04/20/2011(Wed)
続・ネクタイの距離 17話
「悪い……学。今回ちょっと用事が出来て、泊まりは無理だが日曜に会う事なら出来ると思う……泊まりはまた今度でいいか?」
学はとても残念そうな顔をしたが、文句を言う訳でも駄々をこねる訳でもなく、柳の細い指先に指を絡めてきた。
「用事って、何?」
柳はドキッとしたが、ここで本当の事を言っても心配させるだけだと思った。
(これは自分でケリをつけないといけない事だ。学に余計な心配をかけさせてはいけない)
「ちょっと、仕事の付き合いが入っちゃってね……どうしても外せないんだ」
学は「そうか」と低い声で呟きながら柳の指先を自分の指に絡めながら遊んでいた。その感触と動きが妙にいやらしく思えて神経をそこに集中してしまう。
意外とすんなりと事情を受け入れて貰えた柳は少しホッとした半面、罪悪感で胃の中をザラリり撫でられるような気持ちの悪い感触を感じた。
土曜、無意識に久々に会う優を意識して悩んだ服装を鏡で見て溜息が出た。
「何やってんだ、俺は……諦める為に行くってのに」
それでも忘れられないあの日々の気持ちはその高揚感を隠せずにいた。
スッキリとした淡い色のシャツとスラックスだけでも柳のプロポーションの良さが良く分かる。
久々に来た優の家の玄関前で、持参してきたワインをぶら下げて立っていた。
(家の中には先輩がいる)
妙な緊張が心臓をバクバクと激しく鼓動させた。震える指先が無表情なインターホンのボタンをそっと押すと、小さな音でリングの音が聞こえた。
インターホンから「どなたですか?」という問いかけを予想して緊張していた柳だったが、突如開いた玄関に驚いて顔を上げた。
「先生っ。いらっしゃい! もうご飯用意出来てるよっ」
「あ、……あぁ」
中から元気よく飛び出してきたのは亮太だった。少しホッとして階段を上がり、広い玄関口に入った時だった。
「辰美? おぉぉっ久し振りだなぁ、辰美!!」
その低く響く懐かしい声に柳の心臓は一際高鳴った。
顔を上げると昔よりも引き締まって優しく微笑む、あの大好きだった優が立っていた。
(あぁ……先輩だ……)
はしゃぐ亮太に連れられて、綺麗で広いリビングへと招き入れられた。
「ご両親は?」
「あぁ、とうとうアメリカのロングアイランドの方で家を買ってね。殆どそっちに行ったっきりなんだよ。この間少し戻って来たと思ったらまた直ぐにトンボ帰りだ」
「そ、そうなんですか」
緊張で上手く優の顔を見られない柳は手土産を亮太に渡し、取り敢えずは乾杯をしてアルコールを口に含んだ。
改めてテーブルの上の料理を見渡すと、あまり日本では馴染みのないものばかりが並べられていた。
不思議そうに眺める柳に向かって、優が口を開いた。
「あ、これメキシコ料理。俺が作ったんだけど、食べてみてくれよ」
「あっ、はいっ」
肉料理においてのフルーツによる味付けは斬新でとても美味しかった。気に入った柳は緊張を忘れて夢中で食べていた。
「良かった、辰美に喜んで貰えて」
そう言って優ににっこりと笑顔を向けられた柳は気恥ずかしくなって食事のペースを落とした。
「ほら、先生、明日休みなんだしどんどんやって!」
亮太がワインをどんどん注いでくる。
「いっ、いや、もう結構だよっ。明日は用事があるし、終電までにはお暇しないとっ」
「何だ。せっかくだし泊まっていけばいいじゃないか」
柳が優の言葉に「え?」と驚いている間に亮太がワインを沢山注いでしまっていた。
取り敢えず注がれた分は飲んでいた柳だったが、緊張で思ったよりも飲んでいた事に自分自身も気付いていなかった。
トイレに立ち上がった時に、クラリとバランスを崩した。
「あ……れ…。目がまわ……」
「おい、大丈夫か。ちょっとそこで休め」
優が柳の身体を軽々と持ち上げソファに寝かせると、亮太が急に明日早いからと言って部屋に
引っ込んだ。
柳は、頭はハッキリとしているのに身体がふらついて言う事を聞かない状態だった。
正直、亮太が妙な気を使った事も分かっていた。
言いたい事を言うなら今しかない。
「先輩……俺……」
「辰美……昔より、綺麗になってて正直、結構ドキドキしてた」
「え?」
優の引き締まった顔がソファに寝る柳の目線と同じ高さになった。
そして触れたくて触れたくて夢にまで見た優の大きな手は、柳のサラリとした髪の中に入って来た。
(なに……?)
