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万華鏡-江戸に咲く-6

「まぁ、座れよ。ほら、茶だ。」
 表の長屋に続いてある裏の長屋へ足を運ぶと部屋へと案内され、何故かお茶をごちそうになってしまっていた。
 夜と呼ばれていた男は側に置いてある煙草盆を寄せる。黒塗りに金で牡丹模様が描かれている。
 意外と高価な物だということは美月にも分かった。こんな、金も無さそうな男が何故このような上等なものを持っているのか不思議に思う。

 夜は刻み煙草を火皿に入る位の大きさに丸めて詰めると、火を付けた。火がついた煙管からはゆらゆらと紫煙が立ち上る。夜は煙を口の中に溜め、香りを楽しむとゆっくりと紫煙を吐き出す。この一連の動作が妙に艶かしく、お茶をすすりながらチラチラと盗み見てしまう。
 美月はこの男には煙管が良く似合うと思った。

「フゥー・・んで、お前さん、一体何だってそんな妙ちくりんな格好してんだ?」
「妙ちくりん・・って。失礼な。ただのジーンズにタンクトップにカーキのシャツを羽織ってるだけだし。俺の時代ではコレが普通なんだよ。靴はスリッパ代わりのビーサンがこの時代に一番フィットしてる感じだったけどね、ははっ」
 美月を見つめていた男が再びゆっくりと煙を吐き出し、灰吹き(灰落とし)に煙管を叩きつけると部屋にカンッと良い音が響く。

「お前、異人か?」
「またかよ!俺はれっきとした日本人だ!」
「そうなのか?けどさっきから意味の分からない言葉を混ぜながら話していたし、最後には笑っていたからなにか冗談でも言ってるのかと思ったんだが、残念ながら俺には通じていなかったようだ。笑えなくて悪いな。」
「はは。冗談なんて一つも言ってないっすから。へーきっす。俺は未来から来たんだ。丁度、今からえーっと・・258年後の世界から来たんですよねー。」
 男の表情は思った程驚いてはいなかった。
「ほう。面白い事を言う奴だな。でも町であまりそういう事を言わない方がいい。ここらの奴はまだいいが、役人がいるような場所で言うと異人扱いされてへたすると殺されっちまうからな。」

(こわ・・)

「あ・・ああ。わかったよ。でも、俺の言う事信じてくれるの?」
 男は長い指で煙管を弄ぶようにしながら口からスッとする香りの煙をゆっくり吐き出す。
「フゥー・・ん?ああ。そうだな。それも一興かもな。信じてやるよ。で、そんな未来のお方がはるばる何しにやって来たんだ?」
「ああ。それが多分、俺逢わなきゃいけない人がいるようなんだ。でもどこの誰だか判んなくて。」
「フゥー・・そりゃあ、また・・。えらい事だな。」

 カンッ

 男は煙管の灰を落とすと煙管を置いてゆっくりと立ち上がると、何か用でもあるように美月に近寄る。
 男は美月の前にしゃがみ込むと、何の躊躇もせず突如に美月の唇を塞いだ。
 美月は口を開く間もなく素早く唇を塞いだまま押し倒されると、同時に両手首を片手で上に捩じ上げて自由を奪われてしまった。

 ヌルリと分厚い舌が強引に入る。途端に胃の辺りからキュッとした痛みとも興奮とも似た感覚が湧き上がる。男の舌が美月の舌の上を滑ると、ふわりと貴之のものとは違う煙管の残り香が口に広がって脳が甘く痺れる。
「んんっ!んーっ・・!」
 男の荒々しくも蕩けるようなキスに身体の奥から鈍痛のような興奮が込み上げてくる。
 男は舌と唇を巧に使い、美月の口内の性感帯を確実に犯していく。
「んぁ・・んんぅ・・ぁん」
 ぴちゃりぴちゃりと唾液の絡まる音に耳を犯される。

(やば・・・なに、このキス・・こんなの、初めて・・)

 キスだけで全身を嬲られるような感覚に陥ったのは初めてだった。初対面なのにこのキスでお互いを知ろうとしているような気さえする。

 ただ、美月はこのキスに快楽だけに溺れられないでいた。快楽と同時に襲われる鼓動の早さと胸が苦しくなるような切なさが美月を身悶えさせていた。




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