04/21/2011(Thu)
続・ネクタイの距離 18話
「んっ……ちょっ……何でっ」
柳は思わず抵抗して力強い優の唇から逃れる。
「……やっぱり、想像してたよりも柔らかくて気持ちいい」
「はい? 先輩、一体何考えてっ」
優はジッと熱の籠った瞳で見つめてくる。
「辰美……俺に言いたかった事、あるだろう?」
「え……」
柳はドキドキと胸の音を抑えるように両手を胸の辺りで抑えた。
(先輩……今……俺にキスした……何で? 言いたい事? 何だっけ?)
「俺は正直、お前を女のように見た事はなかった」
柳はその言葉にチクリとした痛みを感じた。過去に失恋をしたような、不思議な感覚だった。
だが、これで前に進めると安堵した気持ちも同時に湧く。
「でも、変に可愛いとは思っていたんだ。ずっと……それがどういう事なのかも分からずに」
(先輩、何言ってるんだ……?)
「亮太から……聞いたよ」
ドクンッと柳の鼓動は重苦しく鳴った。
「え……何を……」
柳の身体から冷たい熱が駆け巡る。聞きたくない嫌な予感が溢れて来て苦しい。質問なんてしてないでサッサとこの場から逃げてしまいたいのに身体が動かない。
「全部だよ……お前が、俺に隠れて亮太としてきた事と……そしてその理由」
柳はガバッと上半身を起こし、顔を逸らして俯いた。顔がマグマにでもなったように熱くてどうにかなってしまいそうだった。
(何故だッ……何故亮太は全てをわざわざ喋ったりッ……)
柳は膝を抱えて頭の中で亮太を責め、この状況を打破する為の言い訳を考えるがパニックに陥ってしまって言葉が見当たらない。
そんな柳の座るソファがギシリと沈み、優が隣に座って来た事を悟った。
「俺は……嫉妬したよ……辰美。俺を求めているのに、亮太とそんな関係になって……で、今は俺に似ている奴と付き合っているそうじゃないか」
学の事を出されて柳は我に返った。
「あ、……いえ、あの……先輩の事、好き……でした。でも今はちゃんと学の事を、あ、今付き合っている人なんですが、その子を好きなんです」
優は大きな手で柳の頭を捉え、ゆっくりと顔を近づけてきた。
「だっ、ダメですっ……俺には今付き合っている人がっ」
「……静かに。……動かないで……辰美。好きだよ」
優の声は優しく柳の脳に麻酔をかけた。抵抗する力ない腕を掴まれる。身体が上手く動かない。
「……あっ」
優から言われた愛の言葉は想像以上に甘く心地よかった。
罪悪感はあるものの、二度目のキスはそれ以上抵抗出来なかった。
さっきよりも長く、そして少し入れられた優の舌を驚きながらも受け入れてしまった。
顔を離した時に間近で見た優は、学よりも少し日焼けしていて、大人っぽく、憧れていたあの時よりも色気も増していた。
「お前、そいつの事、俺の代わりにしているんだよ。別れろよ」
(え?)
「いや、そんな事はないですっ……出来ませんっ」
「なら、何故キス出来た?」
言い返す言葉が見当たらなかった。柳自身も何故キスしたのか分からず、困惑していたからだ。
「答えは俺の事が好きだからだよ、辰美」
「ちがっ……今は学の事がっ」
優はグイっと急に柳の身体を抱き上げると、二階へと移動し出した。
「ちょっ……先輩ッ! 降ろして下さい! 俺、もう帰りますッ」
暴れる柳を無視した優は、柳の身体を乱暴に自分部屋のベッドに投げた。
「アッ……痛」
柳の身体がベッドのスプリングに跳ねて壁に身体がぶつかった。
もう一度声をかけようと見上げた優の顔を見て、柳の呼吸はヒュっと止まった。
(先輩……?)
