04/13/2011(Wed)
一周年記念 万華鏡-江戸に咲く-「やせ我慢」13話
そうして事情を知った夜は少しの間、幸迩が慣れて好きな相手と結ばれる前まで後ろの解し方やウケの心得などを教える事になった。
夜にしてみれば、茶屋の子供たちへの手解きの延長線という感覚だった。
幸迩の必死のお願いと、その純粋で直向きな恋心を応援したくて承諾をした。一応美月には言おうとしたが、今はお互い干渉し合わない時期だという事で事後報告をしようと思った。
江戸にいた時もケジメをつけてきたのだ。ここでもこれが最初で最後にしようと思っていたのが、まさかこんなに悪化する事態を招こうとは思いもよらなかった。
シャワーから出た夜は簡単に身体を拭いて着流しを羽織って出てた。
美月のあの甘美な声と陶器のような肌に触れられると考えただけで、着物の下では欲望が硬く大きく成長してきた。
「美月、出たぞ。……美月? どこにいる?」
いくら呼んでも探してもいない。
夜の艶やかな長めの黒髪が水を滴らせて首筋に落ちる。
家中を探してもどこにも見当たらない。嫌な予感がして美月の部屋へ入り枕元を漁った。
「ない……」
枕元にある小箱に入っている筈の「カンザシ」がない。カンザシは抱月から貰った美月の宝物の一つで、無くすのが嫌だからと言っていつもこの小箱に入れてある。持ち歩いているのはもう一つの宝物の石鹸の欠片だ。たまに些細な事で喧嘩をすると、いじけた美月はいつもこうやってカンザシを持って出て行く。だが今回は何の揉め事もした記憶がない。問題があるとすればそれは一つ。大きな問題しか思い浮かばなかった。
「まさか美月の奴知って……」
夜は「チッ」と舌打ちをすると玄関に無造作にあった草履を突っ掛け、家を飛び出して行った。
美月は少ない手荷物を貴之の手から取ると立ち止まった。
「貴之……あの、やっぱり俺お前の家に世話になるにはちょっと……」
「美月。今は一人でいない方がいい。……ていうか、俺がお前を一人に出来ないんだよ」
貴之は美月の柔らかい身体を抱き寄せた。
「こうして無理にでも人肌に触れてた方が癒されるんだよ」
「あっ……ちょっ……貴之」
抵抗はしていても確かに何だか安心出来る。独りで冷たい地面に立っているより、こうして寄りかかれる温もりがあるだけで屋根のある建物の中にいるような気分になる。
もしかしたら貴之もこうして美月と決別をした時に誰かに癒されたのかもしれない。だから知っているのかもしれないと思った。
美月は抵抗を止めて大人しく貴之の背中に腕を回した。
辺りは人影がなく、不規則に並んだ白い電灯がその真下だけをほんのり明るく照らしていた。
薄暗い道路の真ん中は美月と貴之だけの広い部屋のような空間を作っていた。
先の事を考えずに今は癒されてもいいかなとタバコの香りが少しだけする貴之の胸の中に顔を埋めていた。
遠くからザッ、ザッ、とぶっきらぼうな音が聞こえた。
靴音とは違う何かを引きずるような音に美月も貴之も顔を少し上げた。
暗がりから何かユラユラとした大きな影が見える。二人は一瞬何か分からない恐怖心が内部から込み上げて互いを強く抱き締め合った。
「美月……何してんだ」
暗がりから電灯の下まで来た影を見た美月はハッとした。まるで初めて会った時の夜のようだった。
一瞬で夜に惹き込まれる。魂が夜に引きずられる。
「お前……知った顔だな。俺はそいつの男の夜ってんだ。お前、名は何て言う」
夜は張りつめた低い声で貴之に質問した。
(何で夜が貴之を知ってるんだ?)
