08/30/2010(Mon)
それから61話
クリスマス辺りから弘夢は木戸のパーティにずっと付き合わされた。特に誰に挨拶をするでもなく、自分はただ着飾って邪魔にならない様、会場で目立たない位置に立っていた。
上品に仕立て上げられたパーティスーツが弘夢のしなやかな身体の魅力を引き立てている。
時折知らない男性に話しかけられると、スッと時枝が出てきて上手くフォローをする。
財界や裏の世界にも男色家は多い。ネットリとした視線を感じるのは初めてではないが、未だにどうかわしてよいものか分からない。
元々支配欲の強い男を刺激する類の妖艶さを持つ弘夢は、木戸に可愛がられ始めてから更にその妖しさはある種の媚薬のような香りで、空気感染するように男共を惹きつけた。
「弘夢」
大きくて甘そうなオレンジ色のメロンに目を奪われていると、後ろから木戸に呼ばれた。
「それが欲しいのか?」
「え・・あの・・別に・・」
木戸が手を伸ばして角切りされたメロンを指で掴み、そのまま柱の裏へと手を引かれた。会場の死角に立ち、それを唇に付けられると冷やりと冷たさが伝わる。
「ほら。食べなさい」
「あのっ・・んっ」
声を出すと同時に指ごと口内に甘くて蕩けるようなメロンが押し込まれた。
「んん・・っふ・・」
木戸の指が舌を弄ぶ。その刺激が弘夢を官能的な気分にさせる。
「美味いか?」
溶けて無くなったメロンの甘さが沁みついた木戸の指先に舌を纏わりつかせてしゃぶる。
「んっ」
木戸は指を入れたそこに自分の舌も挿し込んできた。弘夢の舌は木戸の指先と木戸の舌の両方に蹂躙される。
「んああっ・・あっふっ・・あ・・ぅ・・んん」
タラタラと唾液が落ちると、横から時枝が姿を現した。
「木戸さま、あちらで坂上さまがお待ちです。」
スッと舌と指を抜かれて、息を深く吸い込む事が出来た。
「あぁ。今行く。」
そのタイミングに合わせて純白のハンカチを木戸に渡すと、木戸は唾液で濡れた手を拭いた。
その様子を見ていると、時枝がカツカツと無表情で歩いて近づいて来た。不安気に前に立った時枝の美しい顔を見上げると、時枝は自分のスーツの腕でゴシッと弘夢の濡れた口元を強く拭いてきた。
その勢いでゴンッと後頭部が柱にぶつかった。
「イッ・・」
痛いと声を出す時にはもう、カツカツと気持ちの良い足音を立てる時枝は離れて行っていた。
その日のパーティの後に、木戸はある組の男と料亭にある座敷で会合をした。そこの料亭は、こういった会合にもよく使われるので旅館使用になっている料亭だった。いつどんなお客様が見えても完璧に対応できるようになっている。
今回の相手は、昔からの付き合いというよりも木戸自身がビジネスで手を組んだ組の相手だった。これから深く繋がりを持ち、良い関係を築いて行かなければならなかった。
松本組はビジネスに特化したなかなかのやり手だった。汚い仕事も足が付かない様にする為に悪どいが鮮やかな手口を使う。何より、ここのところ松本組は病院関係でのコネが強くなっていた。
病院経営を表の顔とする木戸にとって松本組は無視の出来ない存在となってきた。
広い和室には懐石料理と酒が用意され、そのテーブルを挟んで和服姿の50代半ば位の組長と木戸が会談していた。
「この間は色々とお世話になりました。」
木戸が落ち着いた声で酒を松本に注ぎながら御礼を言う。
「いやいや。お世話になっているのはお互いさまじゃないですか。それにしても・・君の連れていた子、何て言うの?綺麗な子だったねぇ。」
木戸は一瞬間を置いて答えた。
「弘夢、と言います。」
「ほぉ。弘夢くんね。大分君のお気に入りのようだけど・・まさか今日はあの子を貸して貰えるのかね?」
木戸は眉一つ動かさずに淡々と答える。
「いいえ。申し訳ありませんが彼ではありません。ですが、きっと松本さんを満足させられる私の自慢の者を紹介します。おい!入って来い!」
