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それから73最終話

 弘夢と淳平は翌日用意されていた車で帰った。昨夜の激しい情事で弘夢はグッタリとして車の中で気持ち良さそうに寝ていた。そんな穏やかな空気が嘘のように幸せに感じる。
 二人は取り敢えず渡のマンションまで帰る事にした。
 淳平は外の駐車スペースに車を置き、弘夢にはその中で待っていて貰った。

 もしかしたらまだ渡が中に居るかもしれないと思うと、緊張が高まる。弘夢に今までの事情を話すと、気を使ってくれたようだった。
 手にした合い鍵を差し込んで鍵をゆっくり開けた。少し重いドアをそっと開けて覗きこむように中へ入ると、シンと静まりかえる見慣れた玄関に違和感を感じた。
 部屋に入ると渡の荷物は一つもなく、淳平の物だけが綺麗に纏められていた。

(あいつ・・もう出て行ったのか・・?)

 淳平は昨日までの生活が嘘のように思えた。もう一度きちんと謝りの言葉と、感謝の気持ちを言いたかった。
 纏められた荷物の上には簡単なメモが載せられていた。
 そこには見慣れた渡の字で、謝らないで欲しいという事、そして自分は好きなファッションの道で頑張って行くという事が簡単に書かれていた。
 そして最後に淳平と逢えて嬉しかったと、今度こそ弘夢と幸せになって欲しい、ありがとうと、書いてあった。最後に名前は書かれていなかった。

(お礼を言うのはこっちだってのに・・)

 胸に込み上げる熱いものを感じてふと視線を下げると、メモの下に置いてあったのか、真っ白でふわふわした綿毛のついたタンポポが置いてあった。
 淳平はそれをそっと手に取った。

「名前のつもりか?」

 ふと笑みが零れて視界がぼやけた。

―ありがとう、渡。


* * *

 それから直ぐに淳平と弘夢は一緒に住む部屋を決めた。
「淳平!ご飯出来たよー!」
 テーブルには美味しそうに和食が並べられていた。まだ満足に引っ越しの片付けも出来ていないが、二人で新しい生活を徐々に始めていた。
 初めて付き合う弘夢は新鮮だった。何もかもが一からのスタートで、今まで知らなかった互いを毎日発見していく生活は想像以上に幸せな毎日だった。

(弘夢は和食が得意なのか・・あいつと正反対だな)

 淳平は最後に食べたあの渡の不味い卵焼きを思い出して一人笑った。
 あれはきっとこうなる事を予想しての渡の復讐だったに違いないと、今気付いたような気がした。

 食べ終わった食器の片付けを終えた弘夢が段ボールの中身を整理しながら淳平に話しかける。
「なぁ、淳平。やっぱり俺、仕事するよ」
「いいって。んな事しなくても俺が働いて食わしてってやるから」
 弘夢はこれから新しい仕事を探すと張り切ったが、淳平はそんな事をしなくても自分が養うと言い聞かせていた。
「心配なんだよッ・・また、何かあるんじゃないかって・・」
 淳平がまだ荷物の片付かない広い部屋の中でギュッと弘夢を抱きしめる。
「大丈夫。きっと、もう大丈夫だよ」

(だって・・きっと木戸さんが今度はそっと見守ってくれる気がするから・・)

 木戸なら、今度はそうするような気がした。こんなに心強い事はない。そう考えると少し可笑しくて笑みが零れた。
 今考えると、時枝も弘夢の苦しい気持ちを十分に分かっていてくれていた気がした。彼なりに色々と助けてくれたのだろう。

(あの二人、上手くいくといいな・・)

 弘夢は淳平の腕をそっと離し、少しつま先立ちになってキスをした。
「淳平、これからよろしくね。」
「ああ・・宜しくな」
 淳平も弘夢の腰を引き寄せ、後頭部にそっと大きな掌を添えて弘夢の唇を食んだ。


「ねぇ、これから沢山二人で想い出作っていこうね」
「そうだな・・じゃあ先ず何をする?」


「うーん・・家具を揃える!」
「それから?」


「旅行に行く!」
「それから?」


「それから・・写真を沢山撮る!」
「それから?」


「それから・・」

 尽きる事のない未来の話をする二人の顔は、中学の時のあの日に戻ったように幸せな笑顔になっていた。
 そして二人の未来を紡ぐ話はこの先もずっと続いた。


END


<<前へ      


<あとがき>
最後までお読み下さった皆さまには厚く御礼を申し上げますm(_ _)m
本当にありがとうございました!
「すれ違った後で」を突発的に書いて、幾人かの方々に続きが見たいと仰って頂いて調子にのって続きを宛てもなく書いてしまいましたがまさかこんなに長くなるとは!
沢山の登場人物が出て来て目を回されていなかったでしょうか。分かり難い部分もあったと思います(汗)
それでもここまで読んで下さった皆さまに感謝で胸が一杯です。
こちらも長く続いた作品でとても愛着のあるものになりました。
渡や木戸たちの今度の動向もそのうち書きたいと思ってます。渡、切ないですものね(>_<)

最後までお付き合い下さいまして本当にありがとうございましたm(_ _)m

新連載予告>>

★「それから」はすれ違った後に(全10話)の続編です。 

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00:00 | それから | comments (31) | trackbacks (0) | edit | page top↑

それから72話

☆18禁です

 入れ込まれた指は四方八方に引き伸ばされた。弘夢は腕を上に上げて枕にしがみ付きながら腰を浮かす。
 あの小柄な可愛らしい青年にも同じようにして毎晩解していたのだろうか。
 やはり激しく抱いたのだろうか、それとも優しく口付けなんかしながら抱いたのだろうか。
 そんな事を考えると嫉妬で気が狂いそうになる。淳平を好きだと素直に認め、淳平からも愛されていると確認出来ると嫉妬は酸素を吹き込まれた炎のように業火に変わる。

 それは淳平にも同じ事だった。
 こんなに身体中に印を付けられて、さぞかし激しく抱かれながら身体を変えられてきたのだろう。想像をするだけでもっと痛めつけたい衝動に駆られそうになり、つい指を激しく動かしてしまった。
「う・・っ・・くっ・・」
 弘夢はわざと声を押し殺した。止まらない嫉妬の渦が二人を焦がす。
 淳平は糸が切れたように腫れ上がったペニスをズンッと弘夢に突き挿した。
「う・・あああッ・・ああッ・・ああーッ」
 淳平は最初から激しく腰をうねらせた。
 そして弘夢は睨みつける様に下から鋭く淳平を見る。淳平も怒りを含んだ眼で見下ろしながら犯す。
「あの子にもっ・・んっ・・こんな風にして淳平のを・・あっ・・挿したんでしょう!?くっ・・」
「うるせぇ・・お前だってアイツに突かれまくってたんだろうが!」
「あああッ・・!やめっ・・ああッ」
 弘夢は初めて感じるどうしようもない嫉妬をぶつけたくて、枕を淳平に投げつけた。
「ッ・・!こん・・のッ」
 怒った淳平は枕を掴んで床に投げ捨てると、ベッドの枠部分に掛けてあったトレンチコートの布のベルト手に取り、弘夢の両手首を縛り上げた。
「止めろっ・・このッ・・バカぁ!淳平のバカァ!嫌いだっ」
 自由を失った弘夢が身を捩りながら叫ぶ。
「あぁ!俺だって許さないからな!こんなに厭らしくなりやがって!・・アイツの前でもその声で叫んだんだろうが!?ええ!?」
 淳平は弘夢の両足首を持ち上げて高く腰を浮かせた。そして上から思い切りペニスを奥に突き入れた。
「ああああッ・・ああッ」

 ギシギシと激しくベッドの上で跳ねながら互いを睨みあった。心の中は嫉妬で狂いそうなのに、身体はこの上なく興奮してどうしようもない程に感じる。
 淳平が自分の肩に弘夢の足を引っ掛けて、パンパンと強く腰を打ちつけ始めた。その度にベッドも一緒にギシッギシッと大きな音を立てて揺れる。
 淳平の顔が上から近づき、唇がほんの少し触れあった状態で更に速くペニスが抜き挿しされた。
「許さない・・許さない・・」
 弘夢は怒りと恍惚の表情で言葉を発する。許さないと呟き、涙を溜めて睨みながらも淳平の打ちつける腰に合わせて腰を擦りつけるように浮かして振る。
 上で淳平の唇がスッ、スッと僅かに触れながら上下に動く。
「俺も・・許さない・・弘夢・・許さないッ」
「んんっ・・んむっ・・あっ・・んっ・・淳平っ・・んんんっ」
 二人は激しく舌を絡めあう。

―これから他の奴に触れられたら、許さない
―これから他の奴に触れたら、許さない

 弘夢の顔の左右に立てられた淳平が腕の筋肉をくっきりと見える。淳平は弘夢の唇を激しく吸いたてながら激しくベッドを揺るがした。
 そして顔を弘夢の胸元に近づけると、ピアスを噛んで引っ張り上げたまま腰のスピードを上げた。
「あぁぁぁっ淳平ぇぇぇぇ」
 暴れていた弘夢の両手はベルトが緩むと直ぐにそこから抜け出して、淳平の引き締まった臀部を掴んだ。そして両足を激しく動く淳平の腰に巻きつかせる。
「なっ・・・!・・弘夢ッ何勝手に・・お・・おいッ・・何する・・やめっ・・」
 今まで尻など触られても何も感じなかったのに、弘夢に掴まれたそこは確かに性感帯となっていた。
(ヤバい・・何だ・・コレ?)

