03/22/2012(Thu)
貴方の狂気が、欲しい 53話
「最近、健太は来ませんね」
「ああ……そうだな」
近頃ぱったりと姿を見せなくなった健太を思い出して庭先に立ってみる。
「きっと試験期間なんだろう。そのうち来る」
「そうですか」
夏休み前だというのに今年は既に蒸し暑さが本格的だ。
この家にクーラーなどというものはない。昔ながらの団扇か扇風機か風鈴か、だ。
「少し散歩でもするか?」
木戸に誘われてだだっ広い野原を歩いた。
沢山の原色の花々が無造作に咲き誇り、その間を左右にユラユラと蜂が飛び交っていた。
草木には嬉しい太陽の直射日光が時枝たちの肌をジリジリと焼く。
互いに無言でひたすら歩き、目標の大きな木に向かった。
時枝は何となく立ち止まり、振り返ってみた。後ろはまるで花の絨毯のようにグラデーションが広がっていた。
不気味な程のどかな光景だ。
「時枝。こっちに来い」
横に大きく広がった木は、深緑の葉を傘の様にして木陰を作り出していた。
その根元に木戸は座り時枝を呼んでいた。
時枝は目線を上手く会わせないようにしながら自然に隣に腰かけた。
「やっぱ外は暑いな」
汗を拭う木戸の逞しい腕が視界の端に入る。
木戸は持って来たペットボトルの水を喉を鳴らしながら飲んだ。その口端からスルスルと水が流れ落ちて喉を伝う。
木戸の肌は健康的に日焼けしていて艶めいていた。汗で濡れた肌は、引き締まった筋肉の形をくっきりと浮き彫りにして時枝は思わず見惚れた。
「暑くないか? 大丈夫か?」
突然話しかけられて目が合ってしまった。
心臓を鷲掴みされるような鋭く危険な視線だ。
木戸というとても優しい男の所々垣間見えるこの危険な香りに、時枝はいつも心が震えた。
(もし、この人に意地悪な事をされたら……)
考えただけでどうにかなってしまいそうだ。
(私は何を考えているんだ! こんな良い人に対して……)
「時枝?」
「あっ、大丈夫です。ありがとうございます」
思い出したように時枝も持って来た水で喉を潤した。
しばらく二人で黙ったまま木陰で休んでいると、木戸が残り最後のタバコを一本咥えた。
時枝は咄嗟に胸ポケットに手をやり、目的の物を探してズボンのポケットにも手を入れてた。
「何してんだ」
「あ、火をお点けしようとライターを……」
「え?」
「あれ……すみません、何故そんな事をしたのか私……」
(ライター? 何故そんな事を私が……。でも今自然と……)
木戸は急に真剣な表情になってタバコを口から外した。そして木戸の顔がゆっくりと近づいてきた。
「時枝……」
(え? 何……!?)
