12/16/2010(Thu)
ユメ芝居 5話
昌弘は自分でも虚しい夫婦ごっこだと分かっていた。
自分だけが必死で、こんなママゴトに付き合ってくれる三国を思うと、何か危機感のようなものが芽生えた。
このまま行くと本当に監禁でもしてしまいたくなりそうだった。
昌弘は少しだけ逃げ道を作ろうと思った。
そしてそういう関係が変わらず続いた。愚かな芝居のようなセリフは、時が経つにつれその一つ一つが本物だという事を裏付けるように、二人の関係はずっと続いた。
昌弘が社会人として一人前になった時、三国も四十過ぎのいい年になっていた。年をとっても相変わらず若く艶っぽい容姿は衰えず、深みすら増したように見えた。
子供は一人しか作らず、奥さんとは早いうちからセックスレスとなっていたようだった。
それと反比例して三国から昌弘を求める事がだんだんと多くなっていった。
「昌弘、恋人……いるだろう」
「ん? いないよ」
昌弘は大人っぽい宥めるような笑みを口元に浮かべ、三国の頬を撫でると三国は昌弘の色香にクラリとした。
「嘘だ。こんな格好いい人が……恋人いないわけない。俺みたいなオジサンを本気な訳ないよ」
三国は寂しそうな顔で昌弘の逞しい腕の中にすっぽりと埋まった。
「何言ってるの? 三国さん、初めて会った時とあんまり変わらないよ?」
「初めて会った時……って、俺が中学生の時じゃないか」
「うん……いつ会っても綺麗で、魅力的で……あの時感じたままだよ」
三国はそっと恥ずかしそうに目を伏せて昌弘の胸元に唇を付けた。
「でも……ごめん。恋人はいないけど……色々あって……関係を持った事はあるんだ」
三国はハッと顔を上げた。自分は普通の結婚をして家庭があって、何一つ不利な事はない立場でいる。
三国は初めてそれが一番重たい鎖のように感じた。
込み上げる嫉妬を押し殺すように、グッと我慢をする。
「良かった?」
「え……」
だがつい口から出た言葉はあまりに幼稚な言葉だった。
「あ……ごめっ」
「三国さん……妬いてるの?」
「だって……相手の子、若いと思うし……絶対そっちの方がいいに決まってるのに……」
昌弘は三国の顔を手でそっと上に向けた。
「俺、おかしいんだ……年々、頭がおかしくなりそうなくらい、お前の事を好きになって……お前が他の奴を抱いても、浮気だなんて言えない立場だし、でも独り占めしたいと思った時には年取ってしまって……あの頃に……今戻りたいよ」
その三国の言葉に、初めて昌弘の胸の中に安心感が生まれた。
「俺、何だか嬉しいかも……いつも俺ばかり追いかけて、不安で……もしかしたらこれでようやく対等になれたのかな」
昌弘はそっと三国の顎を上に上げてキスをした。
「俺はどんどん不安になるよ、昌弘。お前が信じられない程どんどんイイ男になっていくから……。俺はただ老いていくだけだし」
三国は薄らと瞳を潤わせて半分諦めるような笑みを浮かべた。
「老いてないし、老いても別にいいよ。ただ、俺を一番に思ってくれたらいい。死ぬ間際まで、俺の事を思ってくれれば、それでいい。本当は一時も離れたくないんだけど」
「昌弘は、結婚、しないの?」
「ん? “出来ない”よ」
三国にとって、その“出来ない”の意味は、昌弘がゲイだからと捉えられた。だが、昌弘の中での意味は“三国しか愛せないから”という意味だった。
そして言葉通り、昌弘が結婚適齢期になって三国がだんだんと老けてきても、昌弘が一向に結婚する気配は無かった。
いつの間にか他に身体を繋げる逃げ場も作らず、昌弘はひたすら地道に毎日働き、そして週末や会社帰り、時には三国の家族の中で一緒に時を過ごした。
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自分だけが必死で、こんなママゴトに付き合ってくれる三国を思うと、何か危機感のようなものが芽生えた。
このまま行くと本当に監禁でもしてしまいたくなりそうだった。
昌弘は少しだけ逃げ道を作ろうと思った。
そしてそういう関係が変わらず続いた。愚かな芝居のようなセリフは、時が経つにつれその一つ一つが本物だという事を裏付けるように、二人の関係はずっと続いた。
昌弘が社会人として一人前になった時、三国も四十過ぎのいい年になっていた。年をとっても相変わらず若く艶っぽい容姿は衰えず、深みすら増したように見えた。
子供は一人しか作らず、奥さんとは早いうちからセックスレスとなっていたようだった。
それと反比例して三国から昌弘を求める事がだんだんと多くなっていった。
「昌弘、恋人……いるだろう」
「ん? いないよ」
昌弘は大人っぽい宥めるような笑みを口元に浮かべ、三国の頬を撫でると三国は昌弘の色香にクラリとした。
