12/15/2010(Wed)
ユメ芝居 2話
「可愛いって……俺、全然可愛くなんかないですよ。みっちゃんさんの方が綺麗です……」
「みっちゃん、さん?」
「あっ! すみません、店のおばさんが斎藤さんを“みっちゃん”って呼んでいたので……つい」
「ああ。三国でいいよ?」
可笑しそうに笑うその声に、何だかグッと距離が縮んだ気がした。
「俺、綺麗か? 昌弘くんの方が、キリッとした男前の綺麗な顔しているじゃない? 将来が楽しみだよ」
「いいえ!! 三国さんは、凄く綺麗です! 昔から憧れていました!」
昌弘の必死の言葉に少し驚いたような恥ずかしそうな顔をした三国はほんの少し頬を染めた。
それが妙に色っぽくて昌弘は下半身が暴れ出しそうになるのを必死で押さえるのが大変だった。
「あ、ありがとう。何だかそう言われるのは初めてで、結構恥ずかしいもんだな」
それから三国は信じられない提案をしてきた。
昌弘の事を可愛い弟のように思ったのか、自分の店でバイトをしないかと勧めてきたのだ。
もちろん、二つ返事で毎日アルバイトをさせて貰える事になった昌弘は毎日が夢のようだった。
あれから店の中で話す事も多くなり、益々仲良くなれた気がした。
いつも夕方六時半までのバイトで中学生なのに働かせて貰えていいお小遣い稼ぎにもなった。
そしてたまに三国に勉強まで見て貰える時は、嬉しさと緊張で汗だくになる程だった。
大学生だった三国は忙しく中々会うのも難しかったが、本当に気さくに弟のように接してくれる三国をいつの間にか自分が恋をしている事にちゃんと自覚するようになっていた。
一週間、一か月のうちのたった数秒だけ会えただけでも嬉しくて嬉しくて毎日が楽しかった。
だがそんな毎日の中で、ある日綺麗な彼女を紹介された事があった。
昌弘の浮かれた心を現実という重力が暗く冷たい地面に押し付けるように、昌弘の表情も曇っていった。
だが、別に何を期待していた訳でもなかった。もちろん、三国がゲイであれば一番良かったが、そんな事は一度も考えた事も無かったのが唯一救いだったかもしれない。
(まぁ……そうだよな)
分かり切っていた事だった。だから彼女が遊びに来る日はやっぱり見るのは辛いし、その彼女がとても羨ましかったが、そんな中でも三国が向けてくれる笑顔がとても嬉しかった。
優しくて綺麗な三国は定期的に違う彼女を連れてきた。
その日はあまりお客さんも来なくて暇な午後だった。
朝から天気が崩れて雷雨が激しかったというのも理由だろう。
家にはおばさんも居なくて鍵が閉まっていた。
店を閉める時間になってウトウトしていた昌弘は少し遅めに寝ぼけ眼でレジを閉めていた。
「お、まだやっていたのか昌弘。あぁ……びっしょりだよ」
「あ! 三国しゃん……」
つい眠過ぎて呂律が回らず変な発音になる昌弘に、三国はきゅんとするような表情を見せて近寄って来た。
「う……今のもう一回その顔で言って」
「え……み、三国……しゃん」
「うぅっ……可愛いぃぃっ」
「え? え!? あぅっ」
三国は狭いレジの席の中に入り込み、昌弘を自分の懐に入れ込むようにして抱き抱えた。
服の上からでも分かる三国の意外にもある筋肉の感触に息が止まりそうになった。
「お前、結構抱き心地いいのな」
「……」
耳元で言われるそんな言葉に昌弘は心臓が破裂しそうになって思わずギュッと目を瞑った。
雨で湿った三国のネコっ毛から、シャンプーの良い香りがした。
「三国……さん」
「ん?」
「す、好きです」
その時、深い事も、彼女がいるという事も、三国が男がダメかもしれないという事も、何もかも考えずに気持ちが口から出た。
相手の事や先にどう転ぶか考える余裕もない若さ故の行動だった。
三国はゆっくりと身を離すと、意外にも興味深々のような表情をしていた。
「へぇ……それはさ、恋愛感情でって事?」
「え! あ、はい……多分……いや、そうです。すみません」
「何で謝るの?」
「え……だって、イヤだと思うし……男からだなんて……」
「別にイヤじゃないよ」
「え?」
三国はゆっくりと身をずらすと、段になっているレジの席の後ろへ回って座った。
丁度昌弘の身体を自分の足の間に入れ込む形になって、昌弘の緊張はピークへ達した。
「あのっ……三国さんは、ゲイ……何ですか?」
「いや、多分違う……けど、昌弘くんは別にイヤじゃないかも……試してみても……いい?」
そう言って三国は後ろから抱き締めてきた。
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「みっちゃん、さん?」
「あっ! すみません、店のおばさんが斎藤さんを“みっちゃん”って呼んでいたので……つい」
