08/15/2011(Mon)
妄想列車 24話
「え……」
健が俺の言葉を理解出来ないというように聞き返してきた。PC画面には、何もメッセージは出て来ない。
「俺は……行かない……よ」
『何でだ』
「俺のやるべき事は……リツカたちとは反対だから……」
「あはっ……あははっ……そうだよね!? そりゃそーだ!」
健がさも可笑しそうに声を上げて笑った。
「もし君が僕らの組織に寝返ったとして、捕まったら真っ先に死刑だよね! ちょっと前までは考えられない罪の重さだ!」
『健、仕事だそうだ。ボスの所へ急いで行け』
それまで嘲笑っていた健は急に険しい顔になって俺を睨んだ。
「リツカは渡さない……安心しなよ。俺が一生リツカ守って生きていくから。アンタも早く忘れなよ。じゃあね」
そう言い残して健の足跡が玄関の方へと遠ざかって消えていった。
俺は何だか眩暈がして床へ崩れるように座った。
「リツカ……会いたい」
『無理だ。お前が一員になれば今すぐにでも迎えに行ってやれる……だから頼むシン』
「会いたいよ……今すぐ抱いてよ……」
機械に向かって懇願して、涙を流して。俺は何だかとても虚しい。
俺の泣き声は聞こえているのに、リツカの肉声を聞く事が出来ない。ただ浮かんでくる文字を見つめるだけだ。
「俺の事好き? リツカ……今まで一度も言ってくれなかった……」
リツカからの返事はない。
ねぇ、言ってよ。
「俺の事好きだから誘ってくれてるんでしょ? ……っ……俺の事……好きならさっ……俺とそんな所辞めて俺と一緒にいればいいじゃんッ」
離れたくない。
だってどんどん好きになっていって制御出来ないんだ。
「言ってよリツカ!!」
声が荒れる。子供みたいに大声を張り上げて必死にバカみたいにお願いをしてみる。
「どうしたら好きって言ってくれるの……」
『……』
「俺の事、身体の相性が良かっただけだった? だからキープしたくて言ってるの?!」
『……』
「最初から騙そうとして近づいたんだろうッ!?」
『……』
返事のないリツカに、俺はカナヅチで頭を殴られた様な気がした。
結局リツカは俺よりもそっちを選ぶんだね。
挑発されても好きって言えないなんて、正直だよ、リツカ。
もうイヤだ。
「あああああッー!!」
やり場のない怒りと悲しみで俺は側にあった機械を殴った。
機械は大きな音を立てて吹っ飛び、俺の拳から血が流れた。
リツカが黙って聞いているその部屋を飛び出し、キッチンに逃げ込むとワインの瓶を床に叩きつけて割った。
ガラスのコップも陶器のお皿も次々に割った。
割っても割っても心は晴れなくて、目の前に静かに並ぶものは全て叩き落とした。
ガラスの破片が飛び散って首筋や顔を切っていく。
痛みなんか感じない。
ただ胸の中に黒く渦巻く何かが俺を飲みこんでいく。痛みも一緒に飲み込んでいく。
「ああああーッ」
叫び声が割れた。
その時、後ろから力強いものが俺の身体を抱きしめてきた。
「シン!!」
「……っ!!」
誰だ。
離せよ。
爆発しそうなんだよ。
「ぅ……あ……っ」
「落ち付け、シン! 俺だ! こっち見ろ!」
リツカ……。
違う、リツカは来る筈ない。
「シン!! 暴れるな! 血がっ……」
血? 誰の?