優の表情は今まで見た事のないような冷たく、口応えなど一切を許さないような支配者の顔をしていた。
柳は不吉な予感と焦りで乾いた口内で少なくなっていく生唾を飲み込んだ。
「や……やめて下さい……先輩……どうしたんですか……せ、先輩っ」
セミダブルサイズのベッドの上で、柳は少しずつ端っこへ逃げた。
目の前で優がワイシャツのボタンを丁寧に外していくのが見える。これから何が起こるのかを考えるよりもどう逃げようか脳内を回転させる。
柳から一切目線をずらさない優を見て、柳は思い切ってベッドから飛び下りた。だが、その瞬間いとも簡単に髪を掴まれ、その痛みでそれ以上前へは進めなくなった。
「痛ッ」
そのまま再びベッドへ突き飛ばされ、優が上から圧し掛かって来た。
「お前、明日はその生徒と会うんだろ」
「……っどけッ」
柳は初めて優に対して乱暴な言葉は吐いた。途端に頬に物凄い衝撃が走って顔が右へ向いた。
(な……に……)
ジンジンと燃えるように熱くなっていく頬を感じて、柳は初めて自分が殴られた事を悟った。途端に恐怖心で体中がカタカタと震えてくる。
「大好きな先輩に向かってそんな口を聞いてはダメだろう。明日、そいつと会いたくても会えない身体にしてやるよ」
「い……や……」
ニヤついた優の笑みは、それまで見えていた暖かい笑顔とはまるで違う冷たく恐ろしい笑みにしか見えなかった。
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柳は思わず抵抗して力強い優の唇から逃れる。
「……やっぱり、想像してたよりも柔らかくて気持ちいい」
「はい? 先輩、一体何考えてっ」
優はジッと熱の籠った瞳で見つめてくる。
「辰美……俺に言いたかった事、あるだろう?」
「え……」
柳はドキドキと胸の音を抑えるように両手を胸の辺りで抑えた。
(先輩……今……俺にキスした……何で? 言いたい事? 何だっけ?)
「俺は正直、お前を女のように見た事はなかった」
柳はその言葉にチクリとした痛みを感じた。過去に失恋をしたような、不思議な感覚だった。
だが、これで前に進めると安堵した気持ちも同時に湧く。
「でも、変に可愛いとは思っていたんだ。ずっと……それがどういう事なのかも分からずに」
(先輩、何言ってるんだ……?)
「亮太から……聞いたよ」
ドクンッと柳の鼓動は重苦しく鳴った。
「え……何を……」
柳の身体から冷たい熱が駆け巡る。聞きたくない嫌な予感が溢れて来て苦しい。質問なんてしてないでサッサとこの場から逃げてしまいたいのに身体が動かない。
「全部だよ……お前が、俺に隠れて亮太としてきた事と……そしてその理由」
柳はガバッと上半身を起こし、顔を逸らして俯いた。顔がマグマにでもなったように熱くてどうにかなってしまいそうだった。
(何故だッ……何故亮太は全てをわざわざ喋ったりッ……)
柳は膝を抱えて頭の中で亮太を責め、この状況を打破する為の言い訳を考えるがパニックに陥ってしまって言葉が見当たらない。
そんな柳の座るソファがギシリと沈み、優が隣に座って来た事を悟った。
「俺は……嫉妬したよ……辰美。俺を求めているのに、亮太とそんな関係になって……で、今は俺に似ている奴と付き合っているそうじゃないか」
学の事を出されて柳は我に返った。
「あ、……いえ、あの……先輩の事、好き……でした。でも今はちゃんと学の事を、あ、今付き合っている人なんですが、その子を好きなんです」
優は大きな手で柳の頭を捉え、ゆっくりと顔を近づけてきた。
「だっ、ダメですっ……俺には今付き合っている人がっ」
「……静かに。……動かないで……辰美。好きだよ」
優の声は優しく柳の脳に麻酔をかけた。抵抗する力ない腕を掴まれる。身体が上手く動かない。
「……あっ」
優から言われた愛の言葉は想像以上に甘く心地よかった。
罪悪感はあるものの、二度目のキスはそれ以上抵抗出来なかった。
さっきよりも長く、そして少し入れられた優の舌を驚きながらも受け入れてしまった。
顔を離した時に間近で見た優は、学よりも少し日焼けしていて、大人っぽく、憧れていたあの時よりも色気も増していた。
「お前、そいつの事、俺の代わりにしているんだよ。別れろよ」
(え?)
「いや、そんな事はないですっ……出来ませんっ」
「なら、何故キス出来た?」
言い返す言葉が見当たらなかった。柳自身も何故キスしたのか分からず、困惑していたからだ。
「答えは俺の事が好きだからだよ、辰美」
「ちがっ……今は学の事がっ」
優はグイっと急に柳の身体を抱き上げると、二階へと移動し出した。
「ちょっ……先輩ッ! 降ろして下さい! 俺、もう帰りますッ」
暴れる柳を無視した優は、柳の身体を乱暴に自分部屋のベッドに投げた。
「アッ……痛」
柳の身体がベッドのスプリングに跳ねて壁に身体がぶつかった。
もう一度声をかけようと見上げた優の顔を見て、柳の呼吸はヒュっと止まった。
(先輩……?)
