08/28/2010(Sat)
それから59話
今日は初めて渡と過ごすクリスマスだ。仕事をなるべく早めに切り上げて家に帰ろうとする時に限って何だかんだと余計な仕事が長引く。
淳平はここぞと言う時に集中力を発揮して仕事をこなした。学生時代の部活での試合を思い出す。
帰りに急いで予約をしていたケーキを取りに行き、車を飛ばして家路を急いだ。今日が週末ならどれだけ良かっただろうと考えていると、赤信号に捕まっているうちにふと無意識に以前助手席に乗った弘夢の顔を思い出した。
その後二人で行ったホテルとその後の激しい情事を思い出しそうになった時に丁度信号が青に変わって我に返って弘夢の姿を意図的に排除した。
(俺はもう渡だけを考えると決めたんだ・・)
玄関を開けると台所からパタパタと軽い足音が聞こえて、ドアをバタンと閉めるとふわふわした髪の毛が見えた。
「おかえりなさいっ」
「ただいま」
可愛い笑顔は幸せいっぱいに溢れていた。自分はこの笑顔を選んだのだともう一度自分の中で確認する。後悔はなかった。
「はい、ケーキ」
買って来たケーキを渡すと、パァッと明るい顔になって喜んだ渡は急いで冷蔵庫へと持って行った。
鞄をソファに置き、コートを脱いでハンガーに掛けた。シャワーは後でいいやと既に暖房で温められたリビングで少しずつ冷えた身体を解凍するようにソファにゆったりと座ると、システムキッチンからトントンとリズム良い包丁の音が聞こえる。
淳平がゆっくりと立ち上がり、台所へ向かうと渡が「ビールなら冷蔵庫にありますから、先に飲んでいて下さい」と言ってくれた。
淳平は冷蔵庫へは向かわず、懸命に野菜を切る小柄な渡の真後ろに立った。そして渡を挟んで台に両手を付けて渡を逃がさないようにする。ゆっくりと渡の首に唇を付けると、渡はビクッとして包丁の動きを止めた。
「あっ・・先輩・・」
そしてそのまま強く渡を抱きしめた。
「先輩・・お料理・・できないですよ」
渡の耳がほんのり赤くなっていくのを見て思わずそこに舌を這わす。
「んっ・・ダメっ」
そのまま襲ってやろうかと考えて渡の服に手を突っ込むと、珍しく必死に抵抗して腕から抜け出た渡に強制的に台所を退場させられた。
「今しちゃうと、お料理も食べられなくなってしまいますから!だから後でですっ」
「へぇ・・勃ったまま料理できるの器用だなぁ、渡」
そう言って渡の股間に目を向けると、あっ!と恥ずかしそうに横を向いてまた料理を始めた。
クスクス笑いながら言う事を聞いて、淳平は先にシャワーを浴びてくる事にした。熱いお湯を浴びるとその日の疲れも洗い落とされるようだった。
出てきた時には既に色鮮やかな料理がテーブルの上に綺麗に飾り付けられていた。二人でそれを堪能して、買って来たケーキを食べる。ケーキは殆ど渡が食べる為に買ったようなものだ。
淳平は渡がケーキに夢中になってる時、鞄からガサガサと包みを出した。
「渡、メリークリスマス」
「え?」
「プレゼントだよ」
渡の目が大きく見開いて、ゆっくりとその包み紙を手にした。それは本の形をした思い包み紙だった。渡が袋を開けると、中から分厚い本が出てきた。
「あ!コレ!!」
それは渡の大好きなデザイナーの本だった。渡はファッションが大好きで何度となく好きなデザイナーの話を聞かされていた淳平は、この本をプレゼントに選んだ。
「アクセサリーとかじゃなくて悪いな。そういうの、よく分かんねぇし・・指輪、貰っても女じゃねぇからお前が喜ぶか分かんなくて。」
渡は、まさかプレゼントを淳平がくれるなんて思ってもみなかった。その上、自分の話をいつも聞いてくれていた、自分の好きなものを理解して考慮して買ってくれた気持ちに嬉しさが込み上げる。
「ありがとうございます・・本当に嬉しいです。一生大切にします」
渡がそう言って本を両手で胸に抱いた。
「大袈裟だなぁ。ホラ、こっち来いよ」
淳平は自分の胡坐の中に入れた。子供に絵本を読んで聞かせる様に後ろから一緒に本を見た。本には渡の好きなデザイナーの生涯を綴った内容と、歴代の服の写真集などが載っていた。
目をキラキラ輝かせて夢中で本に見入る渡を後ろから抱きしめながら普段なかなか言う機会のない事を言ってみる。
「渡・・料理、美味かった。ありがとな。・・そしていつも、ありがとう。」
渡の頬にそっと手を添わせ、ゆっくりと後ろに顔を向けて涙目になってる顔を見てから、そのふっくらとした唇を塞いだ。後ろから角度を何度も変えながら舌を絡めると渡の身体から力が抜けて行った。
―幸せに、なろうな。弘夢。
