11/17/2010（Wed）
アネモネ 11話
（兄ちゃん、ここのところ毎日花を飾ってる……。花なんて趣味あったのか）
リビングに飾られた深紅の花は、花びらが大きくその色を鮮やかに彩っていた。
モノトーンでスタイリッシュな部屋にはその生きた赤が異質でお洒落で透は好きだった。
（何て花だろう……綺麗だな。……武さんが、好きだった花なのかな……）
透は、雅人が自分を武の代わりにしている事への罪滅ぼしで武に花を生けているんじゃないかと思いながら花の水を取り替えてやった。
透は夕ご飯を作り終え、雅人がシャワーから出て来るのを待ちながらそんな事をしていた。
「お、悪いな」
後ろから冷蔵庫を開けながら水を取り替える透に話しかけると、透は振り向いた。
雅人はその流される艶っぽい目線に身体が熱くなるのを感じて視線を逸らしドアからも手を離すと、冷蔵庫特有の密着度の高い閉まる音がする。
「兄ちゃん。これ、何て言う花？」
「ん？ それはアネモネの花だよ」
冷蔵庫からビールを取ってプシュッと音を立てた。
（アネモネ……）
素敵な響きの花だと思った。だが、毎日飾る理由は何だか怖くて聞けなかった。
寝る前、透は何となくインターネットでアネモネを検索した。アネモネは直ぐに沢山出てきた。
そこには花言葉も載っていた。
透の目に飛び込んできたのは、「期待」「はかない夢」「薄れゆく希望」「はかない恋」といった羅列の花言葉だった。
雅人は自分が武になる事を期待しているのだろうか。それははかない夢だとでもいうのか。それとも透の恋心が儚い恋だと、薄れゆく希望だと諭しているのだろうか。
（兄ちゃん……優しいから。きっと直接言えなくて花で伝えているんだろうな）
透は花言葉が徐々にぼやけていくのを見ていると、そのままそこから熱い雫が頬を伝って流れ落ちた。
透自身もそんな事は分かっていた。だが自分で選んだ道であり、雅人を好きな以上こうする他道がないように思えた。
あれから一切触れて来ない雅人に日に日に不安を募らせる透だったが、幻滅でもされたのではと恐ろしさに身ぶるいした。
透は毎日花の水を取り替え、花瓶を洗って世話をした。花が萎れてしまうと決まって雅人が新しいアネモネを買って来た。
透の憂鬱な想いも胸に詰め込み過ぎて息が切れそうになってきた。
（武さん……どうして逝っちゃったんだよ……兄ちゃんをこんなに苦しめてさ。俺、もうどうしたらいいか分かんないよ）
そして透は夜雅人の部屋の電気が暗くなると、その部屋に忍び込んだ。
透はウトウトと寝始めの雅人の布団を剥ぐと、その上に跨った。
「透！？ お前何してんだ！」
驚いた雅人が透の腕を掴むと、直接肌の感触が伝わってドキリとした。腕から肩へ、そして胸元へ暗い中で手を這わせると、途中ツンと尖ったものに当たった。
「は……ん」
透の女よりも艶っぽい声が出て雅人の身体に熱い衝撃が走った。そしてゆっくり身体を触って透が全裸だと知った。
昔の透ならば積極的にねだり、自分にも色々としてきただろう。だが透は決して自分からは誘わなかった。
「ちょっ……待て、何のつもりだッ」
焦った雅人はブラインドを急いで上げると、街灯の光が部屋に明るさを届けて透の妖艶な裸体が美しく浮かび上がった。
「っ……！」
今まで何度も見てきた透の裸体にも関わらず、一段と美しく色っぽく見える。雅人は息を飲んでそれに魅入ってしまっていた。
その悲しげで憂いを含んだ表情でさえ、透自身も気付かない別の魅力を引き出させていた。
「明かり、ないほうがいいよ」
透はそう呟いて街灯の光を避けるように顔を窓から背けた。
