07/18/2011(Mon)
妄想列車 8話
俺は毎朝の通勤が楽しみになった。というのもリツカと通勤時間の重なる時は、あらかじめ決めてある車両で一緒になるからだ。
だが俺達は言葉を交わす事はない。リツカとそっと人目を盗んで唇を付けてみたり痴漢の真似事をするだけだ。そうしてリツカは艶っぽい笑みを口元に浮かべて先に降りて行く。
「上原さん、何か……しっとりしてますね」
同僚の女の子が俺を見て頬を赤らめた。
(俺、そんなにエロい顔でもしてたかな?)
俺は無意識にはにかんだ笑みを浮かべた。それを見た女子社員がときめいたのは俺だけが知らない事だ。
「あれ……」
少し席の離れた所で清水先輩の声が聞こえた。
「あ……普通だ。気のせいかな」
この間俺が騒いだせいで全てのPCを調べたばかりだ。セキュリティも問題ないし誰かに侵入された形跡も無かった。
だが一応気になって先輩の所に行くと、先輩曰く立ち上げの際一瞬カーソルの点滅が遅かったように見えたらしい。
俺達のPCは普通のものと違う。特殊なもので立ちあげの際黒い背景のプログラム画面が出る。そこのカーソルの点滅の事を言っていた。
ここのところの幾つかの気になる点の事があって俺と清水先輩は部長から霞ヶ関に行けと言われた。俺達は二人で政府の情報機関に赴いて一通り向こうの情報システムを調べる事となった。
久々に来る各省庁の揃うこの場所は、やはりお堅い感じの人たちがとても多い。
俺たちはあまり関係のない外務省の中に入った。世間には知られていない機密情報局がある事は一部の人しか知らない。
俺と清水先輩は会社から貰った通行証を守衛の人に見せて門の中へ入った。
入り口では受け付けの人とのやりとりを終えた後、荷物検査とスキャニングを行ってやっと中へ入れる。
中に入ると、意外と庶民的な内装に最初は驚く。俺は何回か来ていたのでどのエレベータに乗れば場所に辿り着くかが分かった。
段々と地下へ続く廊下を進むとまた守衛がいる。通行証を見せると「ご苦労様です、どうぞ」と中年だが引き締まった身体の守衛に敬礼された。ここにいる守衛はきちんと防衛庁から派遣されているらしい。
中に入ると更にエレベーターで地下へと進んだ。空調のせいか冷やりとした空気が汗を冷やしていく。青い色の強い蛍光灯が更に身体を冷やす様に感じた。
最後のドアが開くと、中には膨大な量の大型コンピューターが置かれていた。そこにある幾つかの部屋では少人数がここでも機密情報を守っている。
「お疲れ様です。STSの清水です」
清水先輩が慣れたように挨拶を交わし、俺達は色々と調べ始めた。膨大な量がある為、一週間はここに顔を出さないといけない。
俺達はひたすら手分けして黙々と作業に当たった。
今日のところは何もなく夜七時になって切り上げた。会社に連絡するとそのまま直帰していいとの連絡を受けて、大喜びした清水先輩は早速俺を強制的に飲みに誘った。
リツカはまだ仕事をしてるのだろうか。メールでもしてみようかと思った時、清水先輩が強引に俺の肩を抱いて進み出した。
その時だった。あまりにリツカに会いたかったせいなのか、広い道路の反対側にリツカにとてもよく似た人を見かけて立ち止まった。
「あれっ……」
「どうした? 知り合いでもいたか?」
清水先輩も一緒になって止まり、俺の目線の先にいる人を探す。
リツカに似てる。遠目から見ても姿形や髪型が似ているのが分かった。だが眼鏡を掛けていた。俺はリツカの視力なんて知らない。もしかしたらコンタクトだったのかもしれない。
リツカの職場は新宿じゃなかったのだろうか。仕事の関係でここまで来たのだろうか。だとしたらこんな偶然は運命としか思えない。
俺はドキドキしながら携帯を取り出し急いで電話をかけた。俺がここにいると知ったらリツカはどんな顔をするだろう。驚いた顔が見たい。
電話の鳴る音が聞こえる。だがリツカは気がつかないのか、そのまま道を歩き続けていた。
俺は清水先輩を無視してリツカを追った。
(もうっ、早く気付けよっ)
その時、リツカの足が止まって漸く携帯を取り出したのが見えた。俺は笑みを堪えながらそれを見ていた。
リツカは携帯を見て少し笑みを浮かべる。そして通話ボタンを押して唇が「もしもし」と言ったのも見えた。
だが俺の耳に聞こえていたのは未だに鳴り続けるプルルルという音だけだった。
<<前へ 次へ>>
どういう事だ…(; ・`д・´)
*この作品はフィクションです。実在の人物、場所、団体、事件などにはいっさい関係ありません。
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拍手秘コメの場合は普通コメント欄にてお返事致します。
お礼拍手あり☆6種ランダム
だが俺達は言葉を交わす事はない。リツカとそっと人目を盗んで唇を付けてみたり痴漢の真似事をするだけだ。そうしてリツカは艶っぽい笑みを口元に浮かべて先に降りて行く。
「上原さん、何か……しっとりしてますね」
同僚の女の子が俺を見て頬を赤らめた。
(俺、そんなにエロい顔でもしてたかな?)
