05/06/2011(Fri)
続・ネクタイの距離 21話
一週間程だってから教室へ入って来た柳を見て学の胸は絞られるように締め付けられた。
少しやつれたように感じるのは気のせいだろうか。表情はいつもと変わらないのに柳を取り巻く空気が冷たく歪んで見える。まるで蜃気楼のようだ。そこにいるのに幻のようなそんな距離を感じる。
学は休み時間になると勢いよく席を立って教室を足早に出ていく柳を追った。
「先生ッ……ちょっ…先生ッ待てってッ」
掴んだ柳の腕は久々の恋人の感触だった。
「何?」
「何じゃねェよ! 何で連絡取れなかったんだよ!? 俺すげェ心配してたんだぞ!?」
「ハァ……だから、風邪引いてたからしんどくて携帯も切ってたんだよ」
面倒くさそうに話す柳の顔に学の胸はズキッと痛んだ。
「しんどいならさ……俺を呼んでくれれば良かったじゃん。恋人…なんだし……」
「……分かった分かった。なら今度から連絡するから。じゃ、ちょっと次の準備があるから」
言いたい事は山ほどあった学だったが、とりつく島もないような柳の態度に呆気に取られたまま見送るしかなかった。
一週間前と明らかに態度の違う柳はあからさまに学を避けているように見えた。帰りも学の部活が終わるのを待たずに帰宅した柳に苛立ちが募る。せめて柳の家ぐらい知っていたなら無理矢理にでも押しかけてやるところだ。
塾の教室へ入ると不貞腐れた態度で哲平の隣に座った。
「なぁ……俺、何したよ?」
「あ?」
学が哲平に休み明けに急に態度の変わった柳の事を話すと、哲平が少し考えるように斜め下を見つめた。
「お前とヤりたくなかったか……でもそれだけで一週間も休まないよな……他に好きな奴でも出来たか……」
その言葉に亮太の顔と『亮太の兄貴』という言葉が浮かんだ。
「だってよ、学。おかしいだろ? 風邪引いたってだけでそんな連絡しなくなって、そんな態度変わるなんてよ」
「……そう……だよな」
心地よいBGMのような塾講師のか細い数式を唱える声を無視して、二人はずっと話し込んだ。
いつの間にか終わってしまった塾の時間の後、いつもよりもダラダラと喋りながら駅へ向かっていた。
小腹が空いたからと哲平につられて近くのコンビニへ行った帰りだった。狭い路地を歩いていると、ふと大きな白い車が路地に止まったのが見えた。アパート前に止まったその車がハザードランプを点けたので学は何となく見ていた。
路地を殆ど塞ぐような車のドアがカチャリと開いて中に電気が点いた。薄暗くなってきた為に車内で点いた小さな明かりで中がよく見えた。車内にはあまりにも見知った顔が見えて学の足が止まった。
(先生……?)
柳は丁度優に呼び出されて送って来て貰った帰りだった。
そんな事とはつゆ知らず、学の息は浅く早くなっていく。
遠目から見た柳の綺麗な横顔は怯えたように強張っているように見えた。隣にいる男は学にとっては見た事のない男だ。ただ、どこかで見たような顔で、その雰囲気はとても自信にあふれているように感じた。
柳がドアを開けて出ようとすると男が柳の細い腕を引いた。そしていつも学が口付けする場所はその男が代わりに塞いだ。
「オイッ…学ッ」
学は哲平が叫んだ時には既にその車に向かって走っていた。
頭に血が登って身体中が熱い。
車の中で学に気付いた柳の顔から血の気が引いた。だがそんな事は今の学には分からない。
学は少しだけ開いたドアを乱暴に開けると中から柳を引きずり出した。
「何やってんだよッ、先生ッ」
今にも貧血を起こしそうな柳の白い顔は俯いて言葉を失っていた。
ガチャッと高級感のある車の重いドアの開く音が聞こえた。
「辰美、そいつか?」
(何だコイツ)
既に学を知っているような口振りの優を見て胃の中で大きなヘビがズルリと動くような気分の悪さを感じた。
<<前へ 次へ>>
更新をしていないにも関わらず今日沢山の拍手をして下さった方
ありがとうございました!!200近くも…(ノД`)・゜・
GWの合間に面接が結構入っているのと親が帰国した事で多忙になってしまって申し訳ありません;
優とはち合わせた学…どうなるか…(>ω<)
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お礼画像あり☆6種ランダム
少しやつれたように感じるのは気のせいだろうか。表情はいつもと変わらないのに柳を取り巻く空気が冷たく歪んで見える。まるで蜃気楼のようだ。そこにいるのに幻のようなそんな距離を感じる。
学は休み時間になると勢いよく席を立って教室を足早に出ていく柳を追った。
