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続・ネクタイの距離 15話

 学は週に二回程通っている塾へ顔を出した。
 授業のサポートに位にはなっている塾だが、そのうち嫌でも受験前には毎日行く事になる。
 元々授業と教科書だけで十二分に理解出来る頭を持っている学は、昔からの要領の良さを随分と羨ましがられてきた。

 もう夜だというのに昼間のように煌々と明るい教室へ入っていく。学はその明るさはいつも人工的で青白い光だと不快に感じる。
 教室を進むと、中に見慣れた顔が振り向いてこちらに向かって手を上げた。

「こっちー」

「おー」

 学もいつもの調子で軽く手を上げるとそいつの横に座った。
 良く言えば可愛いネズミのような顔をしているが、一般的に言えば、嫌味のないごく普通の顔立ちの男だ。
 だが学にとっては幼い頃から見慣れ親しんだ顔だった。その変哲もこれと言った特徴のない顔も、学にはとても安心出来るものだった。
 高校から別々の学校へ通う二人だったが、こうしてまた塾で顔を合わせていた。

「よォ、哲平。席サンキューな。金はやらねェよ」

「んだよ、ケチくせぇ。席取り代、五百円よこせ」

 この冗談交じりの会話も昔からだ。学は学校でも勿論友達はいるが、やはり哲平が一番話しやすいと感じる。
 
「んで? どうなった? 例の先生とは」

 哲平はニヤニヤと助平な顔つきで聞いてきた。
 学は哲平には以前、先生に告白する前からその気持ちを打ち明けていた。


『哲平よォ……俺、好きな人できた』

『ほぉ……。学校の子か?』

『うん。……てか、担任』

『マジ!? 先生かよ!? お前、やるなぁ!』

『男の……先生』

『……マジ?』

『マジ』

『……や、……やるなぁ……』


 哲平によると、その時学が卑屈な表情など微塵も見せずに、イタズラが見つかった小さな男の子のようにニカっと見せた笑顔がとても爽やかだったので、友情は変わらなかったのだそうだ。
 確かに学も哲平に打ち明けた時は話せた事と、哲平がちゃんと聞いてくれた事に嬉しかった事しか覚えていない。
 それからは塾で会うと進行状況を話すようになった。

「週末に先生の家に泊まる事になったよ」
「え!……じゃあお前! ついに!!」
「あぁ……ふふふ……ふふふふっ」
 余りの嬉しさに変な笑みが止まらない。
「学よ、エロい顔して不気味な笑い方すんなよ、気持ち悪りィ」
「いやぁ、嬉しくてなぁ…ついッ! お前も早く次の彼女でも探せって!」
 哲平はつい先月に振られてしまった。いい奴なので、モテない事もなかったが今回は少しキツかったようで暫く恋愛は控えたいのだと言う。

「しかし……男同士の初めてかよぉ! 想像したくねーははっ」
「そら俺だって普通は気持ち悪りィよ!! でもお前もきっと先生を見たら分かると思うぜ? 俺の気持ち」
 学は先生の浴衣姿を思い出して口元をだらしなく歪めた。
「ふーん……そんなに綺麗なんだ? 男なのになぁ……まぁ、そこまで言われたら見てみたいけど……でもないわー」
 哲平は一応想像でもしてみたのか、苦笑いをした。

(週末、早く来ねぇかな)

 何かを待ち望む時に限って、時間が経つのが遅く感じる。
 最近はまた仕事が忙しくなってきたとかで、柳の放課後に会う事も出来ていない。
 心配している亮太の態度も相変わらず学に対して悪いが別段おかしな行動に出る様子もなかった。
 ただ、教師と生徒という関係上で亮太と柳が話しているのを見るだけで不安とヤキモチで胸が埋め尽くされる。学はそんな小さな器の自分を嫌悪した。
 少しでも早く、柳の深い中になって柳の全てを知り、全てが自分のものだと胸を張って言いたい。
 そんな焦りも手伝って、週末までの毎晩を落ち着かない様子で過ごした。



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遅くなりました(´Д`A;)
スミマセン;
そしてきっとリコメがとても遅くなってしまいそうですので泣く泣くコメント欄を今回閉じさせて頂きます。
せっかくコメント頂いてもお返事遅くなってしまうのは申し訳ないですのでっ(>ω<)

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