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続・ネクタイの距離 2話

☆18禁です

(うっ……わ、やらし……)

 確かにいやらしい光景に再び興奮もした学だったが、同時に初めて掛ける行為を行って申し訳ない気持ちと、そして『所有』の証にも似た感情が湧き上がった。

「ごめん、いっぱい掛けちゃった」
 急いでティッシュを取って拭こうとすると、柳が口元の精子を舌先ですくって舐めた。
「ちょッ……先生っ」
「……大城の味、興奮する……」
 まだ一度も出していない柳の股間は浴衣の上からでも硬く立ち上がっているのが分かった。
 学はゴクリと生唾を飲み込むと大きく喉仏が上下に動いた。

「あ、ちょっと待って。コンタクトが……」
 柳は魅力的な瞳を大きく見開いてコンタクトを外し出した。
「先生ってコンタクトだったの? じゃ、普段は眼鏡?」
「あぁ。そうだけど」
 会話をしながら用意されていたおしぼりを取って柳の顔を綺麗に拭いてやる。「優しいね」といううっとりとした柳の微笑みを見て愛しさが込み上げた。
「ねぇ、眼鏡、掛けてよ。見たい」
 そんな他愛のない要望に不思議そうな顔で応えた柳は鞄の中から銀のフレームのスマートな眼鏡を掛けた。

(おわっ……何か……すげー真面目なエリートっぽい!)

 性欲など一ミリもありません、というような堅い雰囲気の眼鏡と、醸し出されて止まない官能的な美しい顔が妙な相乗効果を出していた。
 また、そんな真面目で美しい顔とは裏腹な、肌蹴た浴衣姿の柳に学は再び股間を硬くした。

「俺も、先生の舐める」
 学は自分も奉仕をしたいと、柳の浴衣を捲り払った。すると柳の、まるで女物のように小さな黒い下着が視界に飛び込んだ。
「え……小さ……」
「あっ……ごめ……これは一応男ものでっ…こういうのもあるんだ……気持ち…悪いか?」
 柳は恥ずかしそうに腰を捻って隠そうとする。
 気持ち悪いとは思わなかった。むしろ学の知らない世界の興奮を初めて味わった衝撃に襲われていた。
「いやッ、全然です! 寧ろ、エロくて凄いです! こんなに膨らませて……」
 その膨らみに手を伸ばすと、表面がツルリとして手触りが良い。柳は頬を染めてピクリと反応した。
 そのまま手を柳の尻に滑らせると、突如布の感触は消えた。不思議に思った学が覗くと後ろはTバックになっていた。

「うわ……すげっ……」
 そのまま膨らんだ尻を掌一杯に包み込んで揉んでみる。想像以上に柔らかくて気持ちが良かった。
「いやらしいんだね、先生って」
「んっ……や」
「ケツ、揉まれて気持ちいいの?」
 挑戦的に聞いてみると、柳は可愛くコクリと恥ずかしげに頷いた。
学はそんな柳に際限なくどんどん煽られる。

 黒い小さなパンツを下ろすと、中から大きく形を変えた柳のペニスが露わになった。それは綺麗な色形をしていた。決して小ぶりではなく、平均よりも寧ろ少し大き目だ。
 血液の溜まったそこは桜色をしていてカリ首の段差も丁度いい具合だ。柳のモノは少し右へ緩やかにカーブしていた。左利きの学とは反対だ。

 そっと顔を近づけると、ふわりと石鹸の香りがした。そういえば風呂上がりだった事を思い出す。
 初めて男のものを咥えるにあたって、その清潔な香りは学に勇気を与えた。
 そっと舌を差し出し、ゆっくりとペニスの裏側の表面を舐めてみた。
「ふっ…ぁ」
 頭上に聞こえる柳の可愛い声をBGMに、その新感触を舌先で味わった。
 思ったよりもツルツルしていて、それでいて薄い皮膚だという事が分かる。
 裏筋がピンと張っていてそこに舌を這わせれば、また頭上から甘ったるい声が漏れる。
 そのまま探索をするように、尿道先から沁み出るしょっぱい液体を味わい、下へ下がって柔らかな玉袋を口内へ含んで楽しんだ。
 自分にもあるので分かっている感触だが、舌の上で転がして見るとまた違って感じる。皮部分がフニャフニャで、中の玉が動くのがよく分かる。
 柔らかい皮が学の唇を覆うのが気持ちいい。
 体毛が元々少ないのか、それとも処理をしているのか、柳の股間には無駄毛が殆どなく綺麗だった。



