05/20/2011(Fri)
続・ネクタイの距離 23話
「ったく何だよ。いい感じの表情になったのによ」
無理矢理会話をかき消した柳に、優はさっきの穏やかな表情とは打って変わった面持ちで不満を吐き出した。
「ごめんなさい」
「お仕置きだなぁ、辰美……ん?」
優はねっとりとまとわりつくような声でそう言いながら柳の尻をスーツの上から揉んだ。
「やっ……まだ傷がっ」
「大丈夫。優しくしてやるって……家に上げろよ」
嫌だと言ったところで優を煽るだけだ。柳は深いため息をそっとして、優に追い立てられるように部屋へと帰った。
学は次の日から柳の顔を見るのが少し辛かった。だが消えない想いはそのままで、膨らむ疑惑と怒りで授業にも手がつかない。
そんな学の揺れる視線をニヤニヤと亮太は見ていた。
亮太もまた、優に黙って写真を使い、脅しては柳の身体を貪っていた。
柳は学たちが体育の時間になると、授業をサボった亮太に窓辺で抱かれる事もしばしばあった。柳は窓の外に見える学の姿を追いかけながら脳内で亮太を学に変換させる。そうする事でしか苦痛を逃がせなかった。
柳は、亮太が学にあの 惨憺たる写真を見せやしないかと心中穏やかではなかった。学校では亮太に恐怖し、プライベートでは優に傷つけられる。
柳の精神と身体は崩れそうになっていった。唯一教室で一瞬だけ学を盗み見る事だけが支えだった。
試験の時期が来たせいもあって、そんな生活は流れるように過ぎていった頃だった。
廊下を歩いていると、女子生徒たちが高い声で噂話に花を咲かせていた。
「学くん、他校に彼女いるんでしょ?」
「えーっそうなの?! だから皆振られてたんだ?」
「ねー。狙ってたのにー」
柳は頭の先から氷水をかけられたような感覚に陥った。
(学に彼女が?)
自分から振ったのだから彼女を作ってもおかしくない。寧ろそれを望んでいた筈だった。だがどこかで自分だけを想っていてくれるのではという馬鹿な期待と、助けて欲しいという心の叫びが柳に想像以上に大きな衝撃を与えた。
柳は貧血を起こしたように気分が悪くなってくるのが分かった。
だが授業開始のチャイムが鳴り、仕方なくフラフラと教壇へと立った。無理をして授業を進めていると、そのうちに吐き気まで襲ってきた。グッと我慢をして仕事だと割り切り、チャイムがなるまではいつもと変わらない表情で授業を終えた。
休み時間に入ると、直ぐに震える手足で教室のドアを開けて出ていこうとした。
その時だった。
柳の後ろからサッとドアを開け、腕を支えるようにして助けられた感触に本気で感謝を感じて振り向いた。
「すまない、ありが……」
少し高い位置にあったその顔はずっとずっと触れたかった学の顔だった。
「具合、悪いんだろ? 保健室……連れていくだけだから」
(学は、こんなにも頼りがいのある凛々しい青年だっただろうか)
柳は今までの問題事を忘れて、改めて学に惹かれた気がした。
久しぶりに触れる学の熱を異常に感じ取って、柳の白い顔にポッと桜が咲いたように頬が赤くなった。
普段は殆ど訪れない保健室のドアを、学は慣れた様子でガラリと開ける。
「今、誰も使ってないみたいだから……ちょっとここで横になってなよ先生」
「あ、あぁ。ありがとう」
柳は学に連れられて真っ白なベッドに横になった。 まさかこうしてまた二人きりになれるとは思っていなかった柳に緊張が走る。
二人は特に話す事もなく沈黙が続いた。それでも学は窓の外を見ながら柳の側についていた。
「俺が具合悪いの、よく分かったな」
柳は何となく学に話しかけてみた。
「そりゃあ……いつも見てるから。分かるよ」
柳の心臓がドキリとときめく。今の柳にそんな資格はないと分かっていても、恋する心は全てを無視して暴走しようとする。
柳は、急に先程生徒たちの話していた内容を思い出して不安で泣きそうになった。
