02/27/2012(Mon)
貴方の狂気が、欲しい 38話
「父親って……じゃあ今向こうにいるのか!? いや、というかその名前は何だ?」
全てが解せない上に元凶とも言える父親の元に時枝が居るというだけで頭に血が上っている木戸は凄い剣幕で暁明に問い詰める。
「ちょっと暁明さまに何するんだよッ! 今説明してるんだから! 止めてよ!!」
小柄な愛人が必死に木戸を暁明から引き剥がそうとするが木戸は微動だにしない。
「先ず、香の父親……と言っても香と約一回りしか違わないんだが……あの事件の後、ほぼ勘当された状態だったらしい。ただ、やはり向こうも親だから、一応金と世話係だけは付けて国を追い出し日本で完全に日本人として密に生活をさせていたようだ。親族や周りは誰もが彼はただの異常者だとばかり思っていたようだが、自分で家庭教師を付け色々と勉強していたようで、今では日本に何百店舗も風俗関係の店を展開させているやり手だ。ただ素性を隠している為に彼がオーナーだとはあまり知られていないがな」
木戸は苦虫を潰したような表情で話しを聞いていた。
「香の方だが、李はやはりずっと香を拉致する機を窺っていたようでね。今までは君がいたし、巨大なグループがバックにいるから徐々に削って誘き出すようにしていたが、何故か身一つになって歩いている彼を都合良く手に入れられたという訳だ」
時枝の全身から汗が噴き出た。
「俺の……せいなんだ」
絞り出すような声の木戸を、愛人が見上げた。
「ところがだ。香を手に入れた李は当然処分しようと思っていた矢先に耳を疑う男から取引が持ち込まれた。それが杉下真也だった。李も杉下という名が息子だと気付いたのは本人から説明を聞くまで分からなかったらしい」
「何で李は手渡したんだ」
木戸は暁明を掴んでいた手を下ろした。
「きっと……処分するに等しいから……だろう」
暁明は唇を噛んだ。
そして暁明は愛人に「あれを」と言い渡すと、愛人は懐から何かを取り出した。
「これが……部下がやっとの思いで撮れた香の唯一の証拠写真だ……」
暁明に手渡された一枚の写真を見た木戸はそれにジッと目を凝らした。
二、三秒は目を凝らした。
「おい……どこに時枝がいる」
少し薄暗いが写真に写っているのは、大きな日本家屋であろう庭に続く廊下が写っていた。
襖が少し開いており、その中に女中と思われる人が二人と年寄りがいた。
さしずめ年寄りの世話をしているのだろう。
「…………」
暁明は唇を噛んだまま黙っていた。
「オイふざけるなよ!? 時枝の写った写真を見せろよッ!!」
「……いるんだよッ!! ……そこにッ」
「ハァ!?」
木戸はもう一度写真を覗き込み、隅から隅まで瞬きもせずに探した。
人物は三人。女二人と老人が一人。
白く見える髪は少し長く一つに束ねられていた。
浴衣のような和服を着て後ろ向きに座っている。
老人にしては姿勢はいい。
その時、木戸の呼吸が切れた。
「まさか……これ……」
顔を上げると瞳に涙を浮かべた暁明がいた。
「あぁ……それだよ……その老人みたいな人が、香だ」
世界が一瞬歪んだ。
宇宙に放り出されたように天地も分からない。平衡感覚を失い、木戸はそのままソファへと崩れた。
髪がこれほど白く変色しているのはそれ程の精神的なショックを受けた証拠だ。
「はやく……たすけないと……」
心臓のリズムが狂う。
木戸の膝が無意識の震えで力が入らず立ち上がれない。
「木戸さん……」
暁明は瞳から涙を幾つも落としながら手を差し出した。
「あの子を愛しているんでしょう? だったら貴方が助けるんです。さぁ、行きましょう」
震える手を握り拳にし、力一杯爪を喰い込ませて無理矢理平常心を取り戻す。
そして青く残った爪痕のある手で暁明の差し出す手を取り立ち上がった。
そして木戸は覚悟を決めて暁明と共にそこを出た。
<<前へ 次へ>>
うああ
早く助けてあげてーッ(*´Дヾ)
★拍手コメントのお返事はボタンを押して頂いた拍手ページ内に致します。
拍手秘コメの場合は普通コメント欄にてお返事致します。
お礼画像あり☆6種ランダム
全てが解せない上に元凶とも言える父親の元に時枝が居るというだけで頭に血が上っている木戸は凄い剣幕で暁明に問い詰める。
「ちょっと暁明さまに何するんだよッ! 今説明してるんだから! 止めてよ!!」
小柄な愛人が必死に木戸を暁明から引き剥がそうとするが木戸は微動だにしない。
「先ず、香の父親……と言っても香と約一回りしか違わないんだが……あの事件の後、ほぼ勘当された状態だったらしい。ただ、やはり向こうも親だから、一応金と世話係だけは付けて国を追い出し日本で完全に日本人として密に生活をさせていたようだ。親族や周りは誰もが彼はただの異常者だとばかり思っていたようだが、自分で家庭教師を付け色々と勉強していたようで、今では日本に何百店舗も風俗関係の店を展開させているやり手だ。ただ素性を隠している為に彼がオーナーだとはあまり知られていないがな」