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淳平はここぞと言う時に集中力を発揮して仕事をこなした。学生時代の部活での試合を思い出す。
帰りに急いで予約をしていたケーキを取りに行き、車を飛ばして家路を急いだ。今日が週末ならどれだけ良かっただろうと考えていると、赤信号に捕まっているうちにふと無意識に以前助手席に乗った弘夢の顔を思い出した。
その後二人で行ったホテルとその後の激しい情事を思い出しそうになった時に丁度信号が青に変わって我に返って弘夢の姿を意図的に排除した。
(俺はもう渡だけを考えると決めたんだ・・)
玄関を開けると台所からパタパタと軽い足音が聞こえて、ドアをバタンと閉めるとふわふわした髪の毛が見えた。
「おかえりなさいっ」
「ただいま」
可愛い笑顔は幸せいっぱいに溢れていた。自分はこの笑顔を選んだのだともう一度自分の中で確認する。後悔はなかった。
「はい、ケーキ」
買って来たケーキを渡すと、パァッと明るい顔になって喜んだ渡は急いで冷蔵庫へと持って行った。
鞄をソファに置き、コートを脱いでハンガーに掛けた。シャワーは後でいいやと既に暖房で温められたリビングで少しずつ冷えた身体を解凍するようにソファにゆったりと座ると、システムキッチンからトントンとリズム良い包丁の音が聞こえる。
淳平がゆっくりと立ち上がり、台所へ向かうと渡が「ビールなら冷蔵庫にありますから、先に飲んでいて下さい」と言ってくれた。
淳平は冷蔵庫へは向かわず、懸命に野菜を切る小柄な渡の真後ろに立った。そして渡を挟んで台に両手を付けて渡を逃がさないようにする。ゆっくりと渡の首に唇を付けると、渡はビクッとして包丁の動きを止めた。
「あっ・・先輩・・」
そしてそのまま強く渡を抱きしめた。
「先輩・・お料理・・できないですよ」
渡の耳がほんのり赤くなっていくのを見て思わずそこに舌を這わす。
「んっ・・ダメっ」
そのまま襲ってやろうかと考えて渡の服に手を突っ込むと、珍しく必死に抵抗して腕から抜け出た渡に強制的に台所を退場させられた。
「今しちゃうと、お料理も食べられなくなってしまいますから!だから後でですっ」
「へぇ・・勃ったまま料理できるの器用だなぁ、渡」
そう言って渡の股間に目を向けると、あっ!と恥ずかしそうに横を向いてまた料理を始めた。
クスクス笑いながら言う事を聞いて、淳平は先にシャワーを浴びてくる事にした。熱いお湯を浴びるとその日の疲れも洗い落とされるようだった。
出てきた時には既に色鮮やかな料理がテーブルの上に綺麗に飾り付けられていた。二人でそれを堪能して、買って来たケーキを食べる。ケーキは殆ど渡が食べる為に買ったようなものだ。
淳平は渡がケーキに夢中になってる時、鞄からガサガサと包みを出した。
「渡、メリークリスマス」
「え?」
「プレゼントだよ」
渡の目が大きく見開いて、ゆっくりとその包み紙を手にした。それは本の形をした思い包み紙だった。渡が袋を開けると、中から分厚い本が出てきた。
「あ!コレ!!」
それは渡の大好きなデザイナーの本だった。渡はファッションが大好きで何度となく好きなデザイナーの話を聞かされていた淳平は、この本をプレゼントに選んだ。
「アクセサリーとかじゃなくて悪いな。そういうの、よく分かんねぇし・・指輪、貰っても女じゃねぇからお前が喜ぶか分かんなくて。」
渡は、まさかプレゼントを淳平がくれるなんて思ってもみなかった。その上、自分の話をいつも聞いてくれていた、自分の好きなものを理解して考慮して買ってくれた気持ちに嬉しさが込み上げる。
「ありがとうございます・・本当に嬉しいです。一生大切にします」
渡がそう言って本を両手で胸に抱いた。
「大袈裟だなぁ。ホラ、こっち来いよ」
淳平は自分の胡坐の中に入れた。子供に絵本を読んで聞かせる様に後ろから一緒に本を見た。本には渡の好きなデザイナーの生涯を綴った内容と、歴代の服の写真集などが載っていた。
目をキラキラ輝かせて夢中で本に見入る渡を後ろから抱きしめながら普段なかなか言う機会のない事を言ってみる。
「渡・・料理、美味かった。ありがとな。・・そしていつも、ありがとう。」
渡の頬にそっと手を添わせ、ゆっくりと後ろに顔を向けて涙目になってる顔を見てから、そのふっくらとした唇を塞いだ。後ろから角度を何度も変えながら舌を絡めると渡の身体から力が抜けて行った。
―幸せに、なろうな。弘夢。
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コメント
指輪も嬉しがると思います^^
というか、淳平に貰えるという事自体、感動のようです!