あぁ。俺のか。
でも、別にいい。今はこのドロドロした何かを血と一緒に流れ出したいから。
散らばるガラスの破片を蹴り上げて、キラキラとした鋭い雨を降らした。
何て綺麗。まるで流星群みたいだ。
「シン!」
一緒にいる誰かが俺を抱え込むと、そいつがそのガラスを一気に被った。
「痛ッ……っ」
男の呻き声が耳元に響いた。
あれ……痛くないや……。
抱え込まれた腕の中で俺は顔を上げると、もう一人の男の額から血が頬まで垂れてきた。
俺はそれをそっと舐めてみた。
「ッ……!」
驚いて俺を見た顔は、リツカだった。
「……?」
「シン……もう、止めろ」
「……」
リツカ、何でここにいるんだろう。
「好きだよ」
「……」
「好きだ、シン。ずっと言いたかったけど、自分でも信じられなくて……言ったら言ったで離れられなくなるし、こんな状態になってから言ってもしょうがないと思ったんだけど……近くにまで来てて……言わずにいられなくて飛び出してきた」
リツカの暖かい手が俺の頬に触れて血を拭う。
「ぁ……ぁ……」
暖かい舌が傷を癒そうと触れてきた。
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健が俺の言葉を理解出来ないというように聞き返してきた。PC画面には、何もメッセージは出て来ない。
「俺は……行かない……よ」
『何でだ』
「俺のやるべき事は……リツカたちとは反対だから……」
「あはっ……あははっ……そうだよね!? そりゃそーだ!」
健がさも可笑しそうに声を上げて笑った。
「もし君が僕らの組織に寝返ったとして、捕まったら真っ先に死刑だよね! ちょっと前までは考えられない罪の重さだ!」
『健、仕事だそうだ。ボスの所へ急いで行け』
それまで嘲笑っていた健は急に険しい顔になって俺を睨んだ。
「リツカは渡さない……安心しなよ。俺が一生リツカ守って生きていくから。アンタも早く忘れなよ。じゃあね」
そう言い残して健の足跡が玄関の方へと遠ざかって消えていった。
俺は何だか眩暈がして床へ崩れるように座った。
「リツカ……会いたい」
『無理だ。お前が一員になれば今すぐにでも迎えに行ってやれる……だから頼むシン』
「会いたいよ……今すぐ抱いてよ……」
機械に向かって懇願して、涙を流して。俺は何だかとても虚しい。
俺の泣き声は聞こえているのに、リツカの肉声を聞く事が出来ない。ただ浮かんでくる文字を見つめるだけだ。
「俺の事好き? リツカ……今まで一度も言ってくれなかった……」
リツカからの返事はない。
ねぇ、言ってよ。
「俺の事好きだから誘ってくれてるんでしょ? ……っ……俺の事……好きならさっ……俺とそんな所辞めて俺と一緒にいればいいじゃんッ」
離れたくない。
だってどんどん好きになっていって制御出来ないんだ。
「言ってよリツカ!!」
声が荒れる。子供みたいに大声を張り上げて必死にバカみたいにお願いをしてみる。
「どうしたら好きって言ってくれるの……」
『……』
「俺の事、身体の相性が良かっただけだった? だからキープしたくて言ってるの?!」
『……』
「最初から騙そうとして近づいたんだろうッ!?」
『……』
返事のないリツカに、俺はカナヅチで頭を殴られた様な気がした。
結局リツカは俺よりもそっちを選ぶんだね。
挑発されても好きって言えないなんて、正直だよ、リツカ。
もうイヤだ。
「あああああッー!!」
やり場のない怒りと悲しみで俺は側にあった機械を殴った。
機械は大きな音を立てて吹っ飛び、俺の拳から血が流れた。
リツカが黙って聞いているその部屋を飛び出し、キッチンに逃げ込むとワインの瓶を床に叩きつけて割った。
ガラスのコップも陶器のお皿も次々に割った。
割っても割っても心は晴れなくて、目の前に静かに並ぶものは全て叩き落とした。
ガラスの破片が飛び散って首筋や顔を切っていく。
痛みなんか感じない。
ただ胸の中に黒く渦巻く何かが俺を飲みこんでいく。痛みも一緒に飲み込んでいく。
「ああああーッ」
叫び声が割れた。
その時、後ろから力強いものが俺の身体を抱きしめてきた。
「シン!!」
「……っ!!」
誰だ。
離せよ。
爆発しそうなんだよ。
「ぅ……あ……っ」
「落ち付け、シン! 俺だ! こっち見ろ!」
リツカ……。
違う、リツカは来る筈ない。
「シン!! 暴れるな! 血がっ……」
血? 誰の?
