04/05/2011(Tue)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」5話
「えっと……あれが、俺の彼……なんだ」
「え……えっ、マジ?」
貴之はもう一度目を凝らして夜を凝視した。
「お前……面食いだな……エロいっつーか、危ないっつーか、凄い雰囲気の野郎だな……」
「貴之っ、ちょっとこっち来てっ」
美月は何だか恥ずかしくなって貴之の袖を掴んで夜に見つからない場所へと移動しようとした。だが、貴之は「追おうぜ」と言ってそのまま次の授業へ進む夜の後をつけ出した。
美月もある程度は予測していた。夜はあれだけ江戸でも楼で男女共に魅了していた男だ。モテるだろうとは覚悟していたが、目の前で見るとやはりイラ立つものがある。
「美月、お前がそういう雰囲気になる理由が分かった気がしたよ」
「う、うるさいっ」
夜を追って教室へそっと入ると、夜に向かって親しげに手を上げる男がいた。
「ヨルっ、こっちだよっ」
(んだぁ!? アイツ!)
そのやたら親しげな男は少し小柄でとても可愛いらしく、まるでスズランのような笑顔の男だった。
清純そうで、真面目で人の良さそうな男だ。そして透き通るような白い肌に黒々とした瞳と髪がとても綺麗に生えて人目を引く。
――スズランのような笑顔……。
「おいおい……。モテる彼氏はやっぱ男も綺麗なのと一緒にいるのか? 何なんだ一体」
横で嫉妬混じりに文句を言う貴之の言葉を聞きながら、モヤモヤとした不快な気持ちが一気に美月の胸を包み込んだ。
授業が始まる前の束の間、その男はやたら至近距離で夜に話かけていた。その横で何だか楽しそうに微笑む夜にも腹が立つ。
(何話してんだッ)
小柄な男が何かノートを取り出し、夜にグッと近寄って何かを教えているようにも見える。
夜がノートを覗きこんで、小柄な男がふと顔を上げると余りの至近距離にビックリしたのか、小柄な男の顔が真っ赤になって俯いたのが見えた。
(……。コロス……。)
「み、美月? ……落ち付けってっ。目が座ってるゾッ」
横で焦る貴之の言葉など全く聞こえない美月は、何故か夜の隣にいる男の笑顔を見る度に胸が軋んだ。
清純そうで、ひた向きな感じで、それでいて芯の強そうな……。美月はそれをどこかで知っている気がした。
――雪之丞。
(あ……。そうか……雪之丞さんに似てるんだ、アイツ……そういえば雪之丞もスズランのような笑顔の子だった)
かつて夜が一生を共にすると誓った唯一の相手。
美月がそう見えるのだから、夜にだって雪之丞の面影が見えている筈だ。
男が恥ずかしげに笑う表情を見て、何だか愛おしそうに微笑み返す夜を見ると、とても不安になった。
――忘れられない、よな。
裏切る筈が無い、そう思っていた確信が揺らぐ。
夜は元々身体はオープンな男だ。それにオープンな世界の住人だった。無理矢理頼み込まれればある程度はしてしまうかもしれない。
(いや、もうした……かも……)
美月はグッと唇を噛む。
浮気は勿論嫌だ。だが、もっとイヤなのは……。かつて愛した人を渇望してしまう恐れ。
(俺は、未だに自信が持てないでいるんだな……。)
美月自身、正直に言って今でも抱月は好きだ。そんな立場で我儘を言っているのは分かっていた。
「なぁ、アイツさ、隣の男と仲良過ぎねぇ?」
貴之の言葉で再び夜に目をやると、男が夜の袖を掴んで甘えているように見えた。夜はそれを拒絶する訳でもなく、あやす様にその男の頭をポンポンと撫でてやっていた。
男の表情は蕩けるようにその白い肌を桃色に染めて、誰が見ても恋している事が一目瞭然だ。
――俺に我慢させておいて、何してんだよ。
――俺と暮らしていて、外でそういう事、してたんだ?
――今でも雪之丞が恋しい……のかな……。
美月は大きな瞳から浮かぶ涙が零れおちない様にするので精一杯だった。
「美月……」
自然と繋いでくれた貴之の手が無かったら、きっと涙は零れ落ちていたに違いない。
結局その後幾つか授業を受けた夜だったが、その全てに雪之丞に似た男がいた。
だが、ただ単にその男の片想いで夜と一緒の授業が受けたくて合わせていたのかもしれない、そう思って見ていた。
だが、全ての授業が終わって、事態は思わぬ方向へと転んだ。
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「え……えっ、マジ?」
貴之はもう一度目を凝らして夜を凝視した。
「お前……面食いだな……エロいっつーか、危ないっつーか、凄い雰囲気の野郎だな……」
「貴之っ、ちょっとこっち来てっ」
美月は何だか恥ずかしくなって貴之の袖を掴んで夜に見つからない場所へと移動しようとした。だが、貴之は「追おうぜ」と言ってそのまま次の授業へ進む夜の後をつけ出した。
美月もある程度は予測していた。夜はあれだけ江戸でも楼で男女共に魅了していた男だ。モテるだろうとは覚悟していたが、目の前で見るとやはりイラ立つものがある。
「美月、お前がそういう雰囲気になる理由が分かった気がしたよ」
「う、うるさいっ」
夜を追って教室へそっと入ると、夜に向かって親しげに手を上げる男がいた。
「ヨルっ、こっちだよっ」
(んだぁ!? アイツ!)