「せんぱ……」
そして柳の唇は力強く塞がれた。
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学はとても残念そうな顔をしたが、文句を言う訳でも駄々をこねる訳でもなく、柳の細い指先に指を絡めてきた。
「用事って、何?」
柳はドキッとしたが、ここで本当の事を言っても心配させるだけだと思った。
(これは自分でケリをつけないといけない事だ。学に余計な心配をかけさせてはいけない)
「ちょっと、仕事の付き合いが入っちゃってね……どうしても外せないんだ」
学は「そうか」と低い声で呟きながら柳の指先を自分の指に絡めながら遊んでいた。その感触と動きが妙にいやらしく思えて神経をそこに集中してしまう。
意外とすんなりと事情を受け入れて貰えた柳は少しホッとした半面、罪悪感で胃の中をザラリり撫でられるような気持ちの悪い感触を感じた。
土曜、無意識に久々に会う優を意識して悩んだ服装を鏡で見て溜息が出た。
「何やってんだ、俺は……諦める為に行くってのに」
それでも忘れられないあの日々の気持ちはその高揚感を隠せずにいた。
スッキリとした淡い色のシャツとスラックスだけでも柳のプロポーションの良さが良く分かる。
久々に来た優の家の玄関前で、持参してきたワインをぶら下げて立っていた。
(家の中には先輩がいる)
妙な緊張が心臓をバクバクと激しく鼓動させた。震える指先が無表情なインターホンのボタンをそっと押すと、小さな音でリングの音が聞こえた。
インターホンから「どなたですか?」という問いかけを予想して緊張していた柳だったが、突如開いた玄関に驚いて顔を上げた。
「先生っ。いらっしゃい! もうご飯用意出来てるよっ」
「あ、……あぁ」
中から元気よく飛び出してきたのは亮太だった。少しホッとして階段を上がり、広い玄関口に入った時だった。
「辰美? おぉぉっ久し振りだなぁ、辰美!!」
その低く響く懐かしい声に柳の心臓は一際高鳴った。
顔を上げると昔よりも引き締まって優しく微笑む、あの大好きだった優が立っていた。
(あぁ……先輩だ……)
はしゃぐ亮太に連れられて、綺麗で広いリビングへと招き入れられた。
「ご両親は?」
「あぁ、とうとうアメリカのロングアイランドの方で家を買ってね。殆どそっちに行ったっきりなんだよ。この間少し戻って来たと思ったらまた直ぐにトンボ帰りだ」
「そ、そうなんですか」
緊張で上手く優の顔を見られない柳は手土産を亮太に渡し、取り敢えずは乾杯をしてアルコールを口に含んだ。
改めてテーブルの上の料理を見渡すと、あまり日本では馴染みのないものばかりが並べられていた。
不思議そうに眺める柳に向かって、優が口を開いた。
「あ、これメキシコ料理。俺が作ったんだけど、食べてみてくれよ」
「あっ、はいっ」
肉料理においてのフルーツによる味付けは斬新でとても美味しかった。気に入った柳は緊張を忘れて夢中で食べていた。
「良かった、辰美に喜んで貰えて」
そう言って優ににっこりと笑顔を向けられた柳は気恥ずかしくなって食事のペースを落とした。
「ほら、先生、明日休みなんだしどんどんやって!」
亮太がワインをどんどん注いでくる。
「いっ、いや、もう結構だよっ。明日は用事があるし、終電までにはお暇しないとっ」
「何だ。せっかくだし泊まっていけばいいじゃないか」
柳が優の言葉に「え?」と驚いている間に亮太がワインを沢山注いでしまっていた。
取り敢えず注がれた分は飲んでいた柳だったが、緊張で思ったよりも飲んでいた事に自分自身も気付いていなかった。
トイレに立ち上がった時に、クラリとバランスを崩した。
「あ……れ…。目がまわ……」
「おい、大丈夫か。ちょっとそこで休め」
優が柳の身体を軽々と持ち上げソファに寝かせると、亮太が急に明日早いからと言って部屋に
引っ込んだ。
柳は、頭はハッキリとしているのに身体がふらついて言う事を聞かない状態だった。
正直、亮太が妙な気を使った事も分かっていた。
言いたい事を言うなら今しかない。
「先輩……俺……」
「辰美……昔より、綺麗になってて正直、結構ドキドキしてた」
「え?」
優の引き締まった顔がソファに寝る柳の目線と同じ高さになった。
そして触れたくて触れたくて夢にまで見た優の大きな手は、柳のサラリとした髪の中に入って来た。
(なに……?)
