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悪魔と野犬ノ仔 27話

「いッ……てぇ……」
 要は思わず両手で自分の頭を抱えた。
「お、お兄ちゃん……どうしたの? 痛いの?」
「わか……ねぇ……痛ぇ……」
 規則正しい心臓の脈とは反対の、気持ちの悪い不規則なリズムだ。
 要は頭を抱えていた両手をゆっくりと離し、何となく掌を見た。
 そして全身の血液が一瞬で凍りつき、無意識に手先から震えが始まった。
 要はべっとりとヘドロのような黒いものが自分の掌から腕にかけて覆っているのが見えた。それは生温く、ズルズルと粘着質で悪臭を放っていた。
 耐えがたい気持ち悪さはその見た目だけでなく、要の精神に直接嫌悪感を抱かせるものだった。まるで自分の悍しいもの全てが形になって外に沁み出てきたかのような戦慄に思わず叫び声を上げた。
「うわァァアッ」
 必死で両手をについている黒いものを掴んで取り払おうと爪を立てた。

――何だコレ?

――汚い。

――気持ち悪い。

――汚い。

――汚い!!

「お兄ちゃんッ!!」
 水無月の声と床に頭をぶつけた衝撃で、要は一瞬何が起こったのかが理解出来なかった。
 震える両手をおそるおそる上げて見てみると、黒いものなど一つもなく、自分の爪で傷つけた引っ掻き傷が赤く血の筋を何本も作っているだけだった。

(何だ……今の……)

 現実的な悪夢を見た時のような気持ちの悪さに、気のせいだった安心感と、そのリアルな感触に未だ要の手は震えていた。
「お兄ちゃん……大丈夫なの……」
 泣きそうな顔で水無月がそっと丸めた右手を要の膝の上に乗せた。その軽い重みに安堵し、要は額に流れる冷たい汗を手の甲で拭った。
 落ちついた後は何事も無かったかのように要に異変は見られず、疲れが溜まっていたのかと一先ずは気にせず東京へ戻った。
 相変わらず煙たい匂いの充満する街に最初は辟易するが、そのうちに鼻が麻痺して何も思わなくなるのが不思議だ。
 狭い自室のドアを開けると、夕方だというのにだらしのない格好で要のベッドの上で漫画を読む尚哉の姿があった。
「あっ! 要帰って来た!! お帰りィィッ」
 要は飛びついてきた尚哉を抱きとめたが、頭痛は全くなかった。
「ねぇお土産は?」
「ねぇよ」
「えーっ。じゃあただいまのチュウは?」
「ねぇって。どけよ、重い」
 要はチラリとゴミ箱に目線をやると、その中にはしっかりと使用済のコンドームが捨てられていた。
「お前、俺のベッドでしてねぇだろうな?」
 要が嫌悪感たっぷりの目で睨みつけると、纏わりついていた尚哉が少し気まずそうな顔をして離れた。
「してないもん、要のベッドでは……。だってしょうがないじゃん。寂しかったんだもん」
 要はそこまでの話しに興味を示さずさっさと荷物を整理しだした。
 尚哉は自分のベッドで横になりながら要の行動をジッと見ていた。
「ねぇ、要」
「……」
「何かあった?」
 要は一瞬手を止めた。朝見た真っ黒い自分の手を思い出してギュッと拳を握る。
「あ?」
「何か……雰囲気違う。恋人にでも会ったとか? ていうか、要、恋人いたっけ?」
 今度は脳裏に自分の下で可愛く喘ぐ水無月の姿を思い出した。
「……」
「全く……いつも殆ど僕の質問には答えてくれないんだ、要は。まぁいいけどっ」
 気紛れの猫はつまらなくなったのか、足音をあまり立てずに部屋を出て行った。大方別の男に抱かれに行ったのだろうと要は予想し、これで暫く静かになったと溜息をついた。




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コメント

けいったんさま
> ヾ(´д`;)ノぁゎゎ!
> 要~どうしちゃったの~!
>
> 何なの! 
> その手についてる黒くてヘドロなものは!?
>
> 不吉な前兆…?
> (lil゜д゜lil)コッ・コワイワ...byebye☆

不吉な予兆が……。
(((=ω=)))ブルブル

一体何がどうしてそんな現象があったのか謎ですが
ミナちゃんが心配しているので何事もなければ
よいのですが…。
心配です。。

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗.Dさん | 2013/06/13 23:18 | URL [編集] | page top↑
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このコメントは管理者の承認待ちです
さん | 2013/06/13 09:15 | URL [編集] | page top↑

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