「学……もう、俺の事はいいから……。彼女、大事にしてやれよな」
柳は自分で言って自分を傷付けた。
<<前へ 次へ>>
大分更新が滞ってしまい申し訳ありませんでした(´Д`A;)
多忙の合間にちょこちょこポメラに書いたものが少し出来たのでUP出来ました;
今ようやくまた二人きりになれた柳たちですが、話、出来るといいです(>ω<)
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お礼画像あり☆6種ランダム
無理矢理会話をかき消した柳に、優はさっきの穏やかな表情とは打って変わった面持ちで不満を吐き出した。
「ごめんなさい」
「お仕置きだなぁ、辰美……ん?」
優はねっとりとまとわりつくような声でそう言いながら柳の尻をスーツの上から揉んだ。
「やっ……まだ傷がっ」
「大丈夫。優しくしてやるって……家に上げろよ」
嫌だと言ったところで優を煽るだけだ。柳は深いため息をそっとして、優に追い立てられるように部屋へと帰った。
学は次の日から柳の顔を見るのが少し辛かった。だが消えない想いはそのままで、膨らむ疑惑と怒りで授業にも手がつかない。
そんな学の揺れる視線をニヤニヤと亮太は見ていた。
亮太もまた、優に黙って写真を使い、脅しては柳の身体を貪っていた。
柳は学たちが体育の時間になると、授業をサボった亮太に窓辺で抱かれる事もしばしばあった。柳は窓の外に見える学の姿を追いかけながら脳内で亮太を学に変換させる。そうする事でしか苦痛を逃がせなかった。
柳は、亮太が学にあの 惨憺たる写真を見せやしないかと心中穏やかではなかった。学校では亮太に恐怖し、プライベートでは優に傷つけられる。
柳の精神と身体は崩れそうになっていった。唯一教室で一瞬だけ学を盗み見る事だけが支えだった。
試験の時期が来たせいもあって、そんな生活は流れるように過ぎていった頃だった。
廊下を歩いていると、女子生徒たちが高い声で噂話に花を咲かせていた。
「学くん、他校に彼女いるんでしょ?」
「えーっそうなの?! だから皆振られてたんだ?」
「ねー。狙ってたのにー」
柳は頭の先から氷水をかけられたような感覚に陥った。
(学に彼女が?)
自分から振ったのだから彼女を作ってもおかしくない。寧ろそれを望んでいた筈だった。だがどこかで自分だけを想っていてくれるのではという馬鹿な期待と、助けて欲しいという心の叫びが柳に想像以上に大きな衝撃を与えた。
柳は貧血を起こしたように気分が悪くなってくるのが分かった。
だが授業開始のチャイムが鳴り、仕方なくフラフラと教壇へと立った。無理をして授業を進めていると、そのうちに吐き気まで襲ってきた。グッと我慢をして仕事だと割り切り、チャイムがなるまではいつもと変わらない表情で授業を終えた。
休み時間に入ると、直ぐに震える手足で教室のドアを開けて出ていこうとした。
その時だった。
柳の後ろからサッとドアを開け、腕を支えるようにして助けられた感触に本気で感謝を感じて振り向いた。
「すまない、ありが……」
少し高い位置にあったその顔はずっとずっと触れたかった学の顔だった。
「具合、悪いんだろ? 保健室……連れていくだけだから」
(学は、こんなにも頼りがいのある凛々しい青年だっただろうか)
柳は今までの問題事を忘れて、改めて学に惹かれた気がした。
久しぶりに触れる学の熱を異常に感じ取って、柳の白い顔にポッと桜が咲いたように頬が赤くなった。
普段は殆ど訪れない保健室のドアを、学は慣れた様子でガラリと開ける。
「今、誰も使ってないみたいだから……ちょっとここで横になってなよ先生」
「あ、あぁ。ありがとう」
柳は学に連れられて真っ白なベッドに横になった。 まさかこうしてまた二人きりになれるとは思っていなかった柳に緊張が走る。
二人は特に話す事もなく沈黙が続いた。それでも学は窓の外を見ながら柳の側についていた。
