08/31/2010(Tue)
万華鏡-現代祭りに咲く-6最終話
美月は気だるい身体をベッドから下ろして、窓から漏れる幻想的な光に吸いこまれるようにベランダに出ると、四角い空間があった。
確かこのホテルには夢のような箱庭があった事を思い出した。
何となくこの先の事を考えて眠れなくなってしまった美月は大きな牡丹の模様がある赤い着物を素肌に直接通した。
先程まで自分を散々啼かせていた人は、その寝顔すらも欲情させるように眠っていた。
夜の肉厚の乾いた唇にしっとりと美月は唇を擦り付けた。ギシリとベッドを軋ませて降りると、その足で大きく肌蹴た着方も気にせずに長い着物を引きずるようにして廊下へ出た。
廊下の端に、箱庭だけに続く専用の階段があった。トントンと軽い音を立てて降りると、長い着物も美月の足首について行くようにスルスルと階段を降りて行く。
このホテルに1階の部屋は存在しない。その空間は箱庭が作られている為、箱庭のみを見に来る外部の客は、エレベーター横に備え付けられている機械に料金を支払わなければ1階でエレベーターが止まる事は無い仕組みになっていた。
扉を開けるとそこには美しい別世界が広がっていた。
空を見上げれば絶え間なく煌めく星々が頭上を覆い尽くし、ポッカリ浮かぶ大きな満月は手が届きそうな位置にある。四角い空間は区切りが見えぬ程に広がっているように感じた。
春風を思わせる温く優しい風が美月の素肌を撫でては通り過ぎて行く。
真ん中にある池には薄桃色の睡蓮が浮かび、入ってきた扉を囲むように薔薇のアーチがこの空間に迷い人と誘うように咲いていた。
周りは辺り一面多種多様な花々が咲き乱れて月明かりに浮かぶ花の海のようだった。
椿、桔梗、百合、紫陽花、菫、・・。名も知らぬ、見た事もない花たちはそれぞれがお互いの彩りを引き立て合うように咲き誇っている。
耳を澄ませば夏を思い起こす涼しげな鈴虫の音が心地よい音楽を奏でていた。植物の多いこの空間は目に見える程澄み切っていて、思わずスゥッと空気を吸い込むと、同時に甘い花の香りが肺に満ちて自分自身も花の一部になってしまう気がした。
大きな牡丹模様の真っ赤な着物で歩く美月は違和感なく花たちの中に溶け込んでいた。
誰もいないその場所で、満月に手を伸ばしてクルクルと舞った。ヒラリ、ヒラリと舞いあがる赤い着物は牡丹の花びらのように見える。それはとても妖艶で美しかった。
ふと止まって月を見る。
(夜を照らす月に、俺もなれるかな・・)
『美しい月を抱く為に出会ったんだよ。だから抱月なんだ』
同時に抱月の言葉も脳裏に響く。
(俺の心が求めたのは、夜だ。そうだよね?)
