05/27/2010(Thu)
SS・初恋
3000Hitを記念致しまして、夜×雪之丞の幼少期SSをUPさせて頂きますm(_)m
万華鏡の続きはまた明日から・・(すみません;)
【初恋】
時は江戸中期。夜七(やしち)と雪之丞(ゆきのじょう)が5つの頃のお話だ。
「あら、夜(ヨル)ちゃんいらっしゃい。雪でしょ?ちょっと待ってね。雪!雪之丞!夜ちゃんが来てるわよ!」
「はーい!!」
中から元気よく出てきた小さな可愛い男の子は、新雪のように色が白くて本当に綺麗な子だった。
物心ついた頃から家族ぐるみで仲良くしていたお陰もあってか、気が付くと本当の兄弟のようにいつも仲良く一緒にいた。まだ幼い3つ下の雪之丞の弟、喜助も偶にくっついてきては一緒になって遊ぶ事もあった。
今日もいつものように外で遊ぼうと雪之丞を誘いに来たのだ。玄関に出てきた雪之丞の後ろを覗くと、いつもテトテトついて来る喜助の姿が見えない。
「喜助は?」
「あ、今寝てるから今日は二人で遊ぼう」
「ふーん」
夜は心なしか嬉しかった。喜助の事は勿論好きだ。だが、今何故嬉しいと思ってしまったのか、まだ幼い夜の心はその理由も、疑問を持つ事すら出来なかった。
「ね、夜七!あそこのお山に行ってみようよ!」
「いいけど・・大丈夫か?」
元々身体の丈夫ではない雪之丞は、あまり無理をさせないようにと両方の親たちに頼まれていた。
「うん!今日は凄く調子がいいから平気!ね、行こう!お花も綺麗だし」
5月中旬。夜たちの住む小さな村の集落には、まるで巨大な筆で絵の具をサッと塗られたように美しい花々が簡素な村を彩っていた。
暖かく心地よい春風に背中を押されるようにして、夜と雪之丞はその小高い山に登った。
「うわぁ、綺麗!」
「おぉぉ、すげぇなぁ」
子供の足で約20分は登ったところで、大分高い場所まで辿り着く事が出来た。
そこから見渡す景色は、いつもの自分たちが住んでいる村とは別のものに見えた。
「気持ちいいー・・」
そう言って青々と茂る草に寝転がる雪之丞は、まるで春に舞い降りた季節外れの雪の破片のようだった。そのままで居たらそのうち溶けてなくなってしまいそうな不安感さえ感じる。
確かめるように夜はそっと雪之丞の手を握ると、やっぱり雪のように冷たい手をしていた。
「雪之丞、こっち来いよ」
そう言って後から抱きしめるようにして自分の胡座の間に自分よりも少し小さな雪之丞を座らせる。
「お前、本当の雪みてぇに冷たいから俺があっためてちゃんと人間にしてやるよ」
夜は後から雪之丞の肩を抱いた。
少し驚いたような顔をしていた雪之丞だったが、嬉しそうにふわりとした笑顔を向けると、まだ薄い夜の肩に頭と体重を掛ける様にしてもたれた。
「夜七は暖かいね。眠くなっちゃうよ」
「寝てもいいよ」
夜はゆっくりと瞼を閉じていった雪之丞を少し上から見ていた。
長いまつ毛がまるで人形のようだ。ふっくらとした美味しそうな頬にそっと触れてみるとぷにぷにと気持ちが良かった。雪之丞は別段反応もせず、夜のさせたいようにさせていた。
赤みの差した唇に自然と目がいく。そこにもそっと触れた時、鳥が羽を開くように雪之丞の瞳が開いた。
「あ、ごめん」
何を謝っているのかよく分からなかったが、不透明な疚しい気持ちがあった事は自覚していたのでつい謝ってしまった。
ふと雪之丞が顔を夜に向かって上に上げた。
その瞬間、雪之丞が別人に見えた。艶のある黒い瞳で目を合わされた時、夜の身体中を走る血液が倍の速さで駆け巡り、顔がどんどん赤くなるのが自分でも分かった。
(どうしたんだ、俺。雪之丞が別人に見える・・)
数秒前まで普通に抱いていた筈なのに、今はどんな力加減で抱けばいいのか分からず焦ってしまっている。更に、雪之丞を抱く夜の手にはしっとりと汗が滲んできた。
(か・・かわいい・・)
心臓もドキドキと、それまで味わったことのない種類の動悸を感じていた。
雪之丞が更に可愛くみえてしまってまともに視線を合わせるのも照れてしまう。
「夜七・・」
その時、まるでスズランが透明の声を発したように夜の鼓膜に雪之丞の声が響いた。