あぁ。俺のか。
でも、別にいい。今はこのドロドロした何かを血と一緒に流れ出したいから。
散らばるガラスの破片を蹴り上げて、キラキラとした鋭い雨を降らした。
何て綺麗。まるで流星群みたいだ。
「シン!」
一緒にいる誰かが俺を抱え込むと、そいつがそのガラスを一気に被った。
「痛ッ……っ」
男の呻き声が耳元に響いた。
あれ……痛くないや……。
抱え込まれた腕の中で俺は顔を上げると、もう一人の男の額から血が頬まで垂れてきた。
俺はそれをそっと舐めてみた。
「ッ……!」
驚いて俺を見た顔は、リツカだった。
「……?」
「シン……もう、止めろ」
「……」
リツカ、何でここにいるんだろう。
「好きだよ」
「……」
「好きだ、シン。ずっと言いたかったけど、自分でも信じられなくて……言ったら言ったで離れられなくなるし、こんな状態になってから言ってもしょうがないと思ったんだけど……近くにまで来てて……言わずにいられなくて飛び出してきた」
リツカの暖かい手が俺の頬に触れて血を拭う。
「ぁ……ぁ……」
暖かい舌が傷を癒そうと触れてきた。
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コメント
> 痛みを感じずに暴れて続けて、攻めが止めにくる………というシチュ大好き((はぁと
> 情緒不安定なのも好きなので、今回のシンは大好物です((^ ω ^b☆
そう言って頂けて嬉しいです!
シン、自分で思っていた以上に好きになっていたようです(´Д`)
> リツカ……やっと好きって言いましたね!遅いぞ、全く!シンが自暴自棄になっちゃったじゃないかっっ!!((…いや、違ったかもしんない…
> 楽しみにしてますので、お体に気をつけて頑張ってください!
> …本当にお体には気をつけて…。私死にかけましたので…((あはは
本当、ようやく言いましたね!
お気遣いどうもありがとうございます(>ω<)!
∑('◇'*)エェッ!?
刹那さん、死にかけたのですか!?
一体何が……!?本当お気を付けて下さい(>ω<)!!
コメントどうもありがとうございました
痛みを感じずに暴れて続けて、攻めが止めにくる………というシチュ大好き((はぁと
情緒不安定なのも好きなので、今回のシンは大好物です((^ ω ^b☆
リツカ……やっと好きって言いましたね!遅いぞ、全く!シンが自暴自棄になっちゃったじゃないかっっ!!((…いや、違ったかもしんない…
楽しみにしてますので、お体に気をつけて頑張ってください!
…本当にお体には気をつけて…。私死にかけましたので…((あはは
本当!やっとですよ!!
> リツカノバカァ~!!}(。>皿<)ノシ◇□
>
> 。゜゜(。>□<)ノシ≡≡≡□ ◇
>
> Σ(◎◇◎){ウワッ!!
>
> (>□<。)>◇<){シンッ!!≡≡≡≡≡3
>
>
> (。≧△≦|≧△≦)ぴたっ!!
>
> 。゜゜(。_ _(≧△≦){ゴメン!!
>
> …な、感じでしょうか…?
( ゚Д゚ノノ"☆パチパチパチパチ
さすが!しろがねさまも顔文字マスターなんですね!?
素晴らしい☆
まさにそんな感じです!
> ここまできたら、ラブラブでハッピーエンドに向かって行って欲しいです。
そうですよね(´Д`)
何とか二人の愛が育める方向になるといいのですが…。
> とりあえず、邪魔な健&ボスを仕舞い仕舞いしときましょうか…
まかして下さい。 (☆Д☆)キラリーン♪
> (◎◇◎)(◎◇◎)\(`△´\){オリャ、ジャマダァ!!
>
>
> ダシテクレ~!!}□□ψ(`▽´){グハハ!!