「せんぱ……」
そして柳の唇は力強く塞がれた。
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コメント
> 相変わらず桔梗たんの脳内構想にまったく追いつけず、いつも振り回されまくりな自分;
私もビックリです(汗)
振り回されるだなんて、それはこちらのセリフです~(>ω<)!
でもちょっと意外性を感じて頂けたなら嬉しいですv
> ああ、エロい・・・・
> だめなんだ、年上と、大きいヒトと、駄目だと思い切ってた相手からの突然の告白無しの行為・・・・
> ドツボデスッ
((((((ノ゚⊿゚)ノヌオォォォ
WLさんのツボを押せたようでかなり嬉しいです!!
なるほど…WLさんはそういうのに弱い…(メモメモ) ←
確かに脈なしの相手からのそういうアプローチは悶えますよね!
今回は恋人がいる中での出来ごと……。
どうなる事やらです(>ω<)
コメントどうもありがとうございました
> 学ちんは師匠のこと信じてるのに・・・(涙)
学に心配かけさせない為の嘘が仇となったか…。
いかなる理由だとしても、やっぱり嘘を疲れたら傷ついてしまうと
思うんですが…ハラハラです(>ω<)
> 師匠のウソに気付かず、指絡める学ちん(//∀//)
> 指先って意外と感じる(//∀//)エヘッエヘッ
> ちょっと待て!
> エヘエヘしてる場合じゃな~~~~いっ!!
指先、性感帯ですよね(〃∇〃)
あ、ちこさんが物凄い勢いでエヘエヘしていらっしゃる(笑)
そしてノリツッコミ(笑)
この流れですb
> なんか、仕組まれてないかい!フェロモン兄弟に!!
> ワイン飲む→バクバク食う→照れる→ワイン飲む、ですっかり酔っらっしゃる柳師匠~(≧▼≦)
> ほろ酔い通りすぎたあ~しかも、フェロモン兄に唇を奪われて(//∀//)エヘエヘ
何か仕組まれている感が否めません(´Д`A;)
怖い……ですがちこさんが喜んでいるのが微笑ましい
エヘエヘです(笑)
> まさかっ!
> 3〇ーに持ち込む気ではo(^∇^o)(o^∇^)oフェロモン兄恐るべし・・・
> 学ちんが可哀想じゃないか~せめて、混ぜてやれ、フェロモン。
ちこさんの期待やいかに(笑)
> あっ、やぴさま優等生のご回答ありがとうございましたm(__)mペコリ←桔梗さま、失礼しました。
やぴさまありがとうございましたv
いえいえm(_ _)m
コメントどうもありがとうございました
> 学くんへの嘘がこの後どう尾を引くのか…。
> 桔梗ちんだからなぁ~、このまま簡単には終わらないよな~なんて思ってたら! ←
> 同じ回で爆弾投下キタ━ヽ(゚∀゚)ノ━!!
爆弾投下(笑)
しちゃいましたね~^^;
全くどうなっているのか。この兄弟の真意がまだ掴めずです;
って、私だと何かしかけてくるという予想はされていた模様(笑)
> ってか亮太、急にイイ子になってるし(爆)
> さぁさぁ、桔梗ちんマジックが始まるぞ~(¬w¬*)ウププ
はっ!∑(°ロ°*)
私は魔法使い……? (違
亮太、一体何を考えているのやら。ちょっと怖いです;
コメントどうもありがとうございました
> だいたい声が出た時は、セリフとかぶってる(笑)
> また不意打ちキタ━━━゚.+:。ヽ(*゚ロ゚)人(゚ロ゚*)ノ゚.+:。━━━━!