「許さない・・んだからっ・・んっ」
 弘夢は唾液を付けた指でグリグリと淳平のアナルを弄ると、中で淳平のペニスは爆発的に膨張した。
「あぁぁああんっ・・すご・・いっ・・いいの?淳平、コレ、いいの?・・あんっ」
 まさか自分がそんな所で感じるなど思いもしなかったが、今まで感じた事のない興奮が駆け巡る。

「やっ・・やめっ・・弘夢っ・・うっ・・あっ・・あっ・・!」
「あぁあんっ・・すごい・・イイ顔・・淳平ぇ・・あああっ・・!もっと突いてぇぇ!」
 弘夢は更に指を挿し込み折り曲げて刺激を与えると、淳平が叫び声を上げた。
「う・・ぁぁああっ・・やめっ・・ああッ・・ああッ」
 気が遠くなる程の快楽が淳平を襲い理性は完全に砕け散った。ただ獣のように叫び声を上げてベッドの木枠を掴みながら弘夢にペニスを打ち込んだ。
 ベッドのスプリングはギシギシと軋み、木枠もネジが外れそうな程ガタガタと揺れる。
「いや・・あああっ・・ベッドっ・・壊れちゃ・・ううぅ・・あっあっあっ・・すご・・いっ」
「弘夢ッ・・愛してるッ・・弘夢ぅぅ!」
 そう叫んだ淳平は一気にペニスを引き抜くと真下にいる弘夢に思い切り精子を全身に掛けた。
 熱い液体がボタボタと唇や乳首や首筋、そして腹部や性器、太股にまで掛っていく。
 弘夢は最高の至福を感じた。
 ゆっくりと長いまつ毛を開くと、その弘夢の見せた恍惚の表情で淳平は眩暈を起こしそうになる。

「淳平ぇ・・もっと・・汚して・・お前のでもっと・・もっと・・!」
 淳平は精子の雫のついた血管の浮き出た真っ赤な肉棒を再び容赦なく突き挿した。すると途端に弘夢の限界も超え、中でドライオルガズムを引き起こした。
「あああああぁぁッーッ、ああッ、ああーッ」
 中の激しい伸縮で淳平のペニスに蕩けるような気持ち良さが襲う。
 ゴリッ、ゴリッと弘夢の前立腺部分にカリ首を引っ掛けながらペニスを前後に擦る。弘夢の腰がブルブルと震えてきた。
「気持ちいっ・・弘夢っ・・気持ちいよぉ・・ハァ」

 汗ばんで濡れた弘夢の艶めく身体をひっくり返しうつ伏せにして後ろから犯す。
 淳平は弘夢の妖艶な毒気のある美しさを再度実感していた。触ると吸いつくような肌が卑猥に動く姿は淳平の視覚を虜にする。少し枯れた喘ぎ声は変声期の少年のようで聴覚を異常に刺激する。
 弘夢の手首から外れたベルトを掴むと、徐に弘夢のペニスリングに通してベルトを咥えて引っ張った。そのまま同時に後ろから乳首もピアスごと引っ張ってやる。
「ダメっ、ダメぇぇ、全部引っ張ったら、またイっちゃう!イっちゃうからぁぁああんっ」
 弘夢の身体が淳平の身体ごと一瞬宙に跳ねあがる程ビクンッと大きく痙攣した。その後も小刻みに痙攣する弘夢に容赦なく突き挿し、射精しそうになるとペニスを抜いて再び弘夢に浴びせた。
「あ・・ふっ・・愛してるぅ・・淳平ぇ・・あんっ・・も・・だめ・・」
 意識が薄れてきた弘夢は身体中淳平の精子塗れにしながら、涎をベッドに垂らしながら呟く。
 “愛してる”。その言葉で淳平も弘夢も狂っていくようだった。今まで傷ついた心の部分までもが気持ちいいと叫ぶ。
 淳平は弘夢を仰向けにし、ベルトを弘夢自身に咥えさせた。

「自分で全部引っ張ってみせろ。そしたら中で出してやる」
「んんっ・・は・・い・・」
 弘夢はベルトを歯で咥えて強くクンクンと引っ張りながら両手で乳首のリングもツンツンと引き上げる。その箇所は既に赤く腫れ上がり少し血も滲んで来ている。
「んーっ、んんーっ・・やっやっ・・んんーッ!」
 その様子を上からじっくり見られると、自然とアナルが引き締まってしまう。
「ああッ・・愛してる弘夢ッ・・中に出すぞッ」
 淳平は弘夢の咥えるベルトに噛みつくと更に強く一緒に引き上げた。
「ひッ・・ぃぃぃいいいんんッ!」
 そして弘夢と淳平は同時に一瞬意識を飛ばした。
 それはほんの一瞬で、淳平の意識がスッと戻ると、まだ弘夢の中で自分のペニスから精子が飛ばされている最終だった。
 気持ち良過ぎて飛んだようだ。弘夢の身体はまだイきっぱなしで痙攣しているが意識は飛んでしまっているようだった。

(やっと手に入った。やっと一つになれた・・弘夢・・)

 淳平は汗ばむ弘夢の身体をギュッと抱きしめて意識を再び手放した。



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えらい長くてすみません・・渾身の想いでつい(;゚∀゚)=3ハァハァ
明日はとうとう最終回。と言う事で、コメ欄遅くなりましたがオープンしましたm(_ _)m

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それから71話

☆18禁です

「嫌・・見ないで・・っ・・」
 弘夢は身体を横にして丸める様に隠し、淳平の視線を恐れる様に自分の目を手で覆った。
 すると柔らかい感触が肩に触れ、そのまま細い腰までそれは降りて行った。ハッとして見ると、そっと唇を這わせる淳平がいた。
「や・・やめて・・こんな身体になった俺は嫌な筈だろう!?」
 抵抗しようとする腕を掴むと鋭い目で見られて金縛りにあうように身体が固まる。

「平気だ。」
「俺がッ・・平気じゃないんだよ!!」
 つい我慢出来ずに本心を口にしてしまった。そうだ。自分自身が耐えられなかった。
 だが淳平は穏やかに、そして鋭い目で恥ずかしい部分をジッと見る。それに思わず身を捩るようにして隠そうとすると淳平が口を開いた。
「愛するよ。あいつが愛した部分も全部。お前の恥ずかしい部分も全部。新しいお前ごと。」
「っ・・・・!」
 淳平がそっと乳首に光るピアスごとその部分を口に含ませると、ピクンッと身体が震えた。
「あっ」
 カチカチと歯でピアスを弄びながら引っ張る様にして乳首を食んだ。
「あっぁあんっ・・い・・やあ・・ああっ」
 気持ち良過ぎる。その部分がこんなにも感じる事など自身も知らなかった程に感じた。

「感度、もっと良くなったんだな。」
 淳平が話す震動さえもピアスに響く。
「淳平・・だからだよっ・・こんなに感じるのっ・・初めて・・あぁあんっ」
「へ・・ぇ・・」
 淳平はもう片方の乳首にあるピアスを摘まみ引っ張り上げた。痛気持ち良さがズクンッと下半身に集まる。
「あっあっ・・ダメっ」
「本当に厭らしい・・そんなお前を今もっと好きになってる俺もどうかしてるかもな・・」
 淳平の下半身は透明の液体がダラダラと腹を空かした猛獣の涎のように垂れ流しになっている。
「少し痛みを与えてる時のお前の顔・・すげぇよ。・・木戸ってやつがこんな事したがる気持ちも分かる気がする・・」
「あああっんんッ!」
 淳平がペニスに付けられたピアスの輪の中に指を2本入れ込み回転させながら引っ張り上げた。

「他にどうして欲しい?弘夢・・言えよ・・」
 今までに見た事のないサディストの目をした淳平を見ると、ゾクゾクと激しい悪寒が全身を走り、それだけで射精出来そうだ。
 弘夢はゆっくりと後ろを向いて尻だけを高く突きあげるように床にうつ伏せになった。淳平には広がったアナルが良く見えるだろう。そう考えるだけでも堪らない。
 恥ずかしい淫乱な自分ごと愛してくれると言ってくれた。ならば、いっそ素直にありのままの自分で甘えたい。
 本当はどれだけ淫乱かを知らしめたい。本当にこんな自分を愛せるか試したい。そして、めちゃくちゃにされたい。

「叩いて・・下さい・・」
 涙を浮かべて顔を後ろに向けながら恥ずかしげにそう言う弘夢を見て淳平の中で何かに火が点いた。
 初めて振りおろしたその掌は容赦なくバチィィィンッと鞭のような音を立てて、丸く弾力のある弘夢の尻たぶを大きく揺らした。
「あああああぁぁぁぁぁーッ」
 弘夢の甘く甲高い声が部屋に響き渡ると、淳平の中にゾクゾクとしたものが疼いた。

(何・・だコレは・・)

 淳平のペニスはビクンビクンと反応して上下に動いている。
 そしてもう一度バチィィンッと反対からも叩く。最初は遠慮気味にと頭では思っていた。だが、叩く瞬間にわざと痛みを与える様に身体が勝手に動いてしまう。
 ピシャンッ、ピシャンッと激しく連続で叩くと青白かった弘夢の尻が赤く染まって来た。いつの間にか淳平も弘夢も息を荒げている。
「イきそうなのか?・・ん?弘夢・・叩くだけでイけるんだろう?もっと強くがいいのか?」
 掌を上下左右から鞭のように撓らせて尻たぶを激しく叩いて揺らす。
「あ・・ぁ・・・そんなにしたらっ・・イっちゃうっ・・イっちゃうっ・・やっ・・じゅんぺぇぇぇっ」
 弘夢は嬉々として痛みを与える淳平を後ろに見ながら激しくせり上がる射精感を感じる。
 そして太股までも同時に叩かれると、途端にペニスが腹まで仰け反りビュルッと精液が飛び出てしまった。

「やっ・・あああああーッ」
 アナルは大きく伸縮を繰り返している。淳平は堪らずそこに思い切り舌を突っ込んだ。
「あぁぁあーッダメダメっ・・あぁっ・・出るっ・・でるぅぅぅぅっ」
 再び残りの精液が2度3度ビュルッビュルッと飛んだ。
 淳平は舌を抜くと、すっかり汗だくになった弘夢の艶めかしい身体を抱き上げ、小さく狭いベッドへ乗せた。

「淳平・・・気持ちぃ」
 ウットリと蕩けた瞳の弘夢を見て淳平は弘夢の口に舌を挿し込んで蹂躙しながら喋った。
「ん・・俺も何だか変わっちまいそう・・だ・・」
 そして弘夢の腹に撒き散らされた精液を拭い取ると、弘夢のアナルに塗りたくり指を入れ込んだ。



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次回、Rが長いですが二人の想いの丈故でございますので、
どうか呆れず見守り下さいませ~(-"-;A

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それから70話

 防波堤で息を整えていた二人だが、身の凍りつきそうな寒さにガタガタと震えが襲って来た。
「弘夢ッ・・弱ったな・・どうする・・」
 淳平は辺りを見渡すが乗って来た車も木戸たちの車も既に無いものと考え、とにかく暖を取れる場所まで移動する事にした。
「歩けるか?」
 弘夢の唇は真っ青になり、白い肌は透き通って青い血管まで見えている。
 とにかくこの冷たい水を含んだ服を脱がなければどんどん体温を取られる。
 その時、上の方に見知らぬ真面目そうな男が降りて来た。
「お手伝い致します。」
 その男を見た弘夢がカチカチと寒さで歯を鳴らしながら「福田さん」と言った事からどうやらあの木戸の部下か何かだと予想出来た。
 この上また何かを企んでいるのかと淳平は身構えるが、漸く道に出た時に福田という男は「失礼致します」と一言言って弘夢の首輪をカチリと外した。