あ、しろがねさまが退治して下さった模様!(笑)
> 萌え補給完了したでありますっ!!
>
> 今日も頑張ってきまーす!!
>
> (//▽//){てへ
こんなもので萌えが補給できましたでしょうか!?
それならば良かったです!!
ここ二日位残業続きですが何とか書き上げたいです(>ω<)!
もう少しですがお付き合い下さると嬉しいです☆
コメントどうもありがとうございました
> オロオロ((;ω;))オロオロ
> ウ・・・━━(。・ω・)ウワ━(。-ω-)ァァ━・゚・(。>ω<)・゚・━━ン!!!
エーン(pωq)ヽ(・ω・。)ヨチヨチ
> 桔梗ちんマジックにやら・・・れ・・た..(o_ __)o)) バタッ ←
> いやいや!ホントにシンちゃん爆発しちゃって嫌~!ってなってたらリツカ来たー!
> 間に合った(>_<)好きって言ったーー!!
ぎゃーっ!澪ちんが倒れた!!
オロo(;д;o)(o;д;)oオロ
シンが爆発……からの、リツカ告白(笑)
どうなるんだ~(;´Д`A ```
> だけどこの後どうなっちゃうの!?
> 二人で愛の逃避行?でもそんな上手く行く!?
> うぅ…先が読めましぇん…(´・ω・`)ショボーン
逃避行になればいいんだけど(>ω<)
連れて逃げろ!逃げるんだリツカ!!
シンも付いてイケ!!
> Sさまの美月イラストも拝見したよ☆
> すっごい綺麗で素敵だったぁ~(*´ο`*)=3 はふぅん
> (こっちに纏めてでゴメンね(-人-;))
わ~!!見てくれたのありがとう!!
素敵だよねーっ!!
無理矢理強奪してきちゃった(//∀//)(笑)ヾ(ーー )ォィ
いやいや忙しいのにわざわざありがとうだよ(>ω<)!
無理しないでね!?
うちなんてひっそりと密林の奥深くでエロい事
悶々と書いてる場所だからさ(笑)
コメントどうもありがとうございました
お元気でしたか?!
何と!そんなに血を舐めるのエロかったですか!?
嬉しいですっ☆
そしてついに告ったリツカ、
どうなる事やらです(>ω<)!
続き頑張ります!
最近忙しく残業が多くて(;´Д`A ```
明日も多分遅いんですよね;
書きたいのに~~っ!
コメントどうもありがとうございました
リツカノバカァ~!!}(。>皿<)ノシ◇□
。゜゜(。>□<)ノシ≡≡≡□ ◇
Σ(◎◇◎){ウワッ!!
(>□<。)>◇<){シンッ!!≡≡≡≡≡3
(。≧△≦|≧△≦)ぴたっ!!
。゜゜(。_ _(≧△≦){ゴメン!!
…な、感じでしょうか…?
ここまできたら、ラブラブでハッピーエンドに向かって行って欲しいです。
とりあえず、邪魔な健&ボスを仕舞い仕舞いしときましょうか…
(◎◇◎)(◎◇◎)\(`△´\){オリャ、ジャマダァ!!
ダシテクレ~!!}□□ψ(`▽´){グハハ!!
萌え補給完了したでありますっ!!
今日も頑張ってきまーす!!
(//▽//){てへ
オロオロ((;ω;))オロオロ
ウ・・・━━(。・ω・)ウワ━(。-ω-)ァァ━・゚・(。>ω<)・゚・━━ン!!!
桔梗ちんマジックにやら・・・れ・・た..(o_ __)o)) バタッ ←
いやいや!ホントにシンちゃん爆発しちゃって嫌~!ってなってたらリツカ来たー!
間に合った(>_<)好きって言ったーー!!
だけどこの後どうなっちゃうの!?
二人で愛の逃避行?でもそんな上手く行く!?
うぅ…先が読めましぇん…(´・ω・`)ショボーン
Sさまの美月イラストも拝見したよ☆
すっごい綺麗で素敵だったぁ~(*´ο`*)=3 はふぅん
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