06/28/2013(Fri)
悪魔と野犬ノ仔 36話
落ち着いてきた水無月はゆっくりと歯を要の腕から抜くと、ドクドクと大量の血液が溢れ出て来て床を赤く染めた。
水無月は何故か口内に溢れる鉄の味を舐め、飲み込んだ。鉄の味は唇にも付いていて、それを舌でグルリと舐め取った。視線の先には怯えきった尚哉がいた。そして段々と安心する暖かい掌が自分を撫でている感覚を感じ、落ち着きを取り戻してきた。
「ミナ。ミナ……」
要に顔をそっと上に向けられて目が合った。とても優しく、愛おしげに見つめる要を見て水無月の胸の奥がギュッと苦しくなった。
そして要の指が水無月の顎を上に上げると、そっと熱い舌先が水無月の唇を舐めた。
要の舌先が綺麗な朱色に染まり、それは水無月の舌に絡まってきた。鉄の液体を二人で味わうように互いに唾液を送り合いながらする口付けは異常なまでに互いを興奮させた。
「か……要……何して……血が……ねぇ……」
尚哉は大量に血液を流しながら血に染まった弟の唇をまるで食べるように吸う要と、恍惚とした表情で舌を絡ませる弟の光景に戦慄した。
自分の存在が全く二人のいる世界と違う事を肌で感じた尚哉は怒りが込み上げてきた。
「ねぇッ……血が凄いよッ!!」
尚哉が大声を出すと、水無月の唇を甘噛みしていた要がゆっくり唇を離して尚哉の方を向いた。
振り向いた要はまるで吸血鬼が食事を邪魔されたような危険で妖艶な顔をしていた。
「ねぇ……何してんの……ミナちゃんは弟だろ?」
「別に……本当の弟じゃねーし……本当の弟でも同じ事になってるけど」
「え……本当の弟じゃないの? ……ていうか、その子……どうしちゃったわけ……」
尚哉は動くようになった足で身体を動かすと、少しずつソファの向こう側へ移動しながら喋った。
「コイツは、野犬に育てられたから……半分犬なんだ……俺の、可愛いイヌなんだ」
「……は?」
尚哉は、要がまたふざけてそういうプレイのような発言をしたのかとも思ったが、先程の冗談とは言えない水無月を見て疑いの言葉は出せなかった。
「昔ニュースで少し騒がれたけど見なかったか」
そう言われればそんなニュースもあった気がした。
尚哉は少しずつだが事情が掴めてきたのか、冷静さが戻ってきた。そして立ち上がると救急箱を取り要の近くに置いた。本当は手当てをしたかったが、目を大きく見開いたまま瞬きもせずに動く自分を見る水無月に近づけなかった。
憎い相手を睨む人間のとは違い、少しでもおかしな動きを見逃さないように視野を広げ、動体視力をフルに活用する為に瞳孔が開いているのが異様な恐怖をかき立てる。
そんな警戒態勢の水無月を優しく包み込む要に、尚哉は少し理解に苦しんだ。
要が何故かとても嬉しそうだったからだ。
今日はこの二人と一緒にいる気になれない尚哉はその足で部屋へ行くと軽く荷物を持ってそのまま家から出て行った。
要は救急箱を取ると包帯をきつめにギュッと腕に巻き、血を止める処置をした。
そんな要を見て水無月はボタボタと涙を落とし、「兄ちゃん……痛いの……ごめんなさい……」と謝った。
「いいよ」
「ごめんな……さいっ……っ」
理性の戻った水無月は一番大切な人を傷付けた事でとても大きなショックを受けていた。
要は傷の手当てを終えると再び水無月を懐へ抱き寄せた。
「お前がこんなに怒るなんて思わなかった……嬉しかったんだ……俺もきっとお前が他の奴とそういう事してるの見たら殺すだろうし、お前も殺すつもりだっただろ、さっき」
「だって……凄くイヤだった……尚哉くんと恋人なの?」
「違うよ」
「じゃあ僕と恋人になってよ」
「お前、飼い犬が飼い主と恋人になりたいって言うのか?」
要は楽しそうに意地の悪い事を言って水無月の頬を摘まんだ。
「イヌは恋人になれないの?」
水無月がそっと要の頬を摘まみ返す。
「さあ……でも……」
要は水無月の胸に顔を埋めた。
「もしお前を抱けなかったとしても、お前は俺をずっと好きでいてくれるのか?」
「兄ちゃん、やっぱり頭痛くなるの? 僕と……そういう事すると……」
「……うん」
「病院はイヤなの?」
「……うん」
いつも突っ張って意地の悪い子供が急に弱みを見せたような態度に、水無月は要が急に可愛く思えて要の頭をギュウと抱き締めた。
「大丈夫だよ。僕は最初から兄ちゃんしか見てないから」
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水無月は何故か口内に溢れる鉄の味を舐め、飲み込んだ。鉄の味は唇にも付いていて、それを舌でグルリと舐め取った。視線の先には怯えきった尚哉がいた。そして段々と安心する暖かい掌が自分を撫でている感覚を感じ、落ち着きを取り戻してきた。
「ミナ。ミナ……」