万華鏡の瞳の中に月色が輝いた。
* * *
「じゃあ、帰るか」
「うん」
こうして2人は元いた江戸へと帰った。美月にしてみれば、帰るのは現代である筈なのに、いつの間にか帰省する感覚がすり替わっていたようだ。
「面白かった。ありがとうな、美月」
いつになく大人っぽい瞳の夜が優しく美月を見つめると、少し照れてしまう。
「うん。いい思い出になったね」
まだ眠っているような朝焼けの町中で突如姿を道端に露わした二人はそっと口付けを交わした。
一夜の幻想的な思い出は二人にとって宝物になった。
江戸の朝日も、さっき見た現代の朝日と同じように眩しくて温かい。
約300年の時を超えた朝だというのに変わらぬ太陽の光に、その時空の差の短さを思わされるようだった。
END
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お蔵入り小説でしたが最後までお読み下さいまして、
どうもありがとうございましたm(_ _)m
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ソォーッ[岩陰]д・) ヨカッタラ、キヨキ、イッピョーヲ・・
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確かこのホテルには夢のような箱庭があった事を思い出した。
何となくこの先の事を考えて眠れなくなってしまった美月は大きな牡丹の模様がある赤い着物を素肌に直接通した。
先程まで自分を散々啼かせていた人は、その寝顔すらも欲情させるように眠っていた。
夜の肉厚の乾いた唇にしっとりと美月は唇を擦り付けた。ギシリとベッドを軋ませて降りると、その足で大きく肌蹴た着方も気にせずに長い着物を引きずるようにして廊下へ出た。
廊下の端に、箱庭だけに続く専用の階段があった。トントンと軽い音を立てて降りると、長い着物も美月の足首について行くようにスルスルと階段を降りて行く。
このホテルに1階の部屋は存在しない。その空間は箱庭が作られている為、箱庭のみを見に来る外部の客は、エレベーター横に備え付けられている機械に料金を支払わなければ1階でエレベーターが止まる事は無い仕組みになっていた。
扉を開けるとそこには美しい別世界が広がっていた。
空を見上げれば絶え間なく煌めく星々が頭上を覆い尽くし、ポッカリ浮かぶ大きな満月は手が届きそうな位置にある。四角い空間は区切りが見えぬ程に広がっているように感じた。
春風を思わせる温く優しい風が美月の素肌を撫でては通り過ぎて行く。
真ん中にある池には薄桃色の睡蓮が浮かび、入ってきた扉を囲むように薔薇のアーチがこの空間に迷い人と誘うように咲いていた。
周りは辺り一面多種多様な花々が咲き乱れて月明かりに浮かぶ花の海のようだった。
椿、桔梗、百合、紫陽花、菫、・・。名も知らぬ、見た事もない花たちはそれぞれがお互いの彩りを引き立て合うように咲き誇っている。
耳を澄ませば夏を思い起こす涼しげな鈴虫の音が心地よい音楽を奏でていた。植物の多いこの空間は目に見える程澄み切っていて、思わずスゥッと空気を吸い込むと、同時に甘い花の香りが肺に満ちて自分自身も花の一部になってしまう気がした。
大きな牡丹模様の真っ赤な着物で歩く美月は違和感なく花たちの中に溶け込んでいた。
誰もいないその場所で、満月に手を伸ばしてクルクルと舞った。ヒラリ、ヒラリと舞いあがる赤い着物は牡丹の花びらのように見える。それはとても妖艶で美しかった。
ふと止まって月を見る。
(夜を照らす月に、俺もなれるかな・・)
『美しい月を抱く為に出会ったんだよ。だから抱月なんだ』
同時に抱月の言葉も脳裏に響く。
(俺の心が求めたのは、夜だ。そうだよね?)
万華鏡の瞳の中に月色が輝いた。
* * *
「じゃあ、帰るか」
「うん」
こうして2人は元いた江戸へと帰った。美月にしてみれば、帰るのは現代である筈なのに、いつの間にか帰省する感覚がすり替わっていたようだ。
「面白かった。ありがとうな、美月」
いつになく大人っぽい瞳の夜が優しく美月を見つめると、少し照れてしまう。
「うん。いい思い出になったね」
まだ眠っているような朝焼けの町中で突如姿を道端に露わした二人はそっと口付けを交わした。
一夜の幻想的な思い出は二人にとって宝物になった。
江戸の朝日も、さっき見た現代の朝日と同じように眩しくて温かい。
約300年の時を超えた朝だというのに変わらぬ太陽の光に、その時空の差の短さを思わされるようだった。
END
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お蔵入り小説でしたが最後までお読み下さいまして、
どうもありがとうございましたm(_ _)m
*BL小説ランキング、1クリック10Ptの投票です。(1日1回有効)
ソォーッ[岩陰]д・) ヨカッタラ、キヨキ、イッピョーヲ・・
こやつ↑↑がクリック対象ブツです。
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*一番下へスクロールし、「PC向けのページ」を押すとポチ画面に出ます。
そしてサブカテ「BL小説」を選び「決定」を押すと、投票が反映されます。お手数かけてすみません。
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拍手秘コメの場合は普通コメント欄にてお返事致します。
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コメント
> 美月ちゃんに主導権を握られるのが好きじゃないところとが読めて嬉しかったです。
あははは!気も腰も強いって事ですね!!(≧∀≦*)
確かに美月に主導権握られてイラついてましたからね(笑)
読んで下さってありがとうございました!
