07/13/2011(Wed)
妄想列車 4話
猛暑の中を歩いて会社の中に着くと、冷えている筈なのにどっと出る汗が暫く止めどなく流れている。
俺の会社は情報セキュリティ専門の会社でとても大きい。主にウェブやPCなどについてのセキュリティを専門としている。その優秀な機密機能と信頼性に、公にはされていないが行政の情報部のセキュリティも請け負っている。
俺はそこの最も大事な部分を担う仕事についていた。
やりがいはある。だがそんなに忙しい仕事でもないのも事実だった。
元々PCが好きでPC関係の仕事がしたかったというだけだったのが、今では専門業に就いている。
この日の朝も、いつもと同じようにPCの小さなボタンをカチっと押して立ち上げた。
鞄からゴソゴソと書類を机に出していたので、あまりPCを気にする事もなかった。
だが、視界に映った一瞬のバグとも取れるちらつきに、俺の動きは止まった。
血の気がサッと落ちると同時に鞄を床に投げ、キーボードを乱暴に引き寄せて急いでレジストリ・キーを調べた。
ざっと見て見覚えのないプログラムは見当たらない。
それはそうだ。この会社のプログラムに入ろうという者はそうそういない。というか、出来ない。
だが、だからこそ、少しの異常も全ての疑うべき対象になる。
俺は全てを隈なく調べつくしてから、一応上司に報告した。万が一何かあれば国の機密すら漏れる恐れがある。ここのセキュリティを突破してしまえばきっと容易に抜き取られるだろう。
取り敢えずは何事もなく、冷や汗をかいた午前中はあっという間に過ぎ、そのせいで押したスケジュールは俺の帰りを終電近くまで追いやった。
帰りの電車に間に合って走り込むと、朝の様な込みあった状況に今日が金曜日だった事を思い出させた。
彼女でもいればこのままホテルにでも泊まる事でも出来ただろう。考えても寂しさと虚しさで早く帰ってビールでも飲みたい気分になった。
皆酒を飲んでいるらしく、朝とは打って変って饒舌だ。大きな声で喋る人と立ちながら半分寝ている人と半々くらいだ。
ふと窓に視線をやっと時だった。
ドクン、と心臓が重く鳴るのが聞こえた。
涼しい顔をして窓の外を見るその顔は、誰もが釘付けになるような顔立ちのあの男だった。
(ど……どうしよう……)
俺は話しかけたかった。
別に知り合いでも何でもないが、キスまでした相手だ。しかも男で。
微妙過ぎる関係が、どう接触していいか非情に俺を悩ませていた。
とにかく近づきたい。話しかけたらどういう反応されるだろうか。というか、俺を覚えてるのか? 何て言えばいいんだ?
グルグル考えながらも、背の高い草木を分ける様にして男に近づいて行った。
男は俺になど気付かずに、じっと外を眺めていた。
とうとう男の後ろまで移動できた。俺の心臓はピアノの発表会の前くらいドキドキしていた。
(何て言えば……何て……)
俺は懸命に話かける言葉は探していた。そして目線を男の背中から、窓に映る整った顔へ流した時、窓越しに男と目が合った。
俺は一瞬息が止まった。
熱い汗が背中からどっと湧き出る。
(俺を……見てる……覚えてるのか? どうしよう。今話かけるべきか? どうしよう……っ!)
