07/09/2010(Fri)
万華鏡-江戸に咲く-72
剥き出しの乾いた道を二人で黙々と歩いていると、夜が突然振り向いて美月の腰を抱き寄せた。
「なっ・・んんっ」
そのまま激しく道のど真ん中で美月の唇を塞いでくる夜を押しのけようとするが、その手首も掴まれてしまい、抵抗する間もない。
道を行く人々はその大っぴらな光景にジロジロと好奇な視線をしつこく投げかけるが、そんな事はお構いなしにどんどんと激しく舌を絡ませてくる。
美月は夜の味を感じる度に、力が削ぎ落とされ、寧ろ味わっていくように淫らになっていく。
回りの人たちの視線も快感に感じてきた美月に気づいた夜は、わざと舌の絡まりが見えるように美月の柔らかな舌を外へ導き出してやる。
「んっ・・み・・んな見て・・る」
「ああ、見せてんだよ」
「や・・あ・・」
羞恥心が妙に刺激的だ。
恥ずかしくて止めて欲しいのと、恥ずかしいのに止められない気持ちが交差する。
「なぁ、うちに住めよ。そうすりゃあ向こうに一々行き帰りしなくて済むだろ?」
「夜のうちに?熊さんは?」
「熊?熊は隣にでも追いやるよ」
その日から美月は夜の店に一緒に住むようになった。
だが、一緒に住むからと言ってしょっちゅう一緒にいられる訳でもなく、美月が抱月と仕事をしに行く時間と夜が茶屋だの怪しい仕事だのに行く時間が交互に来るため、たまにしかゆっくりと二人で過ごせなかった。
それでも前よりは顔が見られる時間が増えた事で互いに幸せを感じる事が出来ているのも事実だった。
だが、美月は夜の生活環境と仕事内容について更に不安とストレスを感じてきていた。
今までは仕方がない、と目を瞑っていたものも、一緒にいるからこそ否が応でも目についてしまう事が多々あった。
たまに鎖骨辺りに付けてくる小さめのキスマークなどは、見つける度に心が痛んだ。
美月自身も抱月とは夜に内緒で少し触れあう事はあっても、好きでもない人とはやはり軽々しくそういう事はできない。
だが、夜は・・。
ある晩、遅くに帰ってきた夜が先に寝ていた美月の布団に潜り込んできた。
美月が寝ているのもお構いなしに夜の大きくスラリとした手が足にかかる浴衣の隙間から忍び込んできた。
「ん・・よ・・る?」
夜は美月が寝ているのもお構いなしにその滑らかな肌を触りたいように触ってくる。
「夜ってば・・やめ・・んっ・・ふ」
どうした事か、今夜はやけに荒っぽい。
美月が顔を背けても直ぐに顎を捕まれて、噛みつくようなキスをしてくる。
「や・・んっ・・んんっ」
浴衣を乱暴に肌蹴させた夜は、強く美月の形のいい尻を掴んできた。
夜の爪が美月の軟肌に食い込む。
「あっん・・痛いっ・・ヤダって夜っ」
夜が美月の痛がる声に煽られるように息を荒げて、自分の浴衣を引きちぎるように脱いで、その均整のとれた艶めかしい上半身を露わにする。
夜がその色気のある身体で美月に体重を乗せると、その重みに蕩けてしまいそうになった。
だがその時、夜の身体から甘い香の匂いが美月の鼻孔を掠めてカッとなった。
「止めろッ」
美月はその途端、身体が夜を拒否した。
夜の肩を強く押し退けてスルリと抜け出ると、肌蹴けた浴衣を合わせる。
夜が鷹のように鋭い眼光で睨み付けてくるが、文句を言われる前に美月が口を開いた。
「夜、お前、今までどこで何してたんだよ」
夜は面倒臭そうに頭を掻きながら、美月から視線を逸らして膝を立てて座った。
「仕事だよ」
「お前の仕事、何となく分かってたけど色々事情あるみたいだから黙って見過ごしてきた・・けど、もう限界だ」
「別に浮気じゃねぇよ」
「分かってる!でもイヤなんだよ!他の女の香の匂い嗅ぎながら抱かれるなんて!」
「ババアだぜ?」
「そういう問題じゃねぇよ!馬鹿!」
美月は夜の考え方に苛ついて声を荒げる。