そしてお粗末さまでした m(_ _;)m
> 眼精疲労・・・チャットやりすぎ!?(笑)
それも追い打ち掛ったかもしれません~^^;
一応こっちの時間帯でいつも寝る時間には落ちたんですが、ダメだったようです;
夕華さんは何時までいらしたのだろう?
風の噂では次の日の深夜までやっていたそうですが(驚)
> そういえば桔梗様のお写真はお美しかったです。
> 想像通りの方でした。
(゚∇゚ ;)エッ!?
あんなふざけた写真でしたのに(笑)
きっと実際お会いしたら、プー!(*≧m≦)=3てなります!
> 私のアナログ写真は全て実家にあり、デジタルは1ヶ月前くらいにPC変えた時に移さなかったので
> このPCには入ってないのです。
> 最近外出もしてないので、記念撮影的な物もなく
> ナルでも女子高生でもないので自分撮りもしません(笑)
> でも、あまり美しくないただのおばさんなことだけは確かです。
そうなんですねー!見たかったです・・。
確かに遠出したり何かしないと写真はあまり撮りませんものね^^;
一人暮らししてると友達が来て悪戯で撮られたりしますが(笑)
あの写真もそうです(笑)一応手は下の方でピースしてます(爆)
夕華さんのイメージはバイクを乗りこなすカッコいいキリリとした美人☆
> コメントいただいた100の質問は
> http://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/8814/
> こちらにあります。一応記事にリンク貼ってあったのですが見にくかったかな?
あ、本当ですか?
もう目もぼやけ出したかもしれません;
わざわざありがとうございます!!
やってみます♪♪(こういう事してるから頭痛が治らないw)
> ではでは、お体をお大事に。
> 私はPCやりすぎると首に支障が出ます・・・
ありがとうございます(>△<)!
確かに首だの肩だのエライ凝りますよね・・。
夕華さんもお身体気を付けて下さいね(>_<)!
ご無理なさらずに!
コメントどうもありがとうございました
美月ちゃんに主導権を握られるのが好きじゃないところとが読めて嬉しかったです。
眼精疲労・・・チャットやりすぎ!?(笑)
そういえば桔梗様のお写真はお美しかったです。
想像通りの方でした。
私のアナログ写真は全て実家にあり、デジタルは1ヶ月前くらいにPC変えた時に移さなかったので
このPCには入ってないのです。
最近外出もしてないので、記念撮影的な物もなく
ナルでも女子高生でもないので自分撮りもしません(笑)
でも、あまり美しくないただのおばさんなことだけは確かです。
コメントいただいた100の質問は
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/8814/
こちらにあります。一応記事にリンク貼ってあったのですが見にくかったかな?
ではでは、お体をお大事に。
私はPCやりすぎると首に支障が出ます・・・
本当にありがとうございます!!嬉し過ぎます!!
> 澪さんと同じくお蔵入りなんて勿体無い!許されませんよ!!
本当ですか!そう言って頂けて有り難いです(>_<)!
しかも読んで頂けて・・(ノД`)・゜・
> コス放題道具放題執事付きホテル~www
> 妄想広がるホテルでございます~。現代で幸せになった美月ちゃんが、記念日には夜と再び♪
何でもありホテル(笑)すごい値段しそうですよね(笑)
美味しいホテルです~v
確かに現代でも記念日にホテルでイチャコラして欲しいですね♪
> 中庭で踊る美月ちゃんが、色っぽい花の精のようで、素敵でした(*´∀`)テンテーもちらりと思い出されて・・・。
この時はまだ悩んでいる時でしたので、懐かしの抱月を想うシーンが入ってます^^
花の性・・じゃなかった、花の精のようだなんて!