要に顔をそっと上に向けられて目が合った。とても優しく、愛おしげに見つめる要を見て水無月の胸の奥がギュッと苦しくなった。
そして要の指が水無月の顎を上に上げると、そっと熱い舌先が水無月の唇を舐めた。
要の舌先が綺麗な朱色に染まり、それは水無月の舌に絡まってきた。鉄の液体を二人で味わうように互いに唾液を送り合いながらする口付けは異常なまでに互いを興奮させた。
「か……要……何して……血が……ねぇ……」
尚哉は大量に血液を流しながら血に染まった弟の唇をまるで食べるように吸う要と、恍惚とした表情で舌を絡ませる弟の光景に戦慄した。
自分の存在が全く二人のいる世界と違う事を肌で感じた尚哉は怒りが込み上げてきた。
「ねぇッ……血が凄いよッ!!」
尚哉が大声を出すと、水無月の唇を甘噛みしていた要がゆっくり唇を離して尚哉の方を向いた。
振り向いた要はまるで吸血鬼が食事を邪魔されたような危険で妖艶な顔をしていた。
「ねぇ……何してんの……ミナちゃんは弟だろ?」
「別に……本当の弟じゃねーし……本当の弟でも同じ事になってるけど」
「え……本当の弟じゃないの? ……ていうか、その子……どうしちゃったわけ……」
尚哉は動くようになった足で身体を動かすと、少しずつソファの向こう側へ移動しながら喋った。
「コイツは、野犬に育てられたから……半分犬なんだ……俺の、可愛いイヌなんだ」
「……は?」
尚哉は、要がまたふざけてそういうプレイのような発言をしたのかとも思ったが、先程の冗談とは言えない水無月を見て疑いの言葉は出せなかった。
「昔ニュースで少し騒がれたけど見なかったか」
そう言われればそんなニュースもあった気がした。
尚哉は少しずつだが事情が掴めてきたのか、冷静さが戻ってきた。そして立ち上がると救急箱を取り要の近くに置いた。本当は手当てをしたかったが、目を大きく見開いたまま瞬きもせずに動く自分を見る水無月に近づけなかった。
憎い相手を睨む人間のとは違い、少しでもおかしな動きを見逃さないように視野を広げ、動体視力をフルに活用する為に瞳孔が開いているのが異様な恐怖をかき立てる。
そんな警戒態勢の水無月を優しく包み込む要に、尚哉は少し理解に苦しんだ。
要が何故かとても嬉しそうだったからだ。
今日はこの二人と一緒にいる気になれない尚哉はその足で部屋へ行くと軽く荷物を持ってそのまま家から出て行った。
要は救急箱を取ると包帯をきつめにギュッと腕に巻き、血を止める処置をした。
そんな要を見て水無月はボタボタと涙を落とし、「兄ちゃん……痛いの……ごめんなさい……」と謝った。
「いいよ」
「ごめんな……さいっ……っ」
理性の戻った水無月は一番大切な人を傷付けた事でとても大きなショックを受けていた。
要は傷の手当てを終えると再び水無月を懐へ抱き寄せた。
「お前がこんなに怒るなんて思わなかった……嬉しかったんだ……俺もきっとお前が他の奴とそういう事してるの見たら殺すだろうし、お前も殺すつもりだっただろ、さっき」
「だって……凄くイヤだった……尚哉くんと恋人なの?」
「違うよ」
「じゃあ僕と恋人になってよ」
「お前、飼い犬が飼い主と恋人になりたいって言うのか?」
要は楽しそうに意地の悪い事を言って水無月の頬を摘まんだ。
「イヌは恋人になれないの?」
水無月がそっと要の頬を摘まみ返す。
「さあ……でも……」
要は水無月の胸に顔を埋めた。
「もしお前を抱けなかったとしても、お前は俺をずっと好きでいてくれるのか?」
「兄ちゃん、やっぱり頭痛くなるの? 僕と……そういう事すると……」
「……うん」
「病院はイヤなの?」
「……うん」
いつも突っ張って意地の悪い子供が急に弱みを見せたような態度に、水無月は要が急に可愛く思えて要の頭をギュウと抱き締めた。
「大丈夫だよ。僕は最初から兄ちゃんしか見てないから」
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コメント
> なのに ミナに触れると 頭痛と悪夢が起きるなんて 可哀想(T▽T)
>
> 原因が分からないと治らないし、一生 結ばれないんだね。。。
大分デレてきたようです(笑)
一番触れたい相手に触れられないって悲しいですよね(>_<)
一生なんて悲劇ですがどうにか克服して欲しいものです(>_<)
> 要の心の中で 何が起こっているのかな?
> ミナ、要を宜しくね♪
> お願い(人'д`o)...byebye☆
原因をつきとめるべく少しずつ動きだすようですが…。
二人の絆を深めながら乗り越えていって欲しいです(>ω<)
コメントどうもありがとうございました
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