木戸の声で入り口に待機していただろう時枝が襖を開けて「失礼します」と入って来た。その時枝を見た松本は目を輝かせた。
「これは美しい!あの子とはまた違った感じで・・」
ニヤニヤと厭らしく視線を纏わりつかせる男に、時枝は氷の微笑を向けると男は興奮で目を血走らせ始めた。
「では私はこれで失礼致します。ごゆっくり」
木戸が入り口を出て行く時にすれ違い様に時枝の肩をポンと叩くと、時枝はゆっくりと瞬きをした。
そして、時枝は任された仕事を完璧にこなすのだった。
<<前へ 次へ>>
酷いっす木戸さん。
今回は嵐の前の静けさ・・
★「それから」は「すれ違った後に(全10話)」の続編です。
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上品に仕立て上げられたパーティスーツが弘夢のしなやかな身体の魅力を引き立てている。
時折知らない男性に話しかけられると、スッと時枝が出てきて上手くフォローをする。
財界や裏の世界にも男色家は多い。ネットリとした視線を感じるのは初めてではないが、未だにどうかわしてよいものか分からない。
元々支配欲の強い男を刺激する類の妖艶さを持つ弘夢は、木戸に可愛がられ始めてから更にその妖しさはある種の媚薬のような香りで、空気感染するように男共を惹きつけた。
「弘夢」
大きくて甘そうなオレンジ色のメロンに目を奪われていると、後ろから木戸に呼ばれた。
「それが欲しいのか?」
「え・・あの・・別に・・」
木戸が手を伸ばして角切りされたメロンを指で掴み、そのまま柱の裏へと手を引かれた。会場の死角に立ち、それを唇に付けられると冷やりと冷たさが伝わる。
「ほら。食べなさい」
「あのっ・・んっ」
声を出すと同時に指ごと口内に甘くて蕩けるようなメロンが押し込まれた。
「んん・・っふ・・」
木戸の指が舌を弄ぶ。その刺激が弘夢を官能的な気分にさせる。
「美味いか?」
溶けて無くなったメロンの甘さが沁みついた木戸の指先に舌を纏わりつかせてしゃぶる。
「んっ」
木戸は指を入れたそこに自分の舌も挿し込んできた。弘夢の舌は木戸の指先と木戸の舌の両方に蹂躙される。
「んああっ・・あっふっ・・あ・・ぅ・・んん」
タラタラと唾液が落ちると、横から時枝が姿を現した。
「木戸さま、あちらで坂上さまがお待ちです。」
スッと舌と指を抜かれて、息を深く吸い込む事が出来た。
「あぁ。今行く。」
そのタイミングに合わせて純白のハンカチを木戸に渡すと、木戸は唾液で濡れた手を拭いた。
その様子を見ていると、時枝がカツカツと無表情で歩いて近づいて来た。不安気に前に立った時枝の美しい顔を見上げると、時枝は自分のスーツの腕でゴシッと弘夢の濡れた口元を強く拭いてきた。
その勢いでゴンッと後頭部が柱にぶつかった。
「イッ・・」
痛いと声を出す時にはもう、カツカツと気持ちの良い足音を立てる時枝は離れて行っていた。
その日のパーティの後に、木戸はある組の男と料亭にある座敷で会合をした。そこの料亭は、こういった会合にもよく使われるので旅館使用になっている料亭だった。いつどんなお客様が見えても完璧に対応できるようになっている。
今回の相手は、昔からの付き合いというよりも木戸自身がビジネスで手を組んだ組の相手だった。これから深く繋がりを持ち、良い関係を築いて行かなければならなかった。
松本組はビジネスに特化したなかなかのやり手だった。汚い仕事も足が付かない様にする為に悪どいが鮮やかな手口を使う。何より、ここのところ松本組は病院関係でのコネが強くなっていた。
病院経営を表の顔とする木戸にとって松本組は無視の出来ない存在となってきた。
広い和室には懐石料理と酒が用意され、そのテーブルを挟んで和服姿の50代半ば位の組長と木戸が会談していた。
「この間は色々とお世話になりました。」
木戸が落ち着いた声で酒を松本に注ぎながら御礼を言う。
