03/11/2012(Sun)
貴方の狂気が、欲しい 45話
二人で暮らす事は木戸にとって思っていた以上に大変だった。
先ず選択や掃除の仕方が分からなかった。
なるべく生活の中に他人を介入させたくなかった木戸は今までのように使用人は一切つけていない。
取り敢えずパソコンなどの電気機器類は必要だったので、持参したそれら文明のもので調べながら実行した。
「おい、時枝! 虫を中に入れるんじゃない!」
「時枝! 大人しくしてると思ったら何ネコを家に上げているんだ!」
比較的静かな時枝だが、静かに色々とするのが厄介だった。
だがそれはそれで楽しかった。
木戸の足下を茶色い猫が走り抜ける。
時枝が招き入れたバッタを追いかけているようだ。時枝はその様子を黒目だけ動かして見ていた。
木戸は軽い溜息をつきながらバッタを庭へ放り出し、逃げ回る猫の首を摘まんで外へ同じように放り出そうとした。
その様子をジッと見る時枝の膝上に猫を置いてやると、意外と上手く猫を喜ばせていた。
木戸はこういう下らない事で汗をかくのも初めてだったし、時枝と何気ない日常を共にしている事が木戸自身にも心の安らぎを感じていた。
全ての面倒を見るのは大変だったが、それすらも愛おしく感じ、今までになかった庇護欲すら出てきた。
そんな暮らしに段々と慣れ始めてきた時だった。
木戸は居間で酒を飲んでいた。
リビングにテレビはあるが、あまり点けない。
時枝は満月を見上げ、虫の鳴く声に耳を傾けていた。
時枝の黒い瞳の中に金色の月が入り込んでいた。本当に物語の世界からふらりと出て来てしまった者のように神秘的で美しいと木戸は思った。
不謹慎だが、言葉と自我を忘れた事が一層そう見させている部分も大きいとも感じる。
木戸は時枝の横顔を見つめ、時枝の静かな呼吸を聞いていた。
「キレイ……です」
誰の声だか一瞬分からなかった。
だが木戸は今しがた時枝の唇が動いたのをハッキリと見た。
「時枝……?」
木戸は時枝に駆け寄った。グラスが木戸の手から離れて床に転がる。
時枝の横顔は感情の読み取りにくい無表情に近いものだったが、それでも機嫌がいいという事は木戸にはもう分かっていた。
「時枝? 俺が分かるか?」
木戸の声が震え、時枝の肩を掴んだ指に力が入る。
だが時枝は返事をせずに月を見たまま再び「きれい」と呟いた。
思い出した訳ではなかったようだが、それでも言葉を放った事が息が止まる程嬉しかった。
木戸はギュッと時枝の身体がしなる程抱き締めた。
「また……お前の声が聞けて良かった」
時枝はぽつり、ぽつり、と言葉や声を発するようになってきた。
木戸は時枝の記憶が戻ったかと勘違いをする程、時枝はたまに驚く程ハッキリと言葉を喋った。
それから木戸は段々と時枝を少し遠くまで連れ出すようになった。
もう少し刺激のある生活をしてもいいかもしれない、そんな想いでたまに電車に乗せたり車に乗せたりして極力散歩をした。
ただ、被せていた帽子を時枝が暑がって勝手に取ると、やはり周りは驚いたような目で時枝を見た。
そんな日々の中で、思わぬ侵入者があった。
「ここだ……多分ここだよ! 俺、入っていくとこ見たもん!」
「本当かよ!?」
夕飯の支度をしていた木戸には分からなかったが、庭先でヒソヒソと話す声に反応した時枝が障子をスッと静かにに開けた。
「わッ!!」
「……!?」
すると驚きのあまりその場で腰を抜かした男子高校生二人が目を丸くした。
<<前へ 次へ>>
(ノ*´Д`)ノオォオォ
少しずつ改善の兆しがっ!