「俺は美月の前の男だ。貴之だ」
“前の男”なんて言い方をするとは思わなかった美月はギョッとして貴之の顔を見上げた。貴之は豹に睨まれた犬のように内心は気押されつつも目一杯去勢を張っていた。
「タカユキ……そうか。お前だったか。最近美月とやけに連絡を取っていたのは」
「夜、どうして貴之を知ってるの」
美月は途中で夜に問いかける。
「部屋にそいつの写真があったんだよ。昔の男だって直ぐ分った。だから顔だって忘れちゃいねェよ」
痴話喧嘩になりそうなところで貴之が身体で美月を隠す様に前へ出た。
「オイ。そんな事より俺たちはもう知ってるんだからな……てめぇが他の男と浮気してるの、ちゃんと現場押さえてんだよ。今更なにしに来たんだ」
夜は着流しの袖口の中で腕を組みながら数秒間を置いた。そして軽く溜息をつくと、真っ直ぐと美月だけを見て話かけた。
「美月。黙っていたのは悪かった。後で言うつもりだった。だが最初に言っておくが、俺は浮気なんざしちゃいねェよ。アイツとはヤってねェ」
<<前へ 次へ>>
昨夜はPCがウイルスにかかってまた何日もPC使えないかと焦ったんですが
どうやら復元したようです(-ω-;)
お騒がせいたしました;
でも数日前の状態に復元したので書き溜めた記事がまた消えまして…。
(p_q*)シクシク
終盤なのでまた夜・昼UPしようかと意気込んでいた矢先でした |||||( _ _)|||||
また頑張ります(>ω<)
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お礼画像あり☆5種ランダム
夜にしてみれば、茶屋の子供たちへの手解きの延長線という感覚だった。
幸迩の必死のお願いと、その純粋で直向きな恋心を応援したくて承諾をした。一応美月には言おうとしたが、今はお互い干渉し合わない時期だという事で事後報告をしようと思った。
江戸にいた時もケジメをつけてきたのだ。ここでもこれが最初で最後にしようと思っていたのが、まさかこんなに悪化する事態を招こうとは思いもよらなかった。
シャワーから出た夜は簡単に身体を拭いて着流しを羽織って出てた。
美月のあの甘美な声と陶器のような肌に触れられると考えただけで、着物の下では欲望が硬く大きく成長してきた。
「美月、出たぞ。……美月? どこにいる?」
いくら呼んでも探してもいない。
夜の艶やかな長めの黒髪が水を滴らせて首筋に落ちる。
家中を探してもどこにも見当たらない。嫌な予感がして美月の部屋へ入り枕元を漁った。
「ない……」
枕元にある小箱に入っている筈の「カンザシ」がない。カンザシは抱月から貰った美月の宝物の一つで、無くすのが嫌だからと言っていつもこの小箱に入れてある。持ち歩いているのはもう一つの宝物の石鹸の欠片だ。たまに些細な事で喧嘩をすると、いじけた美月はいつもこうやってカンザシを持って出て行く。だが今回は何の揉め事もした記憶がない。問題があるとすればそれは一つ。大きな問題しか思い浮かばなかった。
「まさか美月の奴知って……」
夜は「チッ」と舌打ちをすると玄関に無造作にあった草履を突っ掛け、家を飛び出して行った。
美月は少ない手荷物を貴之の手から取ると立ち止まった。
「貴之……あの、やっぱり俺お前の家に世話になるにはちょっと……」
「美月。今は一人でいない方がいい。……ていうか、俺がお前を一人に出来ないんだよ」
貴之は美月の柔らかい身体を抱き寄せた。
「こうして無理にでも人肌に触れてた方が癒されるんだよ」
「あっ……ちょっ……貴之」
抵抗はしていても確かに何だか安心出来る。独りで冷たい地面に立っているより、こうして寄りかかれる温もりがあるだけで屋根のある建物の中にいるような気分になる。
もしかしたら貴之もこうして美月と決別をした時に誰かに癒されたのかもしれない。だから知っているのかもしれないと思った。
美月は抵抗を止めて大人しく貴之の背中に腕を回した。
辺りは人影がなく、不規則に並んだ白い電灯がその真下だけをほんのり明るく照らしていた。
薄暗い道路の真ん中は美月と貴之だけの広い部屋のような空間を作っていた。
先の事を考えずに今は癒されてもいいかなとタバコの香りが少しだけする貴之の胸の中に顔を埋めていた。
遠くからザッ、ザッ、とぶっきらぼうな音が聞こえた。
靴音とは違う何かを引きずるような音に美月も貴之も顔を少し上げた。
暗がりから何かユラユラとした大きな影が見える。二人は一瞬何か分からない恐怖心が内部から込み上げて互いを強く抱き締め合った。
「美月……何してんだ」
暗がりから電灯の下まで来た影を見た美月はハッとした。まるで初めて会った時の夜のようだった。
一瞬で夜に惹き込まれる。魂が夜に引きずられる。
「お前……知った顔だな。俺はそいつの男の夜ってんだ。お前、名は何て言う」
夜は張りつめた低い声で貴之に質問した。
(何で夜が貴之を知ってるんだ?)