雅人は身体を起こし、透の頬に手を添わせると顔を真正面に向けた。
「透……好きだよ」
そう言って雅人は透の唇を塞いだ。
「名前、間違ってるよ」
唇を少し離して透が言うと、「合ってるよ」と言って雅人が再び透の唇を塞いだ。
＜＜前へ 次へ＞＞
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リビングに飾られた深紅の花は、花びらが大きくその色を鮮やかに彩っていた。
モノトーンでスタイリッシュな部屋にはその生きた赤が異質でお洒落で透は好きだった。
（何て花だろう……綺麗だな。……武さんが、好きだった花なのかな……）
透は、雅人が自分を武の代わりにしている事への罪滅ぼしで武に花を生けているんじゃないかと思いながら花の水を取り替えてやった。
透は夕ご飯を作り終え、雅人がシャワーから出て来るのを待ちながらそんな事をしていた。
「お、悪いな」
後ろから冷蔵庫を開けながら水を取り替える透に話しかけると、透は振り向いた。
雅人はその流される艶っぽい目線に身体が熱くなるのを感じて視線を逸らしドアからも手を離すと、冷蔵庫特有の密着度の高い閉まる音がする。
「兄ちゃん。これ、何て言う花？」
「ん？ それはアネモネの花だよ」
冷蔵庫からビールを取ってプシュッと音を立てた。
（アネモネ……）
素敵な響きの花だと思った。だが、毎日飾る理由は何だか怖くて聞けなかった。
寝る前、透は何となくインターネットでアネモネを検索した。アネモネは直ぐに沢山出てきた。
そこには花言葉も載っていた。
透の目に飛び込んできたのは、「期待」「はかない夢」「薄れゆく希望」「はかない恋」といった羅列の花言葉だった。
雅人は自分が武になる事を期待しているのだろうか。それははかない夢だとでもいうのか。それとも透の恋心が儚い恋だと、薄れゆく希望だと諭しているのだろうか。
（兄ちゃん……優しいから。きっと直接言えなくて花で伝えているんだろうな）
透は花言葉が徐々にぼやけていくのを見ていると、そのままそこから熱い雫が頬を伝って流れ落ちた。
透自身もそんな事は分かっていた。だが自分で選んだ道であり、雅人を好きな以上こうする他道がないように思えた。
あれから一切触れて来ない雅人に日に日に不安を募らせる透だったが、幻滅でもされたのではと恐ろしさに身ぶるいした。
透は毎日花の水を取り替え、花瓶を洗って世話をした。花が萎れてしまうと決まって雅人が新しいアネモネを買って来た。
透の憂鬱な想いも胸に詰め込み過ぎて息が切れそうになってきた。
（武さん……どうして逝っちゃったんだよ……兄ちゃんをこんなに苦しめてさ。俺、もうどうしたらいいか分かんないよ）
そして透は夜雅人の部屋の電気が暗くなると、その部屋に忍び込んだ。
透はウトウトと寝始めの雅人の布団を剥ぐと、その上に跨った。
「透！？ お前何してんだ！」
驚いた雅人が透の腕を掴むと、直接肌の感触が伝わってドキリとした。腕から肩へ、そして胸元へ暗い中で手を這わせると、途中ツンと尖ったものに当たった。
「は……ん」
透の女よりも艶っぽい声が出て雅人の身体に熱い衝撃が走った。そしてゆっくり身体を触って透が全裸だと知った。
昔の透ならば積極的にねだり、自分にも色々としてきただろう。だが透は決して自分からは誘わなかった。
「ちょっ……待て、何のつもりだッ」
焦った雅人はブラインドを急いで上げると、街灯の光が部屋に明るさを届けて透の妖艶な裸体が美しく浮かび上がった。
「っ……！」
今まで何度も見てきた透の裸体にも関わらず、一段と美しく色っぽく見える。雅人は息を飲んでそれに魅入ってしまっていた。