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え~……エロだけの続編の筈だったのですが、
何やら癖が出て物語が進行してます…。
短編の書けないアタシ……。( p_q)エ-ン

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00:00 | ネクタイの距離 | comments (16) | trackbacks (0) | edit | page top↑

続・ネクタイの距離 1話

☆18禁です

想いは繋がった。
 
 学は爆発しそうな想いを込めて浴衣の上からでも分かる熱っぽい柳の身体をギュッと抱き締めた。
 どうしていいか分からないが、どうにかしたい。
 相手が男だという事で勝手が違う事に正直戸惑っていた。だが気持ちはそんな事にお構いなしだ。

「先生……」

「んっ……はっ……大城待っ…んっ」

 柳のもがきは既に学には誘う動きにしか考えられない。「待って」の言葉が「して」という意味にしか聞こえない。
 柳の柔らかな唇に吸いつくと、ちゃんと答えるように唇を動かしてくるのが嬉しかった。
 学が気持ちのままに柳の唇を貪るのに対して、柳は官能的な唾液の水音を立てながらゆっくりと蕩けるようなキスを施して来る。

(気持ち良過ぎる……キスってこんなんだっけ……)

 大人の楽しむキスに後頭部がジンと甘く痺れてくる。

――大人

 男としてのプライドが胸中に持ち上がった学は少し悔しくなった。
 学がすかさず柳の浴衣の袷(あわせ)部分をグッと引くと、柳の艶やかな肩が露わになった。

「大城っ」

 学の早急な行動に驚く大人の柳がとても可愛く見えた。
 慌てる柳の足の間に入り込んだ学はそのまま体重を使って柳の上半身を布団の上に押し倒した。

 真下には浴衣が肌蹴て乳首が見える。
 自分と同じ男の身体の乳首である事は分かっているのに、それが妙にいやらしくて興奮した。
 抵抗しようとする柳の手首を布団に押しつけながらその乳首の先に舌を伸ばしてみる。
 チロっと舐めると、それはゆっくりと反応してあっという間に硬くシコって立ち上がった。

「あっ、あんっ……やめっ……」

 舌先で柔らかな回りを優しく吸い上げ、舌先で強く硬い部分を上下に舐め付ける。

「気持ちいいの? 先生」

 柳が甘ったるい声を放つ度に、既に立ち上がった学の硬いペニスの先からジワジワとカウパー液が染み出してきているのが分かった。
 
 修学旅行の夜に、クラスの男子が女子の部屋に遊びに行ってるというだけで浮かれている中、自分は担任といやらしい事をしている。
 そう考えただけでも学のペニスは別の生き物のように暴発しそうになる。

「先生……したい……どうやんのか教えて」
 学がそっと甘えた声で石鹸の香りのする柳の耳元で囁いた。
「はっ…ん……耳っ…ダメっ」
 柳は切なげに眉を寄せて色っぽい唇をハッと開く。
「何? 耳がいいの?」
 弱い所を攻めたくなるのが学の性格だ。感じ過ぎているのか、だんだんと反応する声が大きく部屋に響く。
隣で寝ているであろう他の先生が起きてしまうかもしれない。廊下で静にうろうろしている生徒にも聞かれるかもしれない。
 柳が声を出しそうになる度に学はその唇を塞いだ。その時に逃げ道を失った柳の甘ったるい声が鼻から抜ける。そんな声も色っぽくて好きだった。
 指先で摘まんでいた柳の乳首がどんどん硬さを増してくる。それを苛めるように軽く爪で引っ張ってやる。

「やっ…んっ!」

「くッ……」

 色っぽい声に思わず学は自分の股間に手を突っ込んだ。
 触らないといられない。
 既にヌルついたペニスは驚く程熱く硬かった。自分の意志では止まれそうにないまま、柳の首筋にきつく吸いつきながら自分のペニスを上下に扱く。

