09/12/2010(Sun)
万華鏡-現代祭りに咲く-1
「この辺一緒に来た事ないだろ?」
そう夜に言われて美月は渋々着いて行った。日の長い夏時間は暫く経たないと暗くならない。
ポツリポツリと、行灯が灯るに連れて男色楼も華やかになってくる。
時間の空いた二人は珍しく散歩に出ていた。散歩と言えば、普通は夕日の見える川沿いや珍しい土産物の立ち並ぶ隣町の方へ足を延ばすなどを考えるが、夜の散歩と言うと男色楼巡りになる。
別に一緒に中に入る訳ではないのだが、外から様子を見て回るのだ。
(ったく・・何でコイツはこうなんだ・・)
路地を通る旅に可愛らしい色子たちが夜に声を掛けては頬を染める。中にはうっすら涙を浮かべて言葉も発せられない子もいた。
「おい、夜。お前、本当にこの子たちとヤってないんだろうな?」
「してねぇよ。入らねぇもん」
(入ら・・・まぁ、それもそうか。)
「ったく、涙浮かせるような事って何したんだよ一体・・」
夜が色気たっぷりの笑みを浮かべて美月の唇に触れてきた。
「気になる?」
夜の親指が美月の口の中に押し込まれる。
「んっ・・」
どうしたらいいか分からず、人前で恥ずかしい気持ちと相まって視線と首をそっと逸らして逃げるが、舌は反射的に夜の親指を味わってしまう。だが夜の親指は非情にもヌルリと美月の熱い粘膜から抜け出て、夜の口元へと舞い戻っていった。
「誘うなよ、こんな所で」
夜は薄ら笑いを浮かべながらその親指に自分の舌を絡めて見せた。その妖しいまでの艶めかしさにドキリとする。そんな美月の心臓の様子などお構いなしに、まるであざ笑うかのようにカランコロンと湿り気の帯びた下駄音を響かせて夜は先へ進んだ。
暫く歩くと見慣れない町並みへ入った。どこか上品な茶屋の立ち並ぶ中で、一軒とても高級な雰囲気のいい茶屋が見えてきた。
「ん?あれは・・」
夜の視線の先を追うと、店先に異様に人目を引く二人が並んで立っていた。
「あれァ、有名な月島藩の若と色子じゃないか」
「何、知り合い?」
「いや、あの若の父君ってのが江戸で10年に一人と謳われる程の剣の達人なんだ。俺も剣を嗜んでたから知ってんだよ」
「え!夜、剣が使えるの?!」
夜が人斬りをしていた事など知る由もない美月は心を時めかせる。
「まぁ、俺のは専ら喧嘩用の剣だがな。すんませーん、月島彰吾さんですよねぇ?」
喋ってる途中で夜が突然、カランカランと人を小馬鹿にしたような下駄の音を鳴らして二人に近づいていった。
「よ、夜!?」
美月はそれに驚いて夜を追ってパタパタと慌てて駆け寄った。
如何にも近寄り難い高貴なその月島彰吾と呼ばれた男に、どうして夜はああも普通に魚屋のオヤジにでも話しかけるように出来るのか、美月は小さな溜息をつくと同時に夜が最悪の言葉を放った。
「俺は夜ってモンでさァ。ただの町人です。そちらの方とはデキてるんで?」
そのアホ丸だしの無礼な夜に対して男は刀に手を置くのが見えた。
美月の顔が青くなった途端、真っ赤になってとうとう紫がかった。
「ちょっ・・と、夜、失礼だろうが!」
夜の突然の奇行に驚いた美月は暴走する夜の元へ脱兎の如く走って、夜の袖口を掴んだ。
「失礼しましたー!!行くぞ夜!!」
「あっ・・美月!何すんだ!今せっかく人が話しかけてるってのに!!」
「うるさい!」
美月は大急ぎで夜のデカい体を引っ張って元来た道を帰って行った。
「おい、いい加減袖を引っ張るのはよせ、美月」
「うるさい!もうこの辺からお前を連れ出さないと・・ッ・・なっ!?」
美月が夜の袖口を引っ張っていると、夜は急に美月の首根っこをガッと掴んで動けなくしてしまった。
まるでネコを一発で黙らせる方法のようだ。強ち間違ってはいない。
「そんなに心配か?」
ニヤついた顔で聞く夜の側を、通りすがりの人が祭りの話をしているのが耳に入った。
そこで美月はふと現代もそろそろ祭りがあるのを思い出した。
「夜!そういえば現代もそろそろお祭りがあるんだけど・・一緒に行かない?」
掴まれていた首はそっと離され、夜の顔が幼く破顔した。
「そらァ面白そうだ。行きたい」
美月はその夜の笑顔につられて無邪気な笑顔を作ってしまうと夜に道端で容赦なく唇を塞がれた。
<<本編1話はこちらから 次へ>>
*次へ>>を押していって下さると最終話まで公開されております。
お蔵入り小説を少し改訂してUP致しました。
一度に最終話までUPしたので長いと思いますがチラ見して頂けると幸いです(´∀`*)
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ソォーッ[岩陰]д・) ヨカッタラ、キヨキ、イッピョーヲ・・
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そう夜に言われて美月は渋々着いて行った。日の長い夏時間は暫く経たないと暗くならない。
