02/14/2012(Tue)
貴方の狂気が、欲しい 30話
時枝のほんのり桜色に染まった白い顔を見た暁明は目を丸くした。
「どうしたの……恥ずかしがるなんて。今までそんな顔一度だってしなかった君が」
「時枝」
木戸の厳しい声に少し焦りながら謝った。
「木戸さんの前で恐縮なんだけど……すごいそそられて困るなァ」
暁明が豹のように獲物を狙う目をし、ペロリと舌舐めずりをする。
「悪いが時枝はもうそういう行為はしない。どうしてもというならそれ相応の情報をやろう」
「き、木戸さまっ……暁明さまにもですか?」
時枝はてっきり木戸が自分の嫌がる相手に対してそういう処置をとってくれているのだと都合良く解釈していた。だから自分が大丈夫な取引相手にはある程度ビジネス出来ると思っていたし、損を最小限に抑えられるとも考えていた。
「は? 当たり前だろ……何だ? この男には特別いいと言うのか? お前が嫌じゃないから?」
「え……あの……確かに私は暁明さまなら別に大丈夫ですし、少しでも上手く交渉が」
「てめェの都合なんて聞いてねェんだよ、俺が気に食わないんだよ」
「あ……」
様子を窺っていた暁明は事情を把握して楽しそうにお茶を啜った。
暁明からは何も要求されなかった。
「面白いものが見られたからいいです」と送り出してくれた二人は無言のまま木戸のマンションへ帰った。
(気まずい……私のせいでまた木戸さまを怒らせてしまった)
時枝は溜息をついた。
(どうして私は木戸さまの気持ちが考えられないんだろう)
木戸は荷物を置くと、再び玄関へ戸向かった。
「き、木戸さまっ……どちらへ……」
「どこでもいいだろ」
「で、でも……この後は別に仕事はない筈では……」
「仕事じゃねぇよ。他の奴とヤりたくなったから出てくるだけだ」
時枝は冷水を頭から浴びたように感じた。
「申し訳ありませんでしたッ……あの、私暁明さまとしたいとか、そういうのではなくてッ」
「いや、もういい。行って来る。お前は部屋から出るな」
「木戸さまッ」
(行かないで!!)
バタンとドアの締まる音を目の前で見て、時枝はそのまま床に座り込んだ。
自分のせいというのもあった。強く行かないで欲しいと叫べなかった。
カチ、カチ、カチ、と時計の針の音がいつもより大きく広い部屋に響いていた。
時枝は明かりを点けたままベッドに潜っていた。
一人で寝るシーツはいつまでたっても冷たいままで、時枝の身体を冷やし続けていた。
窓の外が青く光って来たのを見て、漸く電気を消す。
(今頃他の人を抱いているのだろうか)
ズキッと胸が痛む。
今頃木戸の体温を自分ではない人間が共有していると想像した。途端に身体はどんどん冷えていき、反比例して体内にマグマのような熱の塊が大きく膨らんできた。
ガチャッと玄関の音がして、暫くすると部屋のドアが開いたのが分かった。
静かな足音で、それが木戸だと確信した。
直ぐに飛び起きて顔を見たいのに、ジッと息を潜める様にして寝たふりを続けた。
木戸は服を脱ぐと、そのままベッドに入って来た。寝る時の木戸は大抵ボクサーパンツ一枚だ。
時枝は妙に緊張したが、木戸は時枝に触れる事もなく反対向きに横になった。
そっと目を開けて木戸の姿を確認する。
背中に幾つか真新しい引っ掻き傷と、首にキスマークにも見える赤みが付いていた。
(木戸さま……その傷を付けたのは誰ですか……その子を殺しても、いいですか……)
傷に触れる寸前まで手を伸ばし、そのまま触れずに手を引いた。そして時枝は声を殺して涙を枕に染み込ませた。
次の日、いつものように接してくる木戸に、最初はぎこちなかった時枝だったが「お前がイイ子にしていれば俺は他に用はない」と宥められ、そのうちにいつも通りに戻った。
全ては自分のせいだから受け入れるのが筋だと、そう思う事にした。
そうこうしているうちに、由朗からの呼び出しがあった。
<<前へ 次へ>>
木戸の奴めェーっ
木戸の奴めェーっ(o>Д<)o
そして皆さま!