俺は無意識にはにかんだ笑みを浮かべた。それを見た女子社員がときめいたのは俺だけが知らない事だ。
「あれ……」
少し席の離れた所で清水先輩の声が聞こえた。
「あ……普通だ。気のせいかな」
この間俺が騒いだせいで全てのPCを調べたばかりだ。セキュリティも問題ないし誰かに侵入された形跡も無かった。
だが一応気になって先輩の所に行くと、先輩曰く立ち上げの際一瞬カーソルの点滅が遅かったように見えたらしい。
俺達のPCは普通のものと違う。特殊なもので立ちあげの際黒い背景のプログラム画面が出る。そこのカーソルの点滅の事を言っていた。
ここのところの幾つかの気になる点の事があって俺と清水先輩は部長から霞ヶ関に行けと言われた。俺達は二人で政府の情報機関に赴いて一通り向こうの情報システムを調べる事となった。
久々に来る各省庁の揃うこの場所は、やはりお堅い感じの人たちがとても多い。
俺たちはあまり関係のない外務省の中に入った。世間には知られていない機密情報局がある事は一部の人しか知らない。
俺と清水先輩は会社から貰った通行証を守衛の人に見せて門の中へ入った。
入り口では受け付けの人とのやりとりを終えた後、荷物検査とスキャニングを行ってやっと中へ入れる。
中に入ると、意外と庶民的な内装に最初は驚く。俺は何回か来ていたのでどのエレベータに乗れば場所に辿り着くかが分かった。
段々と地下へ続く廊下を進むとまた守衛がいる。通行証を見せると「ご苦労様です、どうぞ」と中年だが引き締まった身体の守衛に敬礼された。ここにいる守衛はきちんと防衛庁から派遣されているらしい。
中に入ると更にエレベーターで地下へと進んだ。空調のせいか冷やりとした空気が汗を冷やしていく。青い色の強い蛍光灯が更に身体を冷やす様に感じた。
最後のドアが開くと、中には膨大な量の大型コンピューターが置かれていた。そこにある幾つかの部屋では少人数がここでも機密情報を守っている。
「お疲れ様です。STSの清水です」
清水先輩が慣れたように挨拶を交わし、俺達は色々と調べ始めた。膨大な量がある為、一週間はここに顔を出さないといけない。
俺達はひたすら手分けして黙々と作業に当たった。
今日のところは何もなく夜七時になって切り上げた。会社に連絡するとそのまま直帰していいとの連絡を受けて、大喜びした清水先輩は早速俺を強制的に飲みに誘った。
リツカはまだ仕事をしてるのだろうか。メールでもしてみようかと思った時、清水先輩が強引に俺の肩を抱いて進み出した。
その時だった。あまりにリツカに会いたかったせいなのか、広い道路の反対側にリツカにとてもよく似た人を見かけて立ち止まった。
「あれっ……」
「どうした? 知り合いでもいたか?」
清水先輩も一緒になって止まり、俺の目線の先にいる人を探す。
リツカに似てる。遠目から見ても姿形や髪型が似ているのが分かった。だが眼鏡を掛けていた。俺はリツカの視力なんて知らない。もしかしたらコンタクトだったのかもしれない。
リツカの職場は新宿じゃなかったのだろうか。仕事の関係でここまで来たのだろうか。だとしたらこんな偶然は運命としか思えない。
俺はドキドキしながら携帯を取り出し急いで電話をかけた。俺がここにいると知ったらリツカはどんな顔をするだろう。驚いた顔が見たい。
電話の鳴る音が聞こえる。だがリツカは気がつかないのか、そのまま道を歩き続けていた。
俺は清水先輩を無視してリツカを追った。
(もうっ、早く気付けよっ)
その時、リツカの足が止まって漸く携帯を取り出したのが見えた。俺は笑みを堪えながらそれを見ていた。
リツカは携帯を見て少し笑みを浮かべる。そして通話ボタンを押して唇が「もしもし」と言ったのも見えた。
だが俺の耳に聞こえていたのは未だに鳴り続けるプルルルという音だけだった。
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どういう事だ…(; ・`д・´)
*この作品はフィクションです。実在の人物、場所、団体、事件などにはいっさい関係ありません。
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コメント
> なんとまぁ、高度な技術を使うのかしら、リツカさん。
高等技術なのか魔術師なのか。
ドッペルゲンガー現象を引き起こしております(´Д`A;)
> 清水先輩置いてけぼりにしちゃって、ダメな子ですねぇ!
