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妄想列車 3話

 指先が異常に敏感に男の指紋のざらつきを感じてゾクリとする。
 新宿に着くと、男の指がするりと抜けて離れた。
 俺は思わず振り返ると、男は振り返りもせずにサッサと車両を降りて行ってしまった。

(なんだよ……)

 あんなに蜜月の時間を過ごしたというのに、このあっさり感は何だ。
 ちょっと傷ついている自分に驚くが、それほど忘れられない体験をこの短い時間にしたという事だ。
 俺は品川まで行かないといけないから降りて立ち話なんてしてる訳にもいかないし、かと言って相手があんな何事もなかったような態度でいるなら尚更声など掛けられない。
 これがプライドってやつだろう。

 何事も無かったように会社に着くと、早速自分のデスクについて立ちっ放しだった足を癒した。
「上原さん、走って来たんですか? 顔赤いですよ」
 女子社員が人懐こい笑顔を向けながらそう言ってきた。この笑顔は俺に気でもあるんじゃないかと思うのは自意識過剰だろうか。
 だが今俺が欲しいのはこの子の笑顔じゃない。あの男の指先や唇の感触だ。
 俺の身体はあの男の残した生生しい感触で火照ったままだった。

 帰りの電車に乗り、新宿で人が乗って来ると、やはり今朝の男がいないか目を左右に素早く動かしてしまっていた。
 期待は虚しく、今朝の男の姿はなかった。
 それから二、三日朝と夜に男の姿を意識して探して乗っていたが、会う事はなかった。
 俺の中で、あの時の出来ごとは徐々にネタに残る妖しい不思議な体験となりつつあった。
 金曜の夜に、いつも飲みに誘ってくる清水先輩が例の如く飲みに誘って来たので安い居酒屋に入った。
 暑さのせいもあったが、やけにビールが美味くてほろ酔い加減になってきた。
「だからよぉ、水穂ちゃんは一番社内で可愛いんだよぉ。ちきしょー、一回ヤらせてくんないかなぁ」
 先輩は飢えた獣のような怪しい目つきでそう嘆いた。先輩も俺と同じ位彼女がいない身だ。
 俺はただ口を滑らせて、ついあの事を話してしまった。
「先輩、実は俺、この間朝の満員電車の中でチューしちゃったんです」
「あ!? 誰と?」
「知らない奴とです」
「何やってんだよ、お前っ! あははは! いいなぁ。どんな女? 可愛かったの?」
「いえ。格好いい男の人でした」
「へぇ……」と普通に返事をしてビールを一口飲んだ先輩が、重そうなジョッキをガタッと机に置いてもう一度俺を見た。
「え、え、格好いい……オト……」
「はい。格好いい男の人でした」
 俺は確実に伝える為に自分からハッキリと言って聞かせた。
「えぇっ、マジかよ! 何? いきなりされたとか?」
「まぁ……流れ、でしょうか」
「うっわ最悪だな。ホモの痴漢じゃん」
 清水先輩はすっきりとした一重の目をしかめて気の毒そうに俺を見た。
「でも、正直良かったですけどね」
 俺はちょっとムキになって開き直った。何故そんな風に言ったのかも自分では分からない。きっと俺は酔っているんだろう。
「は……お前、もしかしてこっちの人?」
 清水先輩が急に気遣うような目つきで、そっと声のトーンを落として「オカマ」のシグナルである、手を口元に持っていって作って見せた。
 全く気遣いになっていない。
「いえ、俺はノーマルですよ。……でも、何でか分からないんですが、あの時のはとても良かったんです」
 俺は急に寂しくなった。確実にあの男を求めていた。
 アルコールが入って余計に感情が湧きでてきたのかもしれない。
「ま、まぁ……男だったら……お前が相手ならキスぐらいはいける気はするけど」
「え?」
 清水先輩は急に異性を品定めする時のような目つきをして見てきた。この居心地の悪さ、女性はいつも感じているのだろうか。そう思ったらこれから女性をそういう目で見るのはやめようと思った。
「なーんて言うのかなぁ。お前って男なんだけど、こう、時々ふと色っぽい表情するんだよ。どっちかっていうと可愛い顔じゃん?」
 確かに俺はどちらかというと年上にもてる事の方が多い。
「先輩、俺の事そういう風に見てたんですか」
「えっ、いや! 俺は別にホモではないぞ!? でも、男相手じゃないとダメだとしたら、という仮定の話だ!」
「へぇ~」と俺は意地の悪い目つきで先輩を見ると、先輩はふざけて怒りながら俺の首に腕をかけてきた。
「そんな事言うとケツ揉むぞッ」
 そう言って勢いで先輩は俺の尻をギュッと掴んだ。
「あんっ」
 俺はふざけて感じたフリをした。尻なんて今まで掴まれた事はなかった。だが、一瞬、ふざけながらもゾクッと感じた事に驚いた。出した喘ぎ声は半分わざと、そして半分本当だった。
 清水先輩は俺の出した声に本気でドキリとしたような表情を見せたので、俺は少し焦って「冗談ですよ?!」と弁明した。
 もし、あの男に掴まれたら、俺はどの位感じるのかな。
 そう思っただけで風邪でも引いた様に頭がぼうっと虚ろになった。




