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万華鏡-江戸に咲く-46

「あ!戻ってきたー!美月さーんっ」
 喜助が美月たちに駆け寄ってきた。
「もう、どこに行ってたの?探したんだよ?」
「ごめん、ちょっと気分悪くてお水飲みに行ってたんだ」
 ふわりとはにかんだように笑う美月は先程よりも更に色香が増して、美月の周りを纏う透明な媚薬を含むような空気を吸うだけで喜助はクラクラきて倒れそうになる。
(な、何だろう・・美月さん、何だかさっきよりも色っぽい・・あれ?)
 
「美月さん、首のトコ何か赤いけどどうしたの?」
 美月と夜はドキリとした。
(さっき夜に噛み付かれた時の歯型だ!)
「あ、ああコレはさっき芝生で横になってたら虫に噛まれてね!大丈夫だよ、ありがとう」
その言葉を聞いて夜の眉がピクリと動いた。
(虫・・ねぇ)

 
 それからは何だか心が満ち足りたのか、とても楽しく過ごせた。夜のあの時の「今はお前しか感じなていない」という言葉と、雪之丞が見えていても萎える事が無かった事で、夜が本当に自分に気持ちがあるという事が分かった気がしたからだ。

 喜助は、それまでどことなくギクシャクしていた夜と美月が一変してしっとりとした同じ雰囲気を纏う二人にどうも心が落ち着かなかった。まだ幼い自分には決して割り入れられない大人の恋愛事情の中。それは喜助に大きな寂しさを生み、一刻も早く大人になりたいと願わずにはいられなかった。
 
 もうそろそろ雪之丞たちの家の方向と、夜たちの家の方向が分かれる道に差し掛かる。
「おい、夜、お前お雪ちゃん達を送って行くんだろ?」
 自然とみんなの足取りが遅くなる。
 夜は「ん・・・」と返事とは言い難い曖昧な声を出すと、ちらりと美月を見た。
 美月も送りたいが雪之丞も送りたい、という事なのだろうか。
「夜七、僕たちは平気だから美月を送ってあげなよ!」
 雪之丞がすかさず提言するが、それを喜助が制する。
「熊さんが美月を送ってもいいじゃないか!」
「おっ!気が利くじゃね~か、喜助ぇ」
 ジロリと夜が熊を睨む。
「何もしねぇって、怖いなぁ」

(これって、俺が言えば丸く収まるんだよな・・?)
 仕方ない。美月は少し溜息を吐くと言葉を発した。
「夜、雪之丞さんたちを送ってあげて。途中、何かあったら大変でしょ。」
 何か、の意味を捉えてくれたようで夜の表情がピクリと動いた。守る、そう約束をしたと言っていた。ここで何かあれば夜はきっと後悔しても仕切れなくなってしまうだろう。
 美月だって雪之丞の事は勿論、喜助も大好きでやはり心配だった。
今夜はほんの少し心に余裕の持てる自分を褒めてあげられそうだ。同時に全く現金なものだ、と心の中で細く蔑む自分もいた。

「じゃあここで。また一緒にどこかに行こうね!気を付けて!」
「おやすみなさい!熊さんに気を付けてね、美月さん!」
 雪之丞と喜助が別れ際に挨拶をする。
「美月、気を付けろよ。・・今日は送ってやれなくて、その、すまない。」
 夜はバツの悪そうな顔をして、整った艶のある顔を歪ませた。
「いいよ。ほら、早く行きなよ」
 そんな夜に愛想笑いを向けてサッサと気丈に追い払ったが、胸がシクシク痛んだ。

 気分の落ち込んだ美月に熊はとめどなくどうでもいい話をしてくれた事が、申し訳ないがBGMのようで心地よく感じていた。
 適当に相槌を打っていた美月も、別段本気で思ってもいない言葉を発したが、熊の一言で我に返った。
「夜は本気の奴には手ぇ、出さねぇ奴だよ」
「え?」
「ん?だから今美月ちゃん、夜は遊び人だって言ったからさ。確かにそういうところもあるが、本気の相手にはなかなか手は出せないって前言ってたからよ」



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