お褒め頂いて美月も喜んでおります!
> 美月ちゃんが消えた気配に起き出した夜が、窓からひっそり、踊っている美月ちゃんを見下していそうですね~(≧∇≦)
それ素敵ですね!!ああッ!見下ろすシーン入れたかった!!
今度何か原案出来たらかやさんに相談しようかな(笑)
> 真夏の夜の夢のようなお話、ありがとうございました♪
素敵なお言葉、嬉しかったですv
読んで下さってありがとうございました!
コメントどうもありがとうございました
コス放題道具放題執事付きホテル~www
妄想広がるホテルでございます~。現代で幸せになった美月ちゃんが、記念日には夜と再び♪
中庭で踊る美月ちゃんが、色っぽい花の精のようで、素敵でした(*´∀`)テンテーもちらりと思い出されて・・・。
美月ちゃんが消えた気配に起き出した夜が、窓からひっそり、踊っている美月ちゃんを見下していそうですね~(≧∇≦)
真夏の夜の夢のようなお話、ありがとうございました♪
> 救出されて良かった良かった♪
読んでくれてありがとう。゚(。ノωヽ。)゚。
長かったでしょう。
> 確かに今回の美月ちゃんはエロ可愛かった(*´ェ`*)ポッ
> お誘いに絶好調の露出っぷり(笑)にコスプレ~。
> 衣装の選択がまた素晴らシスヾ(≧▽≦)ノギャハハ☆
美月エロに反応ありがとう!!
露出にコスプレ、やりたい放題(笑)
全身タイツにビキニって・・って感じだけどビキニ好きの影響は、
私が謝ります(笑)
途中はみ出して「あ~あ・・」って言ってたけど(笑)
> でも実は一番気になったのはこの豪華すぎる?wホテル(笑)
> 執事がメニュー持ってお出迎えってwww
色々と訳ありファンタジーになってます(笑)
メニュー持って来るホテル・・www
> 夜が気になった道具が何なのかも気になるんですが( ̄∀ ̄*)イヒッ
吊り下げ・縄・バイブ・重り付きクリップなどなどなど・・ヾ(ーー )ォィ
> 最後は美しい箱庭から見上げる満月の夜空に夜と自分を重ね合わせ、抱月先生も掠めて綺麗なシーンでした(∇ ̄〃)。o〇○ポワァーン♪
本編の途中での設定だったからまだ不安な心だった頃のお話しデス^^
綺麗なシーンと言って頂けてありがとうです(ノД`)・゜・
> 改稿作業お疲れ!
> そして太っ腹の一気upをありがとう~♪
> 久々の2人に会えて嬉しかった(*´∇`*)
嬉しい言葉、本当にありがとう(ノ△・。)
二人に会えて嬉しかったって何だかジンと来ちゃいました・・
読んでくれて本当にどうもありがとう!!m(_ _)m
コメントどうもありがとうございました
救出されて良かった良かった♪
確かに今回の美月ちゃんはエロ可愛かった(*´ェ`*)ポッ
お誘いに絶好調の露出っぷり(笑)にコスプレ~。
衣装の選択がまた素晴らシスヾ(≧▽≦)ノギャハハ☆
でも実は一番気になったのはこの豪華すぎる?wホテル(笑)
執事がメニュー持ってお出迎えってwww
夜が気になった道具が何なのかも気になるんですが( ̄∀ ̄*)イヒッ
最後は美しい箱庭から見上げる満月の夜空に夜と自分を重ね合わせ、抱月先生も掠めて綺麗なシーンでした(∇ ̄〃)。o〇○ポワァーン♪
改稿作業お疲れ!
そして太っ腹の一気upをありがとう~♪
久々の2人に会えて嬉しかった(*´∇`*)
コメント