2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--:-- | スポンサー広告 | edit | page top↑

貴方の狂気が、欲しい 51話

 時枝は寝ていると少し頭が軽く靄が晴れてきた。頭痛もない。

(今、何時だ……)

 目を開けようとするがまだ瞼だけは重い。

(周りが静かだからまだ夜中……だろうか……喉が渇いたな……)

 時枝はやっと瞼を持ち上げ、ベッドから降りようと足を下ろそうとした。

(あれ……)

 下ろそうとした足はそのまま平行に投げ出された。踵にザラザラとした感触が当たって少し混乱する。

(私はベッドに寝ていた筈なのに……これは……畳?)

 視線を上げるとクローゼットとドアがない。代わりに障子が目立つ和室がある。
 するとスッと血の気が引いて身を硬くした。

(私はどこにいるんだ? 連れ去られたのか? あの方は無事なのか!?)

 時枝は「あの方」と思ってから不思議な気持ちになった。

(あの方って……誰だっただろうか?)

 何かをど忘れしたかのように思い出せそうで思い出せない。気持ちが悪い。
 その時ふと指先に暖かい息が掛って反射的に手を引っ込めた。
 振り向くと、そこに男が寝ていた。

(この男は……あぁ……最近いつも一緒にいる……何でだ? 私はいつからこの人と一緒に……何故私の世話を? ……私は一体どうしたと言うのだ)

 じっと木戸の寝顔を見る。
 とても切ない気持ちが込み上げて嬉しいような、悲しい様な気分だった。

(たしか健太が言っていた……)

「キド……さん」

 名前を確かめる様にそっと囁いたつもりだった。だからまさか木戸が目を開けるとは思いもよらなかった。
「お前……やっぱり……! 記憶、戻ったのか!?」
 急に腕を掴まれて咄嗟に起き上った木戸を押し退けた。
「離して下さいっ」
「なっ……どうしてだ!? 俺が分からないのか!? 時枝ッ」
 豹変したように激しく押し倒され、時枝は身の危険を感じた。身に付いた護身術で押し倒された体勢から相手をひっくり返す自信はあった。だがそれすらも容易に封じられている。
 必死に逃げだす事を考えていると、上から絞り出すような声で名前を呼ばれた。
「時枝……俺の事、思い出してないのか?」
 その声が何だかとても痛々しくて、時枝は抵抗するのを止めた。
「すみません……あなたがキドさんという名前だと健太に教えて貰いました……よく、分からないのですが、私は以前あなたと知り合いだったのでしょうか? どうして自分がここにいるのか、どうしてあなたが私の面倒を見ているのか、以前の事もチラチラとしか思い出せず……」
 時枝がそう話すと、木戸は「そうか」と言って離れた。押さえられていた手首に痛みが残る。
「あの……教えて貰えませんか」
 大きな背中に向かって言う。
 木戸は振り向くと、優しく頬と頭を撫でてきた。何故か妙に嬉しさが込み上げてくる。
「ゆっくりでいい。今は別に思い出さなくてもいい。こうしてまたお前と話が出来るようになって、俺は嬉しいから」
 頬に触れる木戸の暖かい指先の感触で、身体の芯がふと熱を感じた。

(あれ……私はこの感触を知っている……今まで何か……)

 記憶が沸々と沸き上がる。

(え……?)

 この居間でも、別の寝室でも、風呂場でも廊下でも。至る場所でこの男に激しく抱かれている記憶が生々しく映画のように映し出された。
「どうした?」
 木戸の声にすら耳奥が反応する。

(何ですか……これは……)

「汗かいてるぞ? 具合、悪いのか?」
 何度も身体の奥に突かれる感覚が蘇ってあらぬ場所が疼く。
 心配した木戸の手が時枝の汗を拭った時、身体に電気が走った。
「あっっ!」
 それはあまりにも艶を含んだ声で、感じていますと言わんばかりの声だった。
「お前……俺と今まで何して来たか覚えているのか」
 木戸の目が肉食獣のような目に変わった。その視線だけで身体中がゾクゾクと興奮する。
 だが本当に自分がそんな事をしたのか分からず、恥ずかしさとパニックから思わず「覚えていない」と答えてしまった。
 すると木戸の目は先程までの普通の目に戻った。
「そうか……まだ夜中だから寝ろよ。明日またゆっくり話そう」
「はい……」
 妙な興奮とあらぬ記憶で目の前の木戸に心臓がバクバクと五月蠅い。
「あ。俺、ここで一緒に寝ててもいいか? 嫌なら隣に行くが」
「だ、大丈夫……です」
 木戸は「そうか」と微笑んで目を閉じた。
 時枝はキュッと胸に心地良い痛みを感じる。

(この人は誰なんだろうか……あの淫らな記憶は本当にあった事なのか?)

