07/20/2011(Wed)
妄想列車 10話
俺の自宅、というよりも塒は一か所だけじゃない。東京と地方にも幾つか用意されている。
シンと過ごす部屋は比較的プライベートを過ごすのに使うマンションだ。
「Hey, why don’t we stay together tonight?」
アンネが大きな胸を見せつける様に迫って来る。要するにアンネは今夜俺と一緒にいないか、つまりは寝ないかって誘って来ている。
俺はカタカタとパソコンを操作しつつそれを一瞥して「悪い。ちょっとここのところ忙しくて予約が一杯なんだ」と断った。
そう言えばここ最近はめっきり女よりも男を抱いている気がする。
「リツカ。都庁の方からバンで霞が関の方まで電波のサーチして来い」
「はい」
ボスの命令で俺はひっつくアンネを剥がして外へ出た。むっとする湿気で直ぐに汗がじわりと服を湿らせる。
一通り黒塗りのバンの中では四方八方から何台ものパソコンに囲まれる。それらを操作して霞が関の方まで移動した。
夜まで捜査をして、一度ボスに定期報告を入れると「よし。今日はもうそのまま上がっていいぞ。あとは頼んだ」と言われてそのままバンを出た。
ずっと車の中で座っていたので腰が痛い。グンと背伸びをすると、少し小腹が空いたのに気付く。
シンはまだ仕事だろうな……。何か食って帰るか。
俺は適当に広い道路脇を歩いていた。少し歩いていると何となくポケットが揺れている気がして取り出した。
案の定着信があった。画面には「健」と表示されていた。
多分街に設置した小型監視カメラで俺の姿を見ているのだろう。しょうがない奴だな、と俺は薄く笑って電話に出た。
「もしもし」
「あっ、リツカ? 僕だけど、終わったんならご飯一緒に食べない?」
「別にいいけど、お前今どこ」
「ピルクにいるよ。そこから歩いて十分くらいでしょ? このままナビしようか」
「あのアメリカンバーかよ。お前そんな場所でPC開いて見てんのか?」
公共の場でそんなものを発見されたら大変だ。
「大丈夫だよっ。そんなに心配なら早く来てよっ」
俺は本気で焦りながら急ぎ足でピルクに向かった。
「シンッ、おい知り合いか?」
いきなり先輩に肩を掴まれて俺は驚いた。驚いていても目は離れていくリツカを追っていた。
「えぇ……まぁ」
ダメだ。気になる……。
「先輩、俺やっぱりちょっと声かけてきますっ」
「え?! あ、じゃあ俺も行くよ! ていうか、皆で飲めばいいじゃん!」
良い事を思いついたというようなはりきり顔の清水先輩に、断る時間もなくとにかくリツカの後を追った。
電話の相手は誰なんだ。何であんな顔したんだよ。あの携帯、いつものじゃないのか?
一歩一歩踏み出す毎に不安で足が重くなっていく気がした。
リツカはそんなに距離を行かない場所で、レトロな感じの地下にあるバーに入っていった。
「リツカっ、こっち」
嬉しそうに笑って手を振る健は昔あった時からあまり変わっていない様に思える程童顔で可愛かった。
そそくさとパソコンを鞄にしまった健はソファに横並びになれる席を取っていたらしい。俺が座ると早速腕を絡ませてキスをしてきた。
「はいはい。分かったから。とりあえずビールでも飲ませてくれよ。喉乾いたんだ」
「うんっ。おにーさん、ビール二つねっ。ねぇ、リツカぁ、顔もっとよく見せてよー」
メニューを見る俺の顔を容赦なく横に向けられる。首が痛い。
うっとりとした顔で俺を見つめる健は薄茶色の髪が少しウェーブしていて本当に小動物みたいだ。
健が俺のスーツを掴んでキスを迫った時だった。
「リツカ」
聞いた事のある透明感のある声は震えていた。
テーブルの前に立っていたのはシンだった。
「偶然……見かけたんだ。……で、あの、この先輩と皆で飲もうかって話になって入ってみたんだっ。でも、あの、ゴメンっ」
俺はシンの泣きそうな顔を見て初めて“胸が痛い”という感覚を味わった。
俺が中腰まで立ち上がってシンに言葉をかけようとした時、シンの後ろにいた先輩という奴がシンの腰に手を当てて「どうすか? 一緒に飲みません?!」とやけに馴れ馴れしく相席してきた。
計算なのか天然なのか分からないこの先輩とかいう男のあっけらかんとした態度が気に入らない。やたらとシンの身体に触っているのも勘に触る。
俺は目の前のシンが明らかに涙を我慢している顔を見て胸をギュッと掴まれた感覚になる。この顔をさせているのは俺だと思うだけで、今直ぐ抱き締めて違う泣き顔にさせたくなった。
そんな俺の気持ちを余所に、清水という男はシンのサラサラした髪をクシャクシャと撫でて「どうした? 具合でも悪いのか?」と顔を近づけた。
<<前へ 次へ>>
(`・д´・ ;)ゴクリ
本日沢山の拍手をありがとうございました!
