10/01/2010(Fri)
3万Hitキリリク「相部屋のメリットデメリット」7話
(六限目、悠馬と一緒か……やだな…)
何となく気まずい気持ちで教室に入る。
教室は下から上へと階段で段差になっており、コンサート会場のように湾曲している。
美海はいつものように後ろの方の席へつき、教材とノートを取り出していると、前のドアから悠馬が入って来るのが見えた。
いつもは悠馬が直ぐに美海を見付け、隣の席に座ってくるのだが、今回はチラリとも美海を見ずに前の席へ座った。
美海は心なしか苛つく。怒っているのは自分であり、悠馬にそういう態度を取られるとどうも腹が立つようだ。
悠馬は相変わらず黙っているとモデルのように美しく際立っていた。珍しく一人で座る悠馬にこぞって色んな輩が隣の席へ座る様子が後ろからよく見えた。
授業中も隣の男と何やら筆談で楽しげにしている様子が嫌でも目について美海の苛つきは益々大きくなる。
教授が後ろを向いて黒板に数式を書き始めると、悠馬が隣の可愛らしい男に内緒話をするような素振りをして、チュッと耳元にキスをするのが見えた。
された方の男の子は顔が真っ赤になって溶けてしまいそうな表情を見せていた。
昨夜はあれだけ自分に対して可愛らしい表情を見せていた悠馬が今他の男に自分にしたように触れているのが無償に腹立たしかった。
(本当に誰でもいいんだな、あいつは)
今こうして腹が立っているのはきっと宮古を応援する気持ちから来るものだと、美海は自分自身で思い込んでいた。
授業が終わっても隣の男と楽しくおしゃべりしている悠馬を視界に入れない様にして、美海はサッサと出口へ向かった。
(ああッ! 気分悪ぃ! 授業中に男同士でイチャついてんじゃねーよ、気持ち悪ぃ!)
美海はサッサと一人で寮へ戻るとレポートを書き、テスト勉強をした。食事時になったので寮の食堂へ行くが悠馬の姿は見当たらなかった。
あれから一度もまだ部屋へ戻って来ていない。
またどこぞの男とイチャついているんだろうと思うと、再び美海の心が苛つき始めた。
「あーッもう考えるのも止めッ」
美海は再び部屋へ戻り、ドアを開けた。
すると、悠馬が部屋の真ん中で誰かの後頭部を押さえてキスしている姿が目に飛び込んできた。
美海の空けたドアの音に驚いて振り向いたのは、宮古だった。
宮古はあっ、と声を上げて恥ずかしそうに悠馬から離れた。
「じゃ、じゃあ僕もう行くから悠馬くんっ……考えといてねっ」
ドアの方へ向かって来る宮古と目が合うと、宮古がちょっと嬉しそうに笑いかけてきた。
美海もそれにつられて少し笑みを浮かべた。
ガチャリと後ろのドアが閉まる音がしてから、美海は悠馬を無視して自分のベッドの方へ向かって歩いた。
美海はベッドの上にドサリと身体を放り、天井を見る。
美海の身体の内側は焦げそうに何か灼熱のものが渦巻いていた。
今何か口を開けば、言わなくていい事まで言ってしまいそうで押し黙っていた。
だが、そんな事を知る由もない悠馬は口を開く。
「お前、本当は全部覚えているだろう?」
美海の目が座る。視線は天井に向けたまま両手組んで頭の後ろへ付けた。
「るせーよ、覚えてねーって言ってんだろ」
「今日一日中、昨日のお前の姿とか、キスの感じとか、そういうのが頭から離れなかった」
美海は怒りで腸(はらわた)が煮え返りそうになる。
(だったら何で授業中あんな楽しそうにしてた? 何でさっき宮古先輩とキスしてた? 他に今日何してた!?)