「いやいや。お世話になっているのはお互いさまじゃないですか。それにしても・・君の連れていた子、何て言うの?綺麗な子だったねぇ。」
木戸は一瞬間を置いて答えた。
「弘夢、と言います。」
「ほぉ。弘夢くんね。大分君のお気に入りのようだけど・・まさか今日はあの子を貸して貰えるのかね?」
木戸は眉一つ動かさずに淡々と答える。
「いいえ。申し訳ありませんが彼ではありません。ですが、きっと松本さんを満足させられる私の自慢の者を紹介します。おい!入って来い!」
木戸の声で入り口に待機していただろう時枝が襖を開けて「失礼します」と入って来た。その時枝を見た松本は目を輝かせた。
「これは美しい!あの子とはまた違った感じで・・」
ニヤニヤと厭らしく視線を纏わりつかせる男に、時枝は氷の微笑を向けると男は興奮で目を血走らせ始めた。
「では私はこれで失礼致します。ごゆっくり」
木戸が入り口を出て行く時にすれ違い様に時枝の肩をポンと叩くと、時枝はゆっくりと瞬きをした。
そして、時枝は任された仕事を完璧にこなすのだった。
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酷いっす木戸さん。
今回は嵐の前の静けさ・・
★「それから」は「すれ違った後に(全10話)」の続編です。
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コメント
> 木戸さんと時枝さんのスーツで間接キス!?時枝さんの中の何かが壊れ始めてるのかしら!?
(*゚ロ゚)ハッ!! その発想はありませんでした!新しいですねっ
そんな間接キスが!(笑)
時枝の中で壊れているものは、理性でしょうか。
今までのように弘夢が時枝の気持ちを知らなければもう少し冷静になれているようにも思います。
ですが、気持ちが知られているとなるとやはり少し感情が出てしまうのではないでしょうか(>_<)
> 表も裏もビジネスも私生活も知り尽くしている時枝さんが、木戸さんの役に一番たっている筈なのに。それは変わらないのに、何かが違う。何かが変わってゆく不安があるのでしょうか??
やはり今まで特定の相手が居なかった木戸ですから、愛する相手という特別な相手が
出て来た事で一層どす黒いものが時枝の中に溜まっていくんだと思います。
決して叶わない特別な位置を弘夢に奪われてやはり不安はあると思います。
> 木戸さん!あんた、ヒドイ男だ~(T-T)
> ハッ?!
> このお話って、実は時枝さんが主人公だった!?(でえ!?
> どんな超大型嵐がやってくるのでしょう~!
> 戸締りしてお待ちします!!
鈍感って酷ですよね(ノД`)・゜・
時枝ストーリー!?それもありですかね!?(笑)
い、いえ、そんな超大型では無いです~~(;´Д`A ```
何か自分でハードル上げている気がしましたッ!!ヤバい!!
戸締りして!?あははは!!ありがとうございます( *´艸`)クスクス
コメントどうもありがとうございました
内心痛いですよね(>_<)
そんなパーティ会場に来てまでラブラブ・・(ノ△・。)
> 袖口で拭ってゴツンのシーン(はしょり過ぎ―)時枝さんの気持ちが現れていますねー。
はしょり(笑)
「きちんとして下さい」的な目でゴシッとして行ったと思います^^;
そして、ムカついている感が出てますね^^;
> ビジネスの潤滑材に使われる時枝さま!
> その姿…美しいっ!
ビジネスの潤滑剤!!おぉ・・凄い表現ですね!?
確かにその通りですね!
美しい姿というお言葉ありがとうございますっ
> つぎー、しごシャーミー行きます―!
うぁーんそちらの方にもありがとうございます!!(ノД`)・゜・
コメントどうもありがとうございました
木戸さんと時枝さんのスーツで間接キス!?時枝さんの中の何かが壊れ始めてるのかしら!?