「悪かったよ。でも、俺だって好きでやってる訳じゃねぇんだ。お前が黙っててくれてるって事は譲歩してくれてる事だって、分かってた」
美月は分かっていた。自分が如何にずるい事を言っているのかを。
自分は抱月と接触しておきながら夜に対してこんな我儘を言っている。それでも、嫌だった。
夜がそっと美月の足首を撫でてくる。
「悪い。ついいつも他の奴を抱いた後は、無償にお前を抱きたくなるだ」
罪悪感もあるが、それ以上に自分は美月相手の行為が他とは全く別物だと自分に再確認したくなる気持ちが大きかった。
美月とする行為とは比べ物になどならなかった。
物足りない。最近はろくに勃ちもせず、客を憤慨させない為に薬を使って無理に勃たせていた。
射精も出来ずに相手のみを満足させて帰る事などは多々あった。
だが、夜の射精を望む輩に当たった場合は非常な困難だった。
目を瞑り、腰を動かし、脳内で美月を思い浮かべなければならなかった。
金持ちの奥方相手はそれは莫大な報償の得られる仕事だ。
ここまでするのには、訳がある。
―雪之丞
雪之丞の為に嫌な仕事をし、その相手の香りを纏わせた夜に抱かれるなんて、もう耐えられなかった。
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「なっ・・んんっ」
そのまま激しく道のど真ん中で美月の唇を塞いでくる夜を押しのけようとするが、その手首も掴まれてしまい、抵抗する間もない。
道を行く人々はその大っぴらな光景にジロジロと好奇な視線をしつこく投げかけるが、そんな事はお構いなしにどんどんと激しく舌を絡ませてくる。
美月は夜の味を感じる度に、力が削ぎ落とされ、寧ろ味わっていくように淫らになっていく。
回りの人たちの視線も快感に感じてきた美月に気づいた夜は、わざと舌の絡まりが見えるように美月の柔らかな舌を外へ導き出してやる。
「んっ・・み・・んな見て・・る」
「ああ、見せてんだよ」
「や・・あ・・」
羞恥心が妙に刺激的だ。
恥ずかしくて止めて欲しいのと、恥ずかしいのに止められない気持ちが交差する。
「なぁ、うちに住めよ。そうすりゃあ向こうに一々行き帰りしなくて済むだろ?」
「夜のうちに?熊さんは?」
「熊?熊は隣にでも追いやるよ」
その日から美月は夜の店に一緒に住むようになった。
だが、一緒に住むからと言ってしょっちゅう一緒にいられる訳でもなく、美月が抱月と仕事をしに行く時間と夜が茶屋だの怪しい仕事だのに行く時間が交互に来るため、たまにしかゆっくりと二人で過ごせなかった。
それでも前よりは顔が見られる時間が増えた事で互いに幸せを感じる事が出来ているのも事実だった。
だが、美月は夜の生活環境と仕事内容について更に不安とストレスを感じてきていた。
今までは仕方がない、と目を瞑っていたものも、一緒にいるからこそ否が応でも目についてしまう事が多々あった。
たまに鎖骨辺りに付けてくる小さめのキスマークなどは、見つける度に心が痛んだ。
美月自身も抱月とは夜に内緒で少し触れあう事はあっても、好きでもない人とはやはり軽々しくそういう事はできない。
だが、夜は・・。
ある晩、遅くに帰ってきた夜が先に寝ていた美月の布団に潜り込んできた。
美月が寝ているのもお構いなしに夜の大きくスラリとした手が足にかかる浴衣の隙間から忍び込んできた。
「ん・・よ・・る?」
夜は美月が寝ているのもお構いなしにその滑らかな肌を触りたいように触ってくる。
「夜ってば・・やめ・・んっ・・ふ」
どうした事か、今夜はやけに荒っぽい。
美月が顔を背けても直ぐに顎を捕まれて、噛みつくようなキスをしてくる。
「や・・んっ・・んんっ」
浴衣を乱暴に肌蹴させた夜は、強く美月の形のいい尻を掴んできた。