「俺は美月の前の男だ。貴之だ」
“前の男”なんて言い方をするとは思わなかった美月はギョッとして貴之の顔を見上げた。貴之は豹に睨まれた犬のように内心は気押されつつも目一杯去勢を張っていた。
「タカユキ……そうか。お前だったか。最近美月とやけに連絡を取っていたのは」
「夜、どうして貴之を知ってるの」
美月は途中で夜に問いかける。
「部屋にそいつの写真があったんだよ。昔の男だって直ぐ分った。だから顔だって忘れちゃいねェよ」
痴話喧嘩になりそうなところで貴之が身体で美月を隠す様に前へ出た。
「オイ。そんな事より俺たちはもう知ってるんだからな……てめぇが他の男と浮気してるの、ちゃんと現場押さえてんだよ。今更なにしに来たんだ」
夜は着流しの袖口の中で腕を組みながら数秒間を置いた。そして軽く溜息をつくと、真っ直ぐと美月だけを見て話かけた。
「美月。黙っていたのは悪かった。後で言うつもりだった。だが最初に言っておくが、俺は浮気なんざしちゃいねェよ。アイツとはヤってねェ」
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昨夜はPCがウイルスにかかってまた何日もPC使えないかと焦ったんですが
どうやら復元したようです(-ω-;)
お騒がせいたしました;
でも数日前の状態に復元したので書き溜めた記事がまた消えまして…。
(p_q*)シクシク
終盤なのでまた夜・昼UPしようかと意気込んでいた矢先でした |||||( _ _)|||||
また頑張ります(>ω<)
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コメント
> でも使えてよかったねっ
> 数日前の状態に復元・・・ 怖いね;
> 久々にバックアップ取りました;
お気遣いありがとうございます(>ω<)
そうですね、ここのところ同じものを消えては書いての
繰り返しでしたのでモチベーションが下がってましたが、
ついに終盤!!
頑張りますv
あ、WLさんもバックアップを取られたんですね!
私も常に面倒臭がらないでやろうと思います(´Д`A;)
> 良かった・・・
> 誤解はまだ解けてないけど、その機会は来たよね!!
> 安心だよ・・・・
安心して頂けて良かったです!
確かに機会が出来ただけでもホッとしますね!
あとは彼ら次第…。
> シャワーあがりの夜、エロいよ・・・←脳内で映像化しすぎ;
映像化までして頂けて嬉しいですー!
エロいのめちゃめちゃ嬉しいです!
風呂上がりっていいですよね(〃∇〃)
コメントどうもありがとうございました
> カンザシがないだけで美月ちゃんがいなくなったわけまでたどり着くなんて!やっぱ、野生動物は違うね~(≧▼≦)
> ニュービーズの世話なんか焼いてるからだよ・・・
ですね!恐るべし野生の力!!(笑)
カンザシ効果も絶大です!
本当、ニュービーズッ子とにゃんにゃんしてるからじゃヽ(`Д´)ノウガーッ
> 貴之さんのいうとおり抱き締められてるだけでも、癒されるときあるよねっ(^-^)
> うんうん!
> わかる!
> って、貴之に甘えてたら、野性児夜登場ですかっ!
> やっぱ、匂いで美月の居場所察知するのかっ!
そうなんですよね~(。´Д`。)=3 フゥ
人肌の効果って絶大ですよね。
そんな時に野生児登場です!怖いです!ガルルル…
> ほんでもって、最近イイ男の貴之さん、頑張るし!
> 美月ちゃんは夜のところへ戻るのか、それともとりあえず貴之さんと行ってしまうのか・・・明日の更新楽しみにしてます\(^O^)/
最近頑張って株の上がっている(ちょっぴり存在感の薄い)
貴之さん。
夜を前に尻尾巻き巻き頑張ってます!わんわんっ
美月はどうするんでしょうかね(>ω<)
> でも・・・気になることがひとつ!
> 夜の凶器は「美月がいない」と気付いて収納されたのか、それともお仕置きにむけてまだ張り切ってるのか(//∀//)
凶器の行く末を気にして下さってありがとうございます(笑)
さて、どう転ぶかですね~♪
でもあまりハードルは高くないので(-"-;A ...アセアセ
コメントどうもありがとうございました
> (;゚ロ゚)ハッ そんな場合でなくて(笑)
可愛いと言って頂けて嬉しいですv
宝物ですからねv
色々と…(-m-)ぷぷっ
あ、そんな場合ではないね;
> さすが夜!勘が鋭い☆
> どっかの誰かさんとは大違いだ(えw
いや~この二人はほら、長い付き合いだし!!
どこかの誰かさん、これからっすよ!!(〃∇〃)
> 貴之頑張って威嚇してるw
> グルルルって言いながら尻尾巻き気味・・・みたいな?(爆)
うん(笑)
可愛いやら可哀想やら(笑)
でも頑張った賞をあげたいと思うよ^^;
あはは!尻尾巻き気味ってのが目に見えるようだ(笑)
> さぁ、美月ちゃん!夜の言うことすんなり信じてくれるかな(>_<)
> この後のエロを楽しみに(笑)最後の修羅場だー!