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コメント

けいったんさま
> 皆様、途中下車に 喰いつく~喰いつく~♪ 焦らしプレイに喜ぶ~喜ぶ~♪
> よくぞ ここまで 読者を飼い慣らしましたね、桔梗様( ̄ー ̄)ニヤリ

喰いつきに喜んでおります!!
(○≧ω≦)ノゎぁぃゎぁぃヽ(≧ω≦●)
いやいや~!飼い慣らしたなどと滅相もないっ!
こんな変態の妄想を読んで下さって恐縮です!


> 学生時代(会社は 自転車&車通勤)の満員電車を思い出します。
> チビの私が ギュウギュウ詰めで苦しんでる時に メンズ同士で そんな事をしてたとはーー!ヽ(゚Д゚;)ノ!!
> おっと いけねぇ 現実と妄想が ごちゃ混ぜに・・・d(〃▽〃)ポッ

そうですよ~。私らが苦しんでいる時に、
こうやってメンズ同士でチューチューしてたんですよ~。(笑)
もういっそ、全て現実で(笑)
∑d(ゝω・´*)グッ☆!


> 電車の彼と会う前に 清水先輩に喰われんなよ~
> ヽ(*`∀´*)ノ グヘヘヘヘ...byebye☆

確かにです!(笑)
気をつけろよ~森ちゃん!
もう「あんっ」とか言ってはいけないよ!
けいったんさまの「グへへへ」が響いております(笑)

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗.Dさん | 2011/07/13 00:25 | URL [編集] | page top↑
WLさま Re: シクシク…
> 降りたし…
> いまだ再会なしだし…

エーン(pωq)ヽ(・ω・。)ヨチヨチ
男ったら意外にもツンツン野郎だったようで;
再開を期待しています(ノ△・。)


> ひどいっ
> 過激に発展していた私の脳内プレイはどうしてくれるの!?

あはは(≧∀≦)
見てみたいです~その脳内~っ
o((*・ω・*))o゙ ワクワク♪


> その半端さが彼を余計にあの一時へ夢中にさせるのかっ
> にくいぜ、桔梗たんっ!

