08/12/2011(Fri)
妄想列車 23話
こんな事をするハッカー集団は一つしかなかった。誰でも知っている集団。2050年にリーダー格も一味全員投獄、或いは死刑となって全滅したとされていた。
まだ一味の生き残りがいて活動をしていたなんて……。
世界は提携してこういう輩が二度と活動出来ないような体制を整えてきたつもりだった。。
「俺さ……あの健くんって子とちょっと……遊んじゃって……もしかしたらあの子が……」
「は? 遊んだって……どういう……。え? 先輩もしかして!?」
「いやだってさ……変に可愛いんだよ、あの子。色っぽくてつい酒飲んで勢いでさ……。でもその時色々会社について聞かれたり世界がどうのって言ってた気がしたんだよ」
健くんが? だとしたらリツカもって事になるじゃないか……。
「それはないよ! あの子変わってるから……」
嘘だ。
「ん? うーん……」
最後に忠告してきたリツカの言葉の数々を、俺はわざと思い出さないようにしていた。
違う。リツカはそんなんじゃない。
でもあんな事言う人そういるだろうか。
俺はリツカに電話をひたすらかけた。それでもただただ鳴り響くベルの単調な音色しか聞こえてこない。
夜、家に急いで帰った俺は隠れんぼでもしているように家中を探し回った。
見つけた小型カメラと盗聴期の多さに膝から崩れた。
見てたんだ……。
俺は裏切られたのか?
健と二人で俺を欺いて、ただその為だけに近づいてきたのか?
あの出会いもわざとだったのか?
暑い涙と汗が混ざり合って次々と流れ落ちて絨毯を濡らしていく。
その時ピピッと別の部屋からパソコンの音が聞こえてハッとした。
「リツカ!?」
飛び上がるようにしてコンピューターのある部屋まで走りドアを乱暴に開けると、そこには人の気配はなかった。
ただ、自動的にPCが起動されていた音だった。
「何で勝手に起動してるんだよ……」
画面上でカーソルが勝手に動いた。
(リツカだ……リツカが遠隔操作してるんだ)
チャット機能のようなものが立ち上げられ、メッセージが出てきた。
『シン。俺たちと一緒に来い』
「……何言ってんだよ……リツカ……本当にあの集団の一員だったのか?」
『あぁ』
「盗聴機取り忘れたな……声聞こえてるんだ?」
『あと二つあるよ。お前の可愛い声がよく聞こえる』
「どうして……」
騙されていた悔しさと悲しさで息が詰まった。
『俺達はこの事実を発表する前にもう国外へ出なくちゃならない。お前にも一緒に来て欲しい』
一緒に……。
「俺は反対だよ。来て欲しくない」
聞き慣れない声がふいに背後からして、俺はビクッと振り向いた。
そこには愛想の良かった顔とはまるで反対の、敵意を剥き出しにした健がいた。
「な……なんで君がここにいるんだよっ!」
「え。だって鍵とかセキュリティとか別に俺に関係ないし。全部開けられるから」
『健! 何でお前がそこにいるんだ! 戻って来い!』
リツカも健の声が届いているのか文章でもどかしく注意を呼び掛けている。
「君が清水先輩を使ってやったのか?!」
俺の声が小刻みに震えていた。
「んー……僕があの先輩から情報を聞きだして、寝てる間に色々探らせて貰ってー、そんで道筋を整えた所にリツカが突破口を開いたって感じかな? ……だって……ねぇ? そのカメラだの盗聴器だのの量……あはは」
笑われて、バカにされて、俺は怒りと恥ずかしさと情けなさでその場から逃げだしてしまいたかった。
「だからさ、リツカに本気になっちゃって今まで君みたいに泣く子は僕ずっと見てきたしさ。そう落ち込むなよっ」
ポンと肩を叩かれて、俺はその手を思い切り叩き落とした。
PC画面を見ると、『健、もう黙れ。シン、俺と来い』と書かれていた。
「俺がリツカと一緒に行っても……どうせこいつだって一緒なんだろ……」
画面のリツカに押し殺すような声で言う。
『まぁ……そうだが別に24時間一緒って訳じゃない。安心しろ』
「ちょっとリツカッ! 何誘ってんだよッ! いつもみたいに黙って去ればいいじゃん!? こんなフォローいらないよっ」
健が顔を赤くして嫉妬に狂っているのが分かった。
そうか……この子、本当にリツカが好きだったんだ……。
でもそれとこれは別の問題だ。
リツカが好きだから行く、という単純な問題ではない。
一緒に行くという事は俺自身がその組織の一員になるという事だ。
「行けない……」
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まだ一味の生き残りがいて活動をしていたなんて……。
世界は提携してこういう輩が二度と活動出来ないような体制を整えてきたつもりだった。。
「俺さ……あの健くんって子とちょっと……遊んじゃって……もしかしたらあの子が……」
「は? 遊んだって……どういう……。え? 先輩もしかして!?」
「いやだってさ……変に可愛いんだよ、あの子。色っぽくてつい酒飲んで勢いでさ……。でもその時色々会社について聞かれたり世界がどうのって言ってた気がしたんだよ」
健くんが? だとしたらリツカもって事になるじゃないか……。
「それはないよ! あの子変わってるから……」
嘘だ。
「ん? うーん……」
最後に忠告してきたリツカの言葉の数々を、俺はわざと思い出さないようにしていた。
違う。リツカはそんなんじゃない。
でもあんな事言う人そういるだろうか。
俺はリツカに電話をひたすらかけた。それでもただただ鳴り響くベルの単調な音色しか聞こえてこない。
夜、家に急いで帰った俺は隠れんぼでもしているように家中を探し回った。
見つけた小型カメラと盗聴期の多さに膝から崩れた。
見てたんだ……。
俺は裏切られたのか?