優の表情は今まで見た事のないような冷たく、口応えなど一切を許さないような支配者の顔をしていた。
柳は不吉な予感と焦りで乾いた口内で少なくなっていく生唾を飲み込んだ。
「や……やめて下さい……先輩……どうしたんですか……せ、先輩っ」
セミダブルサイズのベッドの上で、柳は少しずつ端っこへ逃げた。
目の前で優がワイシャツのボタンを丁寧に外していくのが見える。これから何が起こるのかを考えるよりもどう逃げようか脳内を回転させる。
柳から一切目線をずらさない優を見て、柳は思い切ってベッドから飛び下りた。だが、その瞬間いとも簡単に髪を掴まれ、その痛みでそれ以上前へは進めなくなった。
「痛ッ」
そのまま再びベッドへ突き飛ばされ、優が上から圧し掛かって来た。
「お前、明日はその生徒と会うんだろ」
「……っどけッ」
柳は初めて優に対して乱暴な言葉は吐いた。途端に頬に物凄い衝撃が走って顔が右へ向いた。
(な……に……)
ジンジンと燃えるように熱くなっていく頬を感じて、柳は初めて自分が殴られた事を悟った。途端に恐怖心で体中がカタカタと震えてくる。
「大好きな先輩に向かってそんな口を聞いてはダメだろう。明日、そいつと会いたくても会えない身体にしてやるよ」
「い……や……」
ニヤついた優の笑みは、それまで見えていた暖かい笑顔とはまるで違う冷たく恐ろしい笑みにしか見えなかった。
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コメント
本当、なんていう展開でしょうか(´Д`A;)
優しいと思っていた先輩の豹変ぶりに驚きと慄きが湧きます(怖)
亮太、最低ですか!確かに…。
彼も自分でどうにかならない分、兄貴を利用してどうしようもないですね…。
学大好きなHさまにとって辛い展開と仰って頂けて、
私もここは辛い動向に見守る事しか出来ませんで歯痒いです(´;ω;`)
私も二人が幸せになれるように祈ります(涙)
応援ありがとうございます!
拍手秘コメントどうもありがとうございました
返事、遅くなりまして申し訳ありません!
だ、大丈夫でしょうか(´Д`A;)
でも私もグルって(◎ω◎) おります。
> てんてー、以外に学をちゃんと思ってる!
> これは根性で逃げるか!
> でも相手は桔梗たんだぞ!(ちがった、先輩だった)
> これはやられるか寸前まで行くか!
はい。意外と学の事をちゃんと想っていたようで安心した
ところでしたのに…。
根性でどうにか逃げられればいいのですが(>ω<)
相手は私……(えw
いえ、あの先輩野郎です。
> と思いながら読み進めるや、やはり自室への囚われの身に・・・
> うん、こっちか!
>
> と納得して読み進めるや、
>
> なんと、可愛いてんてーをブツし、髪の毛しっぱるし!
> 容赦ない鬼畜さが、私の学ちんへの愛を崩壊していく~~~ッ
> というわけで、現在はその冷徹な攻めに涎ってる中です;
偉い事をしてくれています、先輩(怒)
暴力反対です!!
そしてWLさんの学への愛が崩壊していくのを
食いとめることが出来るかどうか(´Д`A;)
コメントどうもありがとうございました
はい!頑張りますv
コメントどうもありがとうございました
> 柳センセの大好きなままの先輩モードwで落として、快感に弱い先生はダメと思いつつフラフラ~…を予想してたのに! ←
返事遅くなってごめんなさい(>ω<)!
あ、予想と違う感じになりましたか^^;
まさかの豹変でしたね(汗)
私もビックリです;
> またしても桔梗ちんにやられた~~(o_ __)o)) バタッ
> さすがシリアスエロの女王☆(えw
Σいつの間にそんな異名が!?
あっ大変澪ちんが倒れたわっ
> 亮太くんはこれで良いのか!?
