05/07/2010(Fri)
万華鏡-江戸に咲く-41
漸く週末になると、江戸へ帰ることができた。
「美月・・何だか疲れた顔をしているが、どうした?」
「先生、おはようございます・・ちょっと向こうで一週間程勉学に追われてまして・・ふあ」
思わず欠伸が出る。
「それは、大変だったな。私にはたった一晩でも美月は大分向こうで時を過ごしてきたというのは、やはり不思議な感じだ。・・でも一晩でも一日千秋の想いだったがね。」
そう言って見つめられるとポッと顔が赤くなってしまう。それに、現代でよりにもよって先生まで想像してあんな淫らな行為をしてしまった事が、恥ずかしくて顔をまともに見れない。
一通り仕事を終えた美月たちは、大分早い時間に切り上げられた。
「美月、今日はもういいよ。あとは簡単だから夜の所へ行って来たら?今ならきっと店にいるだろう」
ドキンとする。
「え・・いいんですか・・?」
「ああ。本当は嫌だけど、いいよ」
ニコリと優しい笑顔に美月は満面の笑みを浮かべた。夜に会うのはとても久しぶりな気がしていたのだ。
「先生!ありがとう!!」
そう言って美月は駆け出した。
もう直ぐで店に着くというところでバッタリと離れた場所から歩いて来る夜と鉢合わせた。
「あ、夜!」
美月の声に気付いた夜はふっと表情を和らげた。
(あっちから来たって事は、もしかしたら夜、雪之丞さんの所に行ってたのかな・・)
胸がギュッと締め付けられる。
それでも夜が近づいて顔を目の前で見ると、嬉しくてドキドキして思わず抱きついてしまいたくなる。
すると、夜が美月の心が分かったとでも言うように急に腰に手を回し、ギュッと抱き寄せてきた。
美月の心臓は一際大きく飛び上がると後はトクトクトク、と静かにスピードを上げていった。
「夜・・」
「ああ。悪ぃ。なんか、ちょっとの間離れてたってのに、何だか久しぶりな気がして。」
腰をギュっと引き寄せられ、後頭部に添わされた手が気持ちいい。
「俺も・・会いたかった。向こうで結構過ごして来ちゃったから、俺は本当に久しぶりなんだけど」
「そうか。じゃ、美月の気持ちが伝わったのかな」
そう言って切れ長の瞳を細められると、それだけで蕩けてしまいそうになる。
二人は甘味処でお茶をすることにした。現代で言うところのカフェでお茶をする感覚だろう。
美月は美味しそうなあんみつを頼むと夜は普通に醤油の団子を頼んだ。
「夜、甘いの食べないの?」
「ああ。俺は甘いのは苦手だ。」
「なんだよ、つまんないな。現代ではすげー美味しいのいっぱいあんだぜ?」
「へぇ、どんなんだ?」
夜は現代の話が大好きだ。いつも楽しそうに話を聞いて驚いたり、笑ったり、考え込んだり。そういう時の夜は年相応に見えて可愛いと思った。
話していると、夜が何かを思い出したように言う。
「あ、そういえば明後日祭りが隣の町でやるんだよ。一緒に行かないか?」
お祭りと聞いて美月の表情がパァッと明るくなる。
「行く!!行きたい!!」
(やったぁ、二人でお祭りデート!)
「んでさ、その、言いにくいんだけどもよ・・」
夜は言いづらそうに苦い顔をして頭を掻く。
「喜助と・・雪之丞も一緒なんだが・・」
それを聞いて一気に気分がどん底に落ち込んだ。
(ああ・・そういうことね。)
「雪之丞に祭りに誘われて、喜助も行きたがって、そしたらアイツ、絶対美月も誘ってってうるさくてよ」
「それで仕方なく誘ったんだ?」
美月はムッとして嫌味ったらしく言う。
「あ、いや、そういう意味じゃねーって!俺は最初からお前とも行きたかったし・・」
「お前・・『とも』ねぇ・・」
ふん、と思い切り嫌味ったらしく強調して睨んで言う。
自分で2番目でもいい、とか余裕のある事言ってはみたもののいざこういう場面になるとこんなにも女みたいに嫌味な事を言う自分にも嫌気が差す。
「悪ぃ。別にいいよ。俺二人とも仲いいし。行くよ。」
半ば諦めたように、それでも自分のいない所でなるべく雪之丞とずっと居て欲しくなくて承諾してしまった。
「ありがとうな。嬉しいよ」
優しい笑顔を向けられてドキッとする。
(ずるいよ・・そんな顔されたら、嬉しいに決まってんじゃんか)
「あ、じゃあさ、どうせなら皆で行きたいから先生も誘ってみていい?」
先生と聞いて夜の顔が険しくなる。
「まぁ・・美月がどうしても先生呼びてぇんなら、別にいいけど」
明らかに嫌がってる顔だ。だが何も言えない自分の立場を分かっていて承諾しているのが良く分かる。
<<前へ 次へ>>
お祭りだ~い♪
夏祭り大好き!恋の予感!