「木戸さまからの伝言でございます。“悪かった”、だそうです。そして明日お帰りの車を手配致しますので、今晩はこちらで一先ずお休み下さい。」
 そう言って簡単な地図の書かれた紙と鍵を渡された。お辞儀をして帰ろうとする福田に弘夢が言った。
「あのっ・・時枝さんに・・“ありがとうございました”って・・お伝え下さいっ」
 福田は振り返り、軽く会釈をすると足早にその場を立ち去った。
 そして急いで地図の書いてある場所へ移動した。

 暫くするとそう遠くない場所に木戸の持つコッテージなのだろうか、木造で出来た古びた建物があった。急いで鍵でドアを開け、中へと入ると海風が凌げるだけで相当寒さが違って感じた。
 もう大分使われていないのか、ギシギシと凄い音がするが意外にも小奇麗にされて色々と道具も揃っているのを見るとメンテナンスには誰かしら定期的に来ているようだ。
 淳平は急いで暖炉に火を付ける準備をする。

「弘夢、早く服を脱げ」
 そう言うと、弘夢は困った顔をしてなかなか服を脱ごうとしない。
「何してるんだ!?早く脱がないと風邪引くどころじゃないぞ!?」
「あ・・あのっ・・じゃあ・・こっち・・見ないで・・」
 何を恥ずかしがっているのかと不思議に思いながらも了承して懸命に火を焚いた。
 暫くすると小さな声で「もう、いいよ」と聞こえて振り返ると、傍にあった毛布で裸体を包んだ弘夢が座っていた。
 艶やかな肩が毛布から出ているのが妙に色っぽい。不謹慎にもドキドキと中学生のように胸が高鳴り淳平は目を逸らした。
「もっとこっちに来い。寒いだろ」
 そう言いながら自分も急いで服を脱いで乾かす様に広げた。

 弘夢の目の前で、淳平は恥ずかしさを微塵も出さずにボクサーパンツまでスルリと脱ぎ捨てると、引き締まった裸体が現れて思わず目が釘付けになる。
 全体的に日焼けの浸みこんだ健康的な肌色は湿り気を含んで艶めかしく筋肉の一つ一つを浮かび上がらせていた。

(や・・やだっ・・)

 駄目だと思うのに弘夢の下半身はどんどんと膨らんで大きくなる。それを隠す様に暖炉の前で毛布で身体を包む。
 淳平は簡易ベッドまで歩き、シーツで簡単に身を包むとそのまま弘夢の後ろに座り、弘夢を後ろから抱きかかえた。
 弘夢はドクンッと心臓が大きく跳ね、そのまま異常な速度で鼓動は走り続ける。緊張で身体も固まる。
「弘夢・・・」
 そう耳に唇を付けて囁かれると心臓は緊張ではち切れそうになる。
「・・んっ・・や・・」
 淳平は弘夢を毛布毎抱きしめながら後ろから細く白い項にキスをし、そして後ろから頬にもキスをした。
 淳平の冷たい唇が触れた箇所は点火されるように次々と熱を持った。

「はっ・・んっ」
 そしてゆっくりと顔に手を添えられ見つめ合った。暖炉では木々がパチパチと燃える音がする。
「愛してるよ、弘夢・・もう離さない。絶対に。・・絶対にだ・・。」
 弘夢は胸の高ぶりを押さえられない程身体中が高揚した。
「俺もっ・・お前を愛してる・・ずっとお前だけを愛してたっ・・もう、離れたくない・・離さないでっ」
 そう言って弘夢も涙が零れると同時に、淳平に顔を強く引き寄せられ唇を塞がれた。
「んっ・・んんっ・・ハァ・・んっ・・んぁっ」

 激しく舌を互いに絡みつかせ唾液も足りないと感じる程に貪り合った。蕩けるような舌は互いに異常なまでの快楽を口内に与えた。
 淳平の下半身は痛い程に勃ち上がり熱を持って弘夢の腰辺りに突き刺さる。
 ピチャリピチャリと激しく舌を絡めていると、淳平がゆっくりと弘夢の身体を押し倒した。
 そしてゆっくり毛布を剥ごうとしてきたので、慌てて抵抗した。
「ダ・・ダメっ・・ハァハァ」
 その抵抗に淳平の顔が強張る。
「どうして・・嫌か?」
「あ・・違っ・・」
 身体の恥ずかしい場所に付けられたピアスを淳平に見られる事はあまりに恥ずかしく、そしてそれを見た淳平を想像すると怖かった。

 蔑まれるだろうか。こんな身体に触れたくないと思われるに違いない。嫌われるだろうか。汚いと思われるだろうか。厭らしいと思われるだろうか。

 次々と襲う不安を余所に怒りを含んだ淳平は無理矢理激しく床に組み敷んだまま口内を犯してきた。
「んんっ・・やっ・・あ・・んんーっ」
 そして首筋に噛みつかれると、弘夢はゾクリと激しく身体が歓喜に粟立った。
「はっ・・ぁああんっ」
 あまりに厭らしい声が鼻から抜けると、次の瞬間に緩んだ手元から毛布が引き剥がされた。
「あッ・・・!」

 そしてその美しく純粋な裸体に卑猥なピアスが余りにも生々しく妖しい光を放っていた。



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どうする淳平!弘夢の身体は確実に以前とは違うゾー!

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それから69話

 それは一瞬の出来事の様だった。
 凄い勢いで落下する恐怖を味わいながら、視界から誰も居なくなり独りの不安に襲われていた。
 脳裏には岩に砕かれ潰れた自分を想像して本能が生にしがみ付こうともがく。
 やはり、どんなに納得した死であれ、怖い。怖くて仕方がなかった。
 逃れる事の出来ない恐怖で叫び声を上げるが、地球の引力に引き寄せられるままに冷たい海へと落下した。

 その勢いは凄くどんどんと海の奥へ身体が沈んでいった。最初に頭部に氷水のような冷たい海水を感じ、続いて肌の出ている顔や手、そして徐々に服に水が沁み渡ってきた。
 上手く岩場を避けて落ちたのか、どこまで沈んでも何にも衝突しない。
 だが、染み込んだ服の重みは徐々に深海へと引きずり込もうとする。無意識にもがくが、半分パニックになっている状態では一体どちらの方向が海面なのかすら分からない。
 ついに酸素が足りなくなり、息が苦しくなった。空気を吸いたいのに、無意識にゴボゴボと残りの肺にある空気を出し、空気を吸おうとして海水を飲み込んでしまう。
 あまりの苦しさにパニックはピークになり、手足をバタつかせるが意識が朦朧として来た。

 すると、手首が掴まれる感覚が僅かに薄れる意識を呼び戻す。
 薄暗くぼやけた海の中で見えた人影はとても愛おしく感じられた。そして何かが唇に触れると酸素が肺に送り込まれてきてゴボゴボと水中で咳き込んだ。
そして凄い勢いで身体が何かに引っ張られるような感覚のみを味わっていると、急に周りの音がハッキリと聞こえ出した。
 だが、急いでたりない酸素を補給しようと激しく咳き込みながら空気を慌てて吸う。

「ゴッホッ・・ゲホッ・・ハァ・・グッ・・ハッ・・ハァ」
「大丈夫か!?弘夢!」
 苦しさで涙を流しながら目の前で自分を力強く支える身体にしがみ付いていた。少し落ち着くと、その人の顔を見て信じ難い気持で目を見開いた。
「淳平・・どうして・・」
「とにかく今は俺に身体を預けて力を抜いてろッ」
 そう言うと淳平は二人分の負荷をもろともしない程力強く弘夢の首元を腕に抱えて泳ぎ、防波堤のある場所まで泳いだ。
 弘夢は今自分を抱えているこの腕が淳平のものだと俄かに信じられない想いでドキドキと心臓が波打つ。
 防波堤まで辿り着くと重い身体を引きずる様にして二人で石の上に倒れ込んだ。


 膝を付いたまま呆然としている木戸に時枝がゆっくりと近づくと、ザッと立ち上がった木戸が時枝の細い腕を掴んだ。その凄い力で手首が折れてしまいそうだった。
 だが、時枝は素直な気持ちで木戸を見つめる。
「木戸さん、もう無理だと分かっていたでしょう?貴方にこれ以上辛い想いはさせたくなかった。」
 すると手首を更に強く掴まれ血が止まる。
「・・ッ・・お怒りなら、私を好きにすればいい。ですが、これだけ言わせて下さい。」
 木戸の瞳は怒りで煮え滾っている光と、悲しみで濡れた色を同時に兼ね揃えていた。
「貴方を愛してます。ずっと、愛してました。貴方と初めて出会った日から・・ずっと。貴方だけを」
 木戸の瞳が大きく見開かれ、そして手首の力が緩まった。
「何・・だ、それは・・」
 木戸の驚いた顔を見て、時枝は少し笑った。

「全く・・どうしようもない鈍感なお人だ・・ふふっ」
 初めて見る時枝の笑顔に、木戸は止まっていたような心臓がドクンッと蘇生されたような衝撃に襲われた。
 その笑顔は、初めて木戸が弘夢の笑顔を見た時と同じような感覚を木戸にもたらした。
 一種感動にも近い衝撃きだ。その感覚をもう一度味わえるとは思っていなかった。

(何だ・・この感覚は・・)

「因みに、弘夢くんなら大丈夫です。」
「・・どういう事だ?」
「ここから飛び下りても岩礁は一つもありませんから、溺れない限り死にません。」
 木戸はその小悪魔の様な笑顔の時枝を呆然と見る。

「私は、貴方を手に入れる為なら何だってします。慶介さん、もう、私だけを見て頂けませんか」
 そう言ってそっと木戸の広い胸の中に入り込むと、黒い手袋の先を噛んで手袋から冷たい手を出した。そしてそっと木戸の頬を触り、顔を引き寄せてゆっくりと唇を重ねた。
 海風で冷えた時枝の唇が重なると、それはしっとりと柔らかくて気持ちが良かった。
 鈍感な木戸は一度に明かされる色々な事に困惑していた。木戸は少し戸惑う様な素振りで視線を泳がせると、時枝がもう片方の手で木戸の顔を正面に向けさせる。