あぁっ澪ちんまでっ
ハードルは上げないどくれよぅ(>ω<)
修羅場を抜けられるか!
コメントどうもありがとうございました
日付と同じ話数の進み方だぁ(*´∇`*)と現在の日付と同じ数字を
書いてしまいました;
アホです…。
コメントどうもありがとうございました
> もう何も怖くないぞ!!←いったい何にビビってたのか(笑)
こんばんは^^
あはは(≧∀≦)
何かにビビっていたのですか(笑)
> ちょっぴりいい人なのか下心なのか判断がつかないタカユキだけど、夜さんに切られない様に(笑)これは笑えないけどさ。あれ?タカユキだっけ?意外に存在感薄いような…
そうなんですよね~^^;
貴之さんてばちょっと存在感が薄いんです(笑)
まぁ、あまり出番ありませんでしたしね^^;
確かにヘタしたら切られてお陀仏でございますよね(´Д`A;)
下心もちゃんとある普通の良い人ってとこでしょうか(笑)
> あぁ、でもこのあとすごいRが待ってるんだろうなぁ~。早速何か汁が垂れそうです(。-_-。)ポッ
うっ…ハードルを上げないで下さいまし~~っ (。>д<)ノ
> 変態コメントすみません(;´Д`A ``` ここに来ると若干変態度が増します!
まぁ!!やぴさまも!!(笑)
そう言った意見、たまに聞くのです(笑)
私としてはとっても嬉しいです!!!
一緒に弾けましょう!!楽しみましょう!!
変態バンザイ!!(○≧ω≦)ノゎぁぃゎぁぃヽ(≧ω≦●)
> 桔梗さま、PC直ってよかったですね。やっぱ、バックアップはちゃんと取った方がいいですね。一応、二か所に保存するようにはしてるんですけど、油断すると危ないですね。
はい!!良かったです!
ありがとうございます(〃∇〃)
そうですね~突然ってのが怖いんですよね(´Д`A;)
でもやぴさま二か所保存、偉い!!
私も怠惰にならないように常にを心がけます'`ィ (゚д゚)/
コメントどうもありがとうございました
でも使えてよかったねっ
数日前の状態に復元・・・ 怖いね;
久々にバックアップ取りました;
良かった・・・
誤解はまだ解けてないけど、その機会は来たよね!!
安心だよ・・・・
シャワーあがりの夜、エロいよ・・・←脳内で映像化しすぎ;
カンザシがないだけで美月ちゃんがいなくなったわけまでたどり着くなんて!やっぱ、野生動物は違うね~(≧▼≦)
ニュービーズの世話なんか焼いてるからだよ・・・
貴之さんのいうとおり抱き締められてるだけでも、癒されるときあるよねっ(^-^)
うんうん!
わかる!
って、貴之に甘えてたら、野性児夜登場ですかっ!
やっぱ、匂いで美月の居場所察知するのかっ!
ほんでもって、最近イイ男の貴之さん、頑張るし!
美月ちゃんは夜のところへ戻るのか、それともとりあえず貴之さんと行ってしまうのか・・・明日の更新楽しみにしてます\(^O^)/
でも・・・気になることがひとつ!
夜の凶器は「美月がいない」と気付いて収納されたのか、それともお仕置きにむけてまだ張り切ってるのか(//∀//)
(;゚ロ゚)ハッ そんな場合でなくて(笑)
さすが夜!勘が鋭い☆
どっかの誰かさんとは大違いだ(えw
貴之頑張って威嚇してるw
グルルルって言いながら尻尾巻き気味・・・みたいな?(爆)
さぁ、美月ちゃん!夜の言うことすんなり信じてくれるかな(>_<)
この後のエロを楽しみに(笑)最後の修羅場だー!
もう何も怖くないぞ!!←いったい何にビビってたのか(笑)
ちょっぴりいい人なのか下心なのか判断がつかないタカユキだけど、夜さんに切られない様に(笑)これは笑えないけどさ。あれ?タカユキだっけ?意外に存在感薄いような…
あぁ、でもこのあとすごいRが待ってるんだろうなぁ~。早速何か汁が垂れそうです(。-_-。)ポッ
変態コメントすみません(;´Д`A ``` ここに来ると若干変態度が増します!
桔梗さま、PC直ってよかったですね。やっぱ、バックアップはちゃんと取った方がいいですね。一応、二か所に保存するようにはしてるんですけど、油断すると危ないですね。
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