健と二人で俺を欺いて、ただその為だけに近づいてきたのか?
あの出会いもわざとだったのか?
暑い涙と汗が混ざり合って次々と流れ落ちて絨毯を濡らしていく。
その時ピピッと別の部屋からパソコンの音が聞こえてハッとした。
「リツカ!?」
飛び上がるようにしてコンピューターのある部屋まで走りドアを乱暴に開けると、そこには人の気配はなかった。
ただ、自動的にPCが起動されていた音だった。
「何で勝手に起動してるんだよ……」
画面上でカーソルが勝手に動いた。
(リツカだ……リツカが遠隔操作してるんだ)
チャット機能のようなものが立ち上げられ、メッセージが出てきた。
『シン。俺たちと一緒に来い』
「……何言ってんだよ……リツカ……本当にあの集団の一員だったのか?」
『あぁ』
「盗聴機取り忘れたな……声聞こえてるんだ?」
『あと二つあるよ。お前の可愛い声がよく聞こえる』
「どうして……」
騙されていた悔しさと悲しさで息が詰まった。
『俺達はこの事実を発表する前にもう国外へ出なくちゃならない。お前にも一緒に来て欲しい』
一緒に……。
「俺は反対だよ。来て欲しくない」
聞き慣れない声がふいに背後からして、俺はビクッと振り向いた。
そこには愛想の良かった顔とはまるで反対の、敵意を剥き出しにした健がいた。
「な……なんで君がここにいるんだよっ!」
「え。だって鍵とかセキュリティとか別に俺に関係ないし。全部開けられるから」
『健! 何でお前がそこにいるんだ! 戻って来い!』
リツカも健の声が届いているのか文章でもどかしく注意を呼び掛けている。
「君が清水先輩を使ってやったのか?!」
俺の声が小刻みに震えていた。
「んー……僕があの先輩から情報を聞きだして、寝てる間に色々探らせて貰ってー、そんで道筋を整えた所にリツカが突破口を開いたって感じかな? ……だって……ねぇ? そのカメラだの盗聴器だのの量……あはは」
笑われて、バカにされて、俺は怒りと恥ずかしさと情けなさでその場から逃げだしてしまいたかった。
「だからさ、リツカに本気になっちゃって今まで君みたいに泣く子は僕ずっと見てきたしさ。そう落ち込むなよっ」
ポンと肩を叩かれて、俺はその手を思い切り叩き落とした。
PC画面を見ると、『健、もう黙れ。シン、俺と来い』と書かれていた。
「俺がリツカと一緒に行っても……どうせこいつだって一緒なんだろ……」
画面のリツカに押し殺すような声で言う。
『まぁ……そうだが別に24時間一緒って訳じゃない。安心しろ』
「ちょっとリツカッ! 何誘ってんだよッ! いつもみたいに黙って去ればいいじゃん!? こんなフォローいらないよっ」
健が顔を赤くして嫉妬に狂っているのが分かった。
そうか……この子、本当にリツカが好きだったんだ……。
でもそれとこれは別の問題だ。
リツカが好きだから行く、という単純な問題ではない。
一緒に行くという事は俺自身がその組織の一員になるという事だ。
「行けない……」
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コメント
> リツカ~そんなにたくさんつけてたのかっ!!←食い付くとこ、そこ!?