木戸は苦虫を潰したような表情で話しを聞いていた。
「香の方だが、李はやはりずっと香を拉致する機を窺っていたようでね。今までは君がいたし、巨大なグループがバックにいるから徐々に削って誘き出すようにしていたが、何故か身一つになって歩いている彼を都合良く手に入れられたという訳だ」
時枝の全身から汗が噴き出た。
「俺の……せいなんだ」
絞り出すような声の木戸を、愛人が見上げた。
「ところがだ。香を手に入れた李は当然処分しようと思っていた矢先に耳を疑う男から取引が持ち込まれた。それが杉下真也だった。李も杉下という名が息子だと気付いたのは本人から説明を聞くまで分からなかったらしい」
「何で李は手渡したんだ」
木戸は暁明を掴んでいた手を下ろした。
「きっと……処分するに等しいから……だろう」
暁明は唇を噛んだ。
そして暁明は愛人に「あれを」と言い渡すと、愛人は懐から何かを取り出した。
「これが……部下がやっとの思いで撮れた香の唯一の証拠写真だ……」
暁明に手渡された一枚の写真を見た木戸はそれにジッと目を凝らした。
二、三秒は目を凝らした。
「おい……どこに時枝がいる」
少し薄暗いが写真に写っているのは、大きな日本家屋であろう庭に続く廊下が写っていた。
襖が少し開いており、その中に女中と思われる人が二人と年寄りがいた。
さしずめ年寄りの世話をしているのだろう。
「…………」
暁明は唇を噛んだまま黙っていた。
「オイふざけるなよ!? 時枝の写った写真を見せろよッ!!」
「……いるんだよッ!! ……そこにッ」
「ハァ!?」
木戸はもう一度写真を覗き込み、隅から隅まで瞬きもせずに探した。
人物は三人。女二人と老人が一人。
白く見える髪は少し長く一つに束ねられていた。
浴衣のような和服を着て後ろ向きに座っている。
老人にしては姿勢はいい。
その時、木戸の呼吸が切れた。
「まさか……これ……」
顔を上げると瞳に涙を浮かべた暁明がいた。
「あぁ……それだよ……その老人みたいな人が、香だ」
世界が一瞬歪んだ。
宇宙に放り出されたように天地も分からない。平衡感覚を失い、木戸はそのままソファへと崩れた。
髪がこれほど白く変色しているのはそれ程の精神的なショックを受けた証拠だ。
「はやく……たすけないと……」
心臓のリズムが狂う。
木戸の膝が無意識の震えで力が入らず立ち上がれない。
「木戸さん……」
暁明は瞳から涙を幾つも落としながら手を差し出した。
「あの子を愛しているんでしょう? だったら貴方が助けるんです。さぁ、行きましょう」
震える手を握り拳にし、力一杯爪を喰い込ませて無理矢理平常心を取り戻す。
そして青く残った爪痕のある手で暁明の差し出す手を取り立ち上がった。
そして木戸は覚悟を決めて暁明と共にそこを出た。
<<前へ 次へ>>
うああ
早く助けてあげてーッ(*´Дヾ)
★拍手コメントのお返事はボタンを押して頂いた拍手ページ内に致します。
拍手秘コメの場合は普通コメント欄にてお返事致します。
お礼画像あり☆6種ランダム
| ホーム |
コメント
Hさまが苦しんでおられるーっ(>△<)
早く状況を打破して欲しいですよね(>ω<)
しかし大丈夫です!
もうすぐ木戸が駆けつけます!!
ダッシュ!≡≡≡ヘ(*--)ノ
拍手秘コメントどうもありがとうございました
あい(ノ△・。)
真っ白な子になってしまったようです(涙)
> 何があったの~~
> 木戸と弘夢の事だけで そんなにはならないよね。
> 死ぬより辛い目に遭ったってこと?( ゚∀゚;)タラー
そうですね。きっとあの場面を見ただけではそんな風にはならなかったと思います。
きっと全てが同時にきたんだと思います。
自分の罪の深い生命の事実と、離れていくように見えた木戸と、
今父親と一緒にいるという事。
何も気にしなかった時枝は段々と感情を持つようになったばかりで
繊細だったんだと思います。
そこに来て芽吹いたばかりの若葉を踏みにじる様な事が次々と(ノ△・。)
> 早く!一刻も早く 助け出さなくては~~~!
> (T▽T)尸~~SOS!!...byebye☆
木戸も男です!
ヤル時はヤル男です!!
きっと助けてくれると思います!(>△<)
コメントどうもありがとうございました
何があったの~~
木戸と弘夢の事だけで そんなにはならないよね。
死ぬより辛い目に遭ったってこと?( ゚∀゚;)タラー
早く!一刻も早く 助け出さなくては~~~!
(T▽T)尸~~SOS!!...byebye☆
コメント