その悲しげで憂いを含んだ表情でさえ、透自身も気付かない別の魅力を引き出させていた。
「明かり、ないほうがいいよ」
透はそう呟いて街灯の光を避けるように顔を窓から背けた。
雅人は身体を起こし、透の頬に手を添わせると顔を真正面に向けた。
「透……好きだよ」
そう言って雅人は透の唇を塞いだ。
「名前、間違ってるよ」
唇を少し離して透が言うと、「合ってるよ」と言って雅人が再び透の唇を塞いだ。
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コメント
こんにちは＾＾
> 今回の透くんの「名前、間違ってるよ」
> のセリフにキュンと胸をつかまれたきがしました。
ﾟ+｡ﾟ(*ﾉ・Д・)ﾉオォオォﾟ｡+ﾟ
yukiさまの胸を掴めましたか！？光栄です(ノД`)・゜・
キュンとなって下さって嬉しいです！
> そして、その後のお兄さんの「合ってるよ」
> で、悶絶しました…(つд⊂)
うきゃーっ
悶絶までして下さったなんて！！
ありがとうございます！嬉しいです！
> １１話は、何とも言えない切なさでした…
> 続きがとても気になります|ﾟДﾟ)))
そうですね(>_<)
１１話はもどかしさというか、上手く意思が絡み合えない
切なさの二人でした(｡-д-)ｳｰ
続き気になって下さって嬉しいです！
ラストスパート頑張ります！！＿〆(｀д･´*)ｶｷｶｷ
コメントどうもありがとうございました
とんでもないです！わざわざお忙しい中ありがとうございます(>_<)
私もご訪問できずにすみません！！
> 雅人は、透ちゃんの笑顔にヤラレ、流し目にヤラレ、艶声にヤラレて、美裸に悩殺KOされましたね～。
> すでに、透ちゃんへの恋に落ちている雅人に対して、そうとは知らない透ちゃんが、意図せずに雅人に追い討ちパンチを繰り出しているのが、切なくも、ちょっと微笑ましかったです。
雅人はもう色々とやられているんですよね＾＾；
なのに信じて貰えないこの切なさです。
あ、微笑ましく思って下さって嬉しいです(〃∇〃)
> 雅人、悩んでないで、赤裸々に告白してしまって、許して貰ったらいいのに、と思ってました(^^;)かなり、情けない図になる事請け合いだけど。
> そしたら、速やかに丸く収まるかもだけど、お話としては、萌えないから、この流れで正解ですよね～。
下手に行動出来ないかもですが、いっそ思いきって！と思ってしまいますよね(>_<)
多分、信じて貰えない気もしますが(ﾉ△･｡)
あ、正解ですかｗありがとうございますｗｗｗ
> いよいよ、Rですか？エチで伸びたら、帰国前に終わらなくなりますね？
> あと３日で、ご帰国ですねえ。
> 私も、空港にお出迎えに行きたいくらいです。
> 引越し追い込みで、体調崩されませんように！
あはは！エチ、延びませんでした～(笑)
もうあと少しです！あと二日です！ひえ～～
ああ！お出迎えに行きたいって仰って下さるその気持ちだけで十分
嬉しいですーーッ(ノД`)・゜・
はい！気を付けます！かやさんもご無理なされないように！！
コメントどうもありがとうございました
やられましたか！？そのセリフに(>_<)
ありがとうございます！
あははｗ花占いをアネモネで！嫌い、が残ったら泣いちゃうかもです。
雅人の真意が届くのを祈って下さってありがとうございます！
私も一緒に祈っています(>_<)
コメントどうもありがとうございました
お早うございます！
お返事遅れましてスミマセン(>_<)！
