11/08/2010(Mon)
アネモネ 3話
☆一部18禁です
雅人が物心ついた頃に、母は病死した。
父は祖母に頼んで家の事を何でもできるように雅人に教えて欲しいと、暫く祖母と一緒に住まわせた。物覚えの良い、器用な雅人は赤ん坊の透の面倒を見ながらも祖母と一緒に暮らし、生活のノウハウを学んでいった。
大きくなって透も聞き分けのいい子に育ち、父親が居ない時でもきちんと面倒を見ながら家事もこなした。
まだ幼い透はそれが当たり前のように受け入れ、そして寂しくなったら自分に甘えてきた。
雅人は透が寂しくない様に常に人肌を感じられるように触れていた。雅人自身も、自分の中に感じる空洞がヒューヒューと風が抜けるような音を感じる度に透を抱きかかえてきた。
透が大きく育ってくると、すぐに自立するようになった。
雅人の中の空洞は再び風を受けると廃墟の間を吹き抜けるような音を奏で始めた。
初めて透以外の人に触れた時は、自分の事を好きだと言ってくれた女の子を触った時でもあった。自分を好きだと言ってくれる事に少し満たされる何かを感じたのだった。
他人を触れてみると、それはいとも簡単に泥で空洞を蓋をするように満たされたように感じた。だが、簡単な泥の蓋は吹き続ける風を受けてカラカラに乾き、バラバラと壊れてしまうのが難点だった。
その度に雅人は自分に近寄る人を抱いて、触れて冷えた穴を埋めていった。
そんな事をして日々を過ごしていると、クラス替えの時に初めて武と出会った。
気が強くて芯がしっかりしていて、それでいて笑ってしまう程に人を浄化する力を持った人だった。
雅人はやましい心で近づいても、癒されて安心する武の持つ橙色の温もりのようなものに触れる事が目的になっていった。
不思議な人だと思った。母親にも似た大らかで包み込むような雰囲気に、いつしか虜になっていった。
武の全てが愛おしくて欲しくて堪らなくなった。
初めて放課後想いを伝えて抱き締めた時、雅人の胸が震えた。そして武も細い方を震わせていた。
“愛している”。
初めてそんな言葉が自然と呼吸をするように浮かび上がった。それを口に出すと、武は綺麗な瞳に涙を浮かべた。
一生守っていきたい。雅人は心からそう思った。
武の微笑み一つで、あの寂しい胸の渇きはオアシスに変わっていくのを感じた。
初めて家に呼んだ時も、透がいるのであまり深く触れない様にしなくてはと思ったが、それも幾度も繰り返す度に我慢も限界に達した。
「ああっ……ダメったら……雅人っ……下には透くんがっ……やあっ」
そう言って抵抗する武のしなやかな腰を抱えて熱い舌を後ろから首筋に這わせ、そして耳の中へと侵入させた。
「大丈夫だから」
そっと囁いてベッド脇にあるオイルで指を濡らした。
「いやああっ……入れちゃっ……ダメぇっ」
武とは既に何度も身体を繋げていた。その日も武のそこは既に帰ると言い出す前に弄って解してあった。
「もう、入るよ……ほらッ」
グゥッと自分の大きく膨れたペニスの先を小さな武のアナルに押し込む。
「ああああんッ……!!」
高い声が部屋に響いた。
そこからはもう愛する人と快楽に溺れて夢中になった。
「愛してるよ、武。愛してる」
「雅人ぉ……雅人ぉっ」
身体を繋げる度に心も身体も堪らなく温かな温もりと安心感に包まれて幸せになれた。
そういう関係が、一生続くと信じていた。
暫くすると、武は学校を休んだ。担任によると、風邪をこじらせたらしいという事だった。
一日も早く逢いたいのに、二日経っても三日経っても武は学校へは来なかった。
そわそわと落ち着かない気持ちで武の家に電話を入れても誰も出る気配がなかった。それでもしつこく夜まで電話を掛けていると、ガチャリと受話器を取る音が聞こえて心が晴れた。
「武!?」
だが電話の声は女性の低く枯れた声だった。
「あの……どちらさま?」
「あ、すみません。同じクラスの東城と申しますが、武くんが風邪を引いたと聞いて……」
女性は沈んだ声で話し出した。
「そうですか。わざわざすみませんね。武ね、ちょっと今入院してるのよ」
「え……」
武は風邪とは違う明らかな酷い症状で倒れ検査をしていた。
自分もお見舞いに行かせて欲しい、そう言った熱意が伝わって結果の出る日にお見舞いに行く事を許された。