そうみたいです(>ω<)
大量に発見された模様……;
> 盗聴器だのカメラだの、じつは押し入れに基地とか・・・床下に抜け道とか、あ~スミマセン!!
> ああっ、シリアスな場面なのにっ(≧▼≦)←猛省中
でもそう考えてしまうそうな勢いですよね(笑)
いえいえ~!大丈夫です!(笑)
リツカがそう思わせるような奴なので!
> 痩せてしまった先輩、痩せて抱き心地の悪くなったシンちゃん、さらに意地悪小僧の健ちゃん、覗き魔リツカ、四人の恋を乗せて暴走列車はどこへ行く~(m'□'m)
抱き心地悪い(笑)
確かに痩せていた頃はそんな事を言われたような…(遠い目
四人を乗せた列車、暴走中につき。
更に加速する模様……!?
> さて、突然ですが、ちこさんが、とうとうスマホデビューです(笑)
> 超アナログ人間張り切って、ツイッターという奴を制覇します(笑)
> 桔梗さまのフォローもしますね~って、いつのことかしらね~(≧ε≦)
>
> うふっ(//∀//)
なんとー!!おめでとうございます!
ツイッター制覇して下さい!
(〃д〃)キャ~♪フォロー待ってます☆
いや、簡単ですよ☆ちこさんならすぐものに出来ますよ!
押し倒してやればいいのです!(何の話……
コメントどうもありがとうございました
リツカ~そんなにたくさんつけてたのかっ!!←食い付くとこ、そこ!?
盗聴器だのカメラだの、じつは押し入れに基地とか・・・床下に抜け道とか、あ~スミマセン!!
ああっ、シリアスな場面なのにっ(≧▼≦)←猛省中
痩せてしまった先輩、痩せて抱き心地の悪くなったシンちゃん、さらに意地悪小僧の健ちゃん、覗き魔リツカ、四人の恋を乗せて暴走列車はどこへ行く~(m'□'m)
さて、突然ですが、ちこさんが、とうとうスマホデビューです(笑)
超アナログ人間張り切って、ツイッターという奴を制覇します(笑)
桔梗さまのフォローもしますね~って、いつのことかしらね~(≧ε≦)
うふっ(//∀//)
そのようです(ノД`)・゜・
先輩のばか……(。-д-)ウー
> 盗聴器を見つけたシンさん、衝撃だったと思います。
>
> ココモ…}(;◎◇◎)ノ゜
>
> ゜\(◎◇◎;){コンナトコニモ…
>
>
> 。゜゜(。≧△≦){リツカ~!!
顔文字シンちゃん可愛い(笑)
でもここもあそこもって見つけて恥ずかしいやら
傷つくやらで複雑だと思います(>ω<)
> そんな傷心のシンさんに忍び寄るクセモノ健くん。
>
> ヤキモチもあるんでしょうけど、オイタが過ぎますねぇ…
本当です!
オイタが過ぎる子にはお仕置きです!
ィヤァーン♪ ヾ(*´Д`*)ノ ~~~~~\o(▼皿▼〃) オラオラ!!!
> 職場で炸裂させている、「こちょこちょフルコース、漏れる寸前まで」を食らわせたくなります
>
> (-言-)ノ""
そんなものが流行っているのですか!
楽しそうな職場です(>ω<)!羨ましい!
では健には漏れても止まないフルコースをお見舞い致しましょうか。
( ̄  ̄)………( ̄ー ̄)ニヤ
> 国家の番人のシンさんと、世界の番人であるリツカさん…。
>
> どちらがどちら側に行くのか、その先が気になって焦れ焦れしますぅ…
焦れて下さってありがとうございます!
なかなか書けないのがじれったいです(笑)
うぅ(ノ△・。)
佳境なのに……週末なのに……。
頑張ります(>ω<)!
コメントどうもありがとうございました
盗聴器を見つけたシンさん、衝撃だったと思います。
ココモ…}(;◎◇◎)ノ゜
゜\(◎◇◎;){コンナトコニモ…
。゜゜(。≧△≦){リツカ~!!
そんな傷心のシンさんに忍び寄るクセモノ健くん。
ヤキモチもあるんでしょうけど、オイタが過ぎますねぇ…
職場で炸裂させている、「こちょこちょフルコース、漏れる寸前まで」を食らわせたくなります
(-言-)ノ""
国家の番人のシンさんと、世界の番人であるリツカさん…。
どちらがどちら側に行くのか、その先が気になって焦れ焦れしますぅ…
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