04/21/2010(Wed)
「すれ違った後で」第4話-弘夢
玄関のドアが開かれると、一瞬泣きそうな表情を見たような気がしたが直ぐに満面の笑みに変わって愛おしいお前が歓迎してくれた。
「弘夢!!久しぶりだな!よく来たなっ。さぁ、入れよ!」
―ああ・・。本物の、淳平だ。淳平の顔、声、肌、笑顔・・。見れただけで泣きそうだ。
少し痩せただろうか。頬に影が見える。仕事が忙しいんだろう。家庭を持つ一人前の男としての風格が少し出て前よりも男っぽく少し色気も出てきてドキドキする。
小柄で可愛らしい奥さんは家庭的なようで、せっせと料理を運んでくる。手伝おうとすると久しぶりなんだから、と言って気を利かせてくれた。俺は、土産のワインを渡すと久しぶりに食べる家庭料理の味に、素直に美味しいと所感を述べた。
持って来たワインを二人で空けると少し酔いが回る。
「お前、ちゃんと飯食ってんのか?痩せただろ?顔色も悪いし。たまにでもいいから家に来て飯でも食ってけよ?」
「あ、ああ。」
―それは、ないよ淳平。今日が、最後なんだから。
「忙しいなら週末でも・・」
「あなた!そんなに無理強いしたらダメよ!弘夢さんだって忙しいんだから。」
―アナタ・・・ねぇ。
ドクドクドク・・。
まだ限界までもう少し我慢できる。だからあと少しだけ一緒に居させてくれ。俺の傷。
「な、ちょっと書斎に一緒に来てくれないか?渡したいもんがあるんだ。」
「え・・」
強引に部屋に連れて行かれると淳平が何やら引き出しから一枚の写真を持って来た。
いきなりのシンとした部屋に二人きりになって鼓動が速くなる。
「これ、ずっと渡しそびれてて・・。」
そう言って淳平が渡してきた一枚の写真には、あの中学の修学旅行の時のものだった。
二人で皆が寝た後に、こっそり寝転がりながら頭を寄せ合って写真を撮った。その時のものだった。
その頃の気持ちがドンッと内側の壁を蹴ってきた。ヒビだらけの心の壁からは11年間の想いがその隙間から噴出してくる。
写真を受け取る手が震える。写真がカタカタ手の振るえを露にすると淳平が心配そうに問いかけてきた。
「おい・・弘夢、大丈夫か?どうした?」
震える呼吸で深呼吸をすると、一気に喋った。
「俺さっ・・お前に謝んなきゃなんねー事があってさ・・」
「おい、お前目が赤・・」
「あの修学旅行の時、俺、お前が寝た後にさ・・お前にキス・・したんだ。」
―ずっと好きだった、いや。今もずっと好きなんだ。好きなんだよ、淳平お前が!!
顔を上げると、そこに凍りついた表情の淳平がいた。
「あ・・あ・・悪い。あの、だから悪かったなあん時は・・ってお前は知らなかったんだろうが。とにかくそれだけ言いたかったんだ。」
「お・・おい。お前それ・・」
「急に変な事言って悪かった。じゃ、俺もう帰るから。」
振り切るようにして玄関まで急ぐとリビングにいる奥さんに簡単な挨拶をして家を出た。
「おい!!弘夢!!俺の話を聞け!!」
後から叫ぶ淳平に俺は振り返らない。そのまま待たせてあった男の車に乗り込もうとすると淳平が間に合わないと思ったのか、叫んだ。
「またっ・・また会おう!!弘夢!!」
俺は車のドアを開けるとゆっくりと淳平に振り返り、笑顔を向けてゆっくりと首を左右に振った。そしてそのまま走り去った。
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「弘夢!!久しぶりだな!よく来たなっ。さぁ、入れよ!」
―ああ・・。本物の、淳平だ。淳平の顔、声、肌、笑顔・・。見れただけで泣きそうだ。
少し痩せただろうか。頬に影が見える。仕事が忙しいんだろう。家庭を持つ一人前の男としての風格が少し出て前よりも男っぽく少し色気も出てきてドキドキする。
小柄で可愛らしい奥さんは家庭的なようで、せっせと料理を運んでくる。手伝おうとすると久しぶりなんだから、と言って気を利かせてくれた。俺は、土産のワインを渡すと久しぶりに食べる家庭料理の味に、素直に美味しいと所感を述べた。
持って来たワインを二人で空けると少し酔いが回る。
「お前、ちゃんと飯食ってんのか?痩せただろ?顔色も悪いし。たまにでもいいから家に来て飯でも食ってけよ?」
「あ、ああ。」
―それは、ないよ淳平。今日が、最後なんだから。
「忙しいなら週末でも・・」
「あなた!そんなに無理強いしたらダメよ!弘夢さんだって忙しいんだから。」
―アナタ・・・ねぇ。
ドクドクドク・・。
まだ限界までもう少し我慢できる。だからあと少しだけ一緒に居させてくれ。俺の傷。
「な、ちょっと書斎に一緒に来てくれないか?渡したいもんがあるんだ。」
「え・・」
強引に部屋に連れて行かれると淳平が何やら引き出しから一枚の写真を持って来た。
いきなりのシンとした部屋に二人きりになって鼓動が速くなる。
「これ、ずっと渡しそびれてて・・。」
そう言って淳平が渡してきた一枚の写真には、あの中学の修学旅行の時のものだった。
二人で皆が寝た後に、こっそり寝転がりながら頭を寄せ合って写真を撮った。その時のものだった。
その頃の気持ちがドンッと内側の壁を蹴ってきた。ヒビだらけの心の壁からは11年間の想いがその隙間から噴出してくる。
写真を受け取る手が震える。写真がカタカタ手の振るえを露にすると淳平が心配そうに問いかけてきた。
「おい・・弘夢、大丈夫か?どうした?」
震える呼吸で深呼吸をすると、一気に喋った。
「俺さっ・・お前に謝んなきゃなんねー事があってさ・・」
「おい、お前目が赤・・」
「あの修学旅行の時、俺、お前が寝た後にさ・・お前にキス・・したんだ。」
―ずっと好きだった、いや。今もずっと好きなんだ。好きなんだよ、淳平お前が!!
