07/01/2013(Mon)
悪魔と野犬ノ仔 38話
何とか休みを合わせて二人は田舎に帰った。田舎に帰る前に拓水に電話をした要は一度拓水の所へ会いに行きたいと電話を掛けたが、「会いたくない」と完結に拒絶されてしまった。
まだ心の傷を引きずっている拓水と和解するには時間が必要なようだった。仕方なく要たちは母親たちの元へ帰る事にした。
懐かしい匂いに水無月ははしゃいで浮足立つようにして歩いていた。
目が休まるような深緑と青空のコントラストが日々募った不安の霧を晴らしてくれるようだった。
案の定家に帰ると嬉しそうに迎えてくれた母親と父親が色々と世話を焼いてくれた。
夕飯も終わり、雰囲気の良い時を見計らって要は口を開いた。
「ちょっと、聞いて欲しいんだけどさ」
「何?」
洗いものをする母親が笑顔で答え、野球中継を見ながら耳だけこちらに注意を向けていた。水無月は要の隣に移動し、ぴったりと要の身体に寄り添った。その様子を父親が目で追っていた。
「俺、水無月が好きなんだ」
「僕もっ……要兄ちゃんが好きっ」
両親にとっては仲が良い兄弟の悪ふざけにしか見えなかったのだろう。
「はいはい。そりゃあ昔からアンタたちは仲良かったの母さんたち知ってるからね」
父親は違和感にでも感づいたのか、要を見上げる水無月の表情を見ていた。
「悪い……恋人って意味でこれから一緒にいる事にしたからさ……認識だけしておいて欲しいと思って」
水無月は初めて自分を好きだと言い、恋人だと言葉にした要に少し驚き嬉しさが込み上げてきた。
今までジャーと流れていた水道水の音が止まった。
「え? 何? 恋人? ……何言ってるの要」
母親が前掛けで手を拭きながら要たちの側に近づいた。
父親の方も姿勢を正して「どういう事だ」と表情を険しくする。
「悪い……俺たちはもう、多分ずっと前から恋人以上の関係で……これからは伴侶としてずっと一緒にいるつもりなんだ」
「兄ちゃん……」
てっきり物凄い勢いで怒って反対されると予想していた要だったが、母親は俯いたまま何かを考え込んでいた。
父親も何も言わず、ただ複雑な表情で要と水無月を見つめていた。
「ねぇアナタ……やっぱりまともに育つ訳がなかったのよ……やっぱり私たちの育て方が……ッ」
「よしなさい」
「だってッ! ……やっぱり病院に通ってッ」
「やめなさいッ」
両親がどうして急に喧嘩をし出したのか分からなかったが、突然出た病院という言葉が引っ掛かった。
「病院って何」
要がそう聞くと両親は黙った。
「二人が……お互いに必要な存在で……それで幸せならいいじゃないか……」
父親がそう母親に言った。母親はダイニングテーブルに座ると、顔を覆いながらもゆっくりと二、三度頷きながら「そうね……そうね……」と呟いた。
「なぁ病院ってなんの事だよ」
「いや、別に何でも無い。お前は昔少し変わった病気だったから心配しただけだよ」
既に普段の表情に戻った父親がそう言い、水無月の所へ近づいた。水無月が要の手をギュッと握った。
「ミナちゃん。要を大切にしてくれるかい?」
「……うん。するよ、ずっと」
父親は優しい笑顔で水無月の頭を撫でた。
「要は?ミナちゃんをずっと大切出来るか?」
「ああ。するよ……なんか、牧師みたいだな、父さん」
父親はやはり優しい笑顔で要の頭を撫でた。要は少しだけ照れくさかった。
「お父さん、昔は牧師だったから」
落ち着きを取り戻した母親は少し笑顔を作りながらそう言った。
「そうなんだ? 知らなかった」
ずっとサラリーマンだと思っていた父親が昔牧師だったとは要は思いもよらなかった。
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まだ心の傷を引きずっている拓水と和解するには時間が必要なようだった。仕方なく要たちは母親たちの元へ帰る事にした。
懐かしい匂いに水無月ははしゃいで浮足立つようにして歩いていた。
目が休まるような深緑と青空のコントラストが日々募った不安の霧を晴らしてくれるようだった。