んがっっ
焦らして焦らして……って感じでしょうか。
でもなかなか偶然にまた出会うって難しいと思ったら
なかなか会えない状況に^^;


> しかし、彼の中でどんな『ネタ』になっちゃってるんだか、気になりまくり…

ですよね…(-ω-;)
ネタだの思い出になる前に早く探しておくれ。
森ちゃんよ…。


> しかしこの途中下車による爆裂欲求不満状態の悔しさは、生半可なエロでは許さないよん……… ( ̄▽ ̄)ニヤ

Σ(゚∀゚ノ)ノキャー
プレッシャーが!思わぬプレッシャーがーっ(笑)
男に託します(笑)

コメントどうもありがとうございましたe-415

桔梗.Dさん | 2011/07/13 00:17 | URL [編集] | page top↑
アルファさま
> かっこいいお兄さんに心を奪われちゃってますね…。
> 会社に行ってもまだほっぺが赤いって、お兄さんとのキスがよっぽどよかったんですね。

そうですね~( ´艸`)ムププ
よっぽどだったのでしょうね~♪
思い出す度に蕩けるキスって……
'`ァ'`ァ((o(*´д`*)o))'`ァ'`ァ ←落ち着いて下さい


> にしても、先輩は誘惑してはいけませんっ!先輩びっくりしちゃったじゃないですか。

あはは(≧∀≦)
ですよねー(笑)
無意識に誘惑してはなりませんよ、森ちゃん。
むやみやたらに「あんっ」と言ってはなりません。


> また電車のなかで会ったら、今度はどんなことを…
> はやく会える事を期待しつつ、焦れてるのも可愛いなぁ。

可愛いと言って頂けて嬉しいです(。・∀・。)ニコッ
お次に期待です!……期待……に応えられるか;
相手を探せ!森ちゃんよ!

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗.Dさん | 2011/07/13 00:11 | URL [編集] | page top↑
澪さま
> あぅぅ…誰だ非常停止スイッチを押したのは!Σ( ̄ロ ̄lll) ガビーン  ←

わっ…私じゃないよっ!(il`・ω・´;)
あのオジサンだよ!!
あれ? あのオジサンって…ヒーローじゃね? ←
(注:タイバニネタです)


> 焦らしプレイなのね、お兄さん!
> くぅ~、高度な技を遣う奴めっ! ←←

何っっ!
これは技だったのかぁぁ!
何て奴だ!まだ名も知らぬ男よっ! ←(笑)


> 上原くん溜まってんね(-L-)ククク
> って、酔った勢いに任せて先輩を誘惑しちゃいけませんw
> 先輩も若干その気になってるしwww
> 魔性か?魔性の男なのか!?(。・ρ・)ジュル ←あれ?w

ふふふ。
ヨダレが垂れているよ、澪ちん(//∀//)
魔性…の気があるような気もするね~天然というか!
他の男誘惑してるし(笑)
しかもお互いノンケという事態(笑)


> こんだけ焦らされて火照った体を持て余していたら(爆)再会した時にはどうなっちゃうのかしら(¬w¬*)ウププ
> 今度はきっと終点までノンストップでGO(σ゚ェ゚)σ

本当( ´艸`)ムププ
再開するといいなーん♪
え~ノンストップでGOサイン頂きました~(笑)

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗.Dさん | 2011/07/13 00:07 | URL [編集] | page top↑
ちこさま
> (m'□'m)開いてるお口に放り込んで下さりありがとうございます、パクっ(@゜▽゜@)

あっ♪食べてくれた(//∀//) ←やめなさい
失礼致しました m(_ _;)m


> あらら、このまま終点まで行くのかと思いきや、まさかの途中下車(笑)
> なんでやねんっヾ(`へ´)ベシベシ
> そっか、仕事か!!

つれないツンくんです(笑)
って、仕事ですよね~(笑)
残念;


> うんうん、仕事しなきゃね~稼いだ金でむふふっ(//∀//)

・:*:・:オォオォ(*´∀`人):・:*:・
その手がありましたねっっ


> イイ男に朝から接近遭遇して、その上チューして・・・そんな幸運を神に感謝いたしましょ~うヽ(´▽`)/

本当です!!
何て羨ましいんだっ(>△<)
エロ神に感謝するのだ森ちゃん!


