02/13/2012(Mon)
貴方の狂気が、欲しい 29話
時枝と木戸は派遣していた男と待ち合わせて近くの事務所へと赴いた。
少し遅れて入って来た男は走って来たのか、少し汗ばんで見えた。
一度や二度では覚えられないような、一般的な顔をした中年の男だ。
男は上手い事声を掛けてきた奴からその周りへと人脈を素早く広げ、下っ端を仕切る男の持つ資料を写真に収める事が出来たと言ってパソコンにデータを送った。
男はしきりに鼻を啜りながら素早く小型カメラに収めた資料内容を拡大した。
「これは、リスト?」
見覚えのある名前や店など何千件もリスト状になっていた。まさしく木戸の関わる人物や建物、グループなど全てだった。
「うちのグループそのままひっくり返して代わりになろうってのか」
木戸は静かな苛立ちを見せた。
「でもですね、時枝さん。アタシが接触したリーダーの男、事情は知らないみたいでしたが、陳グループの一人でしたよ」
その言葉に時枝と木戸の表情が硬くなった。
「陳だと……」
「はい、間違いありません」
(暁明……)
陳グループは日本に入って来ている中国マフィアの一つだ。規模は小さいが、暁明のいる巨大中国組織、李グループの傘下にいる。
木戸たちは昔から無視の出来ない中国の巨大組織と上手くビジネス関係を結ぶ為に李グループと手を結んできた。
これまで友好な関係を築き上げられてきたと思っていたのはこちらだけだったのだろうか。
時枝と木戸は瞬時に最悪の場合を想像して険しい顔になる。
「そう言えばここ最近お前に同行して取引先に行ったがどうも実のない話ばかりだったな……あれはお前を渡さなかったからかと思っていたが」
木戸が時枝の横顔を見た。普段ならちょっと気まずそうにする時枝だが、真剣に考え込んでいる為表情は何も変わらなかった。
「暁明の所へ行く」
木戸が電話を掛けながら席を立つと、すかさず時枝も車の用意をする為慌ただしく動いた。
夜にアポイントの取れた木戸たちは日本らしからぬ、敷地内へと入って行った。
「いらっしゃい。木戸さんは久し振りですね」
出迎えてくれた暁明は長い黒髪を一つに束ね、濃紺の絹生地に小さな白い花の散りばめられた中国服に身を包んでいた。
木戸は久し振りにこの男を見たが、気高い美しさは相変わらずだと思った。
物腰が柔らかく気品があって、それでいて頭が切れる。
「どうぞ」
広すぎない客間は中国の皇帝が使うんじゃないかと思いそうな、上品で上等な家具で纏められた部屋だった。
使用人が香りの高いジャスミン茶を静かに用意してくれる。
「最近の俺たちのグループを狙ってる奴の動きは知ってるな?」
気の短い木戸はお茶を楽しむ事もせずに話を切りだした。
「君に誤魔化しは出来ないからね。イエスと答えておくよ」
椅子に肘を掛け、指で顎を支える姿は木戸とそう変わらない体格のにも関わらず妙に妖艶さを醸し出させている。
木戸はこの男に妙な親近感を感じていた。それは今に始まった事ではなく、恐らく初めて会った時からずっとだ。
だからと言って近づくには危な過ぎる相手であり仕事上難しい。
時枝がこの男に妙に心を許している節があるのも最近では気に食わなかった。
(食えない男だ)
「情報も渡す。それに殺したい奴を何人でもリストを挙げて貰えれば殺る。だから知ってる事は全部言って貰いたい」
暁明はスッと真剣な眼差しになった。
「正直俺もそんなに核心を知っている訳じゃないんだが……どうも嫌な予感がするんだ。何がって、内部から動いてるからね」
「内部?」
「そう……俺達の組織図を良く知り、確実にポイントを突いて潰しに掛ってきている事からも内通者がいるか、もしくは内部の人間の仕業か」
「まさか……でもその方が納得がいくな」
木戸が険しい目をする。
「元々潜り込んでいたスパイが今動いたって線もありますね」
時枝の発言に二人も頷く。
「俺の探っている範囲ではまだこちらにはそれらしき人物は出て来ない」
「え……もう調べて貰っているんですか?」
驚いた時枝に暁明が優しく微笑みかけた。
「木戸さんたちとはこれからも上手くやっていきたいし、その為に信用度を下げたくないからね。……それに俺は時枝が大好きだから力になりたいんだ」
時枝はふわっと頬が熱くなった。
<<前へ 次へ>>
続き遅くなりました~ッ(>_<)
すみません!
ちょっと仕事でトラブルもありましてゴタゴタしてました;
新しい子も入り、社内引っ越しもあり、やっと今日時間がでけたー!
