02/18/2012(Sat)
貴方の狂気が、欲しい 33話
木戸は苛立っていた。
いつも自分の掌の中にいると思っていたものが実は知らぬ間に指の間をすり抜け、目の届かない所で動いていた事にも、今更ながら気に食わない。
否、知っていたが知る気も無かった。
時枝の初めてを奪った時、何とも言えない心の震えを感じた。それからも何度か抱く度に感じる胸の奥の恍惚とした痺れが何なのかは知らないが、それは弘夢を抱いた時には無かったものだ。
ただ、“それ”を感じる瞬間は決まって時枝が「好きです」と、あの透明な声で言う時だ。
木戸はその時を思い浮かべながら、他にも時枝が下からギュッと抱きつく時や、潤んだ瞳で見つめてくる時にも感じる事を思い出した。
それなのにだ。
暁明になら触れられるのは嫌ではないと自分から進んで行為を受け入れようとした態度が理解出来なかった。
木戸は、怒りに任せて時枝をわざと傷つける方法を選んだ。
「他の奴とヤりたくなったから出てくるだけだ」
木戸はそう言って部屋を出た。
――自分と同じ位に、それ以上に苦しめばいい。
自分を好きだと言うなら、俺が弘夢を愛した気持ち位に愛していなければ納得できない。
木戸は、自分の利己的で幼稚なまでに歪んだ想いが、時枝を思うよりも深く傷付けている事に気付かなかった。
帰宅して部屋に入ると、直ぐに時枝が起きている事に気付いた。僅かだが身体の震えがシーツを伝っていたからだ。
だが素知らぬ顔で同じベッドに入り、後ろで涙を流す時枝に喜びを感じながらそのまま目を閉じた。
明日は可愛がってやろうと、そんな悠長な事を思っていた。
だから時枝が何も言わず由朗の元へ行った時、木戸の怒りと悲しみは想像以上に大きかった。
GPSで捉えた時枝の姿は屋敷へと自分の意思で入って行った。
「何でだ……」
木戸は、時枝の気持ちが信じられなかった。
今まで知らなかった近すぎた存在の時枝を知れば知る程に惹かれていたのは事実だった。
もしかしたら弘夢を忘れられるかもしれないと期待もした。
「結局色んな男にフラフラする奴って事か」
色づき始めた木戸の胸の中が、再び白黒に戻っていく。
そして、木戸の足はそのまま車を走らせ、ある場所へと吸い寄せられていった。
暫く車を走らせ、閑静な住宅街の一角で車のエンジンを止めた。
「ハァ……」
溜息と共に見たそこにはマンションがあった。
道の端に車を停め、外にでてタバコを加える。
別に会えると思って来た訳ではない。ただ、弘夢がいる場所の近くに来たかっただけだ。
今は何となく、気分的にそうしたかった。
タバコを何本か吸ったら帰ろう、そう思っていた時だった。
マンションの扉が開き、中から出てきた人の姿を見た木戸はドクンと大きく心臓が跳ねた。
「弘夢……っ」
どこかに出掛けるのか、その辺に買物にでも行くのか、ラフな格好だったがスラリとしたその姿はやはり綺麗だった。
そして木戸は無意識に走っていた。
夢中で走っている最中、ポケットの中で震えている携帯電話に気付かず、木戸は弘夢に向かって走っていた。
<<前へ 次へ>>
(T△T=T△T)oジタバタ
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お礼画像あり☆6種ランダム
いつも自分の掌の中にいると思っていたものが実は知らぬ間に指の間をすり抜け、目の届かない所で動いていた事にも、今更ながら気に食わない。
否、知っていたが知る気も無かった。
時枝の初めてを奪った時、何とも言えない心の震えを感じた。それからも何度か抱く度に感じる胸の奥の恍惚とした痺れが何なのかは知らないが、それは弘夢を抱いた時には無かったものだ。
ただ、“それ”を感じる瞬間は決まって時枝が「好きです」と、あの透明な声で言う時だ。
木戸はその時を思い浮かべながら、他にも時枝が下からギュッと抱きつく時や、潤んだ瞳で見つめてくる時にも感じる事を思い出した。
それなのにだ。
暁明になら触れられるのは嫌ではないと自分から進んで行為を受け入れようとした態度が理解出来なかった。
木戸は、怒りに任せて時枝をわざと傷つける方法を選んだ。