「今は無理でもいいです。ゆっくり私を見て下さい。」
 思いがけない時枝の告白と行動に、木戸は思った以上の衝撃を感じた。
 攻めに興じてきた木戸は攻められるのは初めてで固まる自分にすら驚いていた。
 時枝はそんな事はお構いなしにクールに質問してくる。
「あ、そう言えば弘夢くんの首輪の暗証番号なんですが・・」
 そう聞かれて木戸はおずおずと答えた。
「あ・・あぁ・・1111だ。」
 時枝はその番号を聞いてハッと顔を上にあげた。
「木戸さまが付けて下さった・・私の誕生日・・?」
 木戸は少し力を抜いていつもの余裕のある顔に戻った。そして時枝の肩を抱いて車の方へと歩きながら話した。
「そうだ。俺の一番好きな数字をお前にやったんだ。あいつの誕生日なんか付けたら直ぐにお前に解除されそうだからな。」

(木戸さまが作って下さった私の誕生日・・木戸さまの一番好きな数字・・)

「それは盲点でした。まさか自分の誕生日をだなんて絶対に一番にリストから外しますから」
 時枝は今までで一番幸せな気持ちになった。
「木戸さまはそんなに1という数字が好きなんですか?」
 時枝は少し笑いを堪えるように聞く。
「あぁ。何でも1番が好きなんだ」
 そして自分よりも頭一つ大きな木戸の寂しげに笑う顔を見上げた。

「私は貴方が1番好きですよ。一生お傍にいます。」
 その言葉に木戸は不敵な笑みを浮かべて見返してきた。
「じゃあ、取り敢えず今日は飲みにでも付き合ってもらおうか」
 すると時枝はいつものクールな仕事様の顔に変わり、サッと手帳を取り出してこの近辺にあるバーのリストを検索し出した。
 その様子を木戸は可笑しそうに上から見た。



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それから68話

「あと・・5分ですね。覚悟は宜しいですか?」
 後ろから時枝の声がする。
「・・・・・」
 弘夢はジッとただ濃い灰色と薄い灰色のまだら模様になっている曇天の空を見つめていた。
 最後に願うなら、本心を打ち明けたかった。ただ、心の底からお前を愛していると。
 遠くの方から激しいエンジン音が近づいてきたのに気付いて時枝が振り返る。
「間に合ってしまいましたか・・」
 その声に後ろを振り返ると、必死に走って来る木戸の姿が見えた。
「木戸・・さん?どうして・・」
「私が連絡を入れたんですよ。仕事の予定は報告しないといけませんから。」
 初めて見る木戸の慌てて走る姿に、少し胸が痛む。

「弘夢ッ!弘夢―ッ!」
 木戸が後10メートルという所まで来た時だった。
「そこでお止まり下さい、木戸さま。それ以上いらしたら予定を速めなければなりません」
 時枝がそっと腕を掴んで立ち上がらせ、崖の方へほんの少し押すとジャリッと小石の音が響いて足が竦む。
 木戸は肩で息をしながら時枝を睨みながらも止まった。
「言いたい事は分かっております。ですが、これはあくまで弘夢くんの意志ですので。」
 時枝は木戸の視線を氷のような冷やかな視線で返すと、木戸はギリッと歯を喰いしばった。
「弘夢ッ戻って来い!お前ッ・・自殺なんかしたらどうなるか分かってるのか!?許さないぞ!」
 死んだら許すも許さないもないのに、こんな時まで偉そうに脅す木戸が何やら不謹慎にも弘夢は愛おしく感じてしまった。
 自分はここに来て、改めて木戸に愛されていた事を実感できて嬉しさが込み上げてきた。

「因みに、渡にも連絡は入れてあります。彼が淳平くんを連れてくるか、この事を知らせないでそのまま幸せな生活を続けるかは、彼の判断に任せました。」
 その言葉に妙な可笑しさが込み上げてきた。あと3分程度だというのに、クスクスと笑みが零れ出す。
「ふふふっ・・渡くんが、言う筈ないじゃないですか・・クスクス」

「そうですかね・・。皆、色々と気付いてしまうものもあるんじゃないんですか。私もその一人です」
 笑いは瞬時に止まり、時枝の顔を見るとほんのりと穏やかな、自分の中の何かを認めたような顔をしていた。初めて見る時枝の自分の意志の籠った目はとても美しかった。そしてその瞳が何かを捉えた。
「ほら・・・もう一人、気付いた人が・・」
 そして視線を向けると、そこには砂煙を上げて走って来る、もう二度と逢う事は無いと思っていた男の姿があった。
「あと2分」
 時枝は時計を見る。
 木戸も淳平の姿を見るとギリギリと歯を更に喰いしばり拳を作る。
「弘夢―ッ!弘夢ぅぅッー!」

 弘夢の内側から熱いものが湧き上がって来た。

―逢えた・・

 きっとこの距離なら間に合わない。今素直に伝える事が出来る唯一の瞬間なのだろう。
 弘夢は真っ直ぐ正面を向いて立った。

「木戸さん」
 弘夢に呼ばれた木戸は無理矢理力ずくで時枝を押さえ、弘夢を掴もうとしていた身体を強張らせた。
「愛してくれて、ありがとうございました。俺、木戸さんの事、少し好きでしたよ」
「弘・・夢・・」
「一番に愛せなくて、ごめんなさい。俺、やっぱりアイツじゃなきゃ駄目みたいでした」
 本当は自分の事は弘夢の視界にも入れて貰っていないと思っていた木戸は、初めて本心から言われた“好き”という言葉に膝が崩れた。

―嫌われて無かった・・

「弘夢・・・っ・・!」

木戸は手を口元に当てる。

「あと、20秒」

 弘夢は走り込む淳平の姿を微笑んで見つめていた。そして大きく息を吸い込んで叫んだ。
「淳平―ッ!」
 淳平にはハッキリとその声が届いているが、走る足を更に速める様に返事もせずに砂煙を上げる。

(お願いだ・・間に合ってくれ・・!)

 弘夢は声を届かせる様に両手を口に当てて遠くまで聞こえるように叫んだ。
「俺は・・っ・・お前を愛してるーッ!!」
 弘夢の目尻にじわりと熱い涙が浮かぶ。
「愛してる淳平―ッ!!・・っ・・お前だけ・・をっ・・うぅ・・愛してる!!」
 幾年月もすれ違って来たこの想いを最後の瞬間に届ける様に、伝える事が赦されるこの瞬間に精一杯叫んだ。

「弘夢―ッ!!」

(あと少し!!)

 淳平が木戸の横を通り過ぎる所まで来た瞬間、腕を掴まれて動を止められた。

「行かせないッ」
「な・・・・ッ!!」


「時間です。」


 そして時枝はポンッと軽く弘夢の身体を海の方へ押した。
 バランスを崩してゆっくりと身体が斜めになると、視界はどんどんと上へ向いた。
 今更無意識に何かに掴まろうとする手が空中でもがく。
 そして弘夢は全員の視界から消えた。

「弘夢ぅぅぅうううーッ!!」

 木戸が膝を付いたまま叫び声を上げると同時に淳平が木戸の手を振り払った。

「悪ィな・・俺はもう、アイツとは離れないッ!諦めろッ」

 そういうと淳平は迷わずスピードを緩める事をせずに走り込んだ。

「な・・にを・・」

 木戸は呆然とその様子を見る。時枝も静かにその様子を黙視する。
 そしてそのまま弘夢の消えた場所に思い切り飛び込んだ。



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それから67話

―すまない、渡ッ・・ありがとうッ・・!

 淳平はギュッと強く目を瞑った。
 渡の想いを受け止め、剥き出しの地面を蹴って走った。
 激しく砂利を踏みつける音を立てながら、一分一秒を争う瞬間を想って酸素が足りなくても構わず走った。

―弘夢ッ・・・・

* * *

 時枝に連れて来られた弘夢は断崖の下を覗き込んだ。15~20メートルはあるだろうか。かなりの高さの下で大きくうねった波が崖の壁を駆け昇ろうとしていた。
 鼠返しにも似た構造のその抉れた崖は何百年もかけて波が岩盤を削って来たのだろう。
 絶壁にそって右の方を覗くと、崖はなだらかに加工されて防波堤が組まれていた。

 海に吹く風は何故こうも強いのか。風に押されて大きく波立つその海水は冬に見ると一層に冷たそうに感じた。
 曇天の下に広がる海原は灰色がかった群青だ。
 太陽に反射する煌めきもなければ透明度もない。計り知れない底の深さを思わせるような、今の弘夢にはただ恐怖心を煽るだけの不透明な海がどこまでも広がっていた。

「そこから飛び込めば海の下には岩が無数に隠れてますから、それに当たって死ねますよ」
 時枝の淡々とした説明が何だか妙に恐怖心を拭い取るようだ。
「あと1時間ですからそれまで好きにしていて下さい」
 そう言うと時枝は冷たい風で手が寒かったようで黒い皮の手袋をした。そして携帯を取り出しどこかに掛けながら車の元へ歩いて行った。
 真正面から止めどなく吹く風が冷たくて寒い。崖の先端に座りこむとゴツゴツとした岩肌の感触とヒヤリとした冷たさが臀部に伝わり、トレンチコートとマフラーをギュッと身体に引き寄せた。

(可笑しいな・・これからもっと冷たい所へ行こうとしているのに・・)

* * *

 いつものように車の後部座席で仕事に向かう木戸のポケットで黒い携帯が耳触りにならない程度の音で鳴った。
 木戸は急になった携帯をいつもと同じように取る。
「何だ」
『時枝です。緊急の予定がございます。』
「どうした」
『今から1時間後に弘夢くんが織部(おりぶ)岬で自殺される予定になっております。』
 木戸は止まった。如何にもふざけているとしか思えないこの言葉は、時枝から直接聞く事で疑いようのない事実だという事を認めざるを得ないものになる。
『木戸さま・・もう、分かってらっしゃると思いますが、あの子はやはり貴方の思い通りにはならないようです。私も、これ以上貴方に苦しむ想いをさせたくはありません』

「時枝、お前自分が何をしようとしているか分かっているのか。自分もどうなるか分かっているのか!?」
 木戸は怒りで声を雷の様に荒げた。運転手がビクビクとバックミラーで木戸を見る。
『はい。覚悟は出来ております。時間厳守で執行させて頂きます。以上、報告でした。失礼致します』
 一方的にプチッと切れた電話を震える手で握り締めてもう一度時枝に掛け直すが電源は既に切られていた。
「クソッ・・・・おい。」
 木戸は怒りを含んだ魔獣のような目をバックミラー越しに運転手に向けると、運転手は刃物でも喉元に突き付けられたような感覚に震えた。
「は・・・はいっ」
 運転手の声が裏返る。

(ここからなら丁度その位で着く。急におかしな予定を組んだものだと思っていたが・・あいつ、最初から狙っていたか・・)