「先生ッ……ちょっ…先生ッ待てってッ」
掴んだ柳の腕は久々の恋人の感触だった。
「何?」
「何じゃねェよ! 何で連絡取れなかったんだよ!? 俺すげェ心配してたんだぞ!?」
「ハァ……だから、風邪引いてたからしんどくて携帯も切ってたんだよ」
面倒くさそうに話す柳の顔に学の胸はズキッと痛んだ。
「しんどいならさ……俺を呼んでくれれば良かったじゃん。恋人…なんだし……」
「……分かった分かった。なら今度から連絡するから。じゃ、ちょっと次の準備があるから」
言いたい事は山ほどあった学だったが、とりつく島もないような柳の態度に呆気に取られたまま見送るしかなかった。
一週間前と明らかに態度の違う柳はあからさまに学を避けているように見えた。帰りも学の部活が終わるのを待たずに帰宅した柳に苛立ちが募る。せめて柳の家ぐらい知っていたなら無理矢理にでも押しかけてやるところだ。
塾の教室へ入ると不貞腐れた態度で哲平の隣に座った。
「なぁ……俺、何したよ?」
「あ?」
学が哲平に休み明けに急に態度の変わった柳の事を話すと、哲平が少し考えるように斜め下を見つめた。
「お前とヤりたくなかったか……でもそれだけで一週間も休まないよな……他に好きな奴でも出来たか……」
その言葉に亮太の顔と『亮太の兄貴』という言葉が浮かんだ。
「だってよ、学。おかしいだろ? 風邪引いたってだけでそんな連絡しなくなって、そんな態度変わるなんてよ」
「……そう……だよな」
心地よいBGMのような塾講師のか細い数式を唱える声を無視して、二人はずっと話し込んだ。
いつの間にか終わってしまった塾の時間の後、いつもよりもダラダラと喋りながら駅へ向かっていた。
小腹が空いたからと哲平につられて近くのコンビニへ行った帰りだった。狭い路地を歩いていると、ふと大きな白い車が路地に止まったのが見えた。アパート前に止まったその車がハザードランプを点けたので学は何となく見ていた。
路地を殆ど塞ぐような車のドアがカチャリと開いて中に電気が点いた。薄暗くなってきた為に車内で点いた小さな明かりで中がよく見えた。車内にはあまりにも見知った顔が見えて学の足が止まった。
(先生……?)
柳は丁度優に呼び出されて送って来て貰った帰りだった。
そんな事とはつゆ知らず、学の息は浅く早くなっていく。
遠目から見た柳の綺麗な横顔は怯えたように強張っているように見えた。隣にいる男は学にとっては見た事のない男だ。ただ、どこかで見たような顔で、その雰囲気はとても自信にあふれているように感じた。
柳がドアを開けて出ようとすると男が柳の細い腕を引いた。そしていつも学が口付けする場所はその男が代わりに塞いだ。
「オイッ…学ッ」
学は哲平が叫んだ時には既にその車に向かって走っていた。
頭に血が登って身体中が熱い。
車の中で学に気付いた柳の顔から血の気が引いた。だがそんな事は今の学には分からない。
学は少しだけ開いたドアを乱暴に開けると中から柳を引きずり出した。
「何やってんだよッ、先生ッ」
今にも貧血を起こしそうな柳の白い顔は俯いて言葉を失っていた。
ガチャッと高級感のある車の重いドアの開く音が聞こえた。
「辰美、そいつか?」
(何だコイツ)
既に学を知っているような口振りの優を見て胃の中で大きなヘビがズルリと動くような気分の悪さを感じた。
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更新をしていないにも関わらず今日沢山の拍手をして下さった方
ありがとうございました!!200近くも…(ノД`)・゜・
GWの合間に面接が結構入っているのと親が帰国した事で多忙になってしまって申し訳ありません;
優とはち合わせた学…どうなるか…(>ω<)
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コメント
なるほど。円満人生の秘訣……。φ(゚Д゚ )フムフム…
でもそうかもですね^^;
私もこれでもかってくらい間の悪い子なので
どうしようもないんですよね(笑)
Fさまは生き方が不器用なんですか!
私は遠回りの人生です(笑)
(*´▽`)o┏━┓~~且o(´ー`*)♪
取り敢えず……お茶でも(笑)
コメントどうもありがとうございました
PC大丈夫ですか!?
大変な時にありがとうございます(ノД`)・゜・
学…手が早い^^;
そして敵に諌められて悔しがるお子ちゃまです(-ω-;)
> ソッカァ(o-д-o)...柳の姿を見たら 止められなかったんだよねー。
ですね!
