04/19/2010(Mon)
「すれ違った後で」第2話-弘夢
―淳平。あの時、お前が付き合ってるって噂を聞いた時、俺は金槌で頭を殴られたような感じがしたんだぞ?
「なぁ、弘夢!淳平の奴すげーよな!あんな綺麗な子と付き合ってさ!あの子の友達紹介してもらえるように頼んでくんねぇ?」
「え・・・なに・・?」
きっと頭が理解する事を拒否したんだと思う。相手の言葉は耳に入って頭で反復しているのに、納得ができない。
一緒に帰る帰路で、俺は意を決して聞いた。
「な・・ぁ、淳平・・さ。付き合ってる子・・いるの?今日山野たちがそう言ってて・・」
心臓の揺れで声が一緒に震える。手の先がヒンヤリと冷たく感じた。
「・・ああ。彼女、出来たんだ。言うの遅くなってゴメン。」
金槌で横から誰かに殴られたのかと思った。こんなにショックだったとは思わなかった。
俺との仲を勘違いされた事がそんなに嫌だったんだろうか。
それから俺はしばらく距離を置いた。不自然にならない程度に距離を置いた。
何故なら目を見て話す度に、その目であの女を見つめたのかとか、腕を見る度にその腕に抱いたのかとか、そういう負の念しか渦巻いてこないから。
俺はその頃にはもう自分が男しか愛せないのだと気付いていた。だから、サイトで出逢ったレズの子と擬似恋人をする約束をした。
初めはその子とはチャットで出逢って、自分はレズだが素性を隠したいから嘘の恋人役をして欲しいと頼まれて何度か外でも会った。
実際、ダブルデートの相手役までしてホテルに入った事もあるがそれもお芝居。俺達は相手のカップルがエレベータに乗るのを見送ると、サッサと先にホテルを出て帰った。
だが、今回からは長期的な契約みたいなものを交わした。
後に淳平にも紹介したが、答えは案の定、笑顔で優しく挨拶をして「よろしく、良かったな」と言われてまたショックを受けた。
「お互い・・辛いね。」
その子がボソッと言った。その子も似たような境遇だったからだ。
「本当・・。」
「でもさっ。結婚してる訳じゃないんだし、まだ誰のものになった訳じゃないじゃん!」
―俺はバカだったんだろうなぁ。その言葉に「そりゃあそうだ」って納得して結構楽になれて・・。でもそのお陰でまた少し前みたいに淳平と近づけるようになったんだ。たかが彼女なんて別れちまえばそれっきり。長年親友の俺の方が断然有利だって。
俺は、淳平と出来れば恋人同士になりたかったが、それは先ずありえないと判断したのでとにかく誰のものにもしたくないという想いだけが強まっていった。切実な祈りのような想いだけを日々隠し持ちながら。
淳平は実際、その女とは半年程で別れてまた別の奴と付き合いだしていた。
俺はそうやってしばらくの間自分に猶予のようなものを与えられた気がして、淳平と今まで通りに付き合っていったんだ。それで今は十分だった。先の事なんてまだ考える余地はなかったから。
でもお前は大学卒業する時に、言ったんだ。最も辛辣な言葉を俺に、言ったんだ。
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「なぁ、弘夢!淳平の奴すげーよな!あんな綺麗な子と付き合ってさ!あの子の友達紹介してもらえるように頼んでくんねぇ?」
「え・・・なに・・?」
きっと頭が理解する事を拒否したんだと思う。相手の言葉は耳に入って頭で反復しているのに、納得ができない。
一緒に帰る帰路で、俺は意を決して聞いた。
「な・・ぁ、淳平・・さ。付き合ってる子・・いるの?今日山野たちがそう言ってて・・」
心臓の揺れで声が一緒に震える。手の先がヒンヤリと冷たく感じた。
「・・ああ。彼女、出来たんだ。言うの遅くなってゴメン。」
金槌で横から誰かに殴られたのかと思った。こんなにショックだったとは思わなかった。
俺との仲を勘違いされた事がそんなに嫌だったんだろうか。