案の定家に帰ると嬉しそうに迎えてくれた母親と父親が色々と世話を焼いてくれた。
夕飯も終わり、雰囲気の良い時を見計らって要は口を開いた。
「ちょっと、聞いて欲しいんだけどさ」
「何?」
洗いものをする母親が笑顔で答え、野球中継を見ながら耳だけこちらに注意を向けていた。水無月は要の隣に移動し、ぴったりと要の身体に寄り添った。その様子を父親が目で追っていた。
「俺、水無月が好きなんだ」
「僕もっ……要兄ちゃんが好きっ」
両親にとっては仲が良い兄弟の悪ふざけにしか見えなかったのだろう。
「はいはい。そりゃあ昔からアンタたちは仲良かったの母さんたち知ってるからね」
父親は違和感にでも感づいたのか、要を見上げる水無月の表情を見ていた。
「悪い……恋人って意味でこれから一緒にいる事にしたからさ……認識だけしておいて欲しいと思って」
水無月は初めて自分を好きだと言い、恋人だと言葉にした要に少し驚き嬉しさが込み上げてきた。
今までジャーと流れていた水道水の音が止まった。
「え? 何? 恋人? ……何言ってるの要」
母親が前掛けで手を拭きながら要たちの側に近づいた。
父親の方も姿勢を正して「どういう事だ」と表情を険しくする。
「悪い……俺たちはもう、多分ずっと前から恋人以上の関係で……これからは伴侶としてずっと一緒にいるつもりなんだ」
「兄ちゃん……」
てっきり物凄い勢いで怒って反対されると予想していた要だったが、母親は俯いたまま何かを考え込んでいた。
父親も何も言わず、ただ複雑な表情で要と水無月を見つめていた。
「ねぇアナタ……やっぱりまともに育つ訳がなかったのよ……やっぱり私たちの育て方が……ッ」
「よしなさい」
「だってッ! ……やっぱり病院に通ってッ」
「やめなさいッ」
両親がどうして急に喧嘩をし出したのか分からなかったが、突然出た病院という言葉が引っ掛かった。
「病院って何」
要がそう聞くと両親は黙った。
「二人が……お互いに必要な存在で……それで幸せならいいじゃないか……」
父親がそう母親に言った。母親はダイニングテーブルに座ると、顔を覆いながらもゆっくりと二、三度頷きながら「そうね……そうね……」と呟いた。
「なぁ病院ってなんの事だよ」
「いや、別に何でも無い。お前は昔少し変わった病気だったから心配しただけだよ」
既に普段の表情に戻った父親がそう言い、水無月の所へ近づいた。水無月が要の手をギュッと握った。
「ミナちゃん。要を大切にしてくれるかい?」
「……うん。するよ、ずっと」
父親は優しい笑顔で水無月の頭を撫でた。
「要は?ミナちゃんをずっと大切出来るか?」
「ああ。するよ……なんか、牧師みたいだな、父さん」
父親はやはり優しい笑顔で要の頭を撫でた。要は少しだけ照れくさかった。
「お父さん、昔は牧師だったから」
落ち着きを取り戻した母親は少し笑顔を作りながらそう言った。
「そうなんだ? 知らなかった」
ずっとサラリーマンだと思っていた父親が昔牧師だったとは要は思いもよらなかった。
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コメント
>
> 要の堂々とした態度と言葉に ミナの要に向ける視線に 2人が真剣だと 分かったのでしょう。
そうなんですよね~(;・∀・)
というのもきっと認める事で少しでも要が幸せになるならっていう思いだったんだと思います。。
認める事なんて大した事じゃない程なにか……
(・ω-;)
> それはそうと パパとママが とってもとっても気になる事を言ったよね!?
> 「変わった病気」って 今の要を苦しめてる頭痛に関係あるのかな。。。
> (_ _,)ゞ アタマイター...byebye☆
次第に原因に近づいて来たような……ですね
はっ!∑(°ロ°*)
けいったんさままで頭痛がっている!
わーすみませーん><
コメントどうもありがとうございました
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