いわば浮気現場ですもんね!
走り出すしかないです!!
> でも ほんと ムカツク兄弟だよなぁ~
>
> いっそ 私が 学の代わりに ・・・ε=怒ε=怒ε=( メ`ω´)/ コラァ~テメェ~...byebye☆
Σ(・ω・ノ)ノ!
けいったんさまが乗り込んだ!!
兄弟もひとたまりもありませんね!!
私も加勢しますッ ダッシュ!≡≡≡ヘ(*--)ノ
コメントどうもありがとうございました
> スミマセン;
あはは(≧∀≦)
いえ!私のものの見方いつもおかしいんです(笑)
なのにそれをそのまま文章にするのでこうした
オカルト現象の想像をかき立ててしまうのです;
> にしても学ちんがどんどん好みになってゆく~♪
> てんてーの何かを察知する能力は高いし(BLってそこ鈍いヤツ多くない!?)、怯まず、キスしてた車中から引きずり出して取り戻す!
> その逃げない姿勢に惚れてるゼ~~イ♪♪
ぬぉ~!本当ですか!嬉しいです!
確かに鈍感くんキャラは結構目にしますね☆
それも一種のスパイスなのでしょうかね(〃∇〃)
学の強引な態度がWLさんのM魂を少しでも刺激できたのでしょうか!?
頑張れ学!!WLさんを落とすのだッ(目的が変わったw
コメントどうもありがとうございました
> あ~ん、もうっ、フェロモン兄の狡猾さ(〇>_<)
修羅場です(>ω<)
フェロモン兄のやつ、二重人格野郎ですッ
> 蛇、そう蛇だ~(〇>_<)
> 奄美からハブ取り名人連れて来~い!
スミマセン;吹きました(笑)
ハブ取り名人連れて来いって文がツボで…(涙目)
> あ~ん、まだ弟もいるぞ~、写メ(涙)
> 柳師匠~学ちんに助けてって言えないよね、言っちゃえばいいのに言えないよね(涙)
> 冷たい態度で避けることしか出来ないもんね(涙)
そうでした…まだ弟が爆弾持っているんですよね(>ω<)
先生もそれだけ助けてって叫びたいか…ですよね…。
でも色々知った後の学の態度が変わったらって考えてしまのかもですね、先生。
怖いのでしょうねそう考えると(>ω<)
> 学ちん猛ダッシュで、師匠を車から引きずりだしました!!よし!!取り戻すんだっ(≧▼≦)イェイ
> 哲平!こっそり、タイヤの前に尖ったビスを配置せよ!フェロモン兄の車をパンクさせよ(≧ω≦)ゞ了解
そうだ!哲平よ!ウソップに言ってマキビシ大量に撒かせるのだ!
尖ったビスも忘れるなー!
あれ?ちこさんが了解しちゃってる(笑)
> というわけで、桔梗さまのご不在でちこ、寂しかったよ~~~すりすり(m'□'m)お忙しかったんですね~続きも楽しみにしてます(*^□^*)
(*--)--*)ギュッ
すみませんでした~!でもそう言って頂けて嬉しいです(ノД`)・゜・
万華鏡で久々に毎日連載していましたものね!
そして急にまた不定期に戻りましたものね…orz
申し訳ないです;
続き楽しみにして頂けて嬉しいです!
また明後日あたり更新出来るように頑張りますv
コメントどうもありがとうございました
間合いの悪さって本当にどうしようもないですよね;
でもこういう偶然から物事は良くも悪くも転がる気がします。
見なければ良かった、って事、ありますよね(-ω-;)
Fさまもお心当たりがあるようで^^;
お気遣いどうもありがとうございます!
はい!頑張ります!
あ、この間見せて頂いたもの!あれも物凄く綺麗で感動しました!!
ありがとうございます!!
返信が出来ずこちらでスミマセン;;
また見せて下さいねー♪
コメントどうもありがとうございました
ついに来てしまいました!直接対決……
対決になるのか…ドキドキ…。
そうですね!隠し事、駆け引きなどそういう事が
苦手な学でも先生への愛は誰にも負けないんだっっ
Sさまの応援もある事ですしフェロモン兄貴を撃退出来る事を
祈っております!!
コメントどうもありがとうございました
> あぁ…せんせぇ~。
> そういう態度になっちゃよね。それが精いっぱいなんだよね…
> でも学ちん、先生の態度に単に腹立てるとかじゃなくて、傷ついてるとこも怯えてるとこも気付いてるから、きっといい方向へいくんだよね…桔梗さま…壁|д`)そろり
こんばんは^^
好きな人の態度って直ぐ分かりますよね。
やっぱりジッと見ている分、その違いは明らかで…。
学が救い出してくれるように私も陰から応援しています(>ω<)!
|壁|ョз・。)ガンバッテ…
> 桔梗さま、体重が!?