パニックになって声を出そうと半開きになった俺に向かって、窓越しの男は色っぽく口端を上げた。
俺はそれを見た瞬間に、膝から崩れ落ちそうになった。
熱っぽい視線で俺の足腰を溶かしたに違いない。
バランスを崩した俺を、男はしっかりと俺の腰に手を当てて抱きとめてくれた。
男の首元に顔を埋めて必死に話かけようとするが、何が言いたい訳でもなかった。言いたい事は別にない。だから言葉が見つからない。
ただもう一度キスがしたかった。
ガヤガヤと大きな声で話す人々の中で、俺は必死に男と話すきっかけを作ろうと声を出した。
「あっ……あのっ」
あの日の時のように、間近で一瞬見つめ合う。そして男の視線が俺の唇に落ちたのが分かった。周りの音が消える。
そして男は強引に俺の顎をグッと持ち上げて唇を塞いだ。
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お礼画像あり☆6種ランダム
俺の会社は情報セキュリティ専門の会社でとても大きい。主にウェブやPCなどについてのセキュリティを専門としている。その優秀な機密機能と信頼性に、公にはされていないが行政の情報部のセキュリティも請け負っている。
俺はそこの最も大事な部分を担う仕事についていた。
やりがいはある。だがそんなに忙しい仕事でもないのも事実だった。
元々PCが好きでPC関係の仕事がしたかったというだけだったのが、今では専門業に就いている。
この日の朝も、いつもと同じようにPCの小さなボタンをカチっと押して立ち上げた。
鞄からゴソゴソと書類を机に出していたので、あまりPCを気にする事もなかった。
だが、視界に映った一瞬のバグとも取れるちらつきに、俺の動きは止まった。
血の気がサッと落ちると同時に鞄を床に投げ、キーボードを乱暴に引き寄せて急いでレジストリ・キーを調べた。
ざっと見て見覚えのないプログラムは見当たらない。
それはそうだ。この会社のプログラムに入ろうという者はそうそういない。というか、出来ない。
だが、だからこそ、少しの異常も全ての疑うべき対象になる。
俺は全てを隈なく調べつくしてから、一応上司に報告した。万が一何かあれば国の機密すら漏れる恐れがある。ここのセキュリティを突破してしまえばきっと容易に抜き取られるだろう。
取り敢えずは何事もなく、冷や汗をかいた午前中はあっという間に過ぎ、そのせいで押したスケジュールは俺の帰りを終電近くまで追いやった。
帰りの電車に間に合って走り込むと、朝の様な込みあった状況に今日が金曜日だった事を思い出させた。
彼女でもいればこのままホテルにでも泊まる事でも出来ただろう。考えても寂しさと虚しさで早く帰ってビールでも飲みたい気分になった。
皆酒を飲んでいるらしく、朝とは打って変って饒舌だ。大きな声で喋る人と立ちながら半分寝ている人と半々くらいだ。
ふと窓に視線をやっと時だった。
ドクン、と心臓が重く鳴るのが聞こえた。
涼しい顔をして窓の外を見るその顔は、誰もが釘付けになるような顔立ちのあの男だった。
(ど……どうしよう……)
俺は話しかけたかった。
別に知り合いでも何でもないが、キスまでした相手だ。しかも男で。
微妙過ぎる関係が、どう接触していいか非情に俺を悩ませていた。
とにかく近づきたい。話しかけたらどういう反応されるだろうか。というか、俺を覚えてるのか? 何て言えばいいんだ?
グルグル考えながらも、背の高い草木を分ける様にして男に近づいて行った。
男は俺になど気付かずに、じっと外を眺めていた。
とうとう男の後ろまで移動できた。俺の心臓はピアノの発表会の前くらいドキドキしていた。
(何て言えば……何て……)
俺は懸命に話かける言葉は探していた。そして目線を男の背中から、窓に映る整った顔へ流した時、窓越しに男と目が合った。
俺は一瞬息が止まった。
熱い汗が背中からどっと湧き出る。
(俺を……見てる……覚えてるのか? どうしよう。今話かけるべきか? どうしよう……っ!)
パニックになって声を出そうと半開きになった俺に向かって、窓越しの男は色っぽく口端を上げた。
俺はそれを見た瞬間に、膝から崩れ落ちそうになった。
熱っぽい視線で俺の足腰を溶かしたに違いない。
バランスを崩した俺を、男はしっかりと俺の腰に手を当てて抱きとめてくれた。
男の首元に顔を埋めて必死に話かけようとするが、何が言いたい訳でもなかった。言いたい事は別にない。だから言葉が見つからない。
ただもう一度キスがしたかった。
ガヤガヤと大きな声で話す人々の中で、俺は必死に男と話すきっかけを作ろうと声を出した。
「あっ……あのっ」
あの日の時のように、間近で一瞬見つめ合う。そして男の視線が俺の唇に落ちたのが分かった。周りの音が消える。
そして男は強引に俺の顎をグッと持ち上げて唇を塞いだ。
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コメント
> 再会は電車であったか・・・
ウン(*-ω-)(-ω-*)ウン
確かにです!!
慣れてないとできないですよね~!
ん~魔性だ(>д<)
> >別に知り合いでも何でもないが、キスまでした相手
> ↑
> に爆笑~~~~ッ
> どういう関係だッ・爆
あはは(≧∀≦)
爆笑ありがとうございます(笑)
確かにレアな関係ですよね(笑)
> 公衆面前プレイ好き??????