表も裏もビジネスも私生活も知り尽くしている時枝さんが、木戸さんの役に一番たっている筈なのに。それは変わらないのに、何かが違う。何かが変わってゆく不安があるのでしょうか??
木戸さん!あんた、ヒドイ男だ~(T-T)
ハッ?!
このお話って、実は時枝さんが主人公だった!?(でえ!?
どんな超大型嵐がやってくるのでしょう~!
戸締りしてお待ちします!!
袖口で拭ってゴツンのシーン(はしょり過ぎ―)時枝さんの気持ちが現れていますねー。
ビジネスの潤滑材に使われる時枝さま!
その姿…美しいっ!
つぎー、しごシャーミー行きます―!
> 時枝さんのファンクラブ会員っていうのを別にしてもねw
ファンクラブ会員・・何も出来ず本当に申し訳ない(;´Д`A ```
紅蓮会のような素敵なバナーでも作れたらと思うけど・・。技術も道具もなーいヽ( ゚ 3゚)ノ
いつか・・(>_<)
不憫で不幸プラグいっぱいの時枝さん。暖かく見守って(>_<)
そして木戸を脳内でお仕置きでもしてやって!(笑)
> 今までの時枝さんならサッと違うナプキンかなんかで弘夢くんの口を拭って何事もなく去っていきそうな感じなのに、弘夢くんの頭がぶるかるほど乱暴に袖口で拭う。
> そしてまたビジネスとして抱かれたくもない男に身体を差し出すんだね。
ウン(*-ω-)(-ω-*)ウン
この変化が時枝のリミットを表している感じに見えて頂けたら(>_<)←無茶w
ゴンッと痛いよね^^;
そしてまたしても仕事として身体を差し出すの・・辛い仕事です。
> 木戸さんに肩を叩かれたことで、彼はある種の信頼も感じてるだろうけど、やるせない気持ち満載だろうなぁ。
> 時枝さん、そんな状態でいつか爆発しちゃわないのかな・・・。
うん。役に立てて嬉しい反面諦めと、悲しさとがあると思う。
この仕事は弘夢じゃない、自分にしか出来ない役で、木戸を喜ばせられるっていう。
どうだろう・・爆発・・(>_<)
怖いよぅ(pωq)エーン←オマエガカ!
コメントどうもありがとうございました
時枝さんのファンクラブ会員っていうのを別にしてもねw
今までの時枝さんならサッと違うナプキンかなんかで弘夢くんの口を拭って何事もなく去っていきそうな感じなのに、弘夢くんの頭がぶるかるほど乱暴に袖口で拭う。
そしてまたビジネスとして抱かれたくもない男に身体を差し出すんだね。
木戸さんに肩を叩かれたことで、彼はある種の信頼も感じてるだろうけど、やるせない気持ち満載だろうなぁ。
時枝さん、そんな状態でいつか爆発しちゃわないのかな・・・。
> 可愛いじゃないの(笑)
いえ、ポーカーフェイスで乱暴にぬぐったという器用で不器用な
男・時枝でございます(笑)
確かにいくらハンカチがないからといって、子供っぽい所もありますね(笑)
> それにしても木戸っち、あんた本当に酷い男だよ
> 私が時枝さんだったらチ●コ噛み切ってるねww
∑(´゜Д゜`ノ)ノ ヒェ―――ェエ!!!
怖いっす、夕華さぁぁぁん!!(笑)
でも木戸、お仕置きですね。(それもある意味怖い・・(笑))
> 嵐の前の静けさ・・・とな?どうなるんだろ~
> 今の時点で結構ぐしゃぐしゃだよね(笑)
はい(笑)
今の時点で台風が何号か通り過ぎてる気もします。
ではサイクロンという事で!!予兆のない巨大な竜巻inグランドライン!!
(すみません、ワンピのネタです;)
コメントどうもありがとうございました
可愛いじゃないの(笑)
それにしても木戸っち、あんた本当に酷い男だよ
私が時枝さんだったらチ●コ噛み切ってるねww
嵐の前の静けさ・・・とな?どうなるんだろ~
今の時点で結構ぐしゃぐしゃだよね(笑)
コメント