「今から至急織部岬へ直行しろ。1時間以内で着かなければ・・五体満足で帰り道を走れると思うなよ」
 運転手は一気に血の気が引き、次の瞬間にはアクセルを思い切り踏んでいた。

* * *

 時枝は電源を切った携帯を車の窓から助手席に放った。

(後は前に電話した渡がどうでるか・・ですか。)


 時枝は大分前に渡に自殺の日程を伝えていた。

『以上が今後の彼の予定です。』

『・・何故それを僕に言ったのですか』

『弘夢くんが死ねば任務は強制的に終了となりますし、貴方もこの仕事に関わっていたのですから最後の報告として受け止めてくれれば結構です。この話を聞いて、貴方がどう出るかは任せます。』


 時枝は右腕をほんの少し捲り、時計を出すと時間を確認した。
 あと30分もない。
 風が時枝の髪を乱して美しい横顔に張り付く。それをサラリと黒皮の手袋で払い除けた。
 時間は皆に平等にある筈だが、それぞれが感じる時間の長さにはハッキリと違いが感じられているのが不思議だ。

―あと、15分。

 時枝にとってそれはとても長く感じた。



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とうとう全員が揃いそうですッ(>_<)

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それから66話

 暫く平穏が続いた。淳平にとってそれは酷く平穏だった。大切に想う人と寝食を共にし、離れる事なく生活する。
 穏やかに穏やかに、花びらが風に乗ってどこぞに落ちるよう、自然に流れに乗るように時を過ごした。
 このまま互いに働き、老い、想い出を語りあって朽ちて行くのだろう。それも悪くない。

 だが山の天気が一気にその様相を変える様に淳平にもそれは訪れた。
 その日もいつものように渡の作る洋食の朝ご飯が出てくると思っていた。
「はい。どうぞっ」
 目の前に出てきたのは慣れない和食が用意された。焦げ過ぎた魚と色の濃過ぎる味噌汁に水気の多いご飯。漬けきれていない薄い漬物。上手くロール出来なくて崩れた出汁巻き卵などが陳列されていく。
「ど・・どうしたんだ、急に和食なんて。お前和食不得意だろう?」
 渡を見ると、期待に胸を膨らませたような顔で見てくる。
「食べてみてっ」
「う・・・」
 せっかく渡が挑戦してくれたんだからと奮い立たせて味噌汁を飲んだ。途端に濃度の高い塩水が口内に流れ込んできたかと思う程のしょっぱさに口が歪む。
「ゴホッ・・」
「やっぱりダメ・・かぁ・・」
 一応一通りその他も食して見るがどれもこれも早死にしそうな味付けのものばかりだった。
「何を急にそんな無理したんだ」
 お茶を大量に流し込みながら渡に聞く。
「んー・・何となく・・ですかね」

(何となくでこんな思いは・・勘弁だな・・)

 淳平はそんな事を密かに思いながら苦笑いをしていると、何故か渡の方が気を取り直したように鞄を抱えて車のキーを指に引っ掛けた。
「さ!行きますよ、先輩っ。遅刻しちゃいます!」
「あ・・ああ。」

 今日はどうした事か、運転までも渡がする気らしく重たい身体を引っ張られる様にして助手席に押し込められた。
「どうしたんだ。何か良い事でもあったか?」
「いえ、そんなんじゃないです。何となくです。」
 渡が声をワントーン低くしてそう言うと車を発進させた。
 いつもの交差点に差し掛かると折角3つ先の信号まで青だったのが黄色に変わってしまった。残念に思っていると急に渡がアクセルを踏み込み、右折をしたので身体が斜めに傾いた。
「おいっ!危ねぇだろ!つーかお前どこ行くんだよ、会社は真っ直ぐだろ!?」
 渡は少しの間無表情で進むと、ふと顔をこちらに向けてニコっと笑みを浮かべた。
「黙っていて下さい。」

「何言ってんだお前。早く戻れって!」
 淳平の怒りを煽る様に渡はアクセルを更に踏み込んでそのまま高速道路の方へと向かった。
「いい加減にしろよ、一体どういうつもりなんだよ!!」
 淳平が声を荒げると、渡が静かに口を開いた。
「今日、これからあと1時間程で弘夢さんが自殺するそうです。」

「・・・・・・・」
 言葉が出て来なかった。何故それを渡が知っているのか、そもそも弘夢が自殺という言葉があまりにも非現実的で、渡の次の言葉を傍聴する事しか出来ずにいた。
 ETCを抜けると更に加速し、車が高速でアスファルトの上を走り抜ける音がBGMのように聞こえてきた。
「僕が教えてあげます。全てを。弘夢さんが何故先輩を裏切ったか。いや・・本当は裏切ってなんかないんです。今でも先輩を誰よりも愛してるんですから。」

「・・・・何言ってんだ、お前・・」

「弘夢さんは先輩を守る為に木戸さんと一緒になったんです。」

 渡は今までのいきさつを説明しだした。事細かに、報告に慣れているかのような口振りであまりにも分かりやすかった。自然と頭が理解できてきてしまう。
 今までの弘夢の行動、そして弘夢の気持ちを想うと胸が押し潰されそうになった。
 だが、同時に今この事を話している渡の気持ちが気になった。
「何でこんな話を俺に・・お前がするんだ・・」
 渡は前を真っ直ぐに見ながら答えた。
「僕は・・十分幸せを貰いました。この間、弘夢さんの前で僕を選んでくれて、そして優しく抱いてくれて、これからずっと一緒に過ごしてくれるという貴方の決意を感じ取れただけで、もう十分です。」

「十分ってなんだよ?ふざけるな!俺の決意は一過性のものじゃねぇんだぞ?!
 本気で一生をお前と・・」

「はい。有難うございます。僕は本気で貴方を愛しています。」

「だったら・・!」

「だから!!愛する貴方に、もしもっともっと幸せになれる可能性があるのだとしたら!・・
 願ってしまうのは当然だとは思いませんか・・」

 痛い程分かるその気持ちに言葉が何も思い浮かばない。
 車は既に海にそって走り、大きく荒れた白波が堤防に当たっては激しく飛沫を上げて砕けていた。
 
「僕は、大丈夫ですから。人を愛する事が出来た自分に変われて、嬉しいんです。きっとこれからやっていけます。」

 渡の言葉が胸を苦しく締め付ける。きっと泣きたいのは渡の方なのに、今にも涙が出そうになる。
 渡がブレーキを強くかけると道路から外れた岬へと砂ぼこりを上げて止まった。鎖で立ち入り禁止になっているその先は急なカーブで見えないがずっと先の方まで崖が続いているようだった。

「あと10分です。早く行って下さい。この先に弘夢さんはいます」
 エンジンを切った渡がハザードランプを点けて言った。一定のリズムでカチカチと音が社内に響く。

「渡・・・俺・・」

 複雑な気持ちが渦になって押し寄せる。言いたい気持ちは混雑して何もすんなりと喉を通りそうもない。
 そっと渡の頬を触れると、意志の強い目で見つめ返された。
「時枝さんは、時間厳守の人です。あと9分です。急いで下さい!」

 そして優しく微笑んで渡が言った。

「もう、素直になっていいんですよ。僕が振ってあげますから」
 
 その瞬間、渡の身体を思い切り抱き締めた。

「嘘じゃない・・渡・・お前を愛してた・・嘘じゃない・・」

「分かってます。僕もです。でも、弘夢さんを想い続ける貴方とこれ以上一緒には居たくありませんから。・・・さようなら、先輩」

 身体をゆっくりと引き離すと、雲の通したような柔らかな陽だまりのような笑顔の渡がいた。

「ありがとう。」

 やっと絞り出した声に思いを凝縮させて綿毛のような髪をそっと撫でた。そして勢いよく車から飛び出した。

 淳平の駆ける姿がカーブを曲がり、見えなくなる寸前に堰が切れた。

「ぁ・・あああッ・・う・・ぅ」

 渡は子供のように声を張り上げて泣いた。
「せん・・ぱぁ・・い・・うぅ・・ぁ・・ぁ」
 手の甲で拭っても拭っても湧水のように出てくる涙と嗚咽に、上半身をハンドルに埋める様にして淳平を呼びながら泣いた。



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それから65話

☆一部18禁です。

 時枝という男と会おうとする渡の後をつけて行ったらそこに弘夢もいた。

「あっ・・あっ!ああんっセンパイっ・・あああんっ」

 話の内容からするとあの木戸という男の部下が時枝で、木戸が自分を完全に弘夢から引き離す為に送り込んだのがこの渡だ。

「いやっ・・ああっ・・イクっ・・やぁあんっ」

 渡はグンッと仰向けに仰け反るとビクンとペニスを跳ねさせて精液を自分の胸元に飛ばした。

 渡は自分を本当に好きになったと言ってくれた。今まで一緒に住んで来てそれは疑う余地は無いと分かっていた。だからこそ、あそこで弘夢を敢えて見ないようにするべきだと思った。

「くっ・・・」

 淳平も渡の中に自分のドロリとした液体を勢いよく飛ばして肩で荒い息をした。

 正直辛かった。だがこれが自分のけじめだと思った。
 弘夢は何か言いかけていた。せめて一目見たかったなどと思ってはいけないのだろう。
 理性では分かっていても脳裏には視界の端に映るぼやけた弘夢の足元や細い手首、引き締まった腰が浮かんでくる。

 汗だくで倒れ込むようにして気を飛ばしている渡に優しくキスを髪に落とすと、軽く布団を掛けてベッドから降りた。
 寝巻の下だけ履くと、ベッドに座り両腕を膝に凭れさせる。
 そして視線を暗い部屋の中に薄く見える渡の本棚へと向けた。
 暗い部屋は今までの激しい情事で熱気が籠り、外気との温度差が大きく開いて窓に翠滴が雨粒のように流れ落ちている。
 ギシリと立ち上がり、花の図鑑を開くと一枚の写真を手にした。
 
 この間自分のあげた本をもう一度渡と一緒に見ようと漁っていると、ずっと前に渡に没収され、もう既に捨てられたと思っていたあの写真を見付けたのだ。
 すれ違いの始まりの日の写真だと言っても過言ではないだろう。
 中学の修学旅行で撮った時の写真だ。互いに相手が寝てる時にそれぞれキスをして秘めた想いを抱えてずっと来た。
 