そのやたら親しげな男は少し小柄でとても可愛いらしく、まるでスズランのような笑顔の男だった。
清純そうで、真面目で人の良さそうな男だ。そして透き通るような白い肌に黒々とした瞳と髪がとても綺麗に生えて人目を引く。
――スズランのような笑顔……。
「おいおい……。モテる彼氏はやっぱ男も綺麗なのと一緒にいるのか? 何なんだ一体」
横で嫉妬混じりに文句を言う貴之の言葉を聞きながら、モヤモヤとした不快な気持ちが一気に美月の胸を包み込んだ。
授業が始まる前の束の間、その男はやたら至近距離で夜に話かけていた。その横で何だか楽しそうに微笑む夜にも腹が立つ。
(何話してんだッ)
小柄な男が何かノートを取り出し、夜にグッと近寄って何かを教えているようにも見える。
夜がノートを覗きこんで、小柄な男がふと顔を上げると余りの至近距離にビックリしたのか、小柄な男の顔が真っ赤になって俯いたのが見えた。
(……。コロス……。)
「み、美月? ……落ち付けってっ。目が座ってるゾッ」
横で焦る貴之の言葉など全く聞こえない美月は、何故か夜の隣にいる男の笑顔を見る度に胸が軋んだ。
清純そうで、ひた向きな感じで、それでいて芯の強そうな……。美月はそれをどこかで知っている気がした。
――雪之丞。
(あ……。そうか……雪之丞さんに似てるんだ、アイツ……そういえば雪之丞もスズランのような笑顔の子だった)
かつて夜が一生を共にすると誓った唯一の相手。
美月がそう見えるのだから、夜にだって雪之丞の面影が見えている筈だ。
男が恥ずかしげに笑う表情を見て、何だか愛おしそうに微笑み返す夜を見ると、とても不安になった。
――忘れられない、よな。
裏切る筈が無い、そう思っていた確信が揺らぐ。
夜は元々身体はオープンな男だ。それにオープンな世界の住人だった。無理矢理頼み込まれればある程度はしてしまうかもしれない。
(いや、もうした……かも……)
美月はグッと唇を噛む。
浮気は勿論嫌だ。だが、もっとイヤなのは……。かつて愛した人を渇望してしまう恐れ。
(俺は、未だに自信が持てないでいるんだな……。)
美月自身、正直に言って今でも抱月は好きだ。そんな立場で我儘を言っているのは分かっていた。
「なぁ、アイツさ、隣の男と仲良過ぎねぇ?」
貴之の言葉で再び夜に目をやると、男が夜の袖を掴んで甘えているように見えた。夜はそれを拒絶する訳でもなく、あやす様にその男の頭をポンポンと撫でてやっていた。
男の表情は蕩けるようにその白い肌を桃色に染めて、誰が見ても恋している事が一目瞭然だ。
――俺に我慢させておいて、何してんだよ。
――俺と暮らしていて、外でそういう事、してたんだ?
――今でも雪之丞が恋しい……のかな……。
美月は大きな瞳から浮かぶ涙が零れおちない様にするので精一杯だった。
「美月……」
自然と繋いでくれた貴之の手が無かったら、きっと涙は零れ落ちていたに違いない。
結局その後幾つか授業を受けた夜だったが、その全てに雪之丞に似た男がいた。
だが、ただ単にその男の片想いで夜と一緒の授業が受けたくて合わせていたのかもしれない、そう思って見ていた。
だが、全ての授業が終わって、事態は思わぬ方向へと転んだ。
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コメント
> 好物キター!!
好物になれてますでしょうか(´Д`A;)
不穏極まりない方向です…。
> そこで美月ちゃんは元彼と…夜さんにばれて、凶器でお仕置き(≧∀≦*)ノ
> あぁ、なんか疼くような妄想をしてしまった(笑)
> とにかくお仕置きされたい?したい?見たい!
> 雪さんとはどうなっちゃのか気になるなぁ~。
やぴさまにも期待して頂けているお仕置き(笑)
お仕置きブログだーv(笑)
お仕置き……になるといいのですが;;;
結構シリアスな展開になりそうです(;・∀・)
コメントどうもありがとうございました
> あんだけおあずけ甘甘でこっからド~ンッと来るのかと思いきや、一波乱!?!?
> さすが筋金入りのエスさま・・・・・・・
実はSなんじゃないか疑惑のWLさんに言われてしまった(笑)
というか、私の中で疑惑は確信へと変わっているのですが!(笑)
そして一波乱、ありそうです(>ω<)
> コロス
>
> ああ、いいな~♪
> その極端で過激な言葉の響き♪
> わたしならステルなw
>
> 続き楽しみです~~♪
あはは(≧∀≦)
ステルるんですね!!(笑)
その思い切り、大好きですっ(〃∇〃)
コメントどうもありがとうございました
> 「コロス」←あっ、これは残念ながら言ったことある!