それから俺はしばらく距離を置いた。不自然にならない程度に距離を置いた。
何故なら目を見て話す度に、その目であの女を見つめたのかとか、腕を見る度にその腕に抱いたのかとか、そういう負の念しか渦巻いてこないから。
俺はその頃にはもう自分が男しか愛せないのだと気付いていた。だから、サイトで出逢ったレズの子と擬似恋人をする約束をした。
初めはその子とはチャットで出逢って、自分はレズだが素性を隠したいから嘘の恋人役をして欲しいと頼まれて何度か外でも会った。
実際、ダブルデートの相手役までしてホテルに入った事もあるがそれもお芝居。俺達は相手のカップルがエレベータに乗るのを見送ると、サッサと先にホテルを出て帰った。
だが、今回からは長期的な契約みたいなものを交わした。
後に淳平にも紹介したが、答えは案の定、笑顔で優しく挨拶をして「よろしく、良かったな」と言われてまたショックを受けた。
「お互い・・辛いね。」
その子がボソッと言った。その子も似たような境遇だったからだ。
「本当・・。」
「でもさっ。結婚してる訳じゃないんだし、まだ誰のものになった訳じゃないじゃん!」
―俺はバカだったんだろうなぁ。その言葉に「そりゃあそうだ」って納得して結構楽になれて・・。でもそのお陰でまた少し前みたいに淳平と近づけるようになったんだ。たかが彼女なんて別れちまえばそれっきり。長年親友の俺の方が断然有利だって。
俺は、淳平と出来れば恋人同士になりたかったが、それは先ずありえないと判断したのでとにかく誰のものにもしたくないという想いだけが強まっていった。切実な祈りのような想いだけを日々隠し持ちながら。
淳平は実際、その女とは半年程で別れてまた別の奴と付き合いだしていた。
俺はそうやってしばらくの間自分に猶予のようなものを与えられた気がして、淳平と今まで通りに付き合っていったんだ。それで今は十分だった。先の事なんてまだ考える余地はなかったから。
でもお前は大学卒業する時に、言ったんだ。最も辛辣な言葉を俺に、言ったんだ。
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コメント
> 自分で割り切っちゃう感じ、分かるなぁ・涙!
わかります?!(;д;) ヒック
私も思い込みとか激しい部分あるから相手の態度や言葉を深読みして
自分で結論付けてしまったり・・。
それって相手からすると「え?!何で突然!?いつから!?」ってなるらしいですねww
チキンだからすぐ守りに入ってしまうんですよねーって今更繊細ぶんなって感じですが!!w
コメントありがとうございました
記事読んで下さったのですね!!
ありがとうございます!
グサリがお好みですか。ではお好みに合うかどうか。(-。-;)
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この「すれ違った後で」は随分と言葉でグサグサしてます。
でも拓斗さんみたいにうまく伝えられているかどうか・・。
コメント&応援ありがとうございましたO(≧▽≦)O
こんばんは!
> 思わず自分だったら…、みたいに考えちゃいます。友達みたいな顔をして様子を伺っているのかなあ、って。
そうですよね・・。相手がノンケかもって思うだけで怖くて聞きたい
事も聞けなかったり。私なら張り裂けんばかりですよっ。そのうえ酷い事言ったって
いうんですから・・。 ∑( ̄Д ̄;)ハッ 今からUPせねば!!
> あ。リンクさせていただきました。ありがとうございます。
マママ、マジですか!!ありがとうございます!!恐縮です!!ヽ(TдT)ノアーウ…
コメントありがとうございましたO(≧▽≦)O
これは辛い展開ですね、
思わず自分だったら…、みたいに考えちゃいます。友達みたいな顔をして様子を伺っているのかなあ、って。
あ。リンクさせていただきました。ありがとうございます。
コメント