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万華鏡-江戸に咲く-54

 ガラガラと引き戸を開けると中で休憩中の雪之丞が白い首元に流れる汗を手拭で拭いているところだった。
「あ、夜七。いらっしゃい。今日も暑いねぇ。」
「おい、あまり無理すんなよ」
 夜はズカズカと中に入るとドッカと雪之丞の隣に腰をかけた。
 真横で見ると半透明にも近い色の雪之丞の肌が、汗で更に艶っぽく光って見える。
 夜はその首元に顔を近づけた。スンと雪之丞の淡い香りがした。
「え・・夜七・・なに・・?」
 ベロリと首元に舌を這わせ、汗を味わうように首から耳元にかけてヌラリと舌をいやらしく移動させる。
 初めて味わう雪之丞の禁断の味は夜の脳を甘く痺れさせた。ずっと想い焦がれてきた人を今欲望の赴くまま味わっている。
「ちょっ・・夜七やめっ・・おいっ!」
 信頼しきっていた人から突然される不快な行動に雪之丞はその感触に身の毛が弥立った。
 夜は雪之丞の抵抗する手を取り、そのまま座敷に押し倒した。
 そして雪之丞の薄い花びらのような唇に吸い付く。今まで幾度こうしてこの唇を吸ってやりたいと思った事か。そのまま夜の舌は雪之丞の口内を優しく犯し始めた。
「んんっ・・んっ!んーッ!」
 雪之丞は顔を顰めて頭を振り、夜の唇を剥がそうと試みるが雪之丞の舌を捉えた夜の舌は絡み付いて簡単には振り解けない。
 幼い頃に植えつけられた恐怖心が湧き上がる。雪之丞は恐怖で脂汗が額に浮いてきた。小刻みに身体が振るえ、いつしか抵抗する力も震えで弱まってきた。

(どうしてこんな事するの・・夜七・・)

 雪之丞の目尻から涙が零れ落ちた。夜はゆっくりと舌の絡めを解いて、優しく幾度もその震える桜唇にキスをした。そんな夜の様子を不安な眼差しで見つめる雪之丞に目を合わせた。
「ごめん。ごめんな、雪。俺、ずっとお前の事好きだった。ずっと、こうしたいって思ってたんだ。」
 雪之丞の瞳が大きく見開いた。
「お前に怖い思いさせるって分かってたから、我慢してた。それでもいいって思ってた。ずっと触れられなくても一生俺が守ってやるって。それでもいいって、思ってた。」
「や・・しち・・」
「お前、鈍感だし天然だから全く分かってなかったろ?」
 雪之丞の前髪を指に絡ませて笑顔を向けた。すると雪之丞が今まで夜が自分をどういう目で見ていたかが分かったようで、急に顔を赤らめた。
「ご、ごめんっ。僕全然気付かなかった・・」
「うん。知ってる。」
 夜はもう一つ雪之丞の右頬にキスを落とすと、雪之丞は右目を瞑った。
「俺な、お前意外綺麗だと思った奴は今までいなかったんだ。お前意外好きになるなんて考えられなかったし、それでいいと思ってた。俺の使命はお前を守る事だって・・それは今も変わらずそう思ってるんだが・・」
 雪之丞は黙って夜の一言一句を聞いている。
「俺、美月の事も好きになっちまって・・な。」
 少し照れ気味に言う夜の言葉に雪之丞は表情を変えた。

(うそ・・知らなかった・・美月を・・・夜七が)

 夜が遊び人で色々手を出している事は知っていた。だが本気だと聞いた事はなく、それが妙に雪之丞の心を締め付けた。
「俺はあいつの事散々苦しめてるんだ。あいつは俺がお前の事ずっと好きだったって事知ってる。それでもいいって、お前の次でもいいっていいながら、あいつ強がりで弱いから苦しんで、目を離すとすぐ抱月ん所に行きやがる。」
 話してて夜はムカっ腹が立ってきた。
「抱月は本気で美月に惚れてる。あの許嫁のかよさんを断ったくらいだ。」
「えっ・・うそ!」
 さすがにそれには雪之丞も驚きの声を上げてしまった。
「ああ。ぼやぼやしてっと本当に美月を取られちまう。」
 夜はふっと口角を上げる。
「あいつを誰にも取られたくないって本当に思った。俺だけのものにしたいって。初めて思った。恋仲の相手としての気持ちは、あいつだけにしようと、だから今日はケジメを付けに来たんだ。悪かったな、急にこんな事して。怖い思い、させたな。」
 夜は雪之丞から離れると、雪之丞の手を取って上体を起こしてやった。
「もうこんな事しないから。安心しろ。」
 雪之丞は幾らか複雑な気持ちだった。
「夜七は・・もうここへは来ないの?」
 ふと不安で潤む瞳を向ける。
「そんな顔すんなよ。ケジメ付けに来たってのに・・」
 夜は初めて見る雪之丞の表情に顔を赤らめて視線を逸らす。
「あー、まぁ、ケジメ付けるって言っても俺の心のって事だ。だからいつも通りお前のお守り役は俺がするし、ここへも変わらず来るつもりだ。」
「そう・・分かった。」
 雪之丞は少し安心したように、それでも少し寂しげな眼差しで口元に笑みを浮かべて言った。
「なぁ。最後にもう一度だけ、口付けしてもいいか」
 少し見つめあった後に雪之丞が優しく微笑んだ。
「いいよ」
 夜がそっと雪之丞の頬に手をやり、肩を抱き寄せるようにして唇を重ねた。
雪之丞は震えもせず、夜の胸元の着物をギュッと掴んだ。
夜は雪之丞の肩を強く抱いて、今までの想いを伝えてお別れを言うように、長く優しい口付けを交わした。