 そっとリビングにウィスキーを用意してソファに寝ながらタバコに火を点ける。
 写真の中の自分はただただ嬉しそうに弘夢の隣で嬉しそうな笑顔を向けていた。弘夢ははにかんだ様な笑顔で映っている。それは年よりもずっと大人びていて色っぽくて綺麗だった。
 タバコの先から流れる紫煙はゆらゆらと激しく幼い二人を包んだ。
 淳平は、タバコ独特の香りと肺にズンとくる重みをその思い出と共に吸いこみ体内に一旦吸収すると、少しずつ吐き出して薄い色の煙に変えた。


 そして写真をビリッと破いた。


 渡は淳平が写真の中の人物を自分に向けるのとはまた違った優しい瞳をして見つめているのを部屋の隙間から見ていた。
 今まで無理矢理押さえこんできた弘夢との想い出を隈なく思い出し、居ない筈の弘夢と語り合っている様な表情だった。
 そして写真を破いた時の表情は、淳平の心の一部破いているかのような苦悶の表情だった。
 掌の上に収まった細かく破かれたその写真に、淳平はそっとキスをして灰皿に乗せると火を点けた。
 その火に新たなタバコを一本取るとそこから火を点けて再び紫煙を吐き出し始めた。淳平はソファに寝ると腕を眼の上に乗せたままの体勢で静かにタバコを吸っていた。

 まるで弔いのようなその光景に渡の中で何かが弾けた。



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それから64話

「淳平・・」
「せ・・せんぱ・・い・・」
 弘夢と渡は同時に固まる。
 淳平はゆっくりと瞬きをすると、真っ直ぐに渡だけを見つめていた。
「淳・・」
「渡・・お前、そこの“時枝”って男に頼まれて俺と弘夢を引き離そうとしたのか」
 弘夢の呼びかけは直ぐに淳平の低く通る声に掻き消された。
 渡が焦って泣きそうな顔をしながら身体を淳平の方に向けると、飛びつく様に淳平の胸元を掴んで必死に訴えた。
「違うんですっ・・いえ、あのっ・・確かに最初はそうでした・・でも!いつの間にか先輩の事、本気に好きになっちゃって!だから・・今日は時枝さんにこの仕事を辞めたいってお願いしに来たんです!信じて下さい!!」
 渡の目に涙が溜まって行くが、渡は瞬きもせずに淳平を見上げる。

 弘夢は反吐が出そうだった。

―今更そんな嘘か本当か分からないセリフを吐いた所でどうなる。
―きっと俺の決意を聞けば、淳平は俺を選ぶ。
―早く離れろ!!

 弘夢が一歩二歩と前へ出て淳平に近づく。

 渡はギュッと淳平の胸元を掴んで眼を見つめる。

「淳平・・そいつの言っている事は嘘かも知れない。もう、俺と・・」
 弘夢はゆっくりと二人に近づく。

「俺は、お前と幸せになると決めた。渡。お前は本当に今俺の事が好きか?」

(何・・だ?)

 弘夢は淳平の言っている言葉を飲み込めずに立ち止まった。
 淳平は渡を見つめている。
 
 弘夢はハッとした。
 ここに来てから一度も淳平が自分を見てくれていなかった事に気付くと、脳の先から串刺しにされるような痛みが脊髄にまで走った。

「好きですっ・・先輩の事、愛してますっ」
 ポタリ、ポタリと渡の涙が零れ落ちた。

(それは俺が言うセリフだった筈だ・・俺の方が淳平を・・お前なんかよりずっとあいつを・・!)

 淳平の表情が柔らかくなった。
「なら・・それを信じる。お前を許すよ、渡。」
「せんぱ・・」
「帰ろう、渡」
 淳平の大きな手が渡を引き寄せた。

 弘夢はどこかで信じていた。
 淳平とどんな別れ方、そんな相手と結ばれてしまっても、芯では互いに誰も入り込めない次元で結ばれているのだと。

 淳平はホテルを出て行くまで、一度も自分を見ようともしなかった。話しかけても無視をされた。
 あの渡という男を選んだ。自分のように芝居ではなく、淳平の意志で。
 淳平と共に死をも覚悟する気持ちは、儚く枯れて行った。
 カラカラに乾いた落ち葉が無数の絶望という微生物に喰われていくようにジリジリと朽ちていく。
 自分が居る筈だったその場所は、今目の前で別の男が最愛の男に肩を抱かれてホテルを出て行く後ろ姿をただ眺めていた。

 自分が撒いた種だから仕方のない事だ。自分も以前淳平の前で木戸を選ぶ素振りを見せて絶望を与えた。
 だが、本心が変わる事は予想だにしていなかった。

「座ったらどうです?」
 時枝の声に誘われる様に、ふらふらとソファに倒れ込んだ。
「どうしようもない人ですね。君は。」
 時枝の声はさざ波の様に鼓膜を掠めていくだけだった。
 もう、本当に糸は切れたのだと実感した。
 或いは木戸を愛せれば自分も幸せになれるかもしれないと思った。だが、無理にそうした所で本気で愛せない以上、余計に木戸だけでなく時枝までも傷つける事になっている。
 木戸も時枝も気付いている。自分が今でも淳平を忘れる事が出来ないでいる事を。だから木戸は過剰に自分を痛めつける事を止めない。

 弘夢の中で自分の存在理由がふと消えた。

「・・にたい・・」
「はい?」
 掠れた声で合わない焦点のまま気持ちを呟いた。

「死に・・たい」

 時枝はそう繰り返す弘夢を冷ややかに見ると、口を開いた。

「別に、構いませんよ?」

 その言葉に弘夢がゆっくりと顔を時枝に向けた。
「私にとって君は邪魔ですし。自殺でしたら私がお手伝い致します。」
 そして時枝が内ポケットから黒皮の手帳をサッと取り出して言った。

「では、早速日取りと場所の打ち合わせを致しましょう。」
 ビジネスの打ち合わせでもするような口ぶりで時枝はカチリと眼鏡を指で上げた。



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それから63話

 “時枝”。その名前と渡の不審な行動が気になって仕方がなかった。渡を疑いたくは無かったが、友達だとしてもあの時電話を取った時の渡の顔は機械の人形のようにさえ見えた。
 自分はまだ渡について何も知らないのではないか、そう思うとこの温かな笑顔の青年が虚像のように感じて不安になった。
 ホテルから帰宅し、2,3日様子を見てるが特に変わった様子は無い。“時枝”とのやりとりも着信履歴を見る限りあれからは連絡を取り合っていないようだ。
「ん・・・ん・・」
 手を頭の上に組んで寝ながらベッドで考えていると渡が寝ながらすり寄ってきた。情事を終えた後なので疲れ切った渡は可愛い寝顔を見せていた。
 ふわふわとした髪の渡の寝顔はまるで天使だ。淳平はそっと身体を起こし横になると渡の頬に触れた。そしてゆっくりと口付けをする。

(渡・・何を隠してる・・)

 渡は無意識にベッドの中の冷たい布地を避ける様に、温かな淳平の胸元に蹲ってきた。
 淳平は柔らかく温かなその身体をそっと不安な気持ちで抱きしめて目を瞑った。

 次の日、淳平は帰宅すると早々に冷えた身体を温めようと浴室へ移動した。渡はその間に夕飯の支度をすると言っていつもように家庭的な音をリビングに響かせていた。
 服を脱いで浴室に入ると、冷え切ったタイルの冷たさがヒヤリと皮膚を覆ってくる。急いでシャワーを出して湯気で空気を暖めていたら、リンスが残り少なくなっているのに気付いた。
 確か予備があったなと思い、タオルを腰に巻き脱衣所に出て引き出しを漁っていると、ドアの向こうから話声が聞こえてきた。
 途端にドクンッと心臓が高鳴る。

(誰かと話しているのか?)

耳をドアに付けてみるが浴室のシャワーの音でなかなか聞こえない。淳平はそっと丸いドアノブに手を掛け、カチャリと音を立てない様にゆっくり回し、ほんの少し扉を開けると、渡の声が鮮明に聞こえてきた。

「ええ。・・ええ。あ、ちょっと待って下さい。今予定を見てみます。・・・・2日後・・は大丈夫です。はい。変更は別に構いません。・・はい。ホテル花音のロビーに20時・・はい。分かりました。では。」

 誰かと会う約束を取り付けたような内容に、震えるような緊張が淳平を襲った。
 怖いと思った。今の淳平には渡がとても大切で、また何かの拍子に自分の手からすり抜けてしまうような感覚に陥る。
 渡の隠している事を知りたい。知ってしまったら何かが変わるのだろうか。それが一番の恐怖だったが、このまま黙って気にしないでいられる程の相手でもなくなっていた。
 これから一緒にやっていくと決めた以上、真実を知らなければいけない気がした。

―2日後にホテル花音のロビーに20時。

* * *

 あれから弘夢は時枝の動向を探っていた。どうやら“沢村渡”と会う日にちが調整されたようだった。
 今夜20時、このいつも自分が塒(ねぐら)としてるホテルのロビーで真実が明らかになる。

 弘夢はこれまで淳平を守る為に行動してきた。淳平が何事も無く幸せに日常を過ごせる事だけを願い自分を押し殺してきた。
 淳平に恋人が出来たと聞いても、淳平の前向きな気持ちと決意が感じられた。だから少しずつ諦めもつくかと思ったところだったのだ。
 事情は変わった。
 この先いくら見守っていたとしても木戸の手によって虚像の世界で淳平は浮遊する事になり、裏切られる恐怖に淳平以上に自分も恐怖していくだろう。

―だったらいっそ・・

 逃げ切れないと分かっている。木戸の力の前ではどこに逃げようと同じだ。国を越えようとしてもそれは万分の一の確立での成功でしかない。
 それでもダメなら、一緒にいられる世界は何も現世でなくてもいい。
 今は二人で心から素直に手を取り合い逃げたい。そして想いを伝えたい。
 本当はお前だけを心から愛していた、今も変わらず愛している。そう言いたい。

 弘夢はそんな思いが刻々と強くなっていった。

 時刻は20時10分前。
 動く時枝を見て、部屋にいる執事に時枝に伝え忘れた伝言があると言って部屋を出る。ロビーには既に時枝と以前見かけた青年がいた。
 二人は無表情に淡々と話しをし始めた。
 この明らかになった真実によって弘夢の覚悟は点火される。
 そっと遠回りをして死角から回り込む。丁度観葉植物で顔も見えないようになっている。そして斜め後ろから話しを聞く。
 例え、どこかで直ぐに自分の不審な行動がバレてしまっても構わなかった。ただ真実さえ聞ければ。

「漸く淳平くんも君を見るようになったというのに・・。仕事を辞めたいとは一体どういう事です」
 時枝の冷ややかな声が静かに空気を振動させて伝ってきた。
「要するに淳平さんを弘夢さんに近づかせない様にすればいいんですよね?でしたらご心配要りません!僕はこの先もそれだけは守っていきますから!弘夢さんを忘れさせますから!」
 渡の声は少し興奮気味に何やら必死に訴えている。

(決まりだ・・。やっぱり時枝さんが送り込んでいたんだ・・!)

