12/15/2010(Wed)
ユメ芝居 1話
昌弘(マサヒロ)はいつも近所にある駄菓子屋へ行くのが日課だった。
それは小学生の時から続いて中学に上がった今も通う毎日だった。
昌弘が大の駄菓子好き、という理由だけで通っている訳ではない。目当ては駄菓子と、そこに昔からちょこちょこ働くお兄さんに会う為だった。
会う、というのは少し違った。“見る”という方が近い。
今まで別段話した事もなく、毎日通う中で「あ、今日もまたいる」と思ったのが、その人を認識した初めての時だった。
昌弘が小学生の時、手伝いに来ていたそのお兄さんは高校生くらいだった。
きっとその家のバイトのような感じだったのだろう。雑誌や教科書を読みながら適当にレジをやっていた。
昌弘は子供ながらにそのお兄さんがとても美しい顔立ちをしている男前だという事が分かった。
(格好いいお兄さんだなぁ)
その時は憧れが強かった。いつもレジに持って行く時に少し緊張する。
間近で顔が見たいと思っていても、目が合うのが何だかイヤでいつも俯いて後悔していた。
だが、ある時「あ、君、おつり」と言われて振り向いた昌弘は初めて間近で目を合わせた。
男子高校生にしては珍しく愛想の良い人だったのだろう。優しくニコッと笑いかけてくれた。
だが昌弘の小さな心臓はびっくりして飛び跳ねたのだ。
震えながらそっとおつりを貰おうと手を出すと、小銭と一緒にお兄さんの温かい手が少し触れた。
昌弘はその感触を今でもよく覚えていた。
そしてその話をすると、彼は変わらぬ優しく美しい笑顔を向けてくれた。
だんだんとお兄さんは店先に出る事も少なくなったが、毎日通っていると週に一、二回は会えた。
店と繋がって奥には普通の家になっていた。お兄さんの母親らしき人が、お兄さんの事を「みっちゃん」と呼んでいた事があった。
(みっちゃん……さん)
昌弘は勝手に自分の中でそう呼んでいた。
昌弘が中学生になると、本当に月に何回かしか会えなくなった。
それも殆ど無くなってきていたある日、店を通って外へ出ようとしていた「みっちゃんさん」とはち合わせた。
そしてその時が初めてその「みっちゃんさん」が話かけてくれた日でもあった。
「あ、こんにちは」
「!!」
「いつも来てくれている子、だよね?」
昌弘は驚きと焦りで取り敢えずブンブンと首を縦に振っていた。
「ふふっ……ありがとうね」
そう言って以前見た優しい笑顔で通り過ぎようとした時、昌弘はついその人の腕の裾を掴んでいた。
その人は驚いたように振り向くと、サラサラとした髪が美しく頬を追った。
「何?」
「え……え……あの……もうお店には出ないんですかッ」
咄嗟に出た言葉は普段から思っていた想いだった。
するとその人は、今度は可愛い笑顔を見せて言った。
「今時間、ある? そこの公園でコーヒー飲まない? あ、ココアの方がいいかな?」
昌弘は信じられなかった。
あんなに憧れていた人と、今自分が隣でココアを飲んでいる。
緊張でカチカチになっていると、その人が口を開いた。
「俺、別のバイトもしているから、家の手伝いがなかなか出来ないんだよね」
横目でチラチラと缶コーヒーに付けられる少し濡れたピンクの唇を見て、昌弘はドキドキしていた。
「君、名前は?」
「あっ、昌弘と言います。竹中昌弘です!」
「昌弘くんか。俺は斎藤三国(ミクニ)。よろしくな……って、何だか昔から顔なじみなのに何だか今更って感じだするな」
昌弘にとって昔から顔馴染みという言葉が心底嬉しかった。昔から自分を知っていてくれた気がしたからだ。
(三国さん……だから“みっちゃん”だったんだ)
「いつも可愛い子が来るなって思ってたんだ」
そう言って大人っぽい微笑みを向けられて、昌弘は顔が真っ赤になった。
次へ>>
小悪魔な弟やアネモネのその後も「それから」のクリスマスバージョンも
進行中ですv
ですが、ちょっと暗いかな~と思ってお蔵入りしようか迷っていたものを
UPしてしまってスミマセン;;
それは小学生の時から続いて中学に上がった今も通う毎日だった。
昌弘が大の駄菓子好き、という理由だけで通っている訳ではない。目当ては駄菓子と、そこに昔からちょこちょこ働くお兄さんに会う為だった。
会う、というのは少し違った。“見る”という方が近い。