思わず後ろに上半身をしならせるが後ろの木でそれ以上逃げられない。
木戸は尚も近づいて、ついに木戸の吐息が頬にかかった。
胸の辺りがぞわっとする。
だが木戸の唇は時枝の耳に触れるか触れないかの距離で止まった。だが木戸の暖かい吐息が耳の中へ入り込むと身体が金縛りのように動けなくなった。
たったそれだけの事で時枝の全身の性感帯が目覚める。
「キスするけど……いいか?」
木戸の低く艶っぽい声の震動が直接鼓膜を愛撫した。
「ひっ……あっ」
思わず逃げようとするが抱きすくめられてしまった。心臓が飛び上がる。
そして嬉しいのに無償に逃げたくなった。
本気で逃げたい訳じゃない。逃げようとする自分を羽交い絞めして欲しいのだ。
時枝が逃げようともがくと、木戸は時枝の両腕を後ろへ持って行き痛い程強く纏めた。
「っ……」
木戸の目が意地悪く笑った気がした。
「木戸……さんっ……」
木戸は時枝の柔らかな唇を啄ばんだ。
「あっ」
そして尚も啄ばむ。
「んっ」
それはキスとは言えない一方的な啄ばみだった。唇に痛みが走る度に時枝の口内に甘ったるい唾液が沸いてくる。
木戸は赤く腫れてきた時枝の唇を、今度は舐めた。
ジンジンと残る痛みの上に舌が這う度にそこが熱く感じる。
「や……ァ……」
思わず漏れた時枝の声を塞ぐように、木戸は唇を重ねた。
「んーっ……ん……んっ」
力強くて喰われているようなキスに、時枝は全身の力が抜けた。
木戸の肉厚な舌は、時枝の性感帯を知り尽くしているかのように焦らし、痛めつけ、そして吸い上げてきた。
「あっ……あっ……木戸さっ」
いつの間にか解かれた両手は、後ろで木戸の指に自分の指を絡ませていた。
「何だ」
「好きっ……好きです……んんっ」
想いが溢れて止まらない。
「知ってるよ」
そう言って木戸は媚薬のような唾液を喉奥に流し込んできた。
<<前へ 次へ>>
[壁]*ノノ) キャ-ハズカシー
そして昨日は1200件を超える拍手を頂きまして…
ボク……_| ̄|○、;'.・ グハァッ(吐血)
驚きでポックリいきそうでした。
ありがとうございます!!+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
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お礼画像あり☆6種ランダム
「ああ……そうだな」
近頃ぱったりと姿を見せなくなった健太を思い出して庭先に立ってみる。
「きっと試験期間なんだろう。そのうち来る」
「そうですか」
夏休み前だというのに今年は既に蒸し暑さが本格的だ。
この家にクーラーなどというものはない。昔ながらの団扇か扇風機か風鈴か、だ。
「少し散歩でもするか?」
木戸に誘われてだだっ広い野原を歩いた。
沢山の原色の花々が無造作に咲き誇り、その間を左右にユラユラと蜂が飛び交っていた。
草木には嬉しい太陽の直射日光が時枝たちの肌をジリジリと焼く。
互いに無言でひたすら歩き、目標の大きな木に向かった。
時枝は何となく立ち止まり、振り返ってみた。後ろはまるで花の絨毯のようにグラデーションが広がっていた。
不気味な程のどかな光景だ。
「時枝。こっちに来い」
横に大きく広がった木は、深緑の葉を傘の様にして木陰を作り出していた。
その根元に木戸は座り時枝を呼んでいた。
時枝は目線を上手く会わせないようにしながら自然に隣に腰かけた。
「やっぱ外は暑いな」
汗を拭う木戸の逞しい腕が視界の端に入る。
木戸は持って来たペットボトルの水を喉を鳴らしながら飲んだ。その口端からスルスルと水が流れ落ちて喉を伝う。
木戸の肌は健康的に日焼けしていて艶めいていた。汗で濡れた肌は、引き締まった筋肉の形をくっきりと浮き彫りにして時枝は思わず見惚れた。
「暑くないか? 大丈夫か?」
突然話しかけられて目が合ってしまった。
心臓を鷲掴みされるような鋭く危険な視線だ。
木戸というとても優しい男の所々垣間見えるこの危険な香りに、時枝はいつも心が震えた。
(もし、この人に意地悪な事をされたら……)
考えただけでどうにかなってしまいそうだ。
(私は何を考えているんだ! こんな良い人に対して……)
「時枝?」
「あっ、大丈夫です。ありがとうございます」
思い出したように時枝も持って来た水で喉を潤した。
しばらく二人で黙ったまま木陰で休んでいると、木戸が残り最後のタバコを一本咥えた。
時枝は咄嗟に胸ポケットに手をやり、目的の物を探してズボンのポケットにも手を入れてた。
「何してんだ」
「あ、火をお点けしようとライターを……」
「え?」
「あれ……すみません、何故そんな事をしたのか私……」
(ライター? 何故そんな事を私が……。でも今自然と……)
木戸は急に真剣な表情になってタバコを口から外した。そして木戸の顔がゆっくりと近づいてきた。
「時枝……」
(え? 何……!?)