「他の奴とヤりたくなったから出てくるだけだ」
木戸はそう言って部屋を出た。
――自分と同じ位に、それ以上に苦しめばいい。
自分を好きだと言うなら、俺が弘夢を愛した気持ち位に愛していなければ納得できない。
木戸は、自分の利己的で幼稚なまでに歪んだ想いが、時枝を思うよりも深く傷付けている事に気付かなかった。
帰宅して部屋に入ると、直ぐに時枝が起きている事に気付いた。僅かだが身体の震えがシーツを伝っていたからだ。
だが素知らぬ顔で同じベッドに入り、後ろで涙を流す時枝に喜びを感じながらそのまま目を閉じた。
明日は可愛がってやろうと、そんな悠長な事を思っていた。
だから時枝が何も言わず由朗の元へ行った時、木戸の怒りと悲しみは想像以上に大きかった。
GPSで捉えた時枝の姿は屋敷へと自分の意思で入って行った。
「何でだ……」
木戸は、時枝の気持ちが信じられなかった。
今まで知らなかった近すぎた存在の時枝を知れば知る程に惹かれていたのは事実だった。
もしかしたら弘夢を忘れられるかもしれないと期待もした。
「結局色んな男にフラフラする奴って事か」
色づき始めた木戸の胸の中が、再び白黒に戻っていく。
そして、木戸の足はそのまま車を走らせ、ある場所へと吸い寄せられていった。
暫く車を走らせ、閑静な住宅街の一角で車のエンジンを止めた。
「ハァ……」
溜息と共に見たそこにはマンションがあった。
道の端に車を停め、外にでてタバコを加える。
別に会えると思って来た訳ではない。ただ、弘夢がいる場所の近くに来たかっただけだ。
今は何となく、気分的にそうしたかった。
タバコを何本か吸ったら帰ろう、そう思っていた時だった。
マンションの扉が開き、中から出てきた人の姿を見た木戸はドクンと大きく心臓が跳ねた。
「弘夢……っ」
どこかに出掛けるのか、その辺に買物にでも行くのか、ラフな格好だったがスラリとしたその姿はやはり綺麗だった。
そして木戸は無意識に走っていた。
夢中で走っている最中、ポケットの中で震えている携帯電話に気付かず、木戸は弘夢に向かって走っていた。
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コメント
>
> ずっとみています!!!
いらっしゃいませ。゚+.ヽ(´∀`*)ノ ゚+.゚
初コメどうもありがとうございます!!
うぁ~っずっと見て下さっていたんですね!?
嬉しいです!!ありがとうございます(ノД`)・゜・
> ほんとに話の内容とか文章とかおもしろくて尊敬します♪
(ノ≧⊿≦)ノギャー!!!!
そんな恐縮過ぎます!!
勿体ないお言葉っ
(*´Д`)ハァハァ ←過呼吸気味
でもそう言って頂けて嬉しいです(涙
> 私もほんと時枝に幸せになってほしいです(>_<)
私もです(ノ△・。)
不のスパイラルの時って悪いタイミングが続きますよね;
エライ事になっていますが、どうにか這い上がって欲しいです(>ω<)
> うまくいかない焦らしがまた素晴らしいですね(笑)
( ゚Д゚)y \_ ポロッ
ど、どうしましょう…。
お褒め頂いて嬉し過ぎて鼻血が…。( ̄i ̄)□ヾ(・ω・`*)フキフキ
ありがとうございます!!(照
コメントどうもありがとうございました
初コメですが
ずっとみています!!!
ほんとに話の内容とか文章とかおもしろくて尊敬します♪
私もほんと時枝に幸せになってほしいです(>_<)
うまくいかない焦らしがまた素晴らしいですね(笑)
オロo(;д;o)(o;д;)oオロ
おぉぉぉ泣かせてしまって申し訳ありません(´Д`)
□ヾ(´д`*)フキフキ・・
時枝を想って下さったのですね。
泣いて下さってありがとうございます+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
悲しい運命の歯車がギシギシと回り出しました。
私も時枝の幸せと願うばかりです(>_<)
コメントどうもありがとうございました
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