600以上頂いて失神しそうになりました…くらっ ‥…(o_ _)o パタッ
皆さまいつも拍手ありがとうございます!!
拍手はやはりとても嬉しいものですね+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
励みに頑張ります☆
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お礼画像あり☆6種ランダム
シンと過ごす部屋は比較的プライベートを過ごすのに使うマンションだ。
「Hey, why don’t we stay together tonight?」
アンネが大きな胸を見せつける様に迫って来る。要するにアンネは今夜俺と一緒にいないか、つまりは寝ないかって誘って来ている。
俺はカタカタとパソコンを操作しつつそれを一瞥して「悪い。ちょっとここのところ忙しくて予約が一杯なんだ」と断った。
そう言えばここ最近はめっきり女よりも男を抱いている気がする。
「リツカ。都庁の方からバンで霞が関の方まで電波のサーチして来い」
「はい」
ボスの命令で俺はひっつくアンネを剥がして外へ出た。むっとする湿気で直ぐに汗がじわりと服を湿らせる。
一通り黒塗りのバンの中では四方八方から何台ものパソコンに囲まれる。それらを操作して霞が関の方まで移動した。
夜まで捜査をして、一度ボスに定期報告を入れると「よし。今日はもうそのまま上がっていいぞ。あとは頼んだ」と言われてそのままバンを出た。
ずっと車の中で座っていたので腰が痛い。グンと背伸びをすると、少し小腹が空いたのに気付く。
シンはまだ仕事だろうな……。何か食って帰るか。
俺は適当に広い道路脇を歩いていた。少し歩いていると何となくポケットが揺れている気がして取り出した。
案の定着信があった。画面には「健」と表示されていた。
多分街に設置した小型監視カメラで俺の姿を見ているのだろう。しょうがない奴だな、と俺は薄く笑って電話に出た。
「もしもし」
「あっ、リツカ? 僕だけど、終わったんならご飯一緒に食べない?」
「別にいいけど、お前今どこ」
「ピルクにいるよ。そこから歩いて十分くらいでしょ? このままナビしようか」
「あのアメリカンバーかよ。お前そんな場所でPC開いて見てんのか?」
公共の場でそんなものを発見されたら大変だ。
「大丈夫だよっ。そんなに心配なら早く来てよっ」
俺は本気で焦りながら急ぎ足でピルクに向かった。
「シンッ、おい知り合いか?」
いきなり先輩に肩を掴まれて俺は驚いた。驚いていても目は離れていくリツカを追っていた。
「えぇ……まぁ」
ダメだ。気になる……。
「先輩、俺やっぱりちょっと声かけてきますっ」
「え?! あ、じゃあ俺も行くよ! ていうか、皆で飲めばいいじゃん!」
良い事を思いついたというようなはりきり顔の清水先輩に、断る時間もなくとにかくリツカの後を追った。
電話の相手は誰なんだ。何であんな顔したんだよ。あの携帯、いつものじゃないのか?