検査の結果は白血病の再発だった。
武は昔小児白血病になった事があった。それも良くなり、高校生になる頃には雅人の知っているように、非常に元気に過ごせるようになってきていた矢先だった。
確かに雅人の目から見ても身体の弱い所があったが、それでも元気に過ごしていた。
まさか病気の再発だなんて夢にも思わなかった。
そして武の闘病生活が始まった。武の若さはみるみる病原体を活発化させているようだった。
日に日にやせ細り、目の下まで窪んで細くなった身体を隠すように、そして申し訳なさそうに両腕を抱き締める武を、雅人はそっと壊れない様に抱き締めた。
「愛してる。武。もう少しだけ頑張ってくれ。俺が医者になってお前を治してやるから。な?」
「雅人……待ってる」
乾いた武の唇を雅人は唇を重ねて濡らしてやる。
嬉しそうに微笑む武の顔は昔と変わらず、雅人を温かく包み込んでくれた。
そして雅人は医者になろうと決意した。
<<前へ 次へ>>
雅人にも辛い過去はありました。
今回は雅人視点でした。
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雅人が物心ついた頃に、母は病死した。
父は祖母に頼んで家の事を何でもできるように雅人に教えて欲しいと、暫く祖母と一緒に住まわせた。物覚えの良い、器用な雅人は赤ん坊の透の面倒を見ながらも祖母と一緒に暮らし、生活のノウハウを学んでいった。
大きくなって透も聞き分けのいい子に育ち、父親が居ない時でもきちんと面倒を見ながら家事もこなした。
まだ幼い透はそれが当たり前のように受け入れ、そして寂しくなったら自分に甘えてきた。
雅人は透が寂しくない様に常に人肌を感じられるように触れていた。雅人自身も、自分の中に感じる空洞がヒューヒューと風が抜けるような音を感じる度に透を抱きかかえてきた。
透が大きく育ってくると、すぐに自立するようになった。
雅人の中の空洞は再び風を受けると廃墟の間を吹き抜けるような音を奏で始めた。
初めて透以外の人に触れた時は、自分の事を好きだと言ってくれた女の子を触った時でもあった。自分を好きだと言ってくれる事に少し満たされる何かを感じたのだった。
他人を触れてみると、それはいとも簡単に泥で空洞を蓋をするように満たされたように感じた。だが、簡単な泥の蓋は吹き続ける風を受けてカラカラに乾き、バラバラと壊れてしまうのが難点だった。
その度に雅人は自分に近寄る人を抱いて、触れて冷えた穴を埋めていった。
そんな事をして日々を過ごしていると、クラス替えの時に初めて武と出会った。
気が強くて芯がしっかりしていて、それでいて笑ってしまう程に人を浄化する力を持った人だった。
雅人はやましい心で近づいても、癒されて安心する武の持つ橙色の温もりのようなものに触れる事が目的になっていった。
不思議な人だと思った。母親にも似た大らかで包み込むような雰囲気に、いつしか虜になっていった。
武の全てが愛おしくて欲しくて堪らなくなった。
初めて放課後想いを伝えて抱き締めた時、雅人の胸が震えた。そして武も細い方を震わせていた。
“愛している”。
初めてそんな言葉が自然と呼吸をするように浮かび上がった。それを口に出すと、武は綺麗な瞳に涙を浮かべた。
一生守っていきたい。雅人は心からそう思った。
武の微笑み一つで、あの寂しい胸の渇きはオアシスに変わっていくのを感じた。
初めて家に呼んだ時も、透がいるのであまり深く触れない様にしなくてはと思ったが、それも幾度も繰り返す度に我慢も限界に達した。
「ああっ……ダメったら……雅人っ……下には透くんがっ……やあっ」
そう言って抵抗する武のしなやかな腰を抱えて熱い舌を後ろから首筋に這わせ、そして耳の中へと侵入させた。
「大丈夫だから」
そっと囁いてベッド脇にあるオイルで指を濡らした。
「いやああっ……入れちゃっ……ダメぇっ」
武とは既に何度も身体を繋げていた。その日も武のそこは既に帰ると言い出す前に弄って解してあった。
「もう、入るよ……ほらッ」
グゥッと自分の大きく膨れたペニスの先を小さな武のアナルに押し込む。
「ああああんッ……!!」
高い声が部屋に響いた。