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03:19 | 万華鏡-江戸に咲く- | comments (6) | trackbacks (0) | edit | page top↑
無事帰宅^^ | top | それから15話

コメント

Re: レスありがとうございます。
ゆうかさま

>レスありがとうございます。

とんでもないです!
こちらこそコメント凄く嬉しいです!ありがとうございます!!

> ブロガーと言っていいものか・・・
> 始めたばかりで右も左も分かりませんが
> どうか生暖かい目で見守ってやって下さい(笑)

私もまだまだ×100初心者で本当、色々な方々に助けて頂いております><!

> 時代物、書きたいネタはあるんですが知識がなさすぎて怖くて手が出せません・・・

確かに知識ないと描写に困る事もあって難しいですが、そこら辺はもう書きたいように
書いてしまってもいいのではないでしょうか?笑
私がいい例です 笑
書きたい気持ちが先行して強制的に進めてます!(爆)

> 着物姿って、何かそそるわ~と書きたい気持ちはあるんですがね(笑)

そうなんですよ~!!!着物大好き、着流し大好きなんで書かずにはいられない!!
一緒に着物ストーリー書きましょう♪(強引(ーー;))

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗さん | 2010/05/22 18:16 | URL [編集] | page top↑
レスありがとうございます。
ブロガーと言っていいものか・・・
始めたばかりで右も左も分かりませんが
どうか生暖かい目で見守ってやって下さい(笑)

時代物、書きたいネタはあるんですが知識がなさすぎて怖くて手が出せません・・・
着物姿って、何かそそるわ~と書きたい気持ちはあるんですがね(笑)
ゆうかさん | 2010/05/22 17:55 | URL [編集] | page top↑
Re: NoTitle
ゆうかさま

はじめまして!初コメント嬉しいです!
ありがとうございます!^^

> 始めまして。昨日から一気に読ませていただきました。

ぉお!!(゚ロ゚屮)屮 ほ、本当ですか!!?
長文になってしまい、読むの大変だったのではないでしょうか??
本当、嬉しいです!!
そう言って頂けると本当に読んで下さる方がいるんだな~と感激します(ノД`)・゜・

> いいですね、時代物(?)
> こういうのって書くの難しいんでしょうねぇ(遠い目)

なかなか江戸時代の知識が薄いもので、伝えられているか不安です(ーー;)
しかも言葉遣いなど現代風ですし、色々とおかしな所もあるとは思いますが、
そこはサラっと流して頂けると嬉しいなぁ、と思いつつ書いてます 笑

> 夜七さんのご活躍を楽しみにしております。

夜の活躍にまたも一票頂き、嬉しい限りです((≧∀≦))+*
夜に自前の凶器をフルに使いこなすように伝えておきます 笑www

ゆうかさまもブロガーさまですよね!実は私もチラチラ覗いてたりしますw
また遊びに行かせて頂きます♪

コメントどうもありがとうございましたe-415e-420
桔梗さん | 2010/05/22 00:08 | URL [編集] | page top↑
NoTitle
始めまして。昨日から一気に読ませていただきました。
いいですね、時代物(?)
こういうのって書くの難しいんでしょうねぇ(遠い目)

夜七さんのご活躍を楽しみにしております。
ゆうかさん | 2010/05/21 23:19 | URL [編集] | page top↑
Re: NoTitle
usamomoさま

> これで本当に終わるのか?的な事を思いながら・・
> ポッチと押しましたので、次回は是非時速90㎞でエロ全開楽しみにしてますね~♪

今やっと10分の6位まで来ました^^;
私の描くエチはしつこく長いのでRが続いたりしたらもう、それだけで長引きます・・
すみませんm(_;)m
わ~応援ありがとうございました!!これでしばらくキリンより速く走れそうです♪笑

> やっと一番大きい夜のが活躍するのですね♪楽しみ♪

夜の大きな凶器を楽しみにして下さって嬉しいデスO(≧▽≦)O
週末には動きが出るのでお楽しみに^^

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗さん | 2010/05/21 22:01 | URL [編集] | page top↑
NoTitle
これで本当に終わるのか?的な事を思いながら・・
ポッチと押しましたので、次回は是非時速90㎞でエロ全開楽しみにしてますね~♪

やっと一番大きい夜のが活躍するのですね♪楽しみ♪
usamomoさん | 2010/05/21 20:02 | URL [編集] | page top↑

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