「き、今日は……ダメだよっ……修学旅行で、旅館でなんて、やっぱり……あんっ」

 どうしようもない学の欲望に堪らない表情を向けながらも、柳は理性を働かせて学を宥める。

「で、でももうっ……ハァ…止まらないよ、先生っ……ハァ、ハァ」

 情けないとは思いながらもコントロールの効かなくなった学の左手はクチュクチュといやらしい音を立てながらリズムよく自分のモノを上下に扱いていた。
 扱きながらもどうにかして欲しくて柳の首や綺麗な顎のラインを舐めまわす。先程付けた柳の首筋のキスマークが生々しく学の目に映った。

「大城っ……なら、今日は俺がするから……」

「え……先生が? な、何を……あ……」

 荒い息を整えながら今度は反対に柳が身体を起こして学の足の間に入り込んできた。
 四つん這いになって這い寄る柳は美しく飼いならされた豹を思わせる。
とても官能的だ。
 そんな事を思っていると、そっと猛々しい学のペニスを柳の掌が包み込んだ。
「あっ!」
 そしてゆっくりと顔を埋めたかと思うと、途端にヌルリとした温かなものに飲み込まれていくのが分かった。
 初めて味わう感動すら感じる程の新触感とその、下半身が蕩けるような気持ち良さに学の理性は完全に吹き飛んだ。
「あっ……あっ……スッゲ……せんせっ…ウッっ…あぁッ」
 ちらりと見ると柳が学のモノを口一杯に頬張って上下にピストンしているのが見えた。
 こんな自分のモノを憧れの、しかも自分の好きな教師が咥えている光景は衝撃的だった。

「もっ…もうダメッ……ハァッ、イクッ……出るッ」

 学が柳の髪の間に指を差し込む。

「んっ……大城、いいよ……顔に掛けても……んん」

 柳が口で追いたてながらも提案をして来た。

「いっいいの!?」

 学は既に柳の頭を両手で押さえながら腰を動かしていた。

「いいよ、掛けて……先生に…っ」

 ジュポっと口内からペニスを離したかと思うと切なげな表情で誘うように学の方を見上げながら赤い舌を差し出した。

「せッ、先生ッ」

 はち切れるかと思う程膨張したペニスを柳の顔の前でグチャグチャに扱いた。

「あぁ……大城の、すごいっ」

「出るッ……掛けるよ、先生ッ……んんッ」

 柳の髪をグッと掴むと、その綺麗な顔と差し出された舌に向かって思い切り欲望の液体を爆ぜさせた。
 驚く程何度も飛び出る液体は柳の目元から頬、唇や髪にまで掛かった。



次へ>>      

続の方でRを書いてしまいました、スミマセン~(汗)
続きは書け次第UP致します!願射バンザイ!!

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00:13 | ネクタイの距離 | comments (21) | trackbacks (0) | edit | page top↑

ネクタイの距離 4最終話

 柳が今どういう顔をしているのかは分からなかった。だが、返事も抵抗も無いと言う事はこのままでもいいという風に受け止めた。
 学は顔を柳の髪に埋めた。シャンプーの良い香りがとても官能的に感じた。
 柳の身体は自分と変わりない男の身体だというのにも関わらず、そんなものを一切思い出させない程しなやかで抱き心地が良かった。
 今はスーツもネクタイもしていない柳はとても距離が近くに感じる。
 そっと唇を項に付けると、「あっ」と小さく反応する柳の声が聞こえた。
 今まで何度も想像してきた柳の色っぽい声よりも、遥かに想像を超えた艶のある声にゾクっとする。
 そしてその声が学校では決して聞く事の出来ない、完全なるプライベートのものだと感じると学は余計に興奮した。

(あー…もうヤバいかも…)

 この際ダメなら全ての想いをぶつけて終わりにした方が後悔はしないと覚悟を決めた。
 深く息を吸い込む。

「先生、今から俺が言う事はただ聞いておいて下さい……俺、先生が恋愛対象として好きです」

「……っ!」

 腕の中で柳が硬直するのが分かった。
 そして今度は耳元で小さく囁くように言った。

「好きです、先生」

 今、柳はどんな表情をしているのだろう。学は意外にも冷静にそんな事を考えていた。
 腕の力を緩めて柳を解放し正面に回ると、そこには顔を真っ赤に染めた幼い表情の柳がいた。