「いいから飯食って来いよ。俺、もうシャワー浴びて寝るし」
これ以上口をききたくない美海は話題をすり替えて壁の方を向いて横になった。
「飯は、もう宮古先輩と食ったから……」
「あぁそうかよ。ならもう静かにしててくれよ」
美海は食堂でいない悠馬に気に掛けていた自分を思い出して更に苛ついた。本当にこれ以上喋ったら怒鳴りそうで、美海は深く息を吸い込んだ。
すると、ギシリとベッドが沈んでふと見上げると、美しく困惑した表情の悠馬が覗きこんでいた。
「美海、もう一度だけキスさせて」
美海の怒りは限界を突破した。
「お前、そんなに俺とヤりてぇのかよ? ヤって満足してそれで終わりか? バカにすんなよ! 何で俺にこだわる!? 別に宮古先輩でもいいんだろ!?」
美海は悠馬の肩のTシャツを乱暴に掴んで声を荒げた。
すると悠馬は少し斜め下に視線を向けて小さな声で言った。
「さっき宮古先輩に告白されて……付き合ってくれって言われた」
美海は内臓の奥からズキンと鋭い痛みを感じた。妙に心が落ち着いて、それでいて沈んでいく。
「良かったじゃん。おめでとさん」
美海は掴んだ悠馬のTシャツを離すと、再びベッドに横になった。
少し間が空いて、背中の方から小さな溜息が聞こえてきた。その溜息の音に何故か緊張する。
「美海、俺、宮古先輩と付き合ってみようと思うよ」
美海は心が震えた。それを望んでいた筈なのに何かがショックだったような震えに目を逸らす。
「へぇ。良かったな。“彼氏”ができて」
妙な強がりと皮肉を言う自分に困惑しつつも、言葉は止まらなかった。
「だからさ、せっかく一緒の部屋なんだし、これからは友達として仲良く出来ないか?」
(友達として……)
そう言われると断る方がおかしく思えてゴロリと悠馬の方へ身体を反転させた。
「分かった。よろしくな」
美海がそう言うと、悠馬が握手を求めて手を出してきた。
「あぁ。よろしくな」
そう言った悠馬の笑顔がやはり見惚れる程魅力的で吸い込まれそうになる。
そして立ち上がった悠馬がドアの方へ向かった。
「どこ行くんだ?」
「ん? あぁ、今から宮古先輩に返事して来ようと思ってな。それと、無くなりそうだったからシャンプー、買っておいたから。じゃあ」
そう言って手を上げて悠馬は出て言った。
「……優しいところ、一つ見っけた……」
そう呟いた美海はゴロリと再び天井を向いた。
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んもーッ(o>Д<)o
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何となく気まずい気持ちで教室に入る。
教室は下から上へと階段で段差になっており、コンサート会場のように湾曲している。
美海はいつものように後ろの方の席へつき、教材とノートを取り出していると、前のドアから悠馬が入って来るのが見えた。
いつもは悠馬が直ぐに美海を見付け、隣の席に座ってくるのだが、今回はチラリとも美海を見ずに前の席へ座った。
美海は心なしか苛つく。怒っているのは自分であり、悠馬にそういう態度を取られるとどうも腹が立つようだ。
悠馬は相変わらず黙っているとモデルのように美しく際立っていた。珍しく一人で座る悠馬にこぞって色んな輩が隣の席へ座る様子が後ろからよく見えた。
授業中も隣の男と何やら筆談で楽しげにしている様子が嫌でも目について美海の苛つきは益々大きくなる。
教授が後ろを向いて黒板に数式を書き始めると、悠馬が隣の可愛らしい男に内緒話をするような素振りをして、チュッと耳元にキスをするのが見えた。
された方の男の子は顔が真っ赤になって溶けてしまいそうな表情を見せていた。
昨夜はあれだけ自分に対して可愛らしい表情を見せていた悠馬が今他の男に自分にしたように触れているのが無償に腹立たしかった。
(本当に誰でもいいんだな、あいつは)
今こうして腹が立っているのはきっと宮古を応援する気持ちから来るものだと、美海は自分自身で思い込んでいた。
授業が終わっても隣の男と楽しくおしゃべりしている悠馬を視界に入れない様にして、美海はサッサと出口へ向かった。
(ああッ! 気分悪ぃ! 授業中に男同士でイチャついてんじゃねーよ、気持ち悪ぃ!)