夜の爪が美月の軟肌に食い込む。
「あっん・・痛いっ・・ヤダって夜っ」
夜が美月の痛がる声に煽られるように息を荒げて、自分の浴衣を引きちぎるように脱いで、その均整のとれた艶めかしい上半身を露わにする。
夜がその色気のある身体で美月に体重を乗せると、その重みに蕩けてしまいそうになった。
だがその時、夜の身体から甘い香の匂いが美月の鼻孔を掠めてカッとなった。
「止めろッ」
美月はその途端、身体が夜を拒否した。
夜の肩を強く押し退けてスルリと抜け出ると、肌蹴けた浴衣を合わせる。
夜が鷹のように鋭い眼光で睨み付けてくるが、文句を言われる前に美月が口を開いた。
「夜、お前、今までどこで何してたんだよ」
夜は面倒臭そうに頭を掻きながら、美月から視線を逸らして膝を立てて座った。
「仕事だよ」
「お前の仕事、何となく分かってたけど色々事情あるみたいだから黙って見過ごしてきた・・けど、もう限界だ」
「別に浮気じゃねぇよ」
「分かってる!でもイヤなんだよ!他の女の香の匂い嗅ぎながら抱かれるなんて!」
「ババアだぜ?」
「そういう問題じゃねぇよ!馬鹿!」
美月は夜の考え方に苛ついて声を荒げる。
「悪かったよ。でも、俺だって好きでやってる訳じゃねぇんだ。お前が黙っててくれてるって事は譲歩してくれてる事だって、分かってた」
美月は分かっていた。自分が如何にずるい事を言っているのかを。
自分は抱月と接触しておきながら夜に対してこんな我儘を言っている。それでも、嫌だった。
夜がそっと美月の足首を撫でてくる。
「悪い。ついいつも他の奴を抱いた後は、無償にお前を抱きたくなるだ」
罪悪感もあるが、それ以上に自分は美月相手の行為が他とは全く別物だと自分に再確認したくなる気持ちが大きかった。
美月とする行為とは比べ物になどならなかった。
物足りない。最近はろくに勃ちもせず、客を憤慨させない為に薬を使って無理に勃たせていた。
射精も出来ずに相手のみを満足させて帰る事などは多々あった。
だが、夜の射精を望む輩に当たった場合は非常な困難だった。
目を瞑り、腰を動かし、脳内で美月を思い浮かべなければならなかった。
金持ちの奥方相手はそれは莫大な報償の得られる仕事だ。
ここまでするのには、訳がある。
―雪之丞
雪之丞の為に嫌な仕事をし、その相手の香りを纏わせた夜に抱かれるなんて、もう耐えられなかった。
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コメント
> そうか? 美月ちゃんで、ウサを晴らしてたのね。
> 美月ちゃん、気がついてたけど我慢してた~~。
> でも、香のかおりと乱暴な夜にブチ切れて
自分も先生と秘め事をしていたのである程度は我慢してたみたいですね^^;
でも、色々と堪り兼ねてブチ切れ。
オーマイゴッド。
> >夜のバカ!あんぽんたん!凶器!アホー!(凶器は悪口か?w
>
> ってなったと…(≧∇≦)ノ彡 バンバン!
> リコメの桔梗さんのセリフと反応が可愛いし面白くって切なさが吹っ飛びました(いいのか?)
あうっ><
すみません、せっかく切なくなって下さったというのに!
アタシのアホ!武器!(凶器に対抗心w)
> 本編は、江戸の風情と人間模様の絡み合い。
> 読むたびに「おおお」オモシロイと、引きこまれてます。
うわぁ、嬉しいです、ありがとうございます!どばーっ (┬┬_┬┬)
何とか進ませたいと頑張っているんですが、何かと展開までが長くて申し訳ないです;;
> メルありがとう~~、中2に見せたら暴走しそうです~~
> (-_-;)
> 私も謎が解けたよ~~~。
すみません、私も大分暴走しました(-"-;A ...アセアセ
メルありがとうございます!