顔を上げると、そこに凍りついた表情の淳平がいた。
「あ・・あ・・悪い。あの、だから悪かったなあん時は・・ってお前は知らなかったんだろうが。とにかくそれだけ言いたかったんだ。」
「お・・おい。お前それ・・」
「急に変な事言って悪かった。じゃ、俺もう帰るから。」
振り切るようにして玄関まで急ぐとリビングにいる奥さんに簡単な挨拶をして家を出た。
「おい!!弘夢!!俺の話を聞け!!」
後から叫ぶ淳平に俺は振り返らない。そのまま待たせてあった男の車に乗り込もうとすると淳平が間に合わないと思ったのか、叫んだ。
「またっ・・また会おう!!弘夢!!」
俺は車のドアを開けるとゆっくりと淳平に振り返り、笑顔を向けてゆっくりと首を左右に振った。そしてそのまま走り去った。
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コメント
そうですよね!(1)ってなってたらあれ?って思いますものね!
ちょっと手直しします!
仰って下さって助かります!
コメントどうもありがとうございました
ありがとうございます!!感激です!
そうなんです、こちらが一部なんです。
> もう、すっごく引き込まれました。
> たぶん、今日のうちに読んじゃうだろうな(笑)
うぁ・・凄い嬉しいです!
え!今日中ですか!?あわわ・・ありがとうございます!!
私もMさまの未読のを読みたいです!
今度Mさまの日、というのを作って読みたいです。一気に。
すみません、なかなか拝読できず・・(ノД`)・゜・
あ、次へのリンクは次の鍵コメにて(笑)
夕べはこちらこそお世話になりありがとうございました!
色々と衝撃的でしたね(笑)
またゆっくりお話出来るのを楽しみにしてます^^
コメントどうもありがとうございました
> がスゴイ素敵~~~~♪
ぉお!!(゚ロ゚屮)屮 ありがたきお言葉!!!
嬉しいです。ダムのイメージだったんです。いっぱいになった水の水圧で何年もかけて少しずつヒビが出来てそこからプシュー、プシューって出てきてしまうっていう。
> 私は両思いだったって思ってるよ♪
うふ
> あ、さとさんに言われてランキング見てみたよ~~ッ
> すごい、急上昇だね!!!
(; ゚ ロ゚)ナン!( ; ロ゚)゚ デス!!( ; ロ)゚ ゚トー!!
見てみなくては!!!
これも皆さまの指先から伝えられる愛のポチのお陰です・・号(┬┬ω┬┬)泣
本当、有難いです。
> 抜かされちゃう~~~(≧_≦)←どうぞどうぞ・笑
イイエ((-д- 三 -д-))イイエ
アタシなど100年早いです
ですので100年頑張ります(バアサンのBL・・って(-。-;) )
コメありがとうございました
とね
>その頃の気持ちがドンッと内側の壁を蹴ってきた。ヒビだらけの心の壁からは11年間の想いがその隙間から噴出してくる。
がスゴイ素敵~~~~♪
私は両思いだったって思ってるよ♪
あ、さとさんに言われてランキング見てみたよ~~ッ
すごい、急上昇だね!!!
抜かされちゃう~~~(≧_≦)←どうぞどうぞ・笑
こんにちは!
> 淳平さんは何を話したかったんでしょうかね、ひょっとして両思いだったとか…
ふふふ。どうでしょうか・・・_l ̄l●lll
鋭いコメwwありがとうございました \(*T▽T*)/
淳平さんは何を話したかったんでしょうかね、ひょっとして両思いだったとか…
コメント