そこからはもう愛する人と快楽に溺れて夢中になった。
「愛してるよ、武。愛してる」
「雅人ぉ……雅人ぉっ」
身体を繋げる度に心も身体も堪らなく温かな温もりと安心感に包まれて幸せになれた。
そういう関係が、一生続くと信じていた。
暫くすると、武は学校を休んだ。担任によると、風邪をこじらせたらしいという事だった。
一日も早く逢いたいのに、二日経っても三日経っても武は学校へは来なかった。
そわそわと落ち着かない気持ちで武の家に電話を入れても誰も出る気配がなかった。それでもしつこく夜まで電話を掛けていると、ガチャリと受話器を取る音が聞こえて心が晴れた。
「武!?」
だが電話の声は女性の低く枯れた声だった。
「あの……どちらさま?」
「あ、すみません。同じクラスの東城と申しますが、武くんが風邪を引いたと聞いて……」
女性は沈んだ声で話し出した。
「そうですか。わざわざすみませんね。武ね、ちょっと今入院してるのよ」
「え……」
武は風邪とは違う明らかな酷い症状で倒れ検査をしていた。
自分もお見舞いに行かせて欲しい、そう言った熱意が伝わって結果の出る日にお見舞いに行く事を許された。
検査の結果は白血病の再発だった。
武は昔小児白血病になった事があった。それも良くなり、高校生になる頃には雅人の知っているように、非常に元気に過ごせるようになってきていた矢先だった。
確かに雅人の目から見ても身体の弱い所があったが、それでも元気に過ごしていた。
まさか病気の再発だなんて夢にも思わなかった。
そして武の闘病生活が始まった。武の若さはみるみる病原体を活発化させているようだった。
日に日にやせ細り、目の下まで窪んで細くなった身体を隠すように、そして申し訳なさそうに両腕を抱き締める武を、雅人はそっと壊れない様に抱き締めた。
「愛してる。武。もう少しだけ頑張ってくれ。俺が医者になってお前を治してやるから。な?」
「雅人……待ってる」
乾いた武の唇を雅人は唇を重ねて濡らしてやる。
嬉しそうに微笑む武の顔は昔と変わらず、雅人を温かく包み込んでくれた。
そして雅人は医者になろうと決意した。
<<前へ 次へ>>
雅人にも辛い過去はありました。
今回は雅人視点でした。
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コメント
> 雅人にも辛い過去があったんでね。
> 心の風穴をふさぐために、人を求める。
> 自然ですね。それが誰であろうとも。
雅人にもありました。辛い過去。
心の風穴って、手当たり次第埋めたくなる事ありますよね。
寒くてどうしようもなくて。
自然だってjunさまが仰って下さって何だか心がポッと暖かくなりました。
> そんな雅人の前に現れた恋人。
> なのに恋人は、白血病だなんて。
> 雅人可哀想過ぎです。
よくあるパターンな感じがしますが実際にそういう子を目の前にした時の
感情ってどう表現したらいいのでしょうね。
雅人の感情を理解して下さって嬉しいです。
> 透と最後までしないのは、そのためだったんですね。
> 恋人への想いと兄弟との想い。
> 雅人にもう一度恋人現れてほしいです。
お優しいjunさまに感謝です。
私ももう一度雅人に心から愛せる人が現れる事を祈っています。
コメントどうもありがとうございました
心の風穴をふさぐために、人を求める。
自然ですね。それが誰であろうとも。
そんな雅人の前に現れた恋人。
なのに恋人は、白血病だなんて。
雅人可哀想過ぎです。
透と最後までしないのは、そのためだったんですね。
恋人への想いと兄弟との想い。
雅人にもう一度恋人現れてほしいです。
わざわざありがとうです!
大丈夫でしょうか?少しは良くなられたみたいで安心しました。
でも無理しないで下さいね(>ω<)
なかなか切ない過去を持つ雅人でした。
武の行く末も見守って頂けると幸いです。
チェックもありがとうです!
ビックリですよね(笑)え!この子も入院!?みたいな(笑)
コメントどうもありがとうございました
色々と想像して下さって嬉しいです!
どうしてああなったのか…。
雅人の動き、何となく優しくて品がありますか!?
おおぉ…!嬉しいです!
