02/21/2012(Tue)
貴方の狂気が、欲しい 35話
木戸は何故か心が浮き立っていた。
早く時枝の顔が見たい、そして強く唇を塞ぎ朝まで遠慮しないで抱きたい衝動に駆られていた。
(今まで傷付けた事を侘びよう)
木戸が車へ戻る途中、近くにもう一台車が停まっているのが視界の端に入った。
「この辺、結構路上駐車が多いんだな」
そして木戸は何の気なしにそのままマンションへと急いだ。
「時枝ッ」
ドアを開けると同時に大声で時枝を呼んだ木戸だったが、人の気配のしない自分の部屋に戸惑った。
そして、時枝が由朗の所へ行った事を思い出し急いで由朗に電話を掛けた。
「もしもし? 慶介か?」
「どうも、時枝はまだ一緒ですか」
「……いいや。とっくに帰ったが?」
質問した後の妙な間が気に掛った。
「父さん。時枝に何かしましたか」
「……いや特に。ただ、話しをしただけだ。……しかしまだ帰ってないのは妙だね」
由朗の言い方がやけに感に触る。何か意味を含んだような、そんな気がしてならない。
その時、部屋の隅に壊れた携帯の残骸を見つけた。
「慶介? もしもし?」
木戸は電話口で聞こえる由朗の声を無視してその破片に駆け寄り、その散らばった破片を幾つか拾った。
どう見ても時枝の持つ携帯だ。
その時木戸の頭に一気に原因に繋がる一連の流れが浮かんで冷汗が沸き出た。
時枝の携帯には自分の居場所を特定出来る特別機能が備わっている。それは木戸が事件に巻き込まれた際など緊急の時にしか使わないよう厳しく言いつけられているものだった。
だから時枝が安易に私用で使う事は絶対にない。
が、もし木戸が弘夢の家に居た時に使っていたとしたら。そう考えると合点がいく。
だが、この携帯の壊れようと見ると俄かに信じ難かった。
(あいつがここまでの事をするか?)
例え弘夢の場所に行っていたと分かっても、黙って自分に溜め込み涙を堪えるか、木戸に何か言ってくるかしか想像できない。
「父さん……時枝に何を言いましたか」
「何だ、俺が呼びかけても返事もしないと思ったら急に」
「何の話しをしたんだッ!」
木戸の怒鳴り声に、由朗は溜息を漏らした。息子に罵られるのは初めてだ。
「李の、あの事件の話しをしたんだよ。お前も知ってるだろう?」
「あ? あぁ……あの母親の事件か。それが何だ」
「あの母親が俺の親しい友人で、実はあのガキに孕まされていたって話しをした」
木戸はイラついた。
「だからッ! あいつにそんな話しをして何がッ」
「そのガキが香だよ、……って教えてやっただけだ」
木戸は怒鳴っている途中の息を飲みこんだ。
「……は? ……何?」
「あいつがギリギリの精神状態で俺の所に来て生みたいって言うから、俺は生ませてやったんだ。それが香だ。で、今その香の存在がバレて嗅ぎまわられているって話しだ」
木戸の頭が真っ白になる。
(は? 時枝が李の……? って事は暁明と異父兄弟……)
「あ……」
今まで暁明を見て感じていた親近感や妙な感覚が納得出来た。
(時枝に似ていたから……だったのか……)
途端に恐ろしく冷たいものが背中に走った。
「ちょっと待てよ……今あいつ狙われてるんだろ?」
「そうだな」
「そうだな、じゃねぇだろうがッ! 何一人で帰らせてんだよッ!」