美海はサッサと一人で寮へ戻るとレポートを書き、テスト勉強をした。食事時になったので寮の食堂へ行くが悠馬の姿は見当たらなかった。
あれから一度もまだ部屋へ戻って来ていない。
またどこぞの男とイチャついているんだろうと思うと、再び美海の心が苛つき始めた。
「あーッもう考えるのも止めッ」
美海は再び部屋へ戻り、ドアを開けた。
すると、悠馬が部屋の真ん中で誰かの後頭部を押さえてキスしている姿が目に飛び込んできた。
美海の空けたドアの音に驚いて振り向いたのは、宮古だった。
宮古はあっ、と声を上げて恥ずかしそうに悠馬から離れた。
「じゃ、じゃあ僕もう行くから悠馬くんっ……考えといてねっ」
ドアの方へ向かって来る宮古と目が合うと、宮古がちょっと嬉しそうに笑いかけてきた。
美海もそれにつられて少し笑みを浮かべた。
ガチャリと後ろのドアが閉まる音がしてから、美海は悠馬を無視して自分のベッドの方へ向かって歩いた。
美海はベッドの上にドサリと身体を放り、天井を見る。
美海の身体の内側は焦げそうに何か灼熱のものが渦巻いていた。
今何か口を開けば、言わなくていい事まで言ってしまいそうで押し黙っていた。
だが、そんな事を知る由もない悠馬は口を開く。
「お前、本当は全部覚えているだろう?」
美海の目が座る。視線は天井に向けたまま両手組んで頭の後ろへ付けた。
「るせーよ、覚えてねーって言ってんだろ」
「今日一日中、昨日のお前の姿とか、キスの感じとか、そういうのが頭から離れなかった」
美海は怒りで腸(はらわた)が煮え返りそうになる。
(だったら何で授業中あんな楽しそうにしてた? 何でさっき宮古先輩とキスしてた? 他に今日何してた!?)
「いいから飯食って来いよ。俺、もうシャワー浴びて寝るし」
これ以上口をききたくない美海は話題をすり替えて壁の方を向いて横になった。
「飯は、もう宮古先輩と食ったから……」
「あぁそうかよ。ならもう静かにしててくれよ」
美海は食堂でいない悠馬に気に掛けていた自分を思い出して更に苛ついた。本当にこれ以上喋ったら怒鳴りそうで、美海は深く息を吸い込んだ。
すると、ギシリとベッドが沈んでふと見上げると、美しく困惑した表情の悠馬が覗きこんでいた。
「美海、もう一度だけキスさせて」
美海の怒りは限界を突破した。
「お前、そんなに俺とヤりてぇのかよ? ヤって満足してそれで終わりか? バカにすんなよ! 何で俺にこだわる!? 別に宮古先輩でもいいんだろ!?」
美海は悠馬の肩のTシャツを乱暴に掴んで声を荒げた。
すると悠馬は少し斜め下に視線を向けて小さな声で言った。
「さっき宮古先輩に告白されて……付き合ってくれって言われた」
美海は内臓の奥からズキンと鋭い痛みを感じた。妙に心が落ち着いて、それでいて沈んでいく。
「良かったじゃん。おめでとさん」
美海は掴んだ悠馬のTシャツを離すと、再びベッドに横になった。
少し間が空いて、背中の方から小さな溜息が聞こえてきた。その溜息の音に何故か緊張する。
「美海、俺、宮古先輩と付き合ってみようと思うよ」
美海は心が震えた。それを望んでいた筈なのに何かがショックだったような震えに目を逸らす。
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妙な強がりと皮肉を言う自分に困惑しつつも、言葉は止まらなかった。
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美海がそう言うと、悠馬が握手を求めて手を出してきた。
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そう言った悠馬の笑顔がやはり見惚れる程魅力的で吸い込まれそうになる。
そして立ち上がった悠馬がドアの方へ向かった。
「どこ行くんだ?」
「ん? あぁ、今から宮古先輩に返事して来ようと思ってな。それと、無くなりそうだったからシャンプー、買っておいたから。じゃあ」
そう言って手を上げて悠馬は出て言った。
「……優しいところ、一つ見っけた……」
そう呟いた美海はゴロリと再び天井を向いた。
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コメント
おお!Yさまも一緒に「んもーッ(o>Д<)o」して下さって
ありがとうございます(笑)
(〃д〃)キャ~♪
じれったくてキュンキュンして下さったのですか!?
