にリツカは俺を反転させて身体をドアに押し付けてきた。
「なっ……何すんっ……んんっ」
 リツカの熱い舌が容赦なく俺の舌を絡め取って脳を痺れさせてくる。リツカの目は本能に従っている目をしていた。俺はその目に束縛されていく。
「やっ……ここではっ」
「別に誰もいない」
 確かに見渡した限りまだ誰もいない。だがこれから乗って来るだろう。俺は焦ってリツカから逃げようとしても、足を入れこまれ、手を窓に押し付けられて力が入らない。
 Tシャツをたくし上げられて既にぷっくりと膨らんだ乳首を甘噛みされた。
「ああんっ…だっ、だめぇっ」
 電車のゴトゴトと言う日常的な音に混ざって卑猥な声が車両に響いた。




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Σ(・ω・ノ)ノ!

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妄想列車 15話

 リツカから初めてデートの誘いが来たというのに、仕事では相も変わらず不可解なトラブルに苦戦していた。
 他会社からも原因不明の気になる事が相次いで出ているという。

(何だか皆どこもかしこもピリピリしてて嫌だな。一体何なんだろう)

 俺は早く週末にならないかだけを思って毎日を過ごした。

 やっと週末になった時、俺は遠足前の園児のように興奮でよく眠れなかった。その話をリツカにすると、「何? もう誘ってんの?」とからかわれた。
 忙しくて平日に会えなかった分、久し振りに見るリツカは本当に惚れ惚れする。スーツ姿も勿論格好いいけど、何気なく着こなされたブランドの服を、嫌みなく普段着のように着こなしてしまう辺りは同じ男としても憧れる。
 今まで気になるのは女性の胸元だったり足首の細さだったりしたのが、今ではリツカの筋肉のついた腕だったり、引き締まった腰のラインだ。
 そんな事を思いながら、俺達は新宿で待ち合わせて中央線に向かった。
「ねぇ、どこに行くの?」
 そう言えばどこに行くか聞いていなかった。
「奥多摩」

(奥多摩?)

「奥多摩行って何するの?」
「別に……。お前とゆっくり電車の旅でもいいかなって思ってさ……ほら。俺達の出会いも電車だっただろ?」
 確かに、衝撃的な出会いではあった。今でもあの時の事を思い出すと胸がキュッとする。あれを思い出して何度一人でしたか分からない。

 休みの駅は普段あまり見かけない親子連れの姿が沢山いる。
 だが幾つか乗換を繰り返して行くと、段々と人が少なくなっていったのに気付いた。
 青梅線に乗ると更に少なくなっていった。車両の中には俺達の他に何人かしかいなかった。
 一時間近く経つと、景色もガラリと変わり人の姿もグッと減った。
 リツカは同じ車両にいる人たちが眠った事を確認すると、俺の顔を覗きこむようにして唇を押しつけてきた。

 ヤバい。人がいるのにこんな甘いキス、身体が反応しそうだ。

 俺はリツカのTシャツの上に羽織られた黒いシャツを掴んだ。
 ゆっくりと互いに舌を外に出して絡め合う。目の前で動くリツカの舌の動きがあまりにいやらしくて声が出そうになった。
 そんな事をしながらゆっくりと鈍行で電車に乗っていた。

 ふと気が付くと景色は既に旅行先のような森や林が続いて、時折木々の間から見える湖がまだ東京内である事が信じられないと思わせる。
「人、少ないね」
「あぁ。だからこの線は好きだ。ゆっくりと景色が見られるし、この閑散とした駅のホームがいかにも昔の昭和って感じがして好きなんだ」
 確かに小さな駅のホームには駅員もいなければ白線すら引かれていない黒っぽいコンクリートがホームの役割をしているだけだ。
「そろそろ降りようか」
 リツカが席を立ったので、俺も後をついて電車を降りた。
 駅のホームから約五メートル程先にある踏切は、あまり踏切らしいとは言えない。電車の幅程しかない線路は何歩か歩けば渡れる距離だ。
 ホームから線路への段差は階段一つ分くらいで誰でも簡単に線路に降りられる。
 とは言っても降りる人自体が殆どいない。
 俺達はそっと手を繋いだ。
 
 ホームの外へ出てすぐ山の中に出た。
「うわぁっ、ここ本当に東京!? 旅行先に来たみたいっ」
 森の広がるその場所に、俺は深く息を吸い込んだ。久々に味わう木々の匂いだ。
 鳥の囀りと、風に吹かれる葉の音しか聞こえない。
 そして左手に感じるリツカの大きくて暖かい手の感触。
 俺達は適当に森を散歩し、川へ降りては少年に戻ったように石や枝で遊んだ。
 腹が減って、どうにか探し出した蕎麦屋はどうみても一般家庭なんじゃないかと思えるような場所だったり、そんな他愛のない事で俺達はよく笑った。
「食べたら昼寝っていう贅沢がしたい」というご主人さまの言葉で、俺達は川縁の日陰で寝転がった。
 リツカは徐に俺の脚に頭を乗せてきた。
「えぇっ!? ひ、膝枕っ!」
「何だ……悪いか?」
「いや、いいけどさ……こんなんするの初めてで……恥ずかしいっていうか、俺の太股とか別に柔らかくないだろ」
「柔らかいよ」
 リツカの手がいやらしくゆっくりと俺の太股を撫で上げた。
「……っ。くすぐったい……よぅ」
 木漏れ日がキラキラとリツカの綺麗な顔を照らす。
 それだけで俺はドキドキした。




