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悪魔と野犬ノ仔 7話

 案の定、子犬を家に持ち帰ると水無月は興奮して四つん這いになってはしゃいだ。
 時折興奮し過ぎて「ワンッ」と吠える水無月を母親が叱った程だ。
 子犬の方も楽しそうにまだバランスの保てない小さな身体を転ばせながらも走り回っていた。一人と一匹の戯れ様はそれは可愛くて、母親は叱りながらもついカメラを回してしまっていた。
 一か月も経つと、子犬は一回り大きく成長した。
 水無月は相変わらず子犬と二人きりになると色々と教えようとして犬になりきるが、要以外の人間が居る時は大人しくあやしてみせた。
 要は相変わらず女教師をペットにして暇潰しをしていたが、それも段々と飽いてきた頃だった。ペットにしたところで、女教師は所詮ただの好色家に過ぎなかった。
 それよりも、近頃水無月の神経が逆立っていきている事の方が大変だった。
 嗅覚の鋭い水無月は、要が女教師と居た時に限って頻りにクンクンと匂いを嗅いでくるようになった。そしてその後、妙に機嫌が悪くなって必ず要の布団に潜る。
 要は蹲る水無月の顔を掴むとその柔らかい唇を無理矢理開き、舌を絡ませた。
 水無月の甘く蕩ける様に柔らかい舌の感触に、要は水無月の腰に爪を立てると、快感に弱い水無月は素直に反応した。
「あんっ」
「可愛いよ、水無月。俺に鋭い爪と牙があったら、もっと気持ち良くしてやれるのに」
 要はそっと爪を立てて水無月の鎖骨からゆっくりと乳首まで引っ掻いてやる。
「んんっん」
 要は後ろから水無月の細い項を噛むと、水無月は段々と息を荒げて腰を振りながら尻を突き出してきた。まだ要自身を入れた事のないそこに欲しがっているのは要の指だ。
「おにぃちゃ……ミナのおしりに、いつもみたいにやってっ」
「いいよ……じゃあ自分で俺の指を使って入れてごらん」
 要は自分の熱くなっている肉棒を突き刺してやりたい願望を押さえ、まだまだ水無月の身体を開発して熟れてくるのを楽しみにした。


 木々の葉のざわめきが聞こえない。土の匂いもしない。地面が柔らかい。一緒に寝ている筈の兄弟たちの暖かい毛を感じない。代わりに、要の匂いに包まれて柔らかな布に包まっていた。これも兄弟たちと居た時と同様、水無月は安心した。
「ミナちゃん。起きなさい。全く、また要の布団で寝てたの? 好きねぇ、ミナちゃんはそこが」
 水無月は重たい瞼を片方だけ少し開けると、年配の優しい女性の笑顔が自分を見ていた。
「起きなさい、ご飯よ」

(ゴハン……)

――これは“お母さん”。
 水無月の今まで頼って来た母親とは随分様子が違うが、何故かこのお母さんも定期的にエサをくれる。水無月は直ぐに元気に起きてお母さんのヒラヒラ動くエプロンについていった。
 水無月はこのお母さんのくれるゴハンを最近とても美味しいと感じるようになった。ただ、山では無かった熱い食べ物には今でも警戒している。特に“ミソシル”は危ないという事を学んだ。近頃は慣れてスプーンで掬って飲んでいる。
 最近家にきた子分には、何度教えても全くできない。そんな様子を見たお母さんはいつも「ミナちゃん、その子は犬だから出来ないのよ。でもミナちゃんは私たちと同じ人間だから出来るの。ほら、手の形だって違うでしょ?」と教えてくれた。
 言われてみればそうかと納得した。自分が昔山にいた時期、兄弟たちに出来て自分には出来なかった事をチラチラ思い出す。
 ゴハンを食べ終わり、自分で“ようふく”を着る。水無月はようふくの種類を選ぶのは好きだった。最初は面倒くさく、動きにくいのもあって嫌がったが、要が服を着る度に可愛いと褒めてくれるのが嬉しくて今では苦にならなくなった。
 身なりをきちんと整え終わると、家庭教師の先生が家に来た音がして水無月は急いで下へ降りた。
 今は小学校低学年レベルの勉強をしている。漢字も算数も少しずつ出来る様になっていた。それはとてもつもなく凄い事なのだと褒められたが、まだ話す言葉がたどたどしい。だが要がそれも可愛いと褒めてくれるので、要と二人でいる時は先生に習った「きちんとした」言葉は使わない。だがいつかは要と同じ「学校」という所に行ってみたいので勉強は頑張っている。その甲斐もあってか、元々飲み込みの早い水無月は成績を伸ばした。
 だが、周囲の喜びとは裏腹に、水無月には最近少し気になる事があった。
 近頃要に気に入らない匂いがついている事がある。水無月は匂いから色々な情報を取る。要に纏わりついているその独特の性的な興奮による匂いの粒子は水無月に挑発的に喧嘩を売っているように感じた。まさに要は自分のものだとマーキングでもされているようで酷く苛つく。匂いを嗅ぐ度にくしゃみが出る。
「水無月。勉強難しくないか? 兄ちゃんが見てやろうか?」
 要よりも早く帰ってきた拓水が水無月に声を掛けてきた。ここの所要は遅くに帰宅する事が多い。
 水無月は「ふぅ」と鼻から軽い溜息をついて拓水の座るソファの横で丸くなった。要と少しだけ似た匂いが水無月を安心させる。要よりも大きくゴツイ掌が優しく水無月の頭を撫でる。
 拓水は優しい。いつも水無月はどうしたい、水無月はどう思う、など水無月に質問をする。それは周りから言うと優しいという事だったが、水無月にはそれが少し疲れた。
 玄関の方に人の足跡が近づくのに気付いて、水無月は少し頭を擡げた。足音からして要ではない。
 直ぐにチャイムが鳴ってお母さんが出ると、近所のおばさんが回覧板を持って来ただけだった。少し立ち話をしてから戻って来たお母さんは回覧板の内容を読みながら独り言を言った。
「怖いわねぇ……この頃野良犬が何匹かうろついてるんですって」

(ノライヌ……)

「タクお兄ちゃん、ノライヌってなに?」
 透き通った瞳が真っ直ぐ拓水に向けられて、拓水は無意識にその柔らかい頬を撫でた。
「野良犬っていうのは人に飼われていない野犬の事だよ。危ないんだ」
「なんで危ないの?」
「噛まれる可能性があるからだよ」
「なんで噛むの?」
「野犬は人に慣れてないから凶暴なんだよ」
 水無月には意味が分からなかった。
「人間はどうしてマーキングしないの? そしたらノライヌも近づかないかもしれないし、ケンカもしないかもしれないよ」
 水無月は珍しく拓水に必死に喋った。
「人間はマーキングなんてしないよ。とにかく危ないんだから水無月も一人で歩いちゃダメだよ」
 自分の言葉の能力がまだ未発達だから通じないのかと困ったが、どう言えばいいのか分からなかった水無月は取り敢えず子犬を連れて要の部屋に逃げ込むように入った。
「ノライヌ……お前は人間に飼われてるからノライヌじゃないの」
 連れて来られた子犬を見て、
――この子は人間に飼われているからノライヌではない、
そう理解した。そして少し前の自分はノライヌだったのかもしれない、とも思った。




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