ポツリポツリと、行灯が灯るに連れて男色楼も華やかになってくる。
時間の空いた二人は珍しく散歩に出ていた。散歩と言えば、普通は夕日の見える川沿いや珍しい土産物の立ち並ぶ隣町の方へ足を延ばすなどを考えるが、夜の散歩と言うと男色楼巡りになる。
別に一緒に中に入る訳ではないのだが、外から様子を見て回るのだ。
(ったく・・何でコイツはこうなんだ・・)
路地を通る旅に可愛らしい色子たちが夜に声を掛けては頬を染める。中にはうっすら涙を浮かべて言葉も発せられない子もいた。
「おい、夜。お前、本当にこの子たちとヤってないんだろうな?」
「してねぇよ。入らねぇもん」
(入ら・・・まぁ、それもそうか。)
「ったく、涙浮かせるような事って何したんだよ一体・・」
夜が色気たっぷりの笑みを浮かべて美月の唇に触れてきた。
「気になる?」
夜の親指が美月の口の中に押し込まれる。
「んっ・・」
どうしたらいいか分からず、人前で恥ずかしい気持ちと相まって視線と首をそっと逸らして逃げるが、舌は反射的に夜の親指を味わってしまう。だが夜の親指は非情にもヌルリと美月の熱い粘膜から抜け出て、夜の口元へと舞い戻っていった。
「誘うなよ、こんな所で」
夜は薄ら笑いを浮かべながらその親指に自分の舌を絡めて見せた。その妖しいまでの艶めかしさにドキリとする。そんな美月の心臓の様子などお構いなしに、まるであざ笑うかのようにカランコロンと湿り気の帯びた下駄音を響かせて夜は先へ進んだ。
暫く歩くと見慣れない町並みへ入った。どこか上品な茶屋の立ち並ぶ中で、一軒とても高級な雰囲気のいい茶屋が見えてきた。
「ん?あれは・・」
夜の視線の先を追うと、店先に異様に人目を引く二人が並んで立っていた。
「あれァ、有名な月島藩の若と色子じゃないか」
「何、知り合い?」
「いや、あの若の父君ってのが江戸で10年に一人と謳われる程の剣の達人なんだ。俺も剣を嗜んでたから知ってんだよ」
「え!夜、剣が使えるの?!」
夜が人斬りをしていた事など知る由もない美月は心を時めかせる。
「まぁ、俺のは専ら喧嘩用の剣だがな。すんませーん、月島彰吾さんですよねぇ?」
喋ってる途中で夜が突然、カランカランと人を小馬鹿にしたような下駄の音を鳴らして二人に近づいていった。
「よ、夜!?」
美月はそれに驚いて夜を追ってパタパタと慌てて駆け寄った。
如何にも近寄り難い高貴なその月島彰吾と呼ばれた男に、どうして夜はああも普通に魚屋のオヤジにでも話しかけるように出来るのか、美月は小さな溜息をつくと同時に夜が最悪の言葉を放った。
「俺は夜ってモンでさァ。ただの町人です。そちらの方とはデキてるんで?」
そのアホ丸だしの無礼な夜に対して男は刀に手を置くのが見えた。
美月の顔が青くなった途端、真っ赤になってとうとう紫がかった。
「ちょっ・・と、夜、失礼だろうが!」
夜の突然の奇行に驚いた美月は暴走する夜の元へ脱兎の如く走って、夜の袖口を掴んだ。
「失礼しましたー!!行くぞ夜!!」
「あっ・・美月!何すんだ!今せっかく人が話しかけてるってのに!!」
「うるさい!」
美月は大急ぎで夜のデカい体を引っ張って元来た道を帰って行った。
「おい、いい加減袖を引っ張るのはよせ、美月」
「うるさい!もうこの辺からお前を連れ出さないと・・ッ・・なっ!?」
美月が夜の袖口を引っ張っていると、夜は急に美月の首根っこをガッと掴んで動けなくしてしまった。
まるでネコを一発で黙らせる方法のようだ。強ち間違ってはいない。
「そんなに心配か?」
ニヤついた顔で聞く夜の側を、通りすがりの人が祭りの話をしているのが耳に入った。
そこで美月はふと現代もそろそろ祭りがあるのを思い出した。
「夜!そういえば現代もそろそろお祭りがあるんだけど・・一緒に行かない?」
掴まれていた首はそっと離され、夜の顔が幼く破顔した。
「そらァ面白そうだ。行きたい」
美月はその夜の笑顔につられて無邪気な笑顔を作ってしまうと夜に道端で容赦なく唇を塞がれた。
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お蔵入り小説を少し改訂してUP致しました。
一度に最終話までUPしたので長いと思いますがチラ見して頂けると幸いです(´∀`*)
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コメント
はい♪出させて頂きました。゚+.ヽ(´∀`*)ノ ゚+.゚
読んで下さってありがとうございました!!
コメントどうもありがとうございました
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