一歩一歩踏み出す毎に不安で足が重くなっていく気がした。
リツカはそんなに距離を行かない場所で、レトロな感じの地下にあるバーに入っていった。
「リツカっ、こっち」
嬉しそうに笑って手を振る健は昔あった時からあまり変わっていない様に思える程童顔で可愛かった。
そそくさとパソコンを鞄にしまった健はソファに横並びになれる席を取っていたらしい。俺が座ると早速腕を絡ませてキスをしてきた。
「はいはい。分かったから。とりあえずビールでも飲ませてくれよ。喉乾いたんだ」
「うんっ。おにーさん、ビール二つねっ。ねぇ、リツカぁ、顔もっとよく見せてよー」
メニューを見る俺の顔を容赦なく横に向けられる。首が痛い。
うっとりとした顔で俺を見つめる健は薄茶色の髪が少しウェーブしていて本当に小動物みたいだ。
健が俺のスーツを掴んでキスを迫った時だった。
「リツカ」
聞いた事のある透明感のある声は震えていた。
テーブルの前に立っていたのはシンだった。
「偶然……見かけたんだ。……で、あの、この先輩と皆で飲もうかって話になって入ってみたんだっ。でも、あの、ゴメンっ」
俺はシンの泣きそうな顔を見て初めて“胸が痛い”という感覚を味わった。
俺が中腰まで立ち上がってシンに言葉をかけようとした時、シンの後ろにいた先輩という奴がシンの腰に手を当てて「どうすか? 一緒に飲みません?!」とやけに馴れ馴れしく相席してきた。
計算なのか天然なのか分からないこの先輩とかいう男のあっけらかんとした態度が気に入らない。やたらとシンの身体に触っているのも勘に触る。
俺は目の前のシンが明らかに涙を我慢している顔を見て胸をギュッと掴まれた感覚になる。この顔をさせているのは俺だと思うだけで、今直ぐ抱き締めて違う泣き顔にさせたくなった。
そんな俺の気持ちを余所に、清水という男はシンのサラサラした髪をクシャクシャと撫でて「どうした? 具合でも悪いのか?」と顔を近づけた。
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本日沢山の拍手をありがとうございました!
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コメント
Σ(ロ゚ ノ)ノビクッ! ←
> 森さん、涙目になっちゃったんですね(泣)
>
> ヨシヨシ}(。_ _)ノ(≧△≦。){ウエーン
森ちゃんてばしろがねさまに
よしよしされて何と羨ましいっ
> おばちゃんが、叱っておきますよ的な気持ちになってしまいました
>
> いけまてん!!}(. .)ノ(_ _)
>
可愛い叱り方……(*´Д`)ハァハァ ←危
もっと叱ってやって下さい!
> 健さんは、とりあえず邪魔邪魔なので、ふん縛って袋の中にほうり込んでおきますか。
>
> なんだか、サスペンスとド修羅場の予感がいたします
健ちゃんは任せて下さい……ふふふ。
ィヤァーン♪ ヾ(*´Д`*)ノ ~~~~~\o(▼皿▼〃) オラオラ!!!
サスペンス&修羅場の始まり始まりですね…。
でもその前に…ちょっと甘いタイム??
o((*・ω・*))o゙ ワクワク♪
> 続きが気になります~
ありがとうございます!
引き続き動向を探ります ァィ(。・Д・)ゞ
コメントどうもありがとうございました
Mさまが壁から覗いていらっしゃる!!
Σ(゚∀゚ノ)ノキャー ←w
あーん、楽しい寸劇までありがとうございます(//∀//)
って、指摘して頂いたのに見たの今って……orz
一日経ってしまっていたという;
(p_q*)シクシク
スミマセン。
しかしさすがマスターだなぁ(//∀//)
すごいなぁ・:*:・(*´∀`*)ウットリ・:*:・
コメントどうもありがとうございました
> もう、リツカったら悪い子ね(*・д・)σツン
まぁっ!
澪ちんに突かれたリツカ(笑)
危ないわ、澪ちん!逃げてっ!(笑)
襲われちゃう~
> Σ( ̄口 ̄*)はうっ!思ったより早くに来たバッティング!!
