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万華鏡-江戸に咲く-9

☆15禁です。ゆる~いですが。
 
 まだボーッとする頭で騒ぐ声の方向へ体を起こし、店先へ様子を見に行くと店番をしていた熊が何やら一人の青年を店の中に連れ込もうとしているところだった。
 暗い場所から出てきた夜には外の光がまだ眩しく、目が慣れないでいた。

「離せよ!!ふざけんな!」
 高すぎず低すぎない耳に心地の良い声が頭に響く。叫んだ声が妙に艶かしく聞こえる。
「ふぁ・・。んだようるせーな。なにやってんだよ熊。連れ込みかぁ?」

 漸く明るさに慣れた目をしっかり開けると、店先に立つ見た事の無い奇妙な格好の青年が夜を見据えた。
キラキラッと宝石が転がったような煌く瞳が夜の霧がかった頭を一瞬で晴らす。

(・・綺麗・・・)

 素直にそう思えた人間はこれで2人目だった。
 一瞬で惹き込まれそうだった。胸がざわついていつもその存在すら忘れがちの心臓の音が、急に脳内に移動してきたように脈打つ。

 そんな挙動を悟られまいと余裕の表情を作りつつ、その美しい青年の目の前に立ってみる。
 至近距離で見るその青年は更に美しく、少し童顔気味だが気の強そうな凛とした顔立ちだ。自分とそう年が変わらないのではないか、と予想する。この青年からは内側から押し隠すような色香が醸し出されている。きっとそんな事は本人は気付いていないだろう。 

 自分より10cm程背の低いその青年は自分を見上げるように上目遣いでその大きな瞳を開く。
 間近で見るその瞳には見た事の無い美しい煌きが宿っていた。夜はその美しい瞳も、絹ような髪も、美しい鼻も、柔らかく弾力があって気持ちの良さそうな唇も、昔集めた宝物の綺麗な貝殻のように、一つずつ取って仕舞い込んでしまいたいと思った。

 青年は熊が男娼と間違えられて憤慨していた。
 雪花石膏のように白く滑らかな頬を怒りで薄紅色に染めているのが愛らしく、もう少し見ていたいと思ったのでお茶に誘って中へ招き入れた。

 青年はまんざらでもないようで、素直に付いて中へ入ると物珍しそうにキョロキョロと辺りを見回したり、チラチラとこちらの様子を伺っている。まるで小動物のようだ。

 夜はその青年の不思議な出で立ちに疑問を投げかけると、意味不明の言葉を織り交ぜながら楽しげに笑った。異人かと尋ねるとそうではなく、青年は未来から来たのだという。
 夜には真意は別として、その青年に興味を引かれた。そんな不思議な格好も初めて見るし、可笑しな事を言う奴にも初めて会った。
 
 もう少し色々と話をしてみたいと思っていた所に、チラチラと意味深な視線を向けられて夜の中に潜む欲がむくりと頭をもたげた。
 話をしたいという欲は、程なくその柔らかそうな唇に触れてみたい、感じる時の声が聞いてみたいという欲へと転換してしまった。

(こいつ、ちらっちら俺の事をそんな目で見て・・気があるんじゃねぇか。)

 青年が夜を見た時の表情は完全に、自分もそうであったように惹き込まれたものであった。
 この青年も少なからず自分に魅力を感じている事は間違いなく、それが更に夜に自信を持たせてしまった。
いつもは誰にでも優しく、無理強いなどした事の無い夜だがその青年を前にすると欲が暴走した。

―少し強く押せば、自分になら大抵の人がそうであるように受け入れるはずだ・・

―そのぽってりとした唇を吸ってみたい・・

―無理やりしたらどんな反応するか見てみたい・・
 
 気が付くと欲望は全て行動に出ていた。
 唇から伝わる感触は柔らかくて弾力があって気持ちが良かった。
 最初は驚きからか、強張っていた相手の唇も次第に夜の唇や舌の動きに反応するようになった。青年の口内へ舌を侵入させ、相手の柔らくてトロけそうな舌を絡め取ると脳が甘く痺れた。こんなに気持ちのいいキスは初めてだった。

(こいつの舌、甘くて蕩けそう・・キモチイ・・)

 挿し込んで犯している夜自身の舌も感じてくる。
 不自然な始まりのキスはそのうち自然と会話でもするようにお互い貪り合って、ぴちゃぴちゃとエロチックな音を立てていた。
 青年の口内のあらゆる場所を刺激してやると、鼻から抜けるように甘い声が出る。
 声になど反応した事の無い夜だったが、その気の強そうな顔立ちとは正反対の少し掠れるような甘ったるい声に全身が総毛立った。

(もっと聞きたい・・もっと・・)

 布の上から焦らすように、そしてカリカリと胸の尖りを引っかいてやると「あっ・・んんっ」といい声を出す。頬を桜色に染めて、困っているのに感じている表情をしている。時折葛藤するように眉をひそめるのがたまらない。
 夜の下半身には既に大きく硬くなったモノが後押しするように性欲を更に掻き立てる。

 もっと恥ずかしい事して、嫌がるのに感じてしまうこいつをメチャクチャにしてみたい。そんな凶暴な心が胸に膨らんでくる。

 そんな妄想で興奮していた夜は思わぬ反撃を食らわせられた。夜は、足で蹴飛ばすようにして夜から壁際に逃げる小動物を更に追い込んで、モノにしようと思った瞬間頬に激痛が走った。
 青年は夜の美しい顔を殴り飛ばし、罵声を浴びせると真っ赤な顔に目を潤ませながら店を飛び出して行った。

(おいおいおい。迫った俺を拒否した奴も初めてだが、挙句殴った奴も初めてだぞ・・ったく何て気の強いというか何というか・・)

 果たして自分は本当に嫌がる事をしたかと考え直してみるが、あの青年もむしろ感じていたのだから行為に嫌悪した事が原因ではないと思った。というよりも感じてしまった事が怒りのきっかけになった様に思えた。

(意外とお堅いんだな。)

 夜の頬に刻まれた赤い手形を見て爆笑する熊の頭を張り飛ばし、駆けて行くしなやかな背中を目で追いながら狩をする楽しみが増えたと思うと、自然と口角が上がった。





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これは夜視点です。
夜から見た美月はそそられるらしいw
殴られてましたが、逆に火が点いた模様w


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01:27 | 万華鏡-江戸に咲く- | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
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