> もぉ、毎回驚かされるわぁ。
驚かせてしまって申し訳ないです^^;
って、私もビックリです~(´Д`A;)
まさか兄貴がそんな……。
一体なんだというでしょうか(´Д`)
> ってか、そんなにワイン飲んじゃだめだよ先生ヽ(`Д´)ノおばかさん!
> 亮ちゃんの目的がなんだかよく分かんなくなったし。邪魔するために兄とくっ付ける気か!?
> まったく目の離せない午前零時だわ。
快楽に弱いものは人前でお酒を飲むべからず。
亮太は一体何がしたいのか……。
あ、今晩零時は更新出来ずスミマセンです(-ω-;)
今日中には出来たらいいのですが(´Д`)
> あっ、質問のご回答をします。←ここで!?
> 最中ではございませんでした。が、いちゃらこしてる時だったかも!?おそらく付き合いたてくらいの初々しいとき…それなのに(;-з-) ~♪
> 失礼しました~<(_ _)>
驚!!
それは本当に気まずいですね(笑)
あ、でもいちゃこらの雰囲気で誤魔化せる??
回答をありがとうございました(〃∇〃)
コメントどうもありがとうございました
唇ですが;;
酔った時にされたキスは浮気に入るかどうか…。
うーん、入るのではないでしょうかね。
やっぱ好きな人がそれやってたら嫌ですし(>ω<)
(注:自分の事は高い棚の上へと上げています)
Yさまは何でもOKなんですね(笑)
さすがです(笑)
って本気も3人でもですか!!
最早超越(笑)
コメントどうもありがとうございました
相変わらず桔梗たんの脳内構想にまったく追いつけず、いつも振り回されまくりな自分;
ああ、エロい・・・・
だめなんだ、年上と、大きいヒトと、駄目だと思い切ってた相手からの突然の告白無しの行為・・・・
ドツボデスッ
学ちんは師匠のこと信じてるのに・・・(涙)
師匠のウソに気付かず、指絡める学ちん(//∀//)
指先って意外と感じる(//∀//)エヘッエヘッ
ちょっと待て!
エヘエヘしてる場合じゃな~~~~いっ!!
なんか、仕組まれてないかい!フェロモン兄弟に!!
ワイン飲む→バクバク食う→照れる→ワイン飲む、ですっかり酔っらっしゃる柳師匠~(≧▼≦)
ほろ酔い通りすぎたあ~しかも、フェロモン兄に唇を奪われて(//∀//)エヘエヘ
まさかっ!
3〇ーに持ち込む気ではo(^∇^o)(o^∇^)oフェロモン兄恐るべし・・・
学ちんが可哀想じゃないか~せめて、混ぜてやれ、フェロモン。
あっ、やぴさま優等生のご回答ありがとうございましたm(__)mペコリ←桔梗さま、失礼しました。
学くんへの嘘がこの後どう尾を引くのか…。
桔梗ちんだからなぁ~、このまま簡単には終わらないよな~なんて思ってたら! ←
同じ回で爆弾投下キタ━ヽ(゚∀゚)ノ━!!
ってか亮太、急にイイ子になってるし(爆)
さぁさぁ、桔梗ちんマジックが始まるぞ~(¬w¬*)ウププ
だいたい声が出た時は、セリフとかぶってる(笑)
また不意打ちキタ━━━゚.+:。ヽ(*゚ロ゚)人(゚ロ゚*)ノ゚.+:。━━━━!
もぉ、毎回驚かされるわぁ。
ってか、そんなにワイン飲んじゃだめだよ先生ヽ(`Д´)ノおばかさん!
亮ちゃんの目的がなんだかよく分かんなくなったし。邪魔するために兄とくっ付ける気か!?
まったく目の離せない午前零時だわ。
あっ、質問のご回答をします。←ここで!?
最中ではございませんでした。が、いちゃらこしてる時だったかも!?おそらく付き合いたてくらいの初々しいとき…それなのに(;-з-) ~♪
失礼しました~<(_ _)>
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