 弘夢は二人の前に飛び出した。
 弘夢の姿を見た時枝は眉一つ動かさず、渡はそのクリっとした大きな瞳を更に大きく見開いて動きを止めた。

「弘夢・・・さん・・どうして・・」
 渡は腰を浮かせた。
 弘夢は怒りで煮え滾るマグマの様な真っ赤な発光する塊のようなものを渡にぶつけてやりたい気持ちで拳を握りしめ近づいた。
「よくも・・」
「待って!違う!僕は本当に先輩の事をっ!」
 その時、時枝がふと顔と視線を上げ、ある一定のものに定めた。
「おや・・・呼んでもいない来客がもう一人・・」
 その声に気付いた弘夢と渡が時枝の視線を辿ると、そこには硬い表情の淳平が立っていた。



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それから62話

 今日は仕事が長引くからと弘夢もこの料亭に泊まる事になっていた。木戸からは先程部屋に電話が来て別の仕事があるから寝ていろと言われたが、どうも寝付けなかった弘夢は旅館を散歩していた。時刻も既に真夜中を過ぎていた。
 日本庭園風の中庭を歩いていると、外から隙間の開いた部屋があるのに気付き、近づいた。中は電気が煌々と点いていた。そっと近づき暗い庭から覗き見ると、浴衣から上半身を曝け出した時枝がいた。
 そのあまりの美しさにドキッとなった心臓は次の瞬間にギュッと掴まれた痛みに変わった。
 時枝の身体が酷く傷ついて、自分でそれを治療しているのが見えたのだ。
「時枝さんッ」
 思わず縁側から入り込んだ弘夢を見て、時枝はほんの少し瞳を見開いただけで、後はいつもの無表情で淡々と傷の手当てをしていた。
「何をしているのです、貴方は。部屋で寝てろと言われなかったですか?」
「どうしたんです!?その傷・・こんなに赤く腫れて・・」
 時枝は何でもないような声で答える。
「ビジネスです。」
「ビジネス・・って・・まさか・・木戸さんに言われて!?」
「君の知った事ではないでしょう」
 時枝が鋭く睨む。

(そんな・・好きな人にこんな命令されたら・・どれだけ苦しいか・・)

 時枝の気持ちを考えた弘夢は苦しさが流れ込んできた。ここまで想っている時枝の方がよっぽど自分なんかといるよりも木戸にとっても幸せになれるのではないかと思った。
「そこまでして・・木戸さんも俺何かより時枝さんを選べば・・幸せになれるのに・・」

「木戸さまは・・貴方でないとダメなんですよ。」
 そう言って時枝は淡々と消毒液を傷に付けた。その言葉と木戸の気持ち、そして時枝の気持ちも痛い程に理解でると、やるせない脱力感が肩にシトシトと降って来た。
「お手伝い・・します。背中の方は届かないでしょうし・・」
 そう言って時枝の白い肌の傷にそっと触れると、その瞬間にパシンッと強く手を叩き落とされた。
「触らないで貰えますか」
 その表情は気高く、生意気な孤高の豹のような目をしていた。
「ご、ごめんなさい・・」
 ジンジンとする手を反対の手を合わせながら廊下へと出て襖を閉めた。今は手の痛みよりも、時枝の気持ちを考える自分の心があまりに痛かった。ペタンと廊下に座リ込み、暫く動けずにいると、中から時枝の話声が聞こえてきた。

(こんな時間に・・電話?仕事・・かな?)

 そっと襖に耳を近づけると声が所々聞き取れてきた。

「私です。報告が入ってきてませんが、どうしました。・・あぁ・・そうですか。・・はい?・・何言っているのか自分で分かってるんですか?・・」
 どうやら揉めているような口ぶりだった。
「・・・を辞めて、この先・・ともに生活出来るとでも?・・まさか・・・・本・・になるとは。渡、君とは一度ゆっくり会って話さなければ・・ません。・・・取り敢えず・・淳平君の・・・引き続きお願いしますよ」

(え・・何・・?淳平?・・・渡って・・・)

 所々くぐもる声を聞き取ろうと弘夢は襖に耳を直接付ける。

「・・・分かりました。では・・・にホテルのラウンジに来て下さい」

 まさか、聞くとは思っていなかった淳平という名を聞いた弘夢の心臓は不穏な速度を上げていった。

(渡・・渡・・・)

 その名前で淳平に嬉しそうに纏わりついていた小柄な可愛らしい青年が浮かんだ。

(ま・・・さか・・・まさか・・まさか・・・)

 全ては木戸に仕組まれた事だったと考えると、血の気が失せた。
自分と淳平を引き離す為に淳平の方にも手を打っていたのだとしたら。

(やめて・・もうこれ以上・・・お願い・・)

 震える手で口を押さえる。

―折角これから幸せになるって決めたんだ。もう一度生きる気力を持って幸せに・・

 全てが作り物だったと知ったら。そして、二度も愛する者に裏切られたと知ったら。
淳平は、今度こそどうなるか予想がつく気がした弘夢は、歯を噛み締めて立ち上がった。



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それから61話

 クリスマス辺りから弘夢は木戸のパーティにずっと付き合わされた。特に誰に挨拶をするでもなく、自分はただ着飾って邪魔にならない様、会場で目立たない位置に立っていた。
 上品に仕立て上げられたパーティスーツが弘夢のしなやかな身体の魅力を引き立てている。
 時折知らない男性に話しかけられると、スッと時枝が出てきて上手くフォローをする。
財界や裏の世界にも男色家は多い。ネットリとした視線を感じるのは初めてではないが、未だにどうかわしてよいものか分からない。
 元々支配欲の強い男を刺激する類の妖艶さを持つ弘夢は、木戸に可愛がられ始めてから更にその妖しさはある種の媚薬のような香りで、空気感染するように男共を惹きつけた。

「弘夢」
 大きくて甘そうなオレンジ色のメロンに目を奪われていると、後ろから木戸に呼ばれた。
「それが欲しいのか?」
「え・・あの・・別に・・」
 木戸が手を伸ばして角切りされたメロンを指で掴み、そのまま柱の裏へと手を引かれた。会場の死角に立ち、それを唇に付けられると冷やりと冷たさが伝わる。
「ほら。食べなさい」
「あのっ・・んっ」
 声を出すと同時に指ごと口内に甘くて蕩けるようなメロンが押し込まれた。
「んん・・っふ・・」
 木戸の指が舌を弄ぶ。その刺激が弘夢を官能的な気分にさせる。
「美味いか?」
 溶けて無くなったメロンの甘さが沁みついた木戸の指先に舌を纏わりつかせてしゃぶる。
「んっ」
 木戸は指を入れたそこに自分の舌も挿し込んできた。弘夢の舌は木戸の指先と木戸の舌の両方に蹂躙される。
「んああっ・・あっふっ・・あ・・ぅ・・んん」
 タラタラと唾液が落ちると、横から時枝が姿を現した。

「木戸さま、あちらで坂上さまがお待ちです。」
 スッと舌と指を抜かれて、息を深く吸い込む事が出来た。
「あぁ。今行く。」
 そのタイミングに合わせて純白のハンカチを木戸に渡すと、木戸は唾液で濡れた手を拭いた。
 その様子を見ていると、時枝がカツカツと無表情で歩いて近づいて来た。不安気に前に立った時枝の美しい顔を見上げると、時枝は自分のスーツの腕でゴシッと弘夢の濡れた口元を強く拭いてきた。
 その勢いでゴンッと後頭部が柱にぶつかった。
「イッ・・」
 痛いと声を出す時にはもう、カツカツと気持ちの良い足音を立てる時枝は離れて行っていた。


 その日のパーティの後に、木戸はある組の男と料亭にある座敷で会合をした。そこの料亭は、こういった会合にもよく使われるので旅館使用になっている料亭だった。いつどんなお客様が見えても完璧に対応できるようになっている。
 今回の相手は、昔からの付き合いというよりも木戸自身がビジネスで手を組んだ組の相手だった。これから深く繋がりを持ち、良い関係を築いて行かなければならなかった。
 松本組はビジネスに特化したなかなかのやり手だった。汚い仕事も足が付かない様にする為に悪どいが鮮やかな手口を使う。何より、ここのところ松本組は病院関係でのコネが強くなっていた。
 病院経営を表の顔とする木戸にとって松本組は無視の出来ない存在となってきた。

 広い和室には懐石料理と酒が用意され、そのテーブルを挟んで和服姿の50代半ば位の組長と木戸が会談していた。
「この間は色々とお世話になりました。」
 木戸が落ち着いた声で酒を松本に注ぎながら御礼を言う。
「いやいや。お世話になっているのはお互いさまじゃないですか。それにしても・・君の連れていた子、何て言うの?綺麗な子だったねぇ。」
 木戸は一瞬間を置いて答えた。
「弘夢、と言います。」

「ほぉ。弘夢くんね。大分君のお気に入りのようだけど・・まさか今日はあの子を貸して貰えるのかね?」
 木戸は眉一つ動かさずに淡々と答える。
「いいえ。申し訳ありませんが彼ではありません。ですが、きっと松本さんを満足させられる私の自慢の者を紹介します。おい!入って来い!」
 木戸の声で入り口に待機していただろう時枝が襖を開けて「失礼します」と入って来た。その時枝を見た松本は目を輝かせた。
「これは美しい!あの子とはまた違った感じで・・」
 ニヤニヤと厭らしく視線を纏わりつかせる男に、時枝は氷の微笑を向けると男は興奮で目を血走らせ始めた。
「では私はこれで失礼致します。ごゆっくり」
 木戸が入り口を出て行く時にすれ違い様に時枝の肩をポンと叩くと、時枝はゆっくりと瞬きをした。
 そして、時枝は任された仕事を完璧にこなすのだった。



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酷いっす木戸さん。
今回は嵐の前の静けさ・・

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それから60話

☆18禁です

 週末は、温泉旅行に行こうと決めていた。
「荷物持ったか?」
「はいっ」
「よし、行くか」
 ガチャリとドアを開けて駐車場に下りるエレベーターのボタンを押すと、淳平の携帯が鳴った。着信を見ると会社からだった。
「はい岩波です。・・はい・・え!?え・・あぁ・・そうですか・・あぁ・・では直ぐに向かいます・・」
 ピッと通話を切ると同時に渡が顔を覗きこんできた。
「どうしたんですか?トラブルですか?」
「あぁ・・」
 淳平は困った顔をして荷物を足下に下ろした。