「嘘だ。こんな格好いい人が……恋人いないわけない。俺みたいなオジサンを本気な訳ないよ」
三国は寂しそうな顔で昌弘の逞しい腕の中にすっぽりと埋まった。
「何言ってるの? 三国さん、初めて会った時とあんまり変わらないよ?」
「初めて会った時……って、俺が中学生の時じゃないか」
「うん……いつ会っても綺麗で、魅力的で……あの時感じたままだよ」
三国はそっと恥ずかしそうに目を伏せて昌弘の胸元に唇を付けた。
「でも……ごめん。恋人はいないけど……色々あって……関係を持った事はあるんだ」
三国はハッと顔を上げた。自分は普通の結婚をして家庭があって、何一つ不利な事はない立場でいる。
三国は初めてそれが一番重たい鎖のように感じた。
込み上げる嫉妬を押し殺すように、グッと我慢をする。
「良かった?」
「え……」
だがつい口から出た言葉はあまりに幼稚な言葉だった。
「あ……ごめっ」
「三国さん……妬いてるの?」
「だって……相手の子、若いと思うし……絶対そっちの方がいいに決まってるのに……」
昌弘は三国の顔を手でそっと上に向けた。
「俺、おかしいんだ……年々、頭がおかしくなりそうなくらい、お前の事を好きになって……お前が他の奴を抱いても、浮気だなんて言えない立場だし、でも独り占めしたいと思った時には年取ってしまって……あの頃に……今戻りたいよ」
その三国の言葉に、初めて昌弘の胸の中に安心感が生まれた。
「俺、何だか嬉しいかも……いつも俺ばかり追いかけて、不安で……もしかしたらこれでようやく対等になれたのかな」
昌弘はそっと三国の顎を上に上げてキスをした。
「俺はどんどん不安になるよ、昌弘。お前が信じられない程どんどんイイ男になっていくから……。俺はただ老いていくだけだし」
三国は薄らと瞳を潤わせて半分諦めるような笑みを浮かべた。
「老いてないし、老いても別にいいよ。ただ、俺を一番に思ってくれたらいい。死ぬ間際まで、俺の事を思ってくれれば、それでいい。本当は一時も離れたくないんだけど」
「昌弘は、結婚、しないの?」
「ん? “出来ない”よ」
三国にとって、その“出来ない”の意味は、昌弘がゲイだからと捉えられた。だが、昌弘の中での意味は“三国しか愛せないから”という意味だった。
そして言葉通り、昌弘が結婚適齢期になって三国がだんだんと老けてきても、昌弘が一向に結婚する気配は無かった。
いつの間にか他に身体を繋げる逃げ場も作らず、昌弘はひたすら地道に毎日働き、そして週末や会社帰り、時には三国の家族の中で一緒に時を過ごした。
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コメント
ああー!まぜまぜを送って下さってありがとうございます(ノД`)・゜・
そうですね。みっちゃんは年齢毎に昌弘ののめり込んでいるようです。
昌弘の言葉がなかなか信用できないほど好きになっているようです(>_<)
信じろよー(o>Д<)o
コメントどうもありがとうございました
> これ続いてたんだ~。勝手に3話で終わりだと思ってた…(-_-;)バカデス。ものすごいあたし的には、バッドエンドだなぁ~なんて思ってました^_^; お恥ずかしい。
こんばんはー!
あ!そうなんです!続いてました!!すみません;
あそこで終わったら確かにバッドエンドですよねー!!
泣きます;
> んでも、どんどん辛くなってる…なんでしょう!?このもやもや~桔梗さま助けて~|ω`*)ノ"
ええー!でもあと一話、6話目で最終です!
チラ見したら多分気分が治るのではと…(;´Д`A ```
もやもや~!助けるには最後を見てみて下さいませ~!(>ω<)
> あたしも今、ものすごく違った意味で辛い話を書き始めちゃって…収拾つかなくなってます(>_<) エロ満載にするしか逃げ道なしっ!
ああ!ご自分でも辛いのを書いているとはダブルパンチ!!
ごめんなさいぃ~っ
確かにエロに逃げるしか…(笑)
私も次はエロです(笑)
コメントどうもありがとうございました
これ続いてたんだ~。勝手に3話で終わりだと思ってた…(-_-;)バカデス。ものすごいあたし的には、バッドエンドだなぁ~なんて思ってました^_^; お恥ずかしい。
んでも、どんどん辛くなってる…なんでしょう!?このもやもや~桔梗さま助けて~|ω`*)ノ"
あたしも今、ものすごく違った意味で辛い話を書き始めちゃって…収拾つかなくなってます(>_<) エロ満載にするしか逃げ道なしっ!
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