思わず後ろに上半身をしならせるが後ろの木でそれ以上逃げられない。
木戸は尚も近づいて、ついに木戸の吐息が頬にかかった。
胸の辺りがぞわっとする。
だが木戸の唇は時枝の耳に触れるか触れないかの距離で止まった。だが木戸の暖かい吐息が耳の中へ入り込むと身体が金縛りのように動けなくなった。
たったそれだけの事で時枝の全身の性感帯が目覚める。
「キスするけど……いいか?」
木戸の低く艶っぽい声の震動が直接鼓膜を愛撫した。
「ひっ……あっ」
思わず逃げようとするが抱きすくめられてしまった。心臓が飛び上がる。
そして嬉しいのに無償に逃げたくなった。
本気で逃げたい訳じゃない。逃げようとする自分を羽交い絞めして欲しいのだ。
時枝が逃げようともがくと、木戸は時枝の両腕を後ろへ持って行き痛い程強く纏めた。
「っ……」
木戸の目が意地悪く笑った気がした。
「木戸……さんっ……」
木戸は時枝の柔らかな唇を啄ばんだ。
「あっ」
そして尚も啄ばむ。
「んっ」
それはキスとは言えない一方的な啄ばみだった。唇に痛みが走る度に時枝の口内に甘ったるい唾液が沸いてくる。
木戸は赤く腫れてきた時枝の唇を、今度は舐めた。
ジンジンと残る痛みの上に舌が這う度にそこが熱く感じる。
「や……ァ……」
思わず漏れた時枝の声を塞ぐように、木戸は唇を重ねた。
「んーっ……ん……んっ」
力強くて喰われているようなキスに、時枝は全身の力が抜けた。
木戸の肉厚な舌は、時枝の性感帯を知り尽くしているかのように焦らし、痛めつけ、そして吸い上げてきた。
「あっ……あっ……木戸さっ」
いつの間にか解かれた両手は、後ろで木戸の指に自分の指を絡ませていた。
「何だ」
「好きっ……好きです……んんっ」
想いが溢れて止まらない。
「知ってるよ」
そう言って木戸は媚薬のような唾液を喉奥に流し込んできた。
<<前へ 次へ>>
[壁]*ノノ) キャ-ハズカシー
そして昨日は1200件を超える拍手を頂きまして…
ボク……_| ̄|○、;'.・ グハァッ(吐血)
驚きでポックリいきそうでした。
ありがとうございます!!+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
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お礼画像あり☆6種ランダム
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コメント
> やっぱ桔梗たんのキス場 最強~~(>▽<)
(〃д〃)キャ~♪
嬉しいです!!
ありがとうございます!!
WLさんにお褒め頂けるとか…!!o(*。ω。)oパタリ
> 知ってるよ
>
> は涙が出るほどの悩殺ワード(T_T)
>
> 私的超ナイス1話~~!
(ノ*´Д`)ノオォオォ
WLさん的ナイスな1話が書けた事に
満足でございます!!
二人ともこのままイイ感じになってくれれば、
と思うのですが色々考えると悩ましいです(ノд`ι)ウーン・・・
> いつも携帯からなんだけど、どんどん広告がえげつなくなってくね…(-□-)
∑('◇'*)エェッ!?
そうなんですか!?
うわ~嫌ですね;
サイトの方にアダルト固定されてしまったので仕方ないですが
いつか広告のない場所へ引っ越ししたいです(^_^;)
コメントどうもありがとうございました
知ってるよ
は涙が出るほどの悩殺ワード(T_T)
私的超ナイス1話~~!
いつも携帯からなんだけど、どんどん広告がえげつなくなってくね…(-□-)
コメント