> 淳平くん、心は弘夢ちゃんに惹かれたままなのに、無理やり渡くんとらぶになろうとしてるのが、切ないです(ノ_・。)
色々と自分の中で決断をして得た結果ですが、弘夢が幸せを感じてるという事で
自分も渡と幸せになっていこうと思えたのだと思います(>_<)
そうですね。切ないこの人たちに本当に幸せだと思える日が来るといいです。
> 幸せになろうなって~!弘夢ちゃんが幸せなら、自分も幸せになるべきだって心境ですか。
そうですね。そうだと思います。ただ、淳平自身、渡を本当に愛おしいと思う所があるので
これからの渡との生活が全くの虚像ではないという事だけが救いかもしれません。
> そして一人、ぽつnと涙する時枝さんが残される・・・?あああ不幸~!いいかも?(コラ)
不幸な時枝に暖かい目でありがとうございます^^(笑)
(p_q*)シクシク(・∀・)ニヤニヤ←
コメントどうもありがとうございました
> 幸せに、なろうな。弘夢
デました~^^;
> ええ~~?渡じゃなくって弘夢なのー?
> うわー、これは~~!!!
> 意味深ですよー!
> 気になるじゃないですか―?
弘夢に胸の中で言った淳平の真意は・・。
いえ、そんなに意味深ではないです~。
何か言葉が足りなくて伝わり難い文になってしまった・・(-"-;A ...アセアセ
すみません|柱|ヽ(-ω-;)反省
> チャットで追及ですよ!
> ぺちぺち!
あぁん♪叩かれた~♪ ・・(_- )
コメントどうもありがとうございました
そうですね!(>_<)
淳平の決意と渡を好きだっていう気持ちがこうして二人で色んな事をして
少しずつ伝わっていくといいです。
> たんぽぽは、ひょっとして、こんなふうに誰かから優しくプレゼントもらったクリスマスは初めてなのかな?と、ふと考えると切なくなってくるんだけど・・・深読みすぎるかな?
はい。初めてです!厳密に言えば、心から愛した人にされるのは初めてです。
・・リンクさんも予知能力者だから侮れませんね^^;
コメントどうもありがとうございました
あ・・時枝・・ごめん・・。
エーン(pωq)ヽ(・ω・。)ヨチヨチ (笑)
> 新妻渡たん(*/∇\*)キャ
> あぁ、彼の周りにお花が舞っている(笑)
あはは!確かに~♪♪ルンルン((o(*・ω・*)o))ルンルン♪
> キッチンプレイに突入しちゃうのかと思ったら今日はお預けなのね( ´艸`)ムププ
> そうそう、その後の段取り(笑)が全部台無しになっちゃうもんねwww
キッチンプレイ!!すっごい、すっごい我慢したんだよ!!(笑)
脳内ではエライ事が・・あぁ・・あはっ・・
と、トマトが~っΣ(ロ゚ ノ)ノビクッ!
でもまた話が進まなくなってしまうのでご想像にお任せする事にしたよ^^
> …ちょっと見たかったけど(ボソっw
え!本当?[壁]ωT)スミマセン
> 素敵なプレゼント☆
> ありきたり(爆)なアクセサリーなんかじゃなく、本当に渡たんを思って選んだのが伝わってくる~。
> これはめちゃめちゃ嬉しいよな(o'∀'))ゥンゥン
おお~ッ!そこに喰いついてくれてありがとう!