今まで別段話した事もなく、毎日通う中で「あ、今日もまたいる」と思ったのが、その人を認識した初めての時だった。
昌弘が小学生の時、手伝いに来ていたそのお兄さんは高校生くらいだった。
きっとその家のバイトのような感じだったのだろう。雑誌や教科書を読みながら適当にレジをやっていた。
昌弘は子供ながらにそのお兄さんがとても美しい顔立ちをしている男前だという事が分かった。
(格好いいお兄さんだなぁ)
その時は憧れが強かった。いつもレジに持って行く時に少し緊張する。
間近で顔が見たいと思っていても、目が合うのが何だかイヤでいつも俯いて後悔していた。
だが、ある時「あ、君、おつり」と言われて振り向いた昌弘は初めて間近で目を合わせた。
男子高校生にしては珍しく愛想の良い人だったのだろう。優しくニコッと笑いかけてくれた。
だが昌弘の小さな心臓はびっくりして飛び跳ねたのだ。
震えながらそっとおつりを貰おうと手を出すと、小銭と一緒にお兄さんの温かい手が少し触れた。
昌弘はその感触を今でもよく覚えていた。
そしてその話をすると、彼は変わらぬ優しく美しい笑顔を向けてくれた。
だんだんとお兄さんは店先に出る事も少なくなったが、毎日通っていると週に一、二回は会えた。
店と繋がって奥には普通の家になっていた。お兄さんの母親らしき人が、お兄さんの事を「みっちゃん」と呼んでいた事があった。
(みっちゃん……さん)
昌弘は勝手に自分の中でそう呼んでいた。
昌弘が中学生になると、本当に月に何回かしか会えなくなった。
それも殆ど無くなってきていたある日、店を通って外へ出ようとしていた「みっちゃんさん」とはち合わせた。
そしてその時が初めてその「みっちゃんさん」が話かけてくれた日でもあった。
「あ、こんにちは」
「!!」
「いつも来てくれている子、だよね?」
昌弘は驚きと焦りで取り敢えずブンブンと首を縦に振っていた。
「ふふっ……ありがとうね」
そう言って以前見た優しい笑顔で通り過ぎようとした時、昌弘はついその人の腕の裾を掴んでいた。
その人は驚いたように振り向くと、サラサラとした髪が美しく頬を追った。
「何?」
「え……え……あの……もうお店には出ないんですかッ」
咄嗟に出た言葉は普段から思っていた想いだった。
するとその人は、今度は可愛い笑顔を見せて言った。
「今時間、ある? そこの公園でコーヒー飲まない? あ、ココアの方がいいかな?」
昌弘は信じられなかった。
あんなに憧れていた人と、今自分が隣でココアを飲んでいる。
緊張でカチカチになっていると、その人が口を開いた。
「俺、別のバイトもしているから、家の手伝いがなかなか出来ないんだよね」
横目でチラチラと缶コーヒーに付けられる少し濡れたピンクの唇を見て、昌弘はドキドキしていた。
「君、名前は?」
「あっ、昌弘と言います。竹中昌弘です!」
「昌弘くんか。俺は斎藤三国(ミクニ)。よろしくな……って、何だか昔から顔なじみなのに何だか今更って感じだするな」
昌弘にとって昔から顔馴染みという言葉が心底嬉しかった。昔から自分を知っていてくれた気がしたからだ。
(三国さん……だから“みっちゃん”だったんだ)
「いつも可愛い子が来るなって思ってたんだ」
そう言って大人っぽい微笑みを向けられて、昌弘は顔が真っ赤になった。
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小悪魔な弟やアネモネのその後も「それから」のクリスマスバージョンも
進行中ですv
ですが、ちょっと暗いかな~と思ってお蔵入りしようか迷っていたものを
UPしてしまってスミマセン;;
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コメント
おお~!ちこさま!!
お久し振りですー!!来て下さってありがとうございます(≧∀≦)ノ
綺麗なお兄さん、大好物です!!
それにしても自分で質問、自分で答えるちこさまが愛らしい(〃∇〃)
そして私たちの大好物はそんな綺麗なお兄さんと可愛いお兄さんの絡みv
ああ!興奮して下さって嬉しいデス!
続きもありがとうございますー!
コメントどうもありがとうございました
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