(って時期はもう過ぎた気が・・)
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「美月・・何だか疲れた顔をしているが、どうした?」
「先生、おはようございます・・ちょっと向こうで一週間程勉学に追われてまして・・ふあ」
思わず欠伸が出る。
「それは、大変だったな。私にはたった一晩でも美月は大分向こうで時を過ごしてきたというのは、やはり不思議な感じだ。・・でも一晩でも一日千秋の想いだったがね。」
そう言って見つめられるとポッと顔が赤くなってしまう。それに、現代でよりにもよって先生まで想像してあんな淫らな行為をしてしまった事が、恥ずかしくて顔をまともに見れない。
一通り仕事を終えた美月たちは、大分早い時間に切り上げられた。
「美月、今日はもういいよ。あとは簡単だから夜の所へ行って来たら?今ならきっと店にいるだろう」
ドキンとする。
「え・・いいんですか・・?」
「ああ。本当は嫌だけど、いいよ」
ニコリと優しい笑顔に美月は満面の笑みを浮かべた。夜に会うのはとても久しぶりな気がしていたのだ。
「先生!ありがとう!!」
そう言って美月は駆け出した。
もう直ぐで店に着くというところでバッタリと離れた場所から歩いて来る夜と鉢合わせた。
「あ、夜!」
美月の声に気付いた夜はふっと表情を和らげた。
(あっちから来たって事は、もしかしたら夜、雪之丞さんの所に行ってたのかな・・)
胸がギュッと締め付けられる。
それでも夜が近づいて顔を目の前で見ると、嬉しくてドキドキして思わず抱きついてしまいたくなる。
すると、夜が美月の心が分かったとでも言うように急に腰に手を回し、ギュッと抱き寄せてきた。
美月の心臓は一際大きく飛び上がると後はトクトクトク、と静かにスピードを上げていった。
「夜・・」
「ああ。悪ぃ。なんか、ちょっとの間離れてたってのに、何だか久しぶりな気がして。」
腰をギュっと引き寄せられ、後頭部に添わされた手が気持ちいい。
「俺も・・会いたかった。向こうで結構過ごして来ちゃったから、俺は本当に久しぶりなんだけど」
「そうか。じゃ、美月の気持ちが伝わったのかな」
そう言って切れ長の瞳を細められると、それだけで蕩けてしまいそうになる。
二人は甘味処でお茶をすることにした。現代で言うところのカフェでお茶をする感覚だろう。
美月は美味しそうなあんみつを頼むと夜は普通に醤油の団子を頼んだ。
「夜、甘いの食べないの?」
「ああ。俺は甘いのは苦手だ。」
「なんだよ、つまんないな。現代ではすげー美味しいのいっぱいあんだぜ?」
「へぇ、どんなんだ?」
夜は現代の話が大好きだ。いつも楽しそうに話を聞いて驚いたり、笑ったり、考え込んだり。そういう時の夜は年相応に見えて可愛いと思った。
話していると、夜が何かを思い出したように言う。
「あ、そういえば明後日祭りが隣の町でやるんだよ。一緒に行かないか?」
お祭りと聞いて美月の表情がパァッと明るくなる。
「行く!!行きたい!!」
(やったぁ、二人でお祭りデート!)
「んでさ、その、言いにくいんだけどもよ・・」
夜は言いづらそうに苦い顔をして頭を掻く。
「喜助と・・雪之丞も一緒なんだが・・」
それを聞いて一気に気分がどん底に落ち込んだ。
(ああ・・そういうことね。)
「雪之丞に祭りに誘われて、喜助も行きたがって、そしたらアイツ、絶対美月も誘ってってうるさくてよ」
「それで仕方なく誘ったんだ?」
美月はムッとして嫌味ったらしく言う。
「あ、いや、そういう意味じゃねーって!俺は最初からお前とも行きたかったし・・」
「お前・・『とも』ねぇ・・」
ふん、と思い切り嫌味ったらしく強調して睨んで言う。
自分で2番目でもいい、とか余裕のある事言ってはみたもののいざこういう場面になるとこんなにも女みたいに嫌味な事を言う自分にも嫌気が差す。
「悪ぃ。別にいいよ。俺二人とも仲いいし。行くよ。」
半ば諦めたように、それでも自分のいない所でなるべく雪之丞とずっと居て欲しくなくて承諾してしまった。
「ありがとうな。嬉しいよ」
優しい笑顔を向けられてドキッとする。
(ずるいよ・・そんな顔されたら、嬉しいに決まってんじゃんか)
「あ、じゃあさ、どうせなら皆で行きたいから先生も誘ってみていい?」
先生と聞いて夜の顔が険しくなる。
「まぁ・・美月がどうしても先生呼びてぇんなら、別にいいけど」
明らかに嫌がってる顔だ。だが何も言えない自分の立場を分かっていて承諾しているのが良く分かる。
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