そして好奇心の多そうな男子高校生…。
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お礼画像あり☆6種ランダム
先ず選択や掃除の仕方が分からなかった。
なるべく生活の中に他人を介入させたくなかった木戸は今までのように使用人は一切つけていない。
取り敢えずパソコンなどの電気機器類は必要だったので、持参したそれら文明のもので調べながら実行した。
「おい、時枝! 虫を中に入れるんじゃない!」
「時枝! 大人しくしてると思ったら何ネコを家に上げているんだ!」
比較的静かな時枝だが、静かに色々とするのが厄介だった。
だがそれはそれで楽しかった。
木戸の足下を茶色い猫が走り抜ける。
時枝が招き入れたバッタを追いかけているようだ。時枝はその様子を黒目だけ動かして見ていた。
木戸は軽い溜息をつきながらバッタを庭へ放り出し、逃げ回る猫の首を摘まんで外へ同じように放り出そうとした。
その様子をジッと見る時枝の膝上に猫を置いてやると、意外と上手く猫を喜ばせていた。
木戸はこういう下らない事で汗をかくのも初めてだったし、時枝と何気ない日常を共にしている事が木戸自身にも心の安らぎを感じていた。
全ての面倒を見るのは大変だったが、それすらも愛おしく感じ、今までになかった庇護欲すら出てきた。
そんな暮らしに段々と慣れ始めてきた時だった。
木戸は居間で酒を飲んでいた。
リビングにテレビはあるが、あまり点けない。
時枝は満月を見上げ、虫の鳴く声に耳を傾けていた。
時枝の黒い瞳の中に金色の月が入り込んでいた。本当に物語の世界からふらりと出て来てしまった者のように神秘的で美しいと木戸は思った。
不謹慎だが、言葉と自我を忘れた事が一層そう見させている部分も大きいとも感じる。
木戸は時枝の横顔を見つめ、時枝の静かな呼吸を聞いていた。
「キレイ……です」
誰の声だか一瞬分からなかった。
だが木戸は今しがた時枝の唇が動いたのをハッキリと見た。
「時枝……?」
木戸は時枝に駆け寄った。グラスが木戸の手から離れて床に転がる。
時枝の横顔は感情の読み取りにくい無表情に近いものだったが、それでも機嫌がいいという事は木戸にはもう分かっていた。
「時枝? 俺が分かるか?」
木戸の声が震え、時枝の肩を掴んだ指に力が入る。
だが時枝は返事をせずに月を見たまま再び「きれい」と呟いた。
思い出した訳ではなかったようだが、それでも言葉を放った事が息が止まる程嬉しかった。
木戸はギュッと時枝の身体がしなる程抱き締めた。
「また……お前の声が聞けて良かった」
時枝はぽつり、ぽつり、と言葉や声を発するようになってきた。
木戸は時枝の記憶が戻ったかと勘違いをする程、時枝はたまに驚く程ハッキリと言葉を喋った。
それから木戸は段々と時枝を少し遠くまで連れ出すようになった。
もう少し刺激のある生活をしてもいいかもしれない、そんな想いでたまに電車に乗せたり車に乗せたりして極力散歩をした。
ただ、被せていた帽子を時枝が暑がって勝手に取ると、やはり周りは驚いたような目で時枝を見た。
そんな日々の中で、思わぬ侵入者があった。
「ここだ……多分ここだよ! 俺、入っていくとこ見たもん!」
「本当かよ!?」
夕飯の支度をしていた木戸には分からなかったが、庭先でヒソヒソと話す声に反応した時枝が障子をスッと静かにに開けた。
「わッ!!」
「……!?」
すると驚きのあまりその場で腰を抜かした男子高校生二人が目を丸くした。
<<前へ 次へ>>
(ノ*´Д`)ノオォオォ
少しずつ改善の兆しがっ!
そして好奇心の多そうな男子高校生…。
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拍手秘コメの場合は普通コメント欄にてお返事致します。
お礼画像あり☆6種ランダム
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コメント
> 木戸、声を聞けて 良かったね,。・:*:・゜’( TωT )。・:*:・゜’(嬉泣)
ヽ(。・ω・。)ノぁぃ♪
喋りました!!喋りましたよぉおっ(ノ△・。)
> 虫やら 猫を家に入れたりと 大きな赤ちゃんになった時枝だけど その姿も可愛いでしょ♪
あはは(≧∀≦)
確かに今は愛想のない大きな赤ちゃんですよね(笑)
きっと木戸にとって可愛くて仕方ない姿でもあると思います!
> 少しずつだけど 快方に向かってる時枝の側で 木戸も幸せだね!
そうですね!
少しずつでも回復している兆しが見えると
木戸も希望を持つ事も出来るし幸せだと思います・゚・(ノ∀`)・゚・
> 幸せに過ごす木戸と時枝の家に 男子高校生2人が、何の用なの?
> 近所で 噂になってるのかなぁ~”おばけ屋敷”とか”妖怪屋敷”とか!?(笑)
かもしれません(笑)
なるべく人の家のない場所にいるようですが、
それでも噂って立ちますものね(^_^;)
お化け屋敷か、妖怪屋敷か……。エロ屋敷か(笑)
> 知ってる? 奥さん...ヒソ(* ^o)ヒソ(´д`;)ヒソ(o^ *)ヒソ...知らなかったわ!奥さん...byebye☆
あ(笑)
噂になっている模様(笑)
コメントどうもありがとうございました
木戸、声を聞けて 良かったね,。・:*:・゜’( TωT )。・:*:・゜’(嬉泣)
虫やら 猫を家に入れたりと 大きな赤ちゃんになった時枝だけど その姿も可愛いでしょ♪
少しずつだけど 快方に向かってる時枝の側で 木戸も幸せだね!
幸せに過ごす木戸と時枝の家に 男子高校生2人が、何の用なの?
近所で 噂になってるのかなぁ~”おばけ屋敷”とか”妖怪屋敷”とか!?(笑)
知ってる? 奥さん...ヒソ(* ^o)ヒソ(´д`;)ヒソ(o^ *)ヒソ...知らなかったわ!奥さん...byebye☆
>
> これからも頑張ってください
゚+。゚(*ノ・Д・)ノオォオォ゚。+゚
更新待って下さっていてありがとうございます!!
はい!頑張ります!
(*´∀`*)
> 時枝がだんだんよくなってきて
>
> ほんとによかった
>
> 早く思い出して
>
> 幸せになってほしいね
本当です(ノ△・。)
少しでも回復の兆しが見えると希望になりますものね!
この調子で段々本能だけから理性も取り戻して、
記憶も取り戻して欲しいものです(´∀`*)ウフフ
> 高校生何しに来たwww
本当に何しに来たのか(´-ω-`)ウーン・・・(笑)
コメントどうもありがとうございました
更新まってました!!
これからも頑張ってください
時枝がだんだんよくなってきて
ほんとによかった
早く思い出して
幸せになってほしいね
高校生何しに来たwww
コメント