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妄想列車 14話

「要するに、集団心理みたいな?」
「まぁ、そうだね。でもさ、一言では言えない心理が働いているような気がする。人間の性っていうか、本質っていうか……人間が増え過ぎると自然にそうなるようなさ」
 リツカが不思議そうな目で俺をじっと見た。
「上手くバランスを取るように人間のDNAに組み込まれてる気がするんだ。人間の数を減らすのは、人間自身でも出来る事みたいにさ」
「お前、面白い事言うな」
「その村長さんの例え話は……何か国同士の成り立ちに聞こえる」
 リツカの纏った空気が少しピリッとした気がした。表情は変わらないのに、リツカの空気はまるで身体の一部のように敏感に貼りめぐらせられている。俺はそれを感じるのがとても上手なようだ。
「お前は……どう思う。そういう国の……利己的な機密を暴露する運動を」
 どうしたのかな。リツカが緊張しているように感じる。
 お互いに横に寝た状態で向き合っていた。リツカの綺麗な形の目が真剣に俺を見ている。
 こんな表情もするんだ。というか、こういう表情をする人が現にいるんだ、と思った。
 映画でよく見る表情だ。戦地に赴く、何か使命でも持っている様な勇ましい男のキリリとした顔。
 俺は不謹慎にもその表情にとろけた。
「彼らには……彼らの正義があると思う。悪戯な理由ではない事は分かるし、その行動に至るまでの考えには理解出来るよ」
 俺がそう言うと、リツカは「そうか」と言ってとびきり優しい笑顔になって俺を抱き寄せた。
 
 どんな答えが出るか緊張した。どんな答えが出てもどうでもいいと思って来たのに、シンに対してはアイツの答えが、考え方が気になった。
 シンの考え方は、とても嬉しかった。理解してくれている、一般論やメディアに左右されずに自分の気持ちを言ってくれた事が伝わった。
 それ以外にもシンの考え方に共感出来た自分に驚いた。上手くは言えないが、何だかとても物事を大きく見ている気がした。
 それにしてもまさか健といる所を見られるとはな。シンのヤキモチを見られたのは良かったが、まさかアイツがあの厄介な組織の関係者とは思わなかった。
 きっと俺の部屋にあるPCを見て驚いただろうな。まぁ、ただのマニアックだとでも思っているだろうが。
 それにしても日に日に色っぽくなっていくシンに、俺は自分でも意外なくらい執着している。
 スイッチを押せば、いつでも俺の命令を待つように潤んだ瞳を向けてくる。首を絞めても乳首を勃たせて尻を突き出す。
 今回抱いた時も俺はあっさりと快楽に飲まれて果ててしまった。
 あの吸いつくようにしっとりとした尻に腰を叩きつけてほんのりと赤く染まっていく様を思い出すと直ぐに下半身は硬く大きくなってきた。
「リツカっ。もう、何この間の!? アイツ、シンってのと付き合ってる訳!?」
 真面目な顔をして仕事をしながら卑猥な事を思い出していた俺に、健が突然突っかかって来た。
「お前には関係ないだろう……て言うか、お前あの先輩ってのと上手くやったのか?」
「何? 気になってるワケ?」
 健は嬉しそうに下から俺を覗き込んできた。
 いや、可愛いんだけどね。何かシンと違うんだよな。
 こう、もっと目が離せない様な色気っていうか……。
 健はどうしたってこれからも俺に固執し、シンに嫉妬をするだろう。何か健に俺との繋がりを感じて貰えれば少しは大人しくしてくれるだろうか。
 そう考えて俺は一つ試しに言ってみた。
「健。俺がこういう性格なのは分かってるな?」
「うん」
「俺は自分でも思うが、性欲が強いし欲望も強い。可愛い子には手を出したくなるし、縛られたくない」
「だから俺と付き合っても俺が一番だったら他の子を抱いてもいいってば」
「お前は俺が好きなのか?」
 そうハッキリ聞いた時、健はサッと顔を赤くしてわざと強気な表情を作って見せた。
「そっ、そうだけど!? 悪い!?」
 何だよ。コイツ、こういう素の方が全然可愛いじゃんか。
「ありがとうな。俺だってお前が好きだ」
「本当っ!?」
「当たり前だろう? だって俺達は皆“同志”って絆があるんだ。命を互いに預けて最後の時までの時間を共有している。命を掛けてまで持つ目的が同じって、物凄い事だろ?」
「うっ、うんっ!」
「だから嫌いとか好きとか、そういうレベルの問題じゃないんだ。分かるか?」
 俺は声を低くして健の頭を撫でてやる。こうやって少しずつ洗脳していくんだ。
「じゃあさ、俺との絆はあのシンって子よりも強いの?」
「……そうだな」
 健はとても嬉しそうに笑った。健はこの中で一番若い。俺達くらいになると、一通り経験をしてきてるから踏ん切りも付けられるし、のめり込んだ所で色々と不自由も出てくる事は分かっている。だから上手く遊んで人生を楽しんで、本業に全身全霊を尽くす事が出来る。
 だが健はきっとまだ本気の恋もしてない。この年だと感情が上手くコントロールも出来ないんじゃないかと不安になる。
 子守は面倒だな。俺は溜息をつきながら、シンにメールを打った。
『今週末、少し遠出しないか?』
 今はシンと時間を共有したい。あとどれくらいここに留まれるか分からない。今直ぐにと命令されたら俺はどうしたい?
 アイツは、“同志”になってくれるだろうか……。