「ぼく、夜七と一緒になる人は絶対幸せになると思う。」
そう言ってふっと優しくて少し寂しそうな表情を見せた。
それを見た夜の小さな心臓はキュッと掴まれた感じがした。
「じゃあお前が俺と一緒になればいいじゃねーか!」
ついムキになって言った。
すると雪之丞はクスクスとおかしそうに笑う。
「ちがうよ。ぼくが言っているのはお嫁さんになるって意味だよ」
夜は端からそのつもりで言っていた。
「だったらお嫁さんになればいいじゃねーか。」
「えー無理だよ、ぼく男の子だし」
「じゃあお婿さんでもいいよ!で、結婚しよう!」
雪之丞の表情がパァッと明るく花開いた。
「そうか!そうだね!それなら結婚できるねっ。わぁ、嬉しいな!」
夜は最高に嬉しかった。
まだお嫁さんやお婿さんがどういうものかも知らず、結婚とはただ一番好きな人と家族になれ、ずっと一緒に入られる約束だと思い込んでいた。
これでずっと雪之丞と一緒にいられる将来の約束が出来たと、ギュッと雪之丞の肩を抱きしめた。
幸せな気持ちで何となくふと見上げた空には、うすい月が浮かんでいた。
(美しい月だな・・・)
心でそう呟いた時、胸の中に激しく切ない思いが込み上げて瞳が開いた。
目を開けるとそこは薄暗い部屋で、17歳の夜が目を覚ましたところだった。
(夢・・か。そういやぁ、あんな事もあったっけな・・)
何となく寝付けなくなってしまった夜は、ふらふらとした足取りで縁側の方面へ向かった。
閉まっていた障子をスッと開け、眼下を流れる川に目をやると、水面に映った月が揺らめいているのが見えた。
顔を上げるとそこには、夜の空に夢で見たものよりもずっと美しい月が眩しい光を放っていた。
―会いたいな。
サラサラと流れる川の音に混じってリンリンと鳴く虫の音を聞きながら、そんな事を思う夏の一夜だった。
遊びに来て下さる方々、本当にありがとうございます^^
これからも少しずつ読んで一緒に悶えられる(w)ような作品が作って行けたらいいな、と
思っております。
これからもどうぞ、よろしくお願いいたします^^
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万華鏡の続きはまた明日から・・(すみません;)
【初恋】
時は江戸中期。夜七(やしち)と雪之丞(ゆきのじょう)が5つの頃のお話だ。
「あら、夜(ヨル)ちゃんいらっしゃい。雪でしょ?ちょっと待ってね。雪!雪之丞!夜ちゃんが来てるわよ!」
「はーい!!」
中から元気よく出てきた小さな可愛い男の子は、新雪のように色が白くて本当に綺麗な子だった。
物心ついた頃から家族ぐるみで仲良くしていたお陰もあってか、気が付くと本当の兄弟のようにいつも仲良く一緒にいた。まだ幼い3つ下の雪之丞の弟、喜助も偶にくっついてきては一緒になって遊ぶ事もあった。
今日もいつものように外で遊ぼうと雪之丞を誘いに来たのだ。玄関に出てきた雪之丞の後ろを覗くと、いつもテトテトついて来る喜助の姿が見えない。
「喜助は?」
「あ、今寝てるから今日は二人で遊ぼう」
「ふーん」
夜は心なしか嬉しかった。喜助の事は勿論好きだ。だが、今何故嬉しいと思ってしまったのか、まだ幼い夜の心はその理由も、疑問を持つ事すら出来なかった。
「ね、夜七!あそこのお山に行ってみようよ!」
「いいけど・・大丈夫か?」
元々身体の丈夫ではない雪之丞は、あまり無理をさせないようにと両方の親たちに頼まれていた。
「うん!今日は凄く調子がいいから平気!ね、行こう!お花も綺麗だし」
5月中旬。夜たちの住む小さな村の集落には、まるで巨大な筆で絵の具をサッと塗られたように美しい花々が簡素な村を彩っていた。
暖かく心地よい春風に背中を押されるようにして、夜と雪之丞はその小高い山に登った。
「うわぁ、綺麗!」
「おぉぉ、すげぇなぁ」
子供の足で約20分は登ったところで、大分高い場所まで辿り着く事が出来た。
そこから見渡す景色は、いつもの自分たちが住んでいる村とは別のものに見えた。
「気持ちいいー・・」