何かあったのかもしれない、そう思っただけで気がおかしくなりそうだった。
「いや、私は送ると言ったんだが返事もせずにふらふらと出て行ってしまってね」
木戸の手が震える。
「なァ……何で全部知っててあいつを育てたんだ。何で今頃になって言ったんだ」
呼吸が荒く震える。
「愛おしくて、憎かった」
木戸の目が血走る。
「俺は愛理を愛していた。でも李だから、俺は身を引いた。でも愛理は俺を頼って……俺にあいつの分身を預けてくれて……嬉しかったんだよ。だから香を味わっている時、俺は愛理を味わっていた」
木戸の焦点が妙な動きをし出した。腹の奥底が黒く、青く冷え固まっていく。
首をコキコキと鳴らし、今直ぐに由朗の動く喉を引き裂こうと準備をしていた。
「でも……俺は理解出来なかったんだよ、慶介。なァ、理解出来るか?! あんな悪魔みたいなガキに犯られて、監禁されてッ……それで生みたいって何だ!? そんなキチガイの分身ってのも事実だろう!?」
「それ、あいつに言ったのか」
地を揺るがすような低く冷たい木戸の声に、由朗は固唾を飲んだ。
「はっ……言ったとも。どうせもうバレたんだ……俺達だって終わりだ」
木戸はクローゼットの引き出しから拳銃を取り出し、中の弾を確認した。
「俺が後でお前を終わらせてやるよ。そこで大人しく待ってろ」
木戸は舌打ちをして部屋を飛び出た。
<<前へ 次へ>>
急げ木戸ぉーっ(o>Д<)o
★拍手コメントのお返事はボタンを押して頂いた拍手ページ内に致します。
拍手秘コメの場合は普通コメント欄にてお返事致します。
お礼画像あり☆6種ランダム
早く時枝の顔が見たい、そして強く唇を塞ぎ朝まで遠慮しないで抱きたい衝動に駆られていた。
(今まで傷付けた事を侘びよう)
木戸が車へ戻る途中、近くにもう一台車が停まっているのが視界の端に入った。
「この辺、結構路上駐車が多いんだな」
そして木戸は何の気なしにそのままマンションへと急いだ。
「時枝ッ」
ドアを開けると同時に大声で時枝を呼んだ木戸だったが、人の気配のしない自分の部屋に戸惑った。
そして、時枝が由朗の所へ行った事を思い出し急いで由朗に電話を掛けた。
「もしもし? 慶介か?」
「どうも、時枝はまだ一緒ですか」
「……いいや。とっくに帰ったが?」
質問した後の妙な間が気に掛った。
「父さん。時枝に何かしましたか」
「……いや特に。ただ、話しをしただけだ。……しかしまだ帰ってないのは妙だね」
由朗の言い方がやけに感に触る。何か意味を含んだような、そんな気がしてならない。
その時、部屋の隅に壊れた携帯の残骸を見つけた。
「慶介? もしもし?」
木戸は電話口で聞こえる由朗の声を無視してその破片に駆け寄り、その散らばった破片を幾つか拾った。
どう見ても時枝の持つ携帯だ。
その時木戸の頭に一気に原因に繋がる一連の流れが浮かんで冷汗が沸き出た。
時枝の携帯には自分の居場所を特定出来る特別機能が備わっている。それは木戸が事件に巻き込まれた際など緊急の時にしか使わないよう厳しく言いつけられているものだった。
だから時枝が安易に私用で使う事は絶対にない。
が、もし木戸が弘夢の家に居た時に使っていたとしたら。そう考えると合点がいく。
だが、この携帯の壊れようと見ると俄かに信じ難かった。
(あいつがここまでの事をするか?)