私も結構アクセより本とかアンティークの方が嬉しかったりする^^
相手の好きなものを考えて買ってくれるって、きっと渡は凄く嬉しいと思う。
> ラブ甘で良い雰囲気(*´ρ`*)ホワワーン と思ったら最後にキタコレ!
> この一言は結構深いよ~ヒソ( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` )ヒソ ←
> 渡たんと生きていく決意表明にも取れるし、そう自分に言い聞かせることで『渡たんを愛する自分』という役を無意識に作っているようでもある…。
デタ!!エスパー能力!!しかもヒソヒソ話してる(笑)
うん、色んな想いが込められた脳内の一言だと思う。
相変わらず鋭いね。澪ちんは。チクチクするぢゃないか。 (*・д・)σテイ
> この一文に桔梗ちんマジックが( ´¬`)つ─━━。・:*:・シャララン(爆)
ん?あそこに見えるはハイジ・・って香稀ちゃんがマジックをかけにキタ!(笑)
(縛られたまま)
コメントどうもありがとうございました
そうなんです~。
お互いにって気持ちを頭で弘夢に語りかけて・・という。
> う~ん桔梗様はまだ寒天玉・・・じゃなくて隠し玉持ってるのかしら?
(*゚ロ゚)ハッ!! 何故私が寒天玉を隠し持っているのを知って・・
> お料理上手なぽぽたん、手作り料理で意中の彼のハートをがっちりキャッチ!できたのか?
出来たのでしょうか(笑)
男のハートは料理で掴めと、よく聞きますね!
逆もしかりだと思うのですが!(笑)
私も食べ物には弱いので(〃∇〃)
> 不安だ・・・桔梗さんだから不安だ・・・
> でも一番気になるのは時枝さんだ。こっそり泣いてるし
> クールなMだし←勝手に決めるな!
そんな、夕華さんを不安にさせるようなものはありませんよ(´∀`*)ウフフ
クールM時枝(決定?)はこっそりと目に涙を・・。
木戸め。せめて気付いてやれよ~
コメントどうもありがとうございました
淳平くん、心は弘夢ちゃんに惹かれたままなのに、無理やり渡くんとらぶになろうとしてるのが、切ないです(ノ_・。)
幸せになろうなって~!弘夢ちゃんが幸せなら、自分も幸せになるべきだって心境ですか。
そして一人、ぽつnと涙する時枝さんが残される・・・?あああ不幸~!いいかも?(コラ)
幸せに、なろうな。弘夢
ええ~~?渡じゃなくって弘夢なのー?
うわー、これは~~!!!
意味深ですよー!
気になるじゃないですか―?
チャットで追及ですよ!
ぺちぺち!
たんぽぽは、ひょっとして、こんなふうに誰かから優しくプレゼントもらったクリスマスは初めてなのかな?と、ふと考えると切なくなってくるんだけど・・・深読みすぎるかな?
新妻渡たん(*/∇\*)キャ
あぁ、彼の周りにお花が舞っている(笑)
キッチンプレイに突入しちゃうのかと思ったら今日はお預けなのね( ´艸`)ムププ
そうそう、その後の段取り(笑)が全部台無しになっちゃうもんねwww
…ちょっと見たかったけど(ボソっw
素敵なプレゼント☆
ありきたり(爆)なアクセサリーなんかじゃなく、本当に渡たんを思って選んだのが伝わってくる~。
これはめちゃめちゃ嬉しいよな(o'∀'))ゥンゥン
ラブ甘で良い雰囲気(*´ρ`*)ホワワーン と思ったら最後にキタコレ!
この一言は結構深いよ~ヒソ( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` )ヒソ ←
渡たんと生きていく決意表明にも取れるし、そう自分に言い聞かせることで『渡たんを愛する自分』という役を無意識に作っているようでもある…。
この一文に桔梗ちんマジックが( ´¬`)つ─━━。・:*:・シャララン(爆)
う~ん桔梗様はまだ寒天玉・・・じゃなくて隠し玉持ってるのかしら?
お料理上手なぽぽたん、手作り料理で意中の彼のハートをがっちりキャッチ!できたのか?
不安だ・・・桔梗さんだから不安だ・・・
でも一番気になるのは時枝さんだ。こっそり泣いてるし
クールなMだし←勝手に決めるな!
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