> あるある!そう思う瞬間!
ですよね~(^_^;)
あ、私もありまくりですよ~言った事♪
本人には言葉よりも目が怖いって言われましたが!(笑)
> 昼間の夜はやっぱり、エロい空気引きずって・・・後ろから空気清浄機持って歩かなきゃ(>_<)
> 《スズランのような笑顔》の雪之丞に似た男・・・白さと香りのニュービーズみたいなヤツとみた!
バンバンヾ(≧▽≦)ノギャハハ☆
ちこさん!!面白過ぎです(笑)そして上手過ぎです(笑)
そうか。雪之丞の奴、ニュービーズだったか!!
何て時代錯誤な奴なんだっ
> エロ切ない方向にお話が進んでるぅ~(T_T)
> 思わぬ展開!?
> 気になる~~っ、次の更新まであと、五時間弱・・・くっ・・・我慢(;´∩`)
ちょいと切なげな雰囲気です(>ω<)
って、ごめんなさい;
時間無くてお昼に予約が出来なかった…orz
すみません~~(ノД`)・゜・
コメントどうもありがとうございました
> うぅぅぅ、きゅうきゅうしております(T△T)
> これだよ!これぞ桔梗ちんの味!!(ん?味?w
> あぁ、このジレンマがもうっ・・・*o_ _)oバタッ
((((((ノ゚⊿゚)ノヌオォォォ
ありがとう~っ
私の味かい??(笑)
もっと味わうがいいさ( ̄ー ̄)ニヤ...(違う意味に聞こえるw
> 美月ちゃん既に身体は限界間近なのに、心まで追い討ちをかけられる!?
> 早く続きを~~ヵモ-ンщ(゚Д゚`щ)ヵモ-ン
> あ、ハンカチ用意しとこ(早w
いやいやいや!!(笑)
ハンカチはいらないべさ~(笑)
でもちょいと不穏極まりない感じになってきました(>ω<)
コメントどうもありがとうございました
ちょいと怪しい雰囲気のエロカプです(>ω<)
> キャー! 恋にライバルはつきもの
> でも、全てを捨ててこちらの世界を選んだ夜は・・・
> 浮気くらいするか!?ww
ですよねー(>ω<)
ライバルは現れるという事は魅力的だとい証拠ですが、
でも波乱は免れないですよね;
さて、夜ってば浮気しちゃうのでしょうか!?
> そして、まだ凶器出番ナシ _| ̄|○
あはは(≧∀≦)
すみません~!
って、そんなに凶器を待って下さって嬉しいです~~っ
> でも桔梗ちんの連載が毎日読めて嬉しいっす!
> そして[万華鏡]の面子、大好き☆
+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
そんな事仰って下さって本当に嬉しいですッ
わ~ん(ノД`)・゜・
ありがとうございます!!!
夕華さんは万華鏡連載当初から動向を見守って貰っていますものね!
残念ながら先生は出てきませんが、先生のエロ話しも考えてますので!!(笑)
コメントどうもありがとうございました
好物キター!!
そこで美月ちゃんは元彼と…夜さんにばれて、凶器でお仕置き(≧∀≦*)ノ
あぁ、なんか疼くような妄想をしてしまった(笑)
とにかくお仕置きされたい?したい?見たい!
雪さんとはどうなっちゃのか気になるなぁ~。
あんだけおあずけ甘甘でこっからド~ンッと来るのかと思いきや、一波乱!?!?
さすが筋金入りのエスさま・・・・・・・
コロス
ああ、いいな~♪
その極端で過激な言葉の響き♪
わたしならステルなw
続き楽しみです~~♪
「コロス」←あっ、これは残念ながら言ったことある!
あるある!そう思う瞬間!
昼間の夜はやっぱり、エロい空気引きずって・・・後ろから空気清浄機持って歩かなきゃ(>_<)
《スズランのような笑顔》の雪之丞に似た男・・・白さと香りのニュービーズみたいなヤツとみた!
エロ切ない方向にお話が進んでるぅ~(T_T)
思わぬ展開!?
気になる~~っ、次の更新まであと、五時間弱・・・くっ・・・我慢(;´∩`)
うぅぅぅ、きゅうきゅうしております(T△T)
これだよ!これぞ桔梗ちんの味!!(ん?味?w
あぁ、このジレンマがもうっ・・・*o_ _)oバタッ
美月ちゃん既に身体は限界間近なのに、心まで追い討ちをかけられる!?
早く続きを~~ヵモ-ンщ(゚Д゚`щ)ヵモ-ン
あ、ハンカチ用意しとこ(早w
でも、全てを捨ててこちらの世界を選んだ夜は・・・
浮気くらいするか!?ww
そして、まだ凶器出番ナシ _| ̄|○
でも桔梗ちんの連載が毎日読めて嬉しいっす!
そして[万華鏡]の面子、大好き☆
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