> 出くわしたいなぁ・・・・・
たまにAVとかで露出モノありますよね(笑)
一番ビックリだったのが、朝の通勤時のホームでのえち。
マジもん!?と思いました。
恐らくマジだと思いますが…。
よく捕まらないものですね^^;
でも森ちゃんたち、若干露出の気、ある気がします(笑)
> 発展に期待www♪
期待ありがとうございます♪
私も期待して尾行を続けます。
[壁]д・)チラッ。。。。。。。゙(ノ・д・)ノスタスタッ。。。。。。チラッ(・д[壁]
コメントどうもありがとうございました
> 飼い馴らされた読者の一人でありますっ(笑)
ちこさんてば(//∀//)
> 会社のセキュリティより、自分の下半身のセキュリティ守んなさ~い(≧▼≦)
> いや、守っちゃいやん(//∀//)エヘッ
バンバンヾ(≧▽≦)ノギャハハ☆
上手いっ(笑)
そして守っちゃイヤなのですね(笑)
ですよね~ニヤニヤニヤ(・∀・)ニヤニヤニヤ
> 逢えたね~きっと歌ってるよぅ♪会いたかった×3イェイ、君に~~~~♪
> 謎めいた綺麗なお兄さん、翻弄される綺麗なお兄さんひっひっひっΨ(`∀´#)
> もう、電車ないよ~彼女とホテルじゃなくて、お兄さんとだよ~妄想読者の妄想は続く・・・
> 全て、悪いのは真夏の太陽です(笑)
> (m'□'m)待ってます、あ~ん♪
あの歌が(笑)
沢山妄想して頂けているようで嬉しいです(//∀//)
確かにこの真夏の太陽のせいってのはありますね!
脳みその繋ぎ目溶かされてますもん。(;´Д`A ```
はっ!∑(°ロ°*)
また可愛いお顔でお口開けてるっっ
(;゚∀゚)=3ハァハァ ←危
コメントどうもありがとうございました
> 「ちょっとおじさん!何余計なことしてくれてるんですかっ。」byバニw
あはは(≧∀≦)
バニーがオジサンを叱ってくれてる(笑)
萌(♡´∀`♡)え ←
> 冒頭のシリアス展開にドキドキ☆
> 何だ?何か起こるフラグなのか!?┬|ョ゚д゚*)カンサツ ←
さて~(〃∇〃)
終電に間に合わない事態フラグだったのかも?(笑)
> そうこうしてるうちに例の男ハヶ━━(´・ω『+』━━ン
> 森ちゃん大胆~♪((=゚3゚=))ヒューヒュー ←
> かと思ったら土壇場で怖気づいちゃった(可愛いw
土壇場で怖気づくの可愛いかい!?
おおっ☆嬉しい!
森ちゃんに口笛が多数聞こえます~(笑)
> 再会した二人はもう止まらない?ワクワク((o(゚▽゚○)(○゚▽゚)o))ドキドキ
> おじさんはこっちで押さえておくので、心おきなくどぞー!!www
オジサン、バニーと澪ちんで抑えられている模様(笑)
どんだけ暴走するんだオジサン(笑)
じゃ、オジサンは頼んだっっ! ←
コメントどうもありがとうございました
クソ暑いのに記事上げてエロいですか!?
あ、偉いって事ですね?(//∀//)
ん?エロいも含まれているか!?(笑)
私も眠いです(つд⊂)ゴシゴシ
帰宅して書いてるので時間がない…。
( p_q)エ-ン
頑張りましょう~(´Д`)
コメントどうもありがとうございました
再会は電車であったか・・・
>別に知り合いでも何でもないが、キスまでした相手
↑
に爆笑~~~~ッ
どういう関係だッ・爆
公衆面前プレイ好き??????
出くわしたいなぁ・・・・・
発展に期待www♪
飼い馴らされた読者の一人でありますっ(笑)
会社のセキュリティより、自分の下半身のセキュリティ守んなさ~い(≧▼≦)
いや、守っちゃいやん(//∀//)エヘッ
逢えたね~きっと歌ってるよぅ♪会いたかった×3イェイ、君に~~~~♪
謎めいた綺麗なお兄さん、翻弄される綺麗なお兄さんひっひっひっΨ(`∀´#)
もう、電車ないよ~彼女とホテルじゃなくて、お兄さんとだよ~妄想読者の妄想は続く・・・
全て、悪いのは真夏の太陽です(笑)
(m'□'m)待ってます、あ~ん♪
「ちょっとおじさん!何余計なことしてくれてるんですかっ。」byバニw
冒頭のシリアス展開にドキドキ☆
何だ?何か起こるフラグなのか!?┬|ョ゚д゚*)カンサツ ←
そうこうしてるうちに例の男ハヶ━━(´・ω『+』━━ン
森ちゃん大胆~♪((=゚3゚=))ヒューヒュー ←
かと思ったら土壇場で怖気づいちゃった(可愛いw
再会した二人はもう止まらない?ワクワク((o(゚▽゚○)(○゚▽゚)o))ドキドキ
おじさんはこっちで押さえておくので、心おきなくどぞー!!www
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