「ああ。三国でいいよ?」
可笑しそうに笑うその声に、何だかグッと距離が縮んだ気がした。
「俺、綺麗か? 昌弘くんの方が、キリッとした男前の綺麗な顔しているじゃない? 将来が楽しみだよ」
「いいえ!! 三国さんは、凄く綺麗です! 昔から憧れていました!」
昌弘の必死の言葉に少し驚いたような恥ずかしそうな顔をした三国はほんの少し頬を染めた。
それが妙に色っぽくて昌弘は下半身が暴れ出しそうになるのを必死で押さえるのが大変だった。
「あ、ありがとう。何だかそう言われるのは初めてで、結構恥ずかしいもんだな」
それから三国は信じられない提案をしてきた。
昌弘の事を可愛い弟のように思ったのか、自分の店でバイトをしないかと勧めてきたのだ。
もちろん、二つ返事で毎日アルバイトをさせて貰える事になった昌弘は毎日が夢のようだった。
あれから店の中で話す事も多くなり、益々仲良くなれた気がした。
いつも夕方六時半までのバイトで中学生なのに働かせて貰えていいお小遣い稼ぎにもなった。
そしてたまに三国に勉強まで見て貰える時は、嬉しさと緊張で汗だくになる程だった。
大学生だった三国は忙しく中々会うのも難しかったが、本当に気さくに弟のように接してくれる三国をいつの間にか自分が恋をしている事にちゃんと自覚するようになっていた。
一週間、一か月のうちのたった数秒だけ会えただけでも嬉しくて嬉しくて毎日が楽しかった。
だがそんな毎日の中で、ある日綺麗な彼女を紹介された事があった。
昌弘の浮かれた心を現実という重力が暗く冷たい地面に押し付けるように、昌弘の表情も曇っていった。
だが、別に何を期待していた訳でもなかった。もちろん、三国がゲイであれば一番良かったが、そんな事は一度も考えた事も無かったのが唯一救いだったかもしれない。
(まぁ……そうだよな)
分かり切っていた事だった。だから彼女が遊びに来る日はやっぱり見るのは辛いし、その彼女がとても羨ましかったが、そんな中でも三国が向けてくれる笑顔がとても嬉しかった。
優しくて綺麗な三国は定期的に違う彼女を連れてきた。
その日はあまりお客さんも来なくて暇な午後だった。
朝から天気が崩れて雷雨が激しかったというのも理由だろう。
家にはおばさんも居なくて鍵が閉まっていた。
店を閉める時間になってウトウトしていた昌弘は少し遅めに寝ぼけ眼でレジを閉めていた。
「お、まだやっていたのか昌弘。あぁ……びっしょりだよ」
「あ! 三国しゃん……」
つい眠過ぎて呂律が回らず変な発音になる昌弘に、三国はきゅんとするような表情を見せて近寄って来た。
「う……今のもう一回その顔で言って」
「え……み、三国……しゃん」
「うぅっ……可愛いぃぃっ」
「え? え!? あぅっ」
三国は狭いレジの席の中に入り込み、昌弘を自分の懐に入れ込むようにして抱き抱えた。
服の上からでも分かる三国の意外にもある筋肉の感触に息が止まりそうになった。
「お前、結構抱き心地いいのな」
「……」
耳元で言われるそんな言葉に昌弘は心臓が破裂しそうになって思わずギュッと目を瞑った。
雨で湿った三国のネコっ毛から、シャンプーの良い香りがした。
「三国……さん」
「ん?」
「す、好きです」
その時、深い事も、彼女がいるという事も、三国が男がダメかもしれないという事も、何もかも考えずに気持ちが口から出た。
相手の事や先にどう転ぶか考える余裕もない若さ故の行動だった。
三国はゆっくりと身を離すと、意外にも興味深々のような表情をしていた。
「へぇ……それはさ、恋愛感情でって事?」
「え! あ、はい……多分……いや、そうです。すみません」
「何で謝るの?」
「え……だって、イヤだと思うし……男からだなんて……」
「別にイヤじゃないよ」
「え?」
三国はゆっくりと身をずらすと、段になっているレジの席の後ろへ回って座った。
丁度昌弘の身体を自分の足の間に入れ込む形になって、昌弘の緊張はピークへ達した。
「あのっ……三国さんは、ゲイ……何ですか?」
「いや、多分違う……けど、昌弘くんは別にイヤじゃないかも……試してみても……いい?」
そう言って三国は後ろから抱き締めてきた。
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コメント
あはは(≧∀≦)
綺麗なお兄さんはどちらもOKでした(笑)
確かに中学生をひと押しですよねっ (*・д・)σテイ
そして題名の繋げが好きです(笑)
コメントどうもありがとうございました
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