> 透、アネモネの花詞知って余計に切なくなりましたね。
> 結局は全裸での夜這ですか。
透はアネモネの花言葉知ってまた色んな事を考えて切なくなって
しまっていますね(>_<)
ずっと雅人に触れられなくてついに自分から全裸で忍び込みました(-ω-;)
> でも、お兄ちゃんから「好き」って言われました。
> 信じられない透だけど、
> お兄ちゃんは本当に透を愛してるんだ。
> これで心が結ばれるといいですね。
せっかく好きって言われたのに信じていない所がどちらにとっても
悲しいですね。
でも雅人は本当に透を愛し始めている。
凍りついた透の心を溶かせるといいです。
コメントどうもありがとうございました
今回の透くんの「名前、間違ってるよ」
のセリフにキュンと胸をつかまれたきがしました。
そして、その後のお兄さんの「合ってるよ」
で、悶絶しました…(つд⊂)
１１話は、何とも言えない切なさでした…
続きがとても気になります|ﾟДﾟ)))
雅人は、透ちゃんの笑顔にヤラレ、流し目にヤラレ、艶声にヤラレて、美裸に悩殺KOされましたね～。
すでに、透ちゃんへの恋に落ちている雅人に対して、そうとは知らない透ちゃんが、意図せずに雅人に追い討ちパンチを繰り出しているのが、切なくも、ちょっと微笑ましかったです。
雅人、悩んでないで、赤裸々に告白してしまって、許して貰ったらいいのに、と思ってました(^^;)かなり、情けない図になる事請け合いだけど。
そしたら、速やかに丸く収まるかもだけど、お話としては、萌えないから、この流れで正解ですよね～。
いよいよ、Rですか？エチで伸びたら、帰国前に終わらなくなりますね？
あと３日で、ご帰国ですねえ。
私も、空港にお出迎えに行きたいくらいです。
引越し追い込みで、体調崩されませんように！
透、アネモネの花詞知って余計に切なくなりましたね。
結局は全裸での夜這ですか。
でも、お兄ちゃんから「好き」って言われました。
信じられない透だけど、
お兄ちゃんは本当に透を愛してるんだ。
これで心が結ばれるといいですね。
静けさが伝わりましたか！？嬉しいです！
おお！
そんなに細かく伝わっていたとは、きっとGさまの想像力が豊なのですよ！
そうですね(>_<)
今の透に夜這いという概念はないと思います。
Gさまの仰るように癒そうとしている想いに近いんだと思います！
確かに心の伴わない行為はスポーツや遊びのようにも感じますね。
でも癒しや浄化の意味も持つ行為もあるかもしれませんね。
身体を繋げる事で言葉では出来ない会話が出来るといいです(>ω<)
もう無責任に身体を繋げる事はないと思います！
雅人も想いを言葉にしましたしね！
二人の想いはとても深くて今は少しずれ込んでいますが、
何とか同じ線路に立てるといいです！
＞(*´∀｀)ﾈ？ｵﾆｰﾀﾏ♪
おにーたま萌え(〃∇〃)
そうだぞ～Gたま～一緒に見守ろうではないか～
（声低め設定ｗ）ヾ(ｰｰ )ｫｨ
拍手秘コメントどうもありがとうございました
> それでも甲斐甲斐しく世話をする透たん…うん、もう限界だよね(v_v)
そうなんだよ(>ω<)！！
も～～～変に解釈するんじゃないよ、この子は！！(*´д｀)ﾉ゛)Д`)ﾍﾟｼｮﾝ
って感じだね…。
でももう限界が来てしまった…。(ﾉ△･｡)
> 部屋の電気じゃなく、ブラインドを上げて街灯を差し込ませる。
> 桔梗ちんのこういう演出好きだ！(〃∇〃)
ﾟ+｡ﾟ(ﾉﾟ∀ﾟ)ﾉオォオォﾟ｡+ﾟ
嬉しいよー！褒められたーｖｖｖ(〃∇〃)
> 透たん、その言葉そのまま受け止めていいんだよ。