汗もかかなそうですか!素敵なイメージだ(〃∇〃)
なのに何故今子供に悪戯をしたりするか…。
そうですね。元々そういうのは好きな方というのと、
子供の方も潤のように近寄って一緒に楽しんでしまっているのでしょうね^^;
武に逢う前の雅人に戻っているような気がします(>ω<)
透を見えない鎖でつなぐような事、確かにそうですね。
ズルイかもしれませんが、雅人も寂しいんだと思います。
でも透はそれに苦しんでいる。
早くどうにか幸せになって欲しいと願います(ノД`)・゜・
拍手秘コメントどうもありがとうございました
> 急速に 悪化して行く様子を 見るのは 辛いですね。
> それで 雅人は 医師になったんですね~
愛する人が病気ってこんなに辛い事はありませんよね。
しかも悪化の過程を見るって本当に辛いと思います。
でも雅人はそれ以上に悪化を悲しむ以上に武の傍にいたくて
力になりたくて焦るように自分に出来る事に向かって行きました。
> ・・・って 私が しんみり~と していたのに
> やぴ様と 夕華さまの コメで 思わず 「プッ」と!!
>
> シリアスなのにーー!(;0;)ゞbyebye☆
腐レーダーは光ります(笑)
言われてみて私もプっとなってしまいました(笑)
回想エチは薄めにしないと腐センサーに引っ掛かるという事ですね(笑)
お気遣いありがとうございますv
コメントどうもありがとうございました
> これは、やっぱり、悲劇の別れですか~(T-T)
> 母親に続いて恋人も・・・。
> 悲しい・・・。あうあう(ノ_・。)
> でも続き・・・気になるぅ~!(>_<)
大悪魔のアニキにも色々あったようです。
母親に続いて愛する人までも…。
辛い過去が明らかになって参ります。そして現在進行形へと繋がる予定です。
気になって下さってありがとうございます!
コメントどうもありがとうございました
> えぇ…そうなのか…病気か…
> 心安らぐ相手が急に入院して、しかも白血病。
> だからお医者さまなのか…
こんにちは^^
そうだったんですよ…(ノ△・。)
病気は辛いですよね。しかも愛する人が。
だから雅人はお医者さまを目指しました。
> あっ、夕華さまと同じであたしも一瞬し過ぎたのかと思いました。ばい菌入ったのか!?とか…腐ってました (;´Д`A ``` すみません。
あ!やぴさまも腐友ですね?(笑)
でもこの流れにしてしまった私です…orz
武を心配して下さってありがとうございました(笑)
コメントどうもありがとうございました
濃かったですか!?
薄くしたつもりでした(;´Д`A ```←
> 唯一の心のよりどころと言ってもいいくらいの
> 愛する人が入院してしまいました。
> 忘れられない過去・・・
>
> こりゃ、忘れられないわ。
ですね(ノ△・。)
心の拠り所でもある愛する人。
そんな人が入院とか、忘れられないですよね(>_<)
心がざわつきます。
> 一瞬、えちのしずぎで倒れたかと思った私は腐りすぎてますか?(笑)
そう言われたらエチの流れから来ていたのでそうかも!と納得(笑)
エチ、薄めに書けば良かったぜぃ…(笑)
そう見える私も腐友でございます(´∀`*)ウフフ
コメントどうもありがとうございました
急速に 悪化して行く様子を 見るのは 辛いですね。
それで 雅人は 医師になったんですね~
・・・って 私が しんみり~と していたのに
やぴ様と 夕華さまの コメで 思わず 「プッ」と!!
シリアスなのにーー!(;0;)ゞbyebye☆
これは、やっぱり、悲劇の別れですか~(T-T)
母親に続いて恋人も・・・。
悲しい・・・。あうあう(ノ_・。)
でも続き・・・気になるぅ~!(>_<)
えぇ…そうなのか…病気か…
心安らぐ相手が急に入院して、しかも白血病。
だからお医者さまなのか…
あっ、夕華さまと同じであたしも一瞬し過ぎたのかと思いました。ばい菌入ったのか!?とか…腐ってました (;´Д`A ``` すみません。
唯一の心のよりどころと言ってもいいくらいの
愛する人が入院してしまいました。
忘れられない過去・・・
こりゃ、忘れられないわ。
一瞬、えちのしずぎで倒れたかと思った私は腐りすぎてますか?(笑)
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