> いくら学くんと別れさせたいからといったって、こんな酷い抱かれ方をされそうになってるのにアワワ ヽ(□ ̄ヽ))...((ノ ̄□)ノ アワワ
亮太、これでいいのか…。
何してるんだ、奴は(-_-)はぁ~
> ほのぼのから始まったとは思えないほどの展開になってきたw
> そして今後どうなっていくのかサッパリ読めんゥ──σ(・´ω・`;)──ン
本当に(笑)
ほのぼのからの展開がっヽ(゚Д゚;)ノ!!
普通に連載です;
コメントどうもありがとうございました
てんてー、以外に学をちゃんと思ってる!
これは根性で逃げるか!
でも相手は桔梗たんだぞ!(ちがった、先輩だった)
これはやられるか寸前まで行くか!
と思いながら読み進めるや、やはり自室への囚われの身に・・・
うん、こっちか!
と納得して読み進めるや、
なんと、可愛いてんてーをブツし、髪の毛しっぱるし!
容赦ない鬼畜さが、私の学ちんへの愛を崩壊していく~~~ッ
というわけで、現在はその冷徹な攻めに涎ってる中です;
柳センセの大好きなままの先輩モードwで落として、快感に弱い先生はダメと思いつつフラフラ~…を予想してたのに! ←
またしても桔梗ちんにやられた~~(o_ __)o)) バタッ
さすがシリアスエロの女王☆(えw
亮太くんはこれで良いのか!?
いくら学くんと別れさせたいからといったって、こんな酷い抱かれ方をされそうになってるのにアワワ ヽ(□ ̄ヽ))...((ノ ̄□)ノ アワワ
ほのぼのから始まったとは思えないほどの展開になってきたw
そして今後どうなっていくのかサッパリ読めんゥ──σ(・´ω・`;)──ン
> 実は両想い!?へっ?
何気に過去の彼からしたらそうだったようですが、
現在は先生、ちゃんと学が好きだと主張しているので
両思いではない……と信じております(>ω<)
> しかも、独占欲丸出しのS様だし!!ウキャ(//∀//)エヘッエヘッ
> なんでそうなるのっ!!な、展開ありがとうございますヽ(´▽`)/
> 殴られてるし、学ちんに会えない身体にされるらしちし(//∀//)
> どんなになるんだ~~~~っ、やっぱり赤い斑点が魅力のダルメシアン柄?
> S様、いいよね~柳師匠、快楽に弱いよね~すぐ、落ちるよ~(笑)
いや~……そういったエロ展開になればよいのですが(((=ω=)))ブルブル
ちょっとシリアス入ります(>ω<)すみません;
って、ダルメシアンって(笑)
発想豊かです(笑)
コメントどうもありがとうございました
> んん?き、鬼畜ですか( ゚д゚)??
> しぇんしぇい犯されちゃうの?一瞬キスにうっとりと流されちゃうからダメなんだよ~!!
こんばんは。
鬼畜っぽかったですか??
結構シリアスな暴力でございます(´Д`A;)
確かに油断した先生も悪いのですが、優の豹変ぶりに恐怖しております(汗)
> 一度否定しても、さっき許したじゃん!とか言われちゃうと、反論できなくなっちゃうし……
> でもね、でもね。平手で叩いて、無理やりってシチュ、嫌いじゃないの(。-`ω´-)うむむ。
> でも、誰か助けて~!学ちんは?無理?
そうですよね(>ω<)
それには先生も責任があります;
あらっやぴさま手広いっ!
そんなシチュもお好きなのですね(笑)
さて……学は……知る由もないです…orz
コメントどうもありがとうございました
実は両想い!?へっ?
しかも、独占欲丸出しのS様だし!!ウキャ(//∀//)エヘッエヘッ
なんでそうなるのっ!!な、展開ありがとうございますヽ(´▽`)/
殴られてるし、学ちんに会えない身体にされるらしちし(//∀//)
どんなになるんだ~~~~っ、やっぱり赤い斑点が魅力のダルメシアン柄?
S様、いいよね~柳師匠、快楽に弱いよね~すぐ、落ちるよ~(笑)
んん?き、鬼畜ですか( ゚д゚)??
しぇんしぇい犯されちゃうの?一瞬キスにうっとりと流されちゃうからダメなんだよ~!!
一度否定しても、さっき許したじゃん!とか言われちゃうと、反論できなくなっちゃうし……
でもね、でもね。平手で叩いて、無理やりってシチュ、嫌いじゃないの(。-`ω´-)うむむ。
でも、誰か助けて~!学ちんは?無理?
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