> あっ、指は全開しましたよ~(≧▼≦)
> ご心配をおかけしまして、ありがとうございますm(__)m
> では、続きを(m'□'m)あ~~~んっ

あ、治ったようで良かったです(*´∇`*)
んま!またしてもちこさんがお口を開けて誘惑しているっっ
'`ァ'`ァ((o(*´д`*)o))'`ァ'`ァ ←

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗.Dさん | 2011/07/13 00:02 | URL [編集] | page top↑
皆様、途中下車に 喰いつく~喰いつく~♪ 焦らしプレイに喜ぶ~喜ぶ~♪
よくぞ ここまで 読者を飼い慣らしましたね、桔梗様( ̄ー ̄)ニヤリ

学生時代(会社は 自転車&車通勤)の満員電車を思い出します。
チビの私が ギュウギュウ詰めで苦しんでる時に メンズ同士で そんな事をしてたとはーー!ヽ(゚Д゚;)ノ!!
おっと いけねぇ 現実と妄想が ごちゃ混ぜに・・・d(〃▽〃)ポッ

電車の彼と会う前に 清水先輩に喰われんなよ~
ヽ(*`∀´*)ノ グヘヘヘヘ...byebye☆
けいったんさん | 2011/07/12 09:26 | URL [編集] | page top↑
シクシク…
降りたし…
いまだ再会なしだし…

ひどいっ
過激に発展していた私の脳内プレイはどうしてくれるの!?

その半端さが彼を余計にあの一時へ夢中にさせるのかっ
にくいぜ、桔梗たんっ!

しかし、彼の中でどんな『ネタ』になっちゃってるんだか、気になりまくり…


しかしこの途中下車による爆裂欲求不満状態の悔しさは、生半可なエロでは許さないよん……… ( ̄▽ ̄)ニヤ

WLさん | 2011/07/12 08:36 | URL [編集] | page top↑
かっこいいお兄さんに心を奪われちゃってますね…。
会社に行ってもまだほっぺが赤いって、お兄さんとのキスがよっぽどよかったんですね。

にしても、先輩は誘惑してはいけませんっ!先輩びっくりしちゃったじゃないですか。

また電車のなかで会ったら、今度はどんなことを…
はやく会える事を期待しつつ、焦れてるのも可愛いなぁ。
アルファさん | 2011/07/12 07:35 | URL [編集] | page top↑
あぅぅ…誰だ非常停止スイッチを押したのは!Σ( ̄ロ ̄lll) ガビーン  ←
焦らしプレイなのね、お兄さん!
くぅ~、高度な技を遣う奴めっ! ←←

上原くん溜まってんね(-L-)ククク
って、酔った勢いに任せて先輩を誘惑しちゃいけませんw
先輩も若干その気になってるしwww
魔性か?魔性の男なのか!?(。・ρ・)ジュル ←あれ?w

こんだけ焦らされて火照った体を持て余していたら(爆)再会した時にはどうなっちゃうのかしら(¬w¬*)ウププ
今度はきっと終点までノンストップでGO(σ゚ェ゚)σ
さん | 2011/07/12 00:54 | URL [編集] | page top↑
(m'□'m)開いてるお口に放り込んで下さりありがとうございます、パクっ(@゜▽゜@)
あらら、このまま終点まで行くのかと思いきや、まさかの途中下車(笑)
なんでやねんっヾ(`へ´)ベシベシ
そっか、仕事か!!
うんうん、仕事しなきゃね~稼いだ金でむふふっ(//∀//)
イイ男に朝から接近遭遇して、その上チューして・・・そんな幸運を神に感謝いたしましょ~うヽ(´▽`)/
あっ、指は全開しましたよ~(≧▼≦)
ご心配をおかけしまして、ありがとうございますm(__)m
では、続きを(m'□'m)あ~~~んっ
ちこさん | 2011/07/12 00:41 | URL [編集] | page top↑

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