私もビックリ(笑)
早っっ!!(笑)みたいな
> シンちゃんの泣きそうな顔…(*´д`*)ハァハァ・・あ、間違えたw(ノω・、) ウゥ・・・ ←
あ、ちょっと本音が見えた(笑)
> リツカ初めての心の痛み\_('д'o)注目☆
> 初恋?初恋?(〃ω〃) キャァ♪
ね!?ね!?
.+゚ゎくゎく.+゚(o(。・д・。)o).+゚ぅきぅき.+゚
> ・・・清水先輩なかなかやりよりますなぁ( ̄▽ ̄) ニヤ
> この凄い現場いったいどーなる!?
本当……どうなるのだろう( = =) ←
清水先輩はちょっと上手い事役立ってるけど
健ちゃんがお邪魔虫だしな~(笑)
> ((((((ノ゚⊿゚)ノヌオォォォ 600以上の拍手!!
> 凄い~~(=´∀`ノノ゙☆パチパチパチ
> みんな桔梗ちんと桔梗ちんの作品∟□∨Ε...φ( ̄▽ ̄*)ポッ なんだね♪
+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
ありがとう!!
かなり大変だったと思いますのに……涙
皆さまに少しでも面白い、エロい、ウケル、泣ける、
などなど思って頂けるように頑張ります!!
コメントどうもありがとうございました
あはは(≧∀≦)
ちこさんまでメモを取っている(笑)
清水も少しは役に立っているような!?
> 健ちゃん、甘えちゃんで可愛いのだ(≧▼≦)
> こんな子はとりあえず、縛ってしまえっ(笑)←えっ?
よしキタ!!
(;´Д`)ノθ゙゙ ヴイィィィィン ←違
> シンちゃん、結局清水先輩をだしにして、リツカの追跡しちゃいましたが、どうするんだ~ぁ(><)
> しかも、即席合コン(笑)
> 携帯は二個持ちでしたねっ、マンションはさらに複数お持ちだと・・・ふふふっ(//∀//)
> 妄想列車の乗客がここにも、一人・・・(//∀//)エヘッ
あはは(≧∀≦)
即席合コン!!確かに(笑)
しかも気まずい合コンだっっ
携帯もマンションも複数持ち……何て奴だ。
あ、乗客の中になんとちこさんが混ざっていた!(笑)
コメントどうもありがとうございました
森さん、涙目になっちゃったんですね(泣)
ヨシヨシ}(。_ _)ノ(≧△≦。){ウエーン
おばちゃんが、叱っておきますよ的な気持ちになってしまいました
いけまてん!!}(. .)ノ(_ _)
健さんは、とりあえず邪魔邪魔なので、ふん縛って袋の中にほうり込んでおきますか。
なんだか、サスペンスとド修羅場の予感がいたします
続きが気になります~
もう、リツカったら悪い子ね(*・д・)σツン
Σ( ̄口 ̄*)はうっ!思ったより早くに来たバッティング!!
シンちゃんの泣きそうな顔…(*´д`*)ハァハァ・・あ、間違えたw(ノω・、) ウゥ・・・ ←
リツカ初めての心の痛み\_('д'o)注目☆
初恋?初恋?(〃ω〃) キャァ♪
・・・清水先輩なかなかやりよりますなぁ( ̄▽ ̄) ニヤ
この凄い現場いったいどーなる!?
((((((ノ゚⊿゚)ノヌオォォォ 600以上の拍手!!
凄い~~(=´∀`ノノ゙☆パチパチパチ
みんな桔梗ちんと桔梗ちんの作品∟□∨Ε...φ( ̄▽ ̄*)ポッ なんだね♪
健ちゃん、甘えちゃんで可愛いのだ(≧▼≦)
こんな子はとりあえず、縛ってしまえっ(笑)←えっ?
シンちゃん、結局清水先輩をだしにして、リツカの追跡しちゃいましたが、どうするんだ~ぁ(><)
しかも、即席合コン(笑)
携帯は二個持ちでしたねっ、マンションはさらに複数お持ちだと・・・ふふふっ(//∀//)
妄想列車の乗客がここにも、一人・・・(//∀//)エヘッ
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