結局、週末の温泉旅行を楽しみにしていた渡と淳平だったが、急な仕事のトラブルで淳平は急遽取引先へと出向かねばならなかった。
「ごめんな、渡。直ぐに戻るから。本当、ごめん!」
「いいですよ。仕方ないじゃないですか!待ってますから!」
 営業は休日関係なく仕事の電話がよくかかって来る。容赦ないそのタイミングの電話は、渡との初めての旅行の時にも襲って来た。
 だが思ったよりも深刻なトラブルに週末の時間は削られていった。仕事相手がやっかいな気性の持ち主で、交渉が難航した。
 漸くひと段落して、話し合いに目処がつく頃には、既に辺りが暗くなっていた。
「しまったな・・」
 急いで携帯で渡に連絡を取ると、可愛らしい声は全く落ち込んでなどいなく、寧ろ労いの言葉が返って来た。
「あ、お疲れ様です、先輩。大丈夫でしたか?」
 同じ職場で働く身だからこそ、自分の大変さを理解して貰える。そして、記念日に異常な執着を持つような女でもないからこそ、サッパリと受け入れてくれる。そんな渡との関係が居心地が良く感じた。
 前妻の明美でさえも荷物を持って出掛ける寸前にキャンセルって事になったら少なからずヘソを曲げていただろう。
「先輩、僕旅館にはキャンセルの電話を入れておきましたから。さっき買い物も済ませて夕ご飯の支度をしようかと・・」
「渡。今日は、外食をしよう。で、どこかホテルにでも泊まろう。迎えに行くから着替えて待ってろ」
「あ・・はいっ!」
 
 淳平と渡は都内の景色の一望出来るレストランに入ると、二人でイタリア料理を堪能し、その足でラブホテルではなく、普通のホテルのスィートに泊まる事にした。


「あっ先輩・・きもちっ・・あああんっイク!イク!あああーッんんっ」
 身体を繋げたまま渡のペニスを扱いてやると、簡単に射精してしまった。そのイった後の脱力も回復する間もなく突いてやると、再び中の疼きに集中するように収縮が強くなっていく。
「あっ・・先輩っ・・そこ、もう握らないで下さ・・いっ・・くすぐ・・ったいっ」
 渡が射精した後も、柔らかくなり始めたペニスを握っていると敏感過ぎるのか、くすぐったがり始めた。この時の顔がいつも可愛くてつい嫌がる事をしてしまう。
 特に敏感な亀頭に爪をそっと滑らせると、「きゃああ」と言って身を捩る。そして首に腕を巻き付けて懇願してくる。
「も・・や・・いやっ・・せんぱぁい」
 淳平はその嫌がる口先を塞ぎながら腰を激しく渡の臀部に打ちつけて射精をした。

 その後一緒に風呂に入ったはいいが、渡が気を使ってなのか恥ずかしいのか、一人で後始末をすると言って先に飲み物でも飲んでいて欲しいと言われた。
 白くふわふわのバスローブを纏い、濡れた髪は少しタオルで水気を切っただけでシャンパンをグラスに注いで飲む。乾いた喉が微炭酸の刺激で効果的に潤されていく。
 火照った身体を冷やす為に、ベランダへ出てみた。外は普通なら身振るいのするような寒さだろうが、今の淳平には気持ちが良かった。
 タバコに火を付けて煙を吐き出すと寒さで出る白い息と煙が混ざって夜空に小さな雲を作った。
 
 夜だというのに、昼間よりもどこか活気づいて見える夜の街を上からボーっと眺めていた。何となく、無意識に木戸の顔を思い出した。
 一番憎い筈の相手だが、今思い出してみると木戸の弘夢を見る時の目に自分と類似した色が見えた。
 きっと弘夢を本気で好きなのだ。愛情表現が偏っているが、弘夢はそれで満足していると言っていた。

 遠くから聞こえるクラクションと、まるで光が互いにおしゃべりしているような光の瞬きに見入っていた。
 ふと人の動く気配を背後に感じてそっと振り向くと、慌てて出てきたのか、頭からポタポタと雫を垂らしながらバスローブに包まった渡が電話を取っていた。
 すると、スッと見た事もないような氷のような表情に変化したのが見えた。
渡も何か仕事かと心配そうに見ていると、その視線に気付いた渡がいつもの可愛い顔に戻り、唇で「ト・モ・ダ・チ」と言って少し困った笑顔を作った。

 先程の表情は気のせいかと思った。仕事という顔にしては違和感があったからだ。タバコの火を消して部屋に戻ると丁度渡が電話を切っていた。
「ドライヤー、かけてきますね」
 そう言ってパタパタと駆けて行く渡の後ろ姿を見ながら、ベッドの下に置かれた鞄に目が行った。
 別に人の鞄を覗く趣味は無い。一瞬見たあの渡の顔で、一体誰がこんな時間に掛けて来たのかとそっと鞄を覗いた。渡の鞄の中は色んなものがごちゃごちゃと入っていて少し笑えた。
「あいつらしいな」
 携帯を手に取ったが、やはりこういった干渉は止めようと再び鞄に戻そうとした時、もう一つ同じ携帯が鞄の奥底にあるのに気付いた。

(何だ・・これ?知らないぞ・・二つも持ってるなんて・・)

 画面を開いても同じだった。一つの着信履歴をみると、自分からの通知が最後にあった。そして、もう一つの着信履歴を見ると、そこには先程の時間で「時枝」と表示されていた。



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それから59話

 今日は初めて渡と過ごすクリスマスだ。仕事をなるべく早めに切り上げて家に帰ろうとする時に限って何だかんだと余計な仕事が長引く。
 淳平はここぞと言う時に集中力を発揮して仕事をこなした。学生時代の部活での試合を思い出す。
帰りに急いで予約をしていたケーキを取りに行き、車を飛ばして家路を急いだ。今日が週末ならどれだけ良かっただろうと考えていると、赤信号に捕まっているうちにふと無意識に以前助手席に乗った弘夢の顔を思い出した。
 その後二人で行ったホテルとその後の激しい情事を思い出しそうになった時に丁度信号が青に変わって我に返って弘夢の姿を意図的に排除した。

(俺はもう渡だけを考えると決めたんだ・・)
 
 玄関を開けると台所からパタパタと軽い足音が聞こえて、ドアをバタンと閉めるとふわふわした髪の毛が見えた。
「おかえりなさいっ」
「ただいま」
 可愛い笑顔は幸せいっぱいに溢れていた。自分はこの笑顔を選んだのだともう一度自分の中で確認する。後悔はなかった。
「はい、ケーキ」
 買って来たケーキを渡すと、パァッと明るい顔になって喜んだ渡は急いで冷蔵庫へと持って行った。

 鞄をソファに置き、コートを脱いでハンガーに掛けた。シャワーは後でいいやと既に暖房で温められたリビングで少しずつ冷えた身体を解凍するようにソファにゆったりと座ると、システムキッチンからトントンとリズム良い包丁の音が聞こえる。
 淳平がゆっくりと立ち上がり、台所へ向かうと渡が「ビールなら冷蔵庫にありますから、先に飲んでいて下さい」と言ってくれた。
 淳平は冷蔵庫へは向かわず、懸命に野菜を切る小柄な渡の真後ろに立った。そして渡を挟んで台に両手を付けて渡を逃がさないようにする。ゆっくりと渡の首に唇を付けると、渡はビクッとして包丁の動きを止めた。
「あっ・・先輩・・」
 そしてそのまま強く渡を抱きしめた。
「先輩・・お料理・・できないですよ」
 渡の耳がほんのり赤くなっていくのを見て思わずそこに舌を這わす。
「んっ・・ダメっ」
 そのまま襲ってやろうかと考えて渡の服に手を突っ込むと、珍しく必死に抵抗して腕から抜け出た渡に強制的に台所を退場させられた。

「今しちゃうと、お料理も食べられなくなってしまいますから!だから後でですっ」
「へぇ・・勃ったまま料理できるの器用だなぁ、渡」
 そう言って渡の股間に目を向けると、あっ!と恥ずかしそうに横を向いてまた料理を始めた。
 クスクス笑いながら言う事を聞いて、淳平は先にシャワーを浴びてくる事にした。熱いお湯を浴びるとその日の疲れも洗い落とされるようだった。
 出てきた時には既に色鮮やかな料理がテーブルの上に綺麗に飾り付けられていた。二人でそれを堪能して、買って来たケーキを食べる。ケーキは殆ど渡が食べる為に買ったようなものだ。
 淳平は渡がケーキに夢中になってる時、鞄からガサガサと包みを出した。

「渡、メリークリスマス」
「え?」
「プレゼントだよ」
 渡の目が大きく見開いて、ゆっくりとその包み紙を手にした。それは本の形をした思い包み紙だった。渡が袋を開けると、中から分厚い本が出てきた。
「あ!コレ!!」

 それは渡の大好きなデザイナーの本だった。渡はファッションが大好きで何度となく好きなデザイナーの話を聞かされていた淳平は、この本をプレゼントに選んだ。
「アクセサリーとかじゃなくて悪いな。そういうの、よく分かんねぇし・・指輪、貰っても女じゃねぇからお前が喜ぶか分かんなくて。」
 渡は、まさかプレゼントを淳平がくれるなんて思ってもみなかった。その上、自分の話をいつも聞いてくれていた、自分の好きなものを理解して考慮して買ってくれた気持ちに嬉しさが込み上げる。
「ありがとうございます・・本当に嬉しいです。一生大切にします」
 渡がそう言って本を両手で胸に抱いた。
「大袈裟だなぁ。ホラ、こっち来いよ」
 淳平は自分の胡坐の中に入れた。子供に絵本を読んで聞かせる様に後ろから一緒に本を見た。本には渡の好きなデザイナーの生涯を綴った内容と、歴代の服の写真集などが載っていた。
 目をキラキラ輝かせて夢中で本に見入る渡を後ろから抱きしめながら普段なかなか言う機会のない事を言ってみる。

「渡・・料理、美味かった。ありがとな。・・そしていつも、ありがとう。」
 渡の頬にそっと手を添わせ、ゆっくりと後ろに顔を向けて涙目になってる顔を見てから、そのふっくらとした唇を塞いだ。後ろから角度を何度も変えながら舌を絡めると渡の身体から力が抜けて行った。

―幸せに、なろうな。弘夢。



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