「俺が具合悪いの、よく分かったな」
柳は何となく学に話しかけてみた。
「そりゃあ……いつも見てるから。分かるよ」
柳の心臓がドキリとときめく。今の柳にそんな資格はないと分かっていても、恋する心は全てを無視して暴走しようとする。
柳は、急に先程生徒たちの話していた内容を思い出して不安で泣きそうになった。
「学……もう、俺の事はいいから……。彼女、大事にしてやれよな」
柳は自分で言って自分を傷付けた。
<<前へ 次へ>>
大分更新が滞ってしまい申し訳ありませんでした(´Д`A;)
多忙の合間にちょこちょこポメラに書いたものが少し出来たのでUP出来ました;
今ようやくまた二人きりになれた柳たちですが、話、出来るといいです(>ω<)
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お礼画像あり☆6種ランダム
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コメント
...アッ!∑(゚□゚)!!けいったんさまがズ―ンとなってしまったーっ
オロo(;д;o)(o;д;)oオロ
でもショックだったと思います……なのに当の本人に優しくされる仕打ち。
orz
> 優と亮太に 心も体も ズタズタ・ボロボロにされている 今の現状を 支える 唯一の存在が 学なのでしょう。
ウン(*-ω-)(-ω-*)ウン
頼ってはいけない相手が唯一の支えって切ないですよね(´Д`)
> やっと二人きりになったのだから。。。と 私も 皆様と 一緒に期待しちゃうよ~d((;ω;))
>
> 柳からは、決して 助けを求めないでしょうから 学から どうにかしてよ~(( m(・ω・`m)お願い ペコリ
わ、私も期待してしまいます(´Д`A;)
確かに柳からはアクション起こせないのですから、
ここは一つ学にかけるしかないですよね(>ω<)
イケッ学めっ
> 愛する人を守るのが 【男】なんだからねーー!
> 了解ッスッ!(`・ω・´)ゞビシッ!!...byebye☆
そうだそうだー!!男の定義だ!!
って、学ちんってばいつの間にか返事してる!!(驚w
コメントどうもありがとうございました
> でも切ない><
やっと二人きりになったのに切ないモード全開です(´Д`)
> 体調の異変に気付いてやれた学ちんっ
> どうかてんてーの心の異変にも気付いてやっておくれ・涙
二人の時間を今こそ有効活用して欲しいですね!
色々と気付いてやって救って欲しいです(>ω<)
コメントどうもありがとうございました
鬼畜ですか!?
Sさまが叫んでおられるっっ!!
確かに柳先生、すっかり傷心モードで沈んでます…orz
からの……素敵シチュ(笑)
保健室です!密室です!
何と!そんな自制を効かせないでご一緒に興奮致しましょう!ヾ(ーー )ォィ
確かに取り敢えずは誤解などを解いてゆっくりと
話しが出来る事を望みます(>ω<)
コメントどうもありがとうございました
せ、切ないですよね(´Д`A;)
二人の幸せを願って頂けて嬉しいです!
Σ ゚ロ゚≡( ノ)ノ エェェ!?
私のワールドに嵌められてますか!?
……。
( ̄  ̄)………( ̄ー ̄)ニヤ ←
次回も楽しみにして下さってありがとうございますv
今日またUP致します!
ちゃんと二人、話ができるか私も心臓が…ドキ(/・д\*)ドキ
コメントどうもありがとうございました
優と亮太に 心も体も ズタズタ・ボロボロにされている 今の現状を 支える 唯一の存在が 学なのでしょう。
やっと二人きりになったのだから。。。と 私も 皆様と 一緒に期待しちゃうよ~d((;ω;))
柳からは、決して 助けを求めないでしょうから 学から どうにかしてよ~(( m(・ω・`m)お願い ペコリ
愛する人を守るのが 【男】なんだからねーー!