という感じで(´Д`A;)
いつもスローですみません;;
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拍手秘コメの場合は普通コメント欄にてお返事致します。
お礼画像あり☆6種ランダム
少し遅れて入って来た男は走って来たのか、少し汗ばんで見えた。
一度や二度では覚えられないような、一般的な顔をした中年の男だ。
男は上手い事声を掛けてきた奴からその周りへと人脈を素早く広げ、下っ端を仕切る男の持つ資料を写真に収める事が出来たと言ってパソコンにデータを送った。
男はしきりに鼻を啜りながら素早く小型カメラに収めた資料内容を拡大した。
「これは、リスト?」
見覚えのある名前や店など何千件もリスト状になっていた。まさしく木戸の関わる人物や建物、グループなど全てだった。
「うちのグループそのままひっくり返して代わりになろうってのか」
木戸は静かな苛立ちを見せた。
「でもですね、時枝さん。アタシが接触したリーダーの男、事情は知らないみたいでしたが、陳グループの一人でしたよ」
その言葉に時枝と木戸の表情が硬くなった。
「陳だと……」
「はい、間違いありません」
(暁明……)
陳グループは日本に入って来ている中国マフィアの一つだ。規模は小さいが、暁明のいる巨大中国組織、李グループの傘下にいる。
木戸たちは昔から無視の出来ない中国の巨大組織と上手くビジネス関係を結ぶ為に李グループと手を結んできた。
これまで友好な関係を築き上げられてきたと思っていたのはこちらだけだったのだろうか。
時枝と木戸は瞬時に最悪の場合を想像して険しい顔になる。
「そう言えばここ最近お前に同行して取引先に行ったがどうも実のない話ばかりだったな……あれはお前を渡さなかったからかと思っていたが」
木戸が時枝の横顔を見た。普段ならちょっと気まずそうにする時枝だが、真剣に考え込んでいる為表情は何も変わらなかった。
「暁明の所へ行く」
木戸が電話を掛けながら席を立つと、すかさず時枝も車の用意をする為慌ただしく動いた。
夜にアポイントの取れた木戸たちは日本らしからぬ、敷地内へと入って行った。
「いらっしゃい。木戸さんは久し振りですね」
出迎えてくれた暁明は長い黒髪を一つに束ね、濃紺の絹生地に小さな白い花の散りばめられた中国服に身を包んでいた。
木戸は久し振りにこの男を見たが、気高い美しさは相変わらずだと思った。
物腰が柔らかく気品があって、それでいて頭が切れる。
「どうぞ」
広すぎない客間は中国の皇帝が使うんじゃないかと思いそうな、上品で上等な家具で纏められた部屋だった。
使用人が香りの高いジャスミン茶を静かに用意してくれる。
「最近の俺たちのグループを狙ってる奴の動きは知ってるな?」
気の短い木戸はお茶を楽しむ事もせずに話を切りだした。
「君に誤魔化しは出来ないからね。イエスと答えておくよ」
椅子に肘を掛け、指で顎を支える姿は木戸とそう変わらない体格のにも関わらず妙に妖艶さを醸し出させている。
木戸はこの男に妙な親近感を感じていた。それは今に始まった事ではなく、恐らく初めて会った時からずっとだ。
だからと言って近づくには危な過ぎる相手であり仕事上難しい。
時枝がこの男に妙に心を許している節があるのも最近では気に食わなかった。
(食えない男だ)
「情報も渡す。それに殺したい奴を何人でもリストを挙げて貰えれば殺る。だから知ってる事は全部言って貰いたい」
暁明はスッと真剣な眼差しになった。
「正直俺もそんなに核心を知っている訳じゃないんだが……どうも嫌な予感がするんだ。何がって、内部から動いてるからね」
「内部?」
「そう……俺達の組織図を良く知り、確実にポイントを突いて潰しに掛ってきている事からも内通者がいるか、もしくは内部の人間の仕業か」
「まさか……でもその方が納得がいくな」
木戸が険しい目をする。
「元々潜り込んでいたスパイが今動いたって線もありますね」
時枝の発言に二人も頷く。
「俺の探っている範囲ではまだこちらにはそれらしき人物は出て来ない」
「え……もう調べて貰っているんですか?」
驚いた時枝に暁明が優しく微笑みかけた。
「木戸さんたちとはこれからも上手くやっていきたいし、その為に信用度を下げたくないからね。……それに俺は時枝が大好きだから力になりたいんだ」
時枝はふわっと頬が熱くなった。
<<前へ 次へ>>
続き遅くなりました~ッ(>_<)
すみません!
ちょっと仕事でトラブルもありましてゴタゴタしてました;
新しい子も入り、社内引っ越しもあり、やっと今日時間がでけたー!
という感じで(´Д`A;)
いつもスローですみません;;
★拍手コメントのお返事はボタンを押して頂いた拍手ページ内に致します。
拍手秘コメの場合は普通コメント欄にてお返事致します。
お礼画像あり☆6種ランダム
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コメント
> どうなちゃうの~~┣¨キ(*゚Д゚*)┣¨キ
(`・д´・ ;)ゴクリ
不穏な空気になって参りました(>ω<)
何だかんだと複雑な環境の人たちですものね;
変な事が起きませんように…。
> 桔梗さま、ご多忙の中の更新を ありがと~♪ヾ(^Д^*)ノ
うお~ん(叫
とんでもないです(>△<)
こちらこそお休みが多いのにいつも読んで下さって
本当に嬉しいです!!
ありがとうございます(*´∇`*)
いつもいつも思いますが、こんな拙文ですが、
読んで頂けるって本当に有難いなって思います。
> 疲れた体は、風邪も引きやすいし インフルエンザも流行ってる時季だし 無理しないで 休める時は しっかり休んでね!
> [壁]ノ´∀`)ノ~~ byebye☆.+;・ο。..+
本当ですよね(>_<)
インフルエンザ、流行ってますのでけいったんさまも
十分お身体ご自愛下さいね!
お気遣いありがとうございます(*´∇`*)
コメントどうもありがとうございました
どうなちゃうの~~┣¨キ(*゚Д゚*)┣¨キ
桔梗さま、ご多忙の中の更新を ありがと~♪ヾ(^Д^*)ノ
疲れた体は、風邪も引きやすいし インフルエンザも流行ってる時季だし 無理しないで 休める時は しっかり休んでね!
[壁]ノ´∀`)ノ~~ byebye☆.+;・ο。..+
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