ハッピーバレンタイン。゚+.ヽ(´∀`*)ノ ゚+.゚
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お礼画像あり☆6種ランダム
「どうしたの……恥ずかしがるなんて。今までそんな顔一度だってしなかった君が」
「時枝」
木戸の厳しい声に少し焦りながら謝った。
「木戸さんの前で恐縮なんだけど……すごいそそられて困るなァ」
暁明が豹のように獲物を狙う目をし、ペロリと舌舐めずりをする。
「悪いが時枝はもうそういう行為はしない。どうしてもというならそれ相応の情報をやろう」
「き、木戸さまっ……暁明さまにもですか?」
時枝はてっきり木戸が自分の嫌がる相手に対してそういう処置をとってくれているのだと都合良く解釈していた。だから自分が大丈夫な取引相手にはある程度ビジネス出来ると思っていたし、損を最小限に抑えられるとも考えていた。
「は? 当たり前だろ……何だ? この男には特別いいと言うのか? お前が嫌じゃないから?」
「え……あの……確かに私は暁明さまなら別に大丈夫ですし、少しでも上手く交渉が」
「てめェの都合なんて聞いてねェんだよ、俺が気に食わないんだよ」
「あ……」
様子を窺っていた暁明は事情を把握して楽しそうにお茶を啜った。
暁明からは何も要求されなかった。
「面白いものが見られたからいいです」と送り出してくれた二人は無言のまま木戸のマンションへ帰った。
(気まずい……私のせいでまた木戸さまを怒らせてしまった)
時枝は溜息をついた。
(どうして私は木戸さまの気持ちが考えられないんだろう)
木戸は荷物を置くと、再び玄関へ戸向かった。
「き、木戸さまっ……どちらへ……」
「どこでもいいだろ」
「で、でも……この後は別に仕事はない筈では……」
「仕事じゃねぇよ。他の奴とヤりたくなったから出てくるだけだ」
時枝は冷水を頭から浴びたように感じた。
「申し訳ありませんでしたッ……あの、私暁明さまとしたいとか、そういうのではなくてッ」
「いや、もういい。行って来る。お前は部屋から出るな」
「木戸さまッ」
(行かないで!!)
バタンとドアの締まる音を目の前で見て、時枝はそのまま床に座り込んだ。
自分のせいというのもあった。強く行かないで欲しいと叫べなかった。
カチ、カチ、カチ、と時計の針の音がいつもより大きく広い部屋に響いていた。
時枝は明かりを点けたままベッドに潜っていた。
一人で寝るシーツはいつまでたっても冷たいままで、時枝の身体を冷やし続けていた。
窓の外が青く光って来たのを見て、漸く電気を消す。
(今頃他の人を抱いているのだろうか)
ズキッと胸が痛む。
今頃木戸の体温を自分ではない人間が共有していると想像した。途端に身体はどんどん冷えていき、反比例して体内にマグマのような熱の塊が大きく膨らんできた。
ガチャッと玄関の音がして、暫くすると部屋のドアが開いたのが分かった。
静かな足音で、それが木戸だと確信した。
直ぐに飛び起きて顔を見たいのに、ジッと息を潜める様にして寝たふりを続けた。
木戸は服を脱ぐと、そのままベッドに入って来た。寝る時の木戸は大抵ボクサーパンツ一枚だ。
時枝は妙に緊張したが、木戸は時枝に触れる事もなく反対向きに横になった。
そっと目を開けて木戸の姿を確認する。
背中に幾つか真新しい引っ掻き傷と、首にキスマークにも見える赤みが付いていた。
(木戸さま……その傷を付けたのは誰ですか……その子を殺しても、いいですか……)
傷に触れる寸前まで手を伸ばし、そのまま触れずに手を引いた。そして時枝は声を殺して涙を枕に染み込ませた。
次の日、いつものように接してくる木戸に、最初はぎこちなかった時枝だったが「お前がイイ子にしていれば俺は他に用はない」と宥められ、そのうちにいつも通りに戻った。
全ては自分のせいだから受け入れるのが筋だと、そう思う事にした。
そうこうしているうちに、由朗からの呼び出しがあった。
<<前へ 次へ>>
木戸の奴めェーっ
木戸の奴めェーっ(o>Д<)o
そして皆さま!
ハッピーバレンタイン。゚+.ヽ(´∀`*)ノ ゚+.゚
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お礼画像あり☆6種ランダム
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コメント
ヽ(。・ω・。)ノぁぃ♪
今日は会社の人たちに配り歩きました;
そして自分も食べるっていう(笑)
> 我が家的イベントとしては予定日なんだけど、いまだ気配なく;
既に予定日とは本当に早いものですね!!
楽しみです!!
もう少しな感じなのですね!?
.+゚ゎくゎく.+゚(o(。・д・。)o).+゚ぅきぅき.+゚
> 可哀想な時枝くんっ(涙)
> せっかく 可愛がってもらえはじめたのにっ(涙)
確かにせっかく幸せな感じでしたのに…
可哀想な事になってしまいまして、
これから木戸っちをぶっ飛ばして返り討ちに遭って来ようかと思います。
ァィ(。・Д・)ゞ
まだまだ寒いですからお身体大事になさって下さいね!!
何だか私まで緊張してきます(笑)
コメントどうもありがとうございました
□ヾ(´д`*)フキフキ・・
お心を痛めて下さってありがとうございます(>_<)
本当、時枝可哀想ですよね(>_<)
木戸のやつ…あとでぶっ飛ばしてみます!
(`・Д・)=○))`з')・:'.,
コメントどうもありがとうございました
我が家的イベントとしては予定日なんだけど、いまだ気配なく;
可哀想な時枝くんっ(涙)
せっかく 可愛がってもらえはじめたのにっ(涙)
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