了解ッスッ!(`・ω・´)ゞビシッ!!...byebye☆
でも切ない><
体調の異変に気付いてやれた学ちんっ
どうかてんてーの心の異変にも気付いてやっておくれ・涙
わー!嬉しいです!!
そんな事言って頂けて!(ノД`)・゜・
でも必死にストーリーを組みこんでるって感じです(-ω-;)
じゃないとエロメインになっちゃう(笑)
> 切ないシーンから簪挿入って、考えてみたら凄い流れだよねww
あはは(≧∀≦)
確かにそうかもですね(笑)
簪プレイバンザイ+゜*。..+゜ ウ ェ ━ヽ(*´Д`*)ノ━ イ ゜+..。*゜+
って!!おたまちゃんをリアルに!?
……おたまちゃんって何ですか? ←
でも交渉頑張って下さい!
そして結果報告をお待ちしております(・∀・)ニヤニヤ
> か細い声で悲鳴を上げるお父様によろしく!w
あ、そちらの方までっ(笑)
嬉しいです!ありがとうございますv
伝えておきます(笑)
「ひゃぁ~」
コメントどうもありがとうございました
こんばんはー(*´∇`*)
> しぇんしぇ~!今しかないよ!!頼るんだ。吐露するんだ!と鼻息荒く言ってみる。
ウン(*-ω-)(-ω-*)ウン
今だ!ゆけっ!!
と、私も身を乗り出してPCに激突してみる。
-=≡Σ(((っ;ωΣ[PC]ガゴッ!
> なんか切ない・゚・(ノД`) 二人の間はゆっくりと時間が流れているような気がする。二人だけの時空間があるのだ。
おおっ…。何か素敵な表現です!
うん。でも確かに二人だけの時空間がありそうですよね!
短い時間でもゆっくり流れてて深くて優しい空気が流れている感じがします。
> それにしてもあの兄弟"o(`*ω*´)イライライライラ・・・・ 好き勝手しやがって。もう少し我慢だ…きっと、きっと…
はっ!∑(°ロ°*)
やぴさまがイライラしてらっしゃる!
これも奴ら悪魔兄弟のせいだ!ヽ(`Д´)ノウガーッ
頑張れ先生たち(>ω<)!
コメントどうもありがとうございました
しぇんしぇ~!今しかないよ!!頼るんだ。吐露するんだ!と鼻息荒く言ってみる。
なんか切ない・゚・(ノД`) 二人の間はゆっくりと時間が流れているような気がする。二人だけの時空間があるのだ。
それにしてもあの兄弟"o(`*ω*´)イライライライラ・・・・ 好き勝手しやがって。もう少し我慢だ…きっと、きっと…
> 毎日が拷問のような日々・・・(;_;)
Σちこさんを泣かせてしまった!
エーン(pωq)ヽ(・ω・。)ヨチヨチ
> いつになったら、蛇男とフェロモンに解放されるんだろう・・・(涙)
> よ――――し!!
> やっぱ、フェロモンが写メ送信→学ちん助ける!!
> しかない!!
> 誰か、蛇男を踏み潰して~~~っ(`へ´)
応援ありがとうございます!!
きっと良い方向へ向かう!!
そう信じてヘビ退治に向かう学を私も応援します!
†ヽ(゚ロ゚;)キェーッ!
> というわけで、蛇男にも、フェロモンにも負けず学ちんに頑張ってもらいたい!!
> なんとか、なんとか、学ちんにヘルプと、伝えたい!!
> テレパシー!!
ちこさんのテレパシー!確かに飛んでいくのを確認しました!
きっと学も奮起すると思います!
コメントどうもありがとうございました
毎日が拷問のような日々・・・(;_;)
いつになったら、蛇男とフェロモンに解放されるんだろう・・・(涙)
よ――――し!!
やっぱ、フェロモンが写メ送信→学ちん助ける!!
しかない!!
誰か、蛇男を踏み潰して~~~っ(`へ´)
というわけで、蛇男にも、フェロモンにも負けず学ちんに頑張ってもらいたい!!
なんとか、なんとか、学ちんにヘルプと、伝えたい!!
テレパシー!!
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