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悪魔と野犬ノ仔 45話

 時間にするとほんの1時間程しか経っていなかったが、随分と身体も軽く頭もすっきりしたように感じた。
「寝られたか」
「うん」
 拓水に声を掛けられて要は瞼だけ開けて返事をした。
 二人は軽く身なりを整えると、何も食べずにそのまま外へ出た。
 暫く歩くと「ここが俺の大学だ」と拓水が要を案内した。
「拓水授業は?」
「今日はいい」
「……悪いな」
「別に」
 二人は兄弟らしい会話を短くすると、食堂へと向かった。
 メニューを見ると、値段も安い上にボリュームがある定食が沢山あった。
「好きなの食えよ。結構うまいから」
 二人は各々頼むとそれを殆ど会話せずに平らげた。
 学食の場所は広くサボっている生徒もいれば懸命に勉強している生徒もちらほらいた。
「行くぞ」
 拓水に言われて要は席を立った。そのまま再びついて行くと今度は広い牧場や中庭や農園まであった。
 特に何をする訳でもなく、動物や植物に触れながら一日過ごした二人はまたコンビニでビールを買うとそのまま公園に移動した。
 何となく二人はブランコに座ると、思ったより不安定な動きに思わず足に力を入れた。
「二人でブランコなんて……初めてじゃないか?」
「そうだな」
 キーキーという心地よい鉄の音が少しだけ要の心を高揚させた。
「俺は思うんだが、過去ってのはどうしたって変えられないだろ? だからこれからのお前の行動でお前の心を軽くしてやれると思うんだ。人間だからな。それが上手く出来ると思うんだよ」
「……」
「苦しめた相手がいるなら、これから会うものに優しくしてやればいいし、ミナを愛してやればミナがくれる愛でお前も綺麗になっていくと思う……なんか……クサイ事言ってるけど」
 拓水は恥ずかしさで少し眉間に皺を寄せた。だが要はその言葉が何よりも暖かく心を包んでいくのを感じた。
「そうかな」
 要は自分のノイズのような汚れのついた両手を見た。
「ああ。俺はそうやって自分を受け入れて少し立ち直っていったしな」
「うん」
「……俺、多分お前の事、意識して好きだったんだな……で、勝手に失恋して男で、しかも弟が好きな変態だって思い知らされて……でも今は不思議と客観的に見れる」
「……ごめん」
「うるさい」
「……」
「また辛くなったらいつでも来い」
「……うん」
 二人は日が暮れるまでそこで他愛のない話しをしながら酒を飲んだ。
 そして要は拓水が大学に行っている間、近くや遠くの自然に触れて一週間あまり過ごし、そして軽く挨拶を済ますとそのまま拓水の家を出た。
 要は直ぐには帰らず、ゆっくりと時間を掛けて東北の土地を見て回った。
 二週間程経った時、漸く要は水無月に電話を掛けて必ず帰るから待ってて欲しいとだけ伝え、そして一か月後東京に戻った。




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00:00 | 悪魔と野犬ノ仔 | comments (2) | trackbacks (0) | edit | page top↑
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コメント

けいったんさま
> 拓水お兄たん、見直したよ~!
> 兄として 弟を思う気持ちが込められた ひとつ一つの言葉に 愛を感じるもの。
>
> 要が 穢れてると 自身を蔑む気持ちが 拓水と会い話せて 少しは軽くなったようだし!

ウン(*-ω-)(-ω-*)ウン
拓水兄ちゃん、ちゃんとお兄ちゃんしてました☆
やはり男兄弟だからこそっていうのがあるのでしょうね(*´∇`*)
お兄ちゃんも乗り越えられて良かったです。

> ミナ~、要が 笑顔で元気に帰って来るまで 頑張って待ってようね~♪
> 。o@(^ゝω・)@o。ニコッ♪...byebye☆

ミナちゃんがちゃんとおうちで「待て」しているから
早く帰ってあげてほしいですね(*´∇`*)

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗.Dさん | 2013/07/15 22:09 | URL [編集] | page top↑
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さん | 2013/07/13 14:30 | URL [編集] | page top↑

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