嬉しいですー!!
どうにかこの子たちに動きがある事を願います^^;
拍手秘コメントどうもありがとうございました
本当、本当ウン(*-ω-)(-ω-*)ウン
相手はノンケだった男だぞ~!器用なようで不器用な遊び人だ^^;
> 免疫がない上に、気持ちを自覚するどころか否定したがってるんだから…。
> ああ、ほら、言わんこっちゃない(爆)
バンバンヾ(≧▽≦)ノギャハハ☆
澪ちんに呆れられてる(笑)
確かにおかしな方向へ行ってしまったぞ~!
どうするんだよー!ヽ(`Д´)ノプンプン
> 『友達として』なんて改めて括っちゃうとまた複雑なことになってくぞ~~щ( ̄∀ ̄)ш ヶヶヶ ←
そうそう!でもそんな醍醐味もあったりして( ̄ー ̄)ニヤ...
> 『彼氏』が出来ちゃったらまた、あーんなことや、こーんなこと(笑)を目撃してしまう危険性が!?
> これぞ相部屋のデメリットーー!(゚▽゚*)ニパッ♪ ←
> 美海くんの限界は結構近いかも!?
澪ちんのエスパー!!Σ(゚∀゚ノ)ノキャー
でもそのトーリ!!(笑)
美海も自分の素直な気持ちが膨れてくるのか!?
早く相部屋のメリットを実感してくれたまえ(笑)
コメントどうもありがとうございました
エイ!(*`・д・´)ノ゛)Д`)ペション
思わず殴ってしまいました。おバカちゃんたち!
> こんなんで付き合ってもらっても、宮古ちゃんも可哀想ですよね。
> 悠馬くん、長年の遊び人が抜けないのね。
> これじゃあ、本当に好きな人とは一生上手くいかないよね~(--;)
本当、こんなん、宮古センパイが可哀想です…。
ユーマのあんぽんたん(>ω<)!
> どうするのかしら・・・。
> 両思いなのに見事にすれ違っちゃってー!!
> ある意味、恋愛ものの王道か・・・。お互いに、相手が何を考えてるのかわかんない、とか思っていそうですよね。
素直になれればいいんですが、何せ美海はノンケから抜けだせないでいるので
どうにかしたいですね!!もう気付けよ!って感じです!
お前は胸を張って言える!ゲイだぞ!!と(笑)
ですが、良いお友達にはなっていく様子…
コメントどうもありがとうございました
免疫がない上に、気持ちを自覚するどころか否定したがってるんだから…。
ああ、ほら、言わんこっちゃない(爆)
『友達として』なんて改めて括っちゃうとまた複雑なことになってくぞ~~щ( ̄∀ ̄)ш ヶヶヶ ←
『彼氏』が出来ちゃったらまた、あーんなことや、こーんなこと(笑)を目撃してしまう危険性が!?
これぞ相部屋のデメリットーー!(゚▽゚*)ニパッ♪ ←
美海くんの限界は結構近いかも!?
こんなんで付き合ってもらっても、宮古ちゃんも可哀想ですよね。
悠馬くん、長年の遊び人が抜けないのね。
これじゃあ、本当に好きな人とは一生上手くいかないよね~(--;)
どうするのかしら・・・。
両思いなのに見事にすれ違っちゃってー!!
ある意味、恋愛ものの王道か・・・。お互いに、相手が何を考えてるのかわかんない、とか思っていそうですよね。
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