あはは(≧∀≦)
本当です!
可哀想な清水先輩(笑)
恋する男子は他の男なんて興味はないのか!(笑)
> セキュリティのほうはなんとかなったのかな?
> そして、リツカさんは何者?!
> どんなふうに展開していくのか楽しみにしています。
色々謎が出てきております。(。-`ω´-)y-・~~ウーン
展開、どうなるのでしょうか……。
.....φ(=ω=`)zzZZ ←あw
楽しみにして下さる事を励みに頑張ります☆
コメントどうもありがとうございました
> それは、悪い顔した綺麗なお兄さんが二人になりましたってことかしら(//∀//)エヘッ
> ある意味おいしい・・・(//∀//)
ダブルリツカ疑惑です(笑)
確かに悪い顔した綺麗なお兄さん二人って
何て美味しい絵づら…( ̄ー ̄)ニヤ...
> 双子でしょうか?それとも、携帯二個持ち?!
> シンちゃんの不通の電話はどうなるの~(≧▼≦)
> 前作に引き続きスリルとサスペンスですな~(笑)
携帯、何個持ってるのか。
それとも双子か。
タイトルに似合わず実はシリアス路線まっしぐらな
構想だったりします(^_^;)
コメントどうもありがとうございました
らぶらぶしてたのも束の間。
サスペンス劇場にっ(>ω<)
こんな題名ですが実は構想はシリアスだったりします(笑)
> _φ(..)気になるので、メモメモ…
はっ!∑(°ロ°*)
しろがねさまにメモをとられているっ
。゚o。ドキ*((゚艸゚〃))*ドキ。o゚。 ←
> 双子なの?同一人物なの!?と、ドキドキしちゃいますぅ!!
> 更新時間が待ちきれないです
>
> いやーん
双子疑惑が!! (*゜Д゜)
確かにこやつの正体が分からないのが
何やら怪しげですっ
更新時間待って下さって嬉しいです!!(ノД`)・゜・
頑張ります(>ω<)!
コメントどうもありがとうございました
> シンたん可愛すぎるよ~(///∇//)テレテレ
ありがと~(//∀//)
ってぎゃーっ!澪ちんの魂がっっΣ(゚Д゚;)
> (;゚ロ゚)ハッ 一転してサスペンス?ミステリー!?
> やっぱりパソの異常にはナニかがある?[壁]д=) ジー ←
> リツカらしき人物!これも\_('д'o)注目☆
澪てんてーが解説をv
何やらサスペンスめいてきました~(^_^;)
> (@`▽´@)/ ハイッ 桔梗てんてー!
> 続きが気になりまつっ!ジタバタo(+_+。)(。+_+)o ジタバタ
ジタバタしてる(笑)
可愛え~の~(*´Д`)ハァハァ ←危
さて…。真相や如何に。
コメントどうもありがとうございました
なんとまぁ、高度な技術を使うのかしら、リツカさん。
清水先輩置いてけぼりにしちゃって、ダメな子ですねぇ!
セキュリティのほうはなんとかなったのかな?
そして、リツカさんは何者?!
どんなふうに展開していくのか楽しみにしています。
それは、悪い顔した綺麗なお兄さんが二人になりましたってことかしら(//∀//)エヘッ
ある意味おいしい・・・(//∀//)
双子でしょうか?それとも、携帯二個持ち?!
シンちゃんの不通の電話はどうなるの~(≧▼≦)
前作に引き続きスリルとサスペンスですな~(笑)
_φ(..)気になるので、メモメモ…
双子なの?同一人物なの!?と、ドキドキしちゃいますぅ!!
更新時間が待ちきれないです
いやーん
シンたん可愛すぎるよ~(///∇//)テレテレ
(;゚ロ゚)ハッ 一転してサスペンス?ミステリー!?
やっぱりパソの異常にはナニかがある?[壁]д=) ジー ←
リツカらしき人物!これも\_('д'o)注目☆
(@`▽´@)/ ハイッ 桔梗てんてー!
続きが気になりまつっ!ジタバタo(+_+。)(。+_+)o ジタバタ
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