例え弘夢の場所に行っていたと分かっても、黙って自分に溜め込み涙を堪えるか、木戸に何か言ってくるかしか想像できない。
「父さん……時枝に何を言いましたか」
「何だ、俺が呼びかけても返事もしないと思ったら急に」
「何の話しをしたんだッ!」
木戸の怒鳴り声に、由朗は溜息を漏らした。息子に罵られるのは初めてだ。
「李の、あの事件の話しをしたんだよ。お前も知ってるだろう?」
「あ? あぁ……あの母親の事件か。それが何だ」
「あの母親が俺の親しい友人で、実はあのガキに孕まされていたって話しをした」
木戸はイラついた。
「だからッ! あいつにそんな話しをして何がッ」
「そのガキが香だよ、……って教えてやっただけだ」
木戸は怒鳴っている途中の息を飲みこんだ。
「……は? ……何?」
「あいつがギリギリの精神状態で俺の所に来て生みたいって言うから、俺は生ませてやったんだ。それが香だ。で、今その香の存在がバレて嗅ぎまわられているって話しだ」
木戸の頭が真っ白になる。
(は? 時枝が李の……? って事は暁明と異父兄弟……)
「あ……」
今まで暁明を見て感じていた親近感や妙な感覚が納得出来た。
(時枝に似ていたから……だったのか……)
途端に恐ろしく冷たいものが背中に走った。
「ちょっと待てよ……今あいつ狙われてるんだろ?」
「そうだな」
「そうだな、じゃねぇだろうがッ! 何一人で帰らせてんだよッ!」
何かあったのかもしれない、そう思っただけで気がおかしくなりそうだった。
「いや、私は送ると言ったんだが返事もせずにふらふらと出て行ってしまってね」
木戸の手が震える。
「なァ……何で全部知っててあいつを育てたんだ。何で今頃になって言ったんだ」
呼吸が荒く震える。
「愛おしくて、憎かった」
木戸の目が血走る。
「俺は愛理を愛していた。でも李だから、俺は身を引いた。でも愛理は俺を頼って……俺にあいつの分身を預けてくれて……嬉しかったんだよ。だから香を味わっている時、俺は愛理を味わっていた」
木戸の焦点が妙な動きをし出した。腹の奥底が黒く、青く冷え固まっていく。
首をコキコキと鳴らし、今直ぐに由朗の動く喉を引き裂こうと準備をしていた。
「でも……俺は理解出来なかったんだよ、慶介。なァ、理解出来るか?! あんな悪魔みたいなガキに犯られて、監禁されてッ……それで生みたいって何だ!? そんなキチガイの分身ってのも事実だろう!?」
「それ、あいつに言ったのか」
地を揺るがすような低く冷たい木戸の声に、由朗は固唾を飲んだ。
「はっ……言ったとも。どうせもうバレたんだ……俺達だって終わりだ」
木戸はクローゼットの引き出しから拳銃を取り出し、中の弾を確認した。
「俺が後でお前を終わらせてやるよ。そこで大人しく待ってろ」
木戸は舌打ちをして部屋を飛び出た。
<<前へ 次へ>>
急げ木戸ぉーっ(o>Д<)o
★拍手コメントのお返事はボタンを押して頂いた拍手ページ内に致します。
拍手秘コメの場合は普通コメント欄にてお返事致します。
お礼画像あり☆6種ランダム
| ホーム |
コメント
>
> やばくなってきた!!
ハイ(´Д`A;)
ヤバい雰囲気でございます!
> 急げ木戸!!!
そうだ!急ぐんだ木戸!!
持っている車で一番早いスポーツカーに乗るんだっ! ←
> 木戸かっこいいです!!
Σ(・ω・ノ)ノ!
おおぉ嬉しいです!
ありがとうございます♪♪
> つづきが気になります!!
わーっありがとうございます+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
楽しみにして下さっているのに申し訳ありませんッ
本日残業のだった為UPが明日になります |||||( _ _)|||||
本当、スローですみません(涙
コメントどうもありがとうございました
毎日ドキドキして読んで下さってありがとうございます!!
時枝も大好きという事で私も嬉しいです!!
続きを気になって下さって私も2,3日有給取って没頭したいです(笑)
いつかやってみたいです!(笑)
おおおっ!
自分勝手ではなく思い合う愛し方をするようになった木戸素敵ですか!?
木戸のレベルが少し上がった!
ワ─―。*.゚+:ヾ(*・ω・)シ:+゚.*。──ィ
確かに自分善がりな恋よりも想い合う方が難しいですし、深いですものね!
早く助けてあげて木戸ーっ(>△<)
+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
私の事までお気遣い下さってありがとうございます(涙)
リアル、仕事が忙しいのが一番ネックです;
残業のある日は書く時間が無くなってしまうのも残念無念です orz
でもこうして励まして楽しみだと仰って下さるので頑張れます(ノ△・。)
ありがとうございます(*´∇`*)
拍手秘コメントどうもありがとうございました
わぁぁ(*_*)
やばくなってきた!!
急げ木戸!!!
木戸かっこいいです!!
つづきが気になります!!
コメント