> ふふ、あたしもとりあえず5キロ落とそうと、今の所思ってるだけです^_^; 体重計が壊れて、今どうなってるのか分からなくて…怖いです。
ええ…。体重…今までに見たことのない数字を叩きだしまして…。
命の危険を感じましたので、従姉妹にダイエットを離脱する事があれば
私の小説を公開しよう!と命をかけました!!
そしたら従姉妹…「!!じゃあ…離脱して」ときたもんだ。
Σ(゚∀゚ノ)ノキャー
やぴさまも体重計と戯れられていなので!?
それはいいですね…いや、新しいのを手に入れないとですねっ
> 追)お忙しいのに、あほなお便りお送りして申し訳ないですr(≧ω≦*)ごめーん!
> 面接頑張ってください!!
とんでもないです!
嬉しいです~(*´∇`*)えへ~v
面接……応募記事に書いてある事と実際の話がかなり違くて
詐欺にあった気分でしたよ…。
なんか、そんなんばっかな気がして気が滅入ります…。
でも挫けず地道に頑張ります(ノ△・。)
ありがとうございます(>ω<)
コメントどうもありがとうございました
> 学くんがすぐ傍にいるのに言えない辛さ。熱くなる壁…。
> 学くんにとっては何が何やら…だよね(v_v)
(´д⊂)‥ハゥ
やつれてしまったようです……やつれ…好き…(え
本当、学にとっては青天の霹靂状態。
でも先生は辛いだろうな(涙)
> ((((((ノ゚⊿゚)ノヌオォォォ
> ここで早くも直接対決!!
> しかーし!学くんのがかなり不利な様子。
> 何が起きるんだ!?柳センセも見られちゃったぞ!!
キタ…直接対決…しかも急に;
テンテーも見られてしまい学は真っ白(>ω<)
続きはポメラの中にっっ ←
コメントどうもありがとうございました
ソッカァ(o-д-o)...柳の姿を見たら 止められなかったんだよねー。
でも ほんと ムカツク兄弟だよなぁ~
いっそ 私が 学の代わりに ・・・ε=怒ε=怒ε=( メ`ω´)/ コラァ~テメェ~...byebye☆
スミマセン;
にしても学ちんがどんどん好みになってゆく~♪
てんてーの何かを察知する能力は高いし(BLってそこ鈍いヤツ多くない!?)、怯まず、キスしてた車中から引きずり出して取り戻す!
その逃げない姿勢に惚れてるゼ~~イ♪♪
あ~ん、もうっ、フェロモン兄の狡猾さ(〇>_<)
蛇、そう蛇だ~(〇>_<)
奄美からハブ取り名人連れて来~い!
あ~ん、まだ弟もいるぞ~、写メ(涙)
柳師匠~学ちんに助けてって言えないよね、言っちゃえばいいのに言えないよね(涙)
冷たい態度で避けることしか出来ないもんね(涙)
学ちん猛ダッシュで、師匠を車から引きずりだしました!!よし!!取り戻すんだっ(≧▼≦)イェイ
哲平!こっそり、タイヤの前に尖ったビスを配置せよ!フェロモン兄の車をパンクさせよ(≧ω≦)ゞ了解
というわけで、桔梗さまのご不在でちこ、寂しかったよ~~~すりすり(m'□'m)お忙しかったんですね~続きも楽しみにしてます(*^□^*)
あぁ…せんせぇ~。
そういう態度になっちゃよね。それが精いっぱいなんだよね…
でも学ちん、先生の態度に単に腹立てるとかじゃなくて、傷ついてるとこも怯えてるとこも気付いてるから、きっといい方向へいくんだよね…桔梗さま…壁|д`)そろり
桔梗さま、体重が!?
ふふ、あたしもとりあえず5キロ落とそうと、今の所思ってるだけです^_^; 体重計が壊れて、今どうなってるのか分からなくて…怖いです。
追)お忙しいのに、あほなお便りお送りして申し訳ないですr(≧ω≦*)ごめーん!
面接頑張ってください!!
学くんがすぐ傍にいるのに言えない辛さ。熱くなる壁…。
学くんにとっては何が何やら…だよね(v_v)
((((((ノ゚⊿゚)ノヌオォォォ
ここで早くも直接対決!!
しかーし!学くんのがかなり不利な様子。
何が起きるんだ!?柳センセも見られちゃったぞ!!
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