中2ちゃんに宜しくお伝え下さ~い^^
コメントどうもありがとうございました
美月ちゃん、気がついてたけど我慢してた~~。
でも、香のかおりと乱暴な夜にブチ切れて
>夜のバカ!あんぽんたん!凶器!アホー!(凶器は悪口か?w
ってなったと…(≧∇≦)ノ彡 バンバン!
リコメの桔梗さんのセリフと反応が可愛いし面白くって切なさが吹っ飛びました(いいのか?)
本編は、江戸の風情と人間模様の絡み合い。
読むたびに「おおお」オモシロイと、引きこまれてます。
メルありがとう~~、中2に見せたら暴走しそうです~~
(-_-;)
私も謎が解けたよ~~~。
> お相手の女性に妬いてるんだか、雪之丞さんに妬いてるんだか・・・
きっと両方ですが、雪之丞に一番妬いていると思います・・。
雪之丞の為にしている、と思ってしまうので。
いやですよね~・・そんなキスマークやらお香の匂いとかさせて帰宅して、更に迫られたら・・。
ブチブチィッですね!!
> 心が入ってなくても身体を繋げた相手と、プラトニックに長年思ってきた相手と、どちらが嫌だろうな・・・と美月ちゃん目線で、想像したら・・・
> 雪之丞さんの方が嫌でした、私。
> 幸いそんな二拓を迫られる場面はないんですけど(笑)
私もです^^:
プラトニックはその純粋故に強い気がしますよね。
私なら・・あうっお口チャックです♪
美月、どう乗り越えるかが正念場だ!
コメントどうもありがとうございました
> (ノ゚ρ゚)ノ ォォォ・・ォ・・ォ・・・・ これはまた( ;-(エ)-)ムムム
> そりゃ嫌だよね、例え嫌々ヤッてきたとしても他の誰かの残り香がある身体に抱かれるなんて(>_<)
> しかもその理由が自分の生活のためとかじゃなく、他人の…というより、自分と同じくらい想いを寄せていた相手のためだったら尚更。
うん、ヤダ!(>△<)ヤダ!
例え今はもう幼馴染ってだけの為だからって言われても・・なんか(>△<)ヤダ!
夜のバカ!あんぽんたん!凶器!アホー!(凶器は悪口か?w
> 確かに美月ちゃんも抱月先生に揺れてるけど、恋の主観なんて結局自分本位になってしまうものだろうし。
> 一緒に住むことで見えなかったもの、見たくなかったものが分かってしまうのって辛いだろうなぁ。
> 夜との間に溝が出来てしまうんだろうか(´・ω・`)
澪ちん大人の意見(きらきら)
敢えて見なかった事が目の前に突きつけられては、我慢出来るものも出来なくなっちゃうよね。
どうする夜。その凶器の力はそんなものなのか!!(凶器関係ナッシングw
深く考えてくれて嬉しいデス!!だのに、アタシときたら・・ごめんなさい;;
コメントどうもありがとうございました
心が入ってなくても身体を繋げた相手と、プラトニックに長年思ってきた相手と、どちらが嫌だろうな・・・と美月ちゃん目線で、想像したら・・・
雪之丞さんの方が嫌でした、私。
幸いそんな二拓を迫られる場面はないんですけど(笑)
そりゃ嫌だよね、例え嫌々ヤッてきたとしても他の誰かの残り香がある身体に抱かれるなんて(>_<)
しかもその理由が自分の生活のためとかじゃなく、他人の…というより、自分と同じくらい想いを寄せていた相手のためだったら尚更。
確かに美月ちゃんも抱月先生に揺れてるけど、恋の主観なんて結局自分本位になってしまうものだろうし。
一緒に住むことで見えなかったもの、見たくなかったものが分かってしまうのって辛いだろうなぁ。
夜との間に溝が出来てしまうんだろうか(´・ω・`)
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