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貴方の狂気が、欲しい 7話

 由朗の所から車に乗り込んだところで時枝の内ポケットの中で携帯のバイブレーターが鳴った。
「はい、時枝です」
「俺だ。さっきお前のスカウトしてきたガキが俺の所へ来たぞ」
 木戸の声を聞いて何分か前の由朗の感触を思い出した。
「大城君ですか? どうでしたか? 彼は」
「珍しい拾いものをしたな」
「あの子と、相手の人の見えていた人生を……少し曲げてみたかったのかもしれません」
「お前はあまり余計な事をしない奴だと思っていたが」
「……気紛れです」
「酷い奴だな」
 電話の向こうで木戸が笑いを含んでいるのが分かる。
「で、あのガキが情報を持って来た。一応歌舞伎町の至る所に盗聴や盗撮の機器をばら撒いているがなかなか妨害されて上手く情報が入らないのが現状だ。ああいうガキにウロウロして貰って揉め事を直接記録して貰った方がよっぽど大きな情報になる。本人にもリスクはそんなにない仕事だ。……お前がそんなに優しいとは知らなかったよ」
 木戸は時枝のした事を遠回しに突いては楽しんでいる。
「……彼の持って来た内容は?」
「何だよ。つまらねぇ奴だなお前」
 つまらない奴だと言われて、時枝は客観的に納得できた。
(本当に……木戸様の仰る通り、私はつまらない人間だな)
「まぁいい。お前今から佐山ん所へ行くだろう? ついでに島の見取り図新しくしたのを持って来い」
「了解致しました」
「あぁ、それからコンタクトにしてけよ」
 電話を切った時枝はプラチナの細い淵の眼鏡を外し、コンタクトレンズを付けた。
 これから尋ねる佐山という組の幹部は眼鏡の掛けていない時枝の方が好みだからだ。

                 * * *

 佐山の持っている料亭に車を付け、いつものように黒服の監視役を二人連れて中へと入った。
「お待ちしておりました、時枝様」
 時枝を出向いたやたら愛想のいい男の後をついて行くと、そこに佐山が待っていた。
「時枝さん、お待ちしてましたよ」
 先日佐山の父が死に、息子が六代目を継ぐ事となった。
 佐山という男は一見、神経質そうな顔立ちだが、幾らか整っている為に銀行か商社にでも勤めているようなイメージがあった。
「あぁ……情報の受け渡しをお茶でも飲みながら先にしようかと思っていたのですが……貴方を見て僕の身体が熱くなってしまった……」
 銀縁の眼鏡をカチリと上げて熱っぽい目で時枝の全身を舐めるように凝視してくる。
 普通に社会に出ていれば女には不自由はしないだろうが、その偏った性癖の為に皆敬遠しているようだった。
 佐山の家系は代々男色家だ。この男の父親とも何度もこうしたやりとりを経て来た。
 そういう姿を何度か見掛けてずっと胸の奥を熱くさせていたのだと言う。
 時枝自身も、いつも帰り際に息子の纏わりつくような視線を感じていたのを覚えている。
「ねぇ、仕事の前にいいでしょう?」
 ハァハァと既に息を荒くした佐山がネクタイを緩めて近づいて来た。
「これも仕事ですよ、佐山さん」
「ぁあっ……そんな冷たい貴方は堪りません! さぁ、早くこちらへ!」
 襖の奥へ入ると布団が一組敷かれ、色々な道具が取り揃えてあった。
 この男の父親は時枝を嬲るのが趣味だったが、息子の方は少し違った。時枝にとってはこちらの方がまだマシだ。
 当たり前のように部屋に一緒に入り、襖の所に立ってジッと二人の様子を監視する木戸の所の者を無視し、佐山は時枝の足元に膝まづいた。
「とっ……時枝様っ……先ずは僕をそのおみ足で踏みつけて下さいませ」
 佐山はMッ気のある男だった。
 時枝は言われるがまま、容赦なく佐山の顔面を踏みつけるとその勢いで佐山の身体が布団の上に崩れた。
「ああぁっ」
 パリッと眼鏡の割れる音がする。その破片を佐山の顔面に押しつけるように強く上から踏みつけてやると、「うぅぅ」と呻き声を上げながら股間を膨らませていた。




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。.:*・゚キャ(*ノω〃)ノキャ゚・*:.。
時枝バージョンS!(笑)

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