そう言って青々と茂る草に寝転がる雪之丞は、まるで春に舞い降りた季節外れの雪の破片のようだった。そのままで居たらそのうち溶けてなくなってしまいそうな不安感さえ感じる。
確かめるように夜はそっと雪之丞の手を握ると、やっぱり雪のように冷たい手をしていた。
「雪之丞、こっち来いよ」
そう言って後から抱きしめるようにして自分の胡座の間に自分よりも少し小さな雪之丞を座らせる。
「お前、本当の雪みてぇに冷たいから俺があっためてちゃんと人間にしてやるよ」
夜は後から雪之丞の肩を抱いた。
少し驚いたような顔をしていた雪之丞だったが、嬉しそうにふわりとした笑顔を向けると、まだ薄い夜の肩に頭と体重を掛ける様にしてもたれた。
「夜七は暖かいね。眠くなっちゃうよ」
「寝てもいいよ」
夜はゆっくりと瞼を閉じていった雪之丞を少し上から見ていた。
長いまつ毛がまるで人形のようだ。ふっくらとした美味しそうな頬にそっと触れてみるとぷにぷにと気持ちが良かった。雪之丞は別段反応もせず、夜のさせたいようにさせていた。
赤みの差した唇に自然と目がいく。そこにもそっと触れた時、鳥が羽を開くように雪之丞の瞳が開いた。
「あ、ごめん」
何を謝っているのかよく分からなかったが、不透明な疚しい気持ちがあった事は自覚していたのでつい謝ってしまった。
ふと雪之丞が顔を夜に向かって上に上げた。
その瞬間、雪之丞が別人に見えた。艶のある黒い瞳で目を合わされた時、夜の身体中を走る血液が倍の速さで駆け巡り、顔がどんどん赤くなるのが自分でも分かった。
(どうしたんだ、俺。雪之丞が別人に見える・・)
数秒前まで普通に抱いていた筈なのに、今はどんな力加減で抱けばいいのか分からず焦ってしまっている。更に、雪之丞を抱く夜の手にはしっとりと汗が滲んできた。
(か・・かわいい・・)
心臓もドキドキと、それまで味わったことのない種類の動悸を感じていた。
雪之丞が更に可愛くみえてしまってまともに視線を合わせるのも照れてしまう。
「夜七・・」
その時、まるでスズランが透明の声を発したように夜の鼓膜に雪之丞の声が響いた。
「ぼく、夜七と一緒になる人は絶対幸せになると思う。」
そう言ってふっと優しくて少し寂しそうな表情を見せた。
それを見た夜の小さな心臓はキュッと掴まれた感じがした。
「じゃあお前が俺と一緒になればいいじゃねーか!」
ついムキになって言った。
すると雪之丞はクスクスとおかしそうに笑う。
「ちがうよ。ぼくが言っているのはお嫁さんになるって意味だよ」
夜は端からそのつもりで言っていた。
「だったらお嫁さんになればいいじゃねーか。」
「えー無理だよ、ぼく男の子だし」
「じゃあお婿さんでもいいよ!で、結婚しよう!」
雪之丞の表情がパァッと明るく花開いた。
「そうか!そうだね!それなら結婚できるねっ。わぁ、嬉しいな!」
夜は最高に嬉しかった。
まだお嫁さんやお婿さんがどういうものかも知らず、結婚とはただ一番好きな人と家族になれ、ずっと一緒に入られる約束だと思い込んでいた。
これでずっと雪之丞と一緒にいられる将来の約束が出来たと、ギュッと雪之丞の肩を抱きしめた。
幸せな気持ちで何となくふと見上げた空には、うすい月が浮かんでいた。
(美しい月だな・・・)
心でそう呟いた時、胸の中に激しく切ない思いが込み上げて瞳が開いた。
目を開けるとそこは薄暗い部屋で、17歳の夜が目を覚ましたところだった。
(夢・・か。そういやぁ、あんな事もあったっけな・・)
何となく寝付けなくなってしまった夜は、ふらふらとした足取りで縁側の方面へ向かった。
閉まっていた障子をスッと開け、眼下を流れる川に目をやると、水面に映った月が揺らめいているのが見えた。
顔を上げるとそこには、夜の空に夢で見たものよりもずっと美しい月が眩しい光を放っていた。
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サラサラと流れる川の音に混じってリンリンと鳴く虫の音を聞きながら、そんな事を思う夏の一夜だった。
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