 時枝はしばらく身体の熱を抱えたまま眠れぬ時間を過ごした。




<<前へ      次へ>>




。.:*・゚キャ(*ノω〃)ノキャ゚・*:.。 ←喜

★拍手コメントのお返事はボタンを押して頂いた拍手ページ内に致します。
  拍手秘コメの場合は普通コメント欄にてお返事致します。

web拍手 by FC2
お礼画像あり☆6種ランダム
00:00 | 貴方の狂気が、欲しい | comments (6) | trackbacks (0) | edit | page top↑
貴方の狂気が、欲しい 52話 | top | 貴方の狂気が、欲しい 50話

コメント

WLさま
> ハンパない器の漢になったね~(>_<)
> 寝ろよ
> って そのシチュエーションで言えるか~!?!?

言えません (-ω-)/ ←(笑)
恐らくその日木戸は寝れてないと思います。
でも愛ゆえです!
時枝に関しての器が大きく深くなっています(*´∀`*)
他に関しては……(-"-;A ...アセアセ


> 掘れる…じやない 惚れる だ;


掘れ……( ´艸`)プッ

間違いではないと思います'`ィ (゚д゚)/ ←

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗.Dさん | 2012/03/20 23:42 | URL [編集] | page top↑
にこらさま
> 何故かエロいとこばっかり
>
> 思い出す時枝wwwwww

あひゃひゃひゃひゃ(≧∀≦*)
確かに(笑)
エロい事ばかりしてきましたからねぇ( ̄ー ̄)ニヤ...


> ほんとに木戸は優しいね
>
> かっこいい!!!

(ノ*´Д`)ノオォオォ
ありがとうございます!
木戸くんの株が上がる(笑)
ヘタな事したら……(笑)
でも真剣な愛は格好いいですよね(*´∀`*)


> また進展してよかったです*

ヽ(。・ω・。)ノぁぃ♪
少しずつでも良い方向へ進んで良かったです!


> 更新がんばです\(^O^)/

ありがとうございます!
がんばります!
((φ(-ω-)カキカキ

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗.Dさん | 2012/03/20 23:38 | URL [編集] | page top↑
ハンパない器の漢になったね~(>_<)
寝ろよ
って そのシチュエーションで言えるか~!?!?
掘れる…じやない 惚れる だ;
WLさん | 2012/03/20 07:53 | URL [編集] | page top↑

何故かエロいとこばっかり

思い出す時枝wwwwww

ほんとに木戸は優しいね

かっこいい!!!

また進展してよかったです*

更新がんばです\(^O^)/


にこらさん | 2012/03/20 04:53 | URL [編集] | page top↑
秘コメかおもじさま
たくさんドキドキして頂けて嬉しいです!
ありがとうございます(´∀`*)ウフフ

ちょっと純な感じになってますよね( ´艸`)ムププ
何かこっちまで変にドキドキが移ってしまいます(笑)

続きを待ち遠しいと仰って頂けて嬉しいです!!

一刻も早くイチャイチャが見られるように
今から徐々にイチャイチャして頂きたいものですねっ! ←
'`ィ (゚д゚)/

この先を楽しみにして下さってありがとうございます!
引き続き彼らの動向を見守りたいと思います♪

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗.Dさん | 2012/03/20 00:19 | URL [編集] | page top↑
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
さん | 2012/03/20 00:06 | URL [編集] | page top↑

コメント

管理者にだけ表示を許可する

trackbacks

この記事のトラックバックURL:
http://kikyo318d.blog.2nt.com/tb.php/603-8c9bf466
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)