> もう悲しまなくていいから…。
> いよいよクライマックスへ！だね(>_<)
そうだよ透。もう素直に…素直に信じておくれ。
クライマックス、修羅場突入です！！
エネルギーチャージしないと～～
ｵｵｰ＼(-д＼)三 (/д-)/ｵｵｰ
コメントどうもありがとうございました
> アネモネの花言葉は切ないですよねぇ～(>_<)あたしも別の意味で使ってますけど^_^;
> 透ちゃん全裸で夜這い！？暗がりで切なく映るその姿に胸がきゅってなります。
> 兄ちゃんの言葉、間違ってないんだぞ～！もう、素直に受け止めていいんだ。兄ちゃん全身で想いを伝えてあげて｡･ﾟ･(*ﾉД`*)･ﾟ･。 もしや、次はＲに…(〃ﾟдﾟ；ﾄﾞｷﾄﾞｷ
こんばんは＾＾
アネモネは切ないですね(>_<)
やぴさまの花言葉のシーンは素敵でしたぁ･:*:･(*´∀｀*)ｳｯﾄﾘ･:*:･
暗がりっていつもと違ったイメージと雰囲気で相手が見える事って
あるなって思ってよくそのシーンを使うんですが、漏れる明かりで
少しだけ見える相手の表情とかいいなって思います。
悲しい表情とか特に。
もう素直に受け止めて欲しいです！！ああ…修羅場。
コメントどうもありがとうございました
そして明日へ(笑)
寸止めスミマセン＾＾；
誘い受けか、襲い受け(笑)か、とにかく馬乗りです！！
でもここまで。後は自分からは何もしない…というか出来ないんですね(>_<)
武を意識しているので我慢の子です(｡-д-)ｳｰ
他人のフリをしてエチってこんな悲しい事ありませんよね(ﾉ△･｡)
透、悲しい自分の気持ちを押し殺して満足する雅人を見て幸せを感じてます。
そういうのも全部ひっくるめて好きだなって思っている…。
私には真似出来ません…orz
というか、そう思える人に出会えるって稀なんでしょうね。
完結の流れまで来ていますがあともう少し！
２，３話ってところでしょうか(>_<)
本当に帰国直前に終わるなんて思っても見ませんでした(；´Д`A ```
焦らし上手ですか？！
壁|oﾉωﾉ) )))))))･･･ｲﾔｰﾝ♪
コメントどうもありがとうございました
Yさまが取り乱してらっしゃる(笑)
本当、どんなサイト見たのー！って感じですよね(>_<)
透に色々と助言ありがとうございます･ﾟ･(ﾉ∀｀)･ﾟ･
わ！悲しげな花言葉を載せているサイトはYさまが閉鎖されると！！
熱烈な思いをありがとうございます！！
> はぁ、はぁ、………
い、息切れしてらっしゃいますね！！
( *´∇｀)＿旦~~お茶どうぞ♪
いえ！切ない、と取り乱して頂けて嬉しい限りです！！
と、取り敢えずお茶を飲みましょう！
私も一杯頂きます！ご一緒に！！
(*´▽｀)o┏━┓~~且o(´ー｀*)♪
コメントどうもありがとうございました
それでも甲斐甲斐しく世話をする透たん…うん、もう限界だよね(v_v)
部屋の電気じゃなく、ブラインドを上げて街灯を差し込ませる。
桔梗ちんのこういう演出好きだ！(〃∇〃)
透たん、その言葉そのまま受け止めていいんだよ。
もう悲しまなくていいから…。
いよいよクライマックスへ！だね(>_<)
アネモネの花言葉は切ないですよねぇ～(>_<)あたしも別の意味で使ってますけど^_^;
透ちゃん全裸で夜這い！？暗がりで切なく映るその姿に胸がきゅってなります。
兄ちゃんの言葉、間違ってないんだぞ～！もう、素直に受け止めていいんだ。兄ちゃん全身で想いを伝えてあげて｡･ﾟ･(*ﾉД`*)･ﾟ･。 もしや、次はＲに…(〃ﾟдﾟ；ﾄﾞｷﾄﾞｷ
コメント