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妄想列車 13話

 服を剥がされた。俺についているのはリードのように首に巻かれたネクタイだけだ。
「とてもいやらしい格好だ、シン。お尻を上げたままゆっくりとベッドに倒れなさい」
 俺は尻を突き上げたまま言われた通りに布団に顔をつけた。
 見てる。リツカが俺の身体を見ている。
 俺はリツカを見てなくても、リツカの視線がそっと俺の細部を触れていくのを感じていた。
 ローションが身体に塗られていく。俺の身体を滑っていくリツカの大きな手に悶える。
「ああんっ…ああっ…あんっ」
「おいおい。これ塗ってるだけだろう? そんなに感じてどうした」
 リツカがクイっとネクタイを引くと、俺の頭が少し上がった。
 ダメだ。俺はリツカが欲しい。リツカの味が欲しい。
 はしたないと分かっていたが俺は欲望に忠実にリツカにねだった。
「ください……」
「ダメだ。お前はあの先輩とやらと妙に仲が良かった」
「先輩? 先輩なんて何もないよっ! そんな事言ったらリツカなんてッ…ぐっ!」
 喚く俺の口の中にリツカはペニスを突っ込んできた。俺は条件反射で、前後に動くそれを噛まない様に唇を押しつけて締め付けてやる。何度か口を犯した後、ヌルっと抜き取ったそれをリツカは俺のアナルに入れ込んだ。
「あああんっ」
 リツカがリードを引っ張れば俺の首は締まり、リツカの好きな位置まで身体を傾ける。
 四つん這いにされた俺は後ろから沢山突かれた。突く度に引っ張られて締まる首輪はこの上ない官能を呼び起こした。
 俺は、今犬だ。
「ハァハァっ……うぅぅんっ」
 息を吸おうと開けたまま喘ぐ俺の口端からは、だらしなく唾液が垂れていく。
「シン、横を見ろ。刺されているのがよく見えているよ」
 言われた方向を見ると、鏡張りになったクローゼットのドアにリツカの色の濃いペニスが凄いスピードで刺し込まれているのが見えた。途端に興奮が絶頂に上がった。
 リツカのセックスする姿は、エロい。気持ちいい時の顔もよく見える。腰の動きがしなって堪らなくいやらしい。
「やあぁっ…出るぅっ」
 俺はシーツにしがみ付きながらペニスを皺になった布団に擦りつけて射精した。
 リツカも俺の肩にしがみつきながら「んんっ」と艶っぽい声を上げて俺の中に出した。
 じんわりと続く気持ち良さに、俺達は二人とも暫くゆっくり腰を動かしたままでいた。

「本当に健くんと付き合ってないの?」
 リツカの腕の中で俺はもう一度聞く。
「付き合った事はない」
「じゃあどうしてキスしようとしてたんだよ」
「あいつはいつもそうだ。挨拶みたいなもんだろ」
 挨拶だ?
「じゃあ俺が清水先輩と挨拶でキスしても別にいいんだ?!」
「ダメだ。犯すぞ」
「さっきまでヤられてましたっ」
 これって恋人同士の会話じゃないのか?
 何だかイチャイチャしているような気がして俺の機嫌は少しずつ治っていく。
「……シン、お前はさ。隠し事とかされたらやっぱり許せないか?」
 健くんの事……かな?
「うーん……。どういう意図で隠してたかって所が一番気になるかな。その人の考えの結果が隠す事にあったら、その考えを知りたいと思う」
「でももし……、じゃあ仮にある村の村長さんが居たとする。その村長さんは村を束ねるのに色んな情報を持っていて、良い事も悪い事も全て村長さんの一存で判断して、村長さんの理想とする村を作る」
「う……ん」
「だが、実はそういう村は幾つもあって、村長さん同士は互いに利益を求める為に情報をやっぱり村人に教える事なくトップだけに開示して村と、村人たちをいいように騙して動かしていく」
 何かの物語の事だろうか。だが、何だかよく知っている様な、リアルな話だ。
「でもさ、その村長さんたちは村同士を良くしようとしてそうしたって事は考えられないの?」
「殺し合いをさせたとすると?」
「殺し合い……は、おかしいけどさ、もしかしたら、そうなってしまったのかもしれないじゃん」
「なってしまった?」
「うん……人ってさ、集まるとさ、そう“なってしまう”って事よくあるよね」




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