(か、……可愛いぃッ)

「き、聞いたぞ……もう部屋に戻りなさい」

 言われた言葉はガッカリするものだったが、柳の表情は明らかに違う感情を表していた。恥ずかしいような、困惑しているような、とても興味深い表情だった。
「あのさ、先生。万が一でも、俺の事恋愛対象として見てくれる事って……ない?」
 ダメ元で聞いてみる。想定外の柳の表情につい欲が出たのだ。
「だ、ダメに決まっているだろうっ」

 分かっていた答えだったが、ハッキリ聞くと想像していたよりもズンと心に重くのしかかってきた。
 だがどうも嫌悪しているように見えない柳の顔に、学はもう少し食い下がる。

「じゃあさ、一回だけキス、させて下さい。そしたら、諦めつくかもしれないんで」
「な! 何を言ってるんだ!」
「お願いします。一度だけでいいんです。先生……」
 学はそっと正面から四つん這いで近づくと、慌てるように頬を赤く染めた柳は後ろへ少し下がる。

「おいッ、ちょ、待てッ! まずいだろうっ…俺とお前は教師と生徒でっ」
「本当、すみません」
 謝りながらも学はどんどん近付き柳を追いつめる。畳みに布が擦れる音が響く。そして学は柳を壁まで追いつめた。

「ちょッ……待てって!」
 学の熱っぽい眼を間近で見た柳がハッと息を吸い、抵抗をしようと学のTシャツを掴んだ。
 少し怯えたような潤んだ柳の目は教師の目ではなかった。ふっくらと艶めく唇が何かを喋る度に誘うように動くのが堪らない。
 細い首筋と綺麗な鎖骨が色っぽくて浴衣を剥いでしまいたい。

「ごめん、先生。我慢が出来ないや」

「あっ…ちょっ…んっ」
 そして学は引き寄せられるように柳の唇を塞いだ。
 一瞬固まった柳だったが、次の瞬間抵抗しようと動いたのでその手首を掴んで動きを封じた。

(もう少しだけ……もう少しだけ……)

 想像以上の柔らかさと、動かすと自然と吸いついて来る柳の唇に脳も身体もジンと甘い痺れを感じる。

 今の二人の距離はゼロミリだった。

 ふっと唇を離すと、蕩けたような表情で見上げる柳がいた。

「どうして?」
「え?」
 柳からの突然の質問に学の方が驚く。
「どうして俺がゲイだって分かった?」
 学は一瞬ゲイというものの意味を理解するのに数秒時間を要した。

「えぇえ!? 先生、ゲイだったの?!」
 すると今度は柳の方が更に驚いて顔を一気に赤くした。
「え!…えぇ!? お前、俺がゲイだって知らずにこんな事を!?」

「し、知りませんでした……でも多分もう見た時から好みで、そんで担任になった時すげー嬉しくて、気付いたらもう、女の子口説くみたいに先生の事……」
 柳は首までほんのり桃色に染め上げた。
「そ、そうだったのか……。俺だってダメだと思ったんだ。お前、生徒だし……だから教師らしく大人に振舞って一線引いていたのに」
「え?」

(それって……)

 柳は参った、というような顔をして苦笑いを向けた。
「俺もお前がどんぴしゃで好みだったんだよ。でも最初は目の保養程度だった。まさかお前が男を好きになるなんて思わないし、生徒だし……なのにお前ときたら懐いて来るもんだから……あっ」
「嬉しいッ」

 学は思わず目の前の柳を抱き寄せた。今度はギュッと抱きしめても抵抗されなかった。
「好きです、先生。付き合って下さい」
 すると、押し付けた首元辺りからくぐもった柳の声が返って来た。

「分かった……でも他の生徒には内緒だぞ?」

END


<<前へ     

続編が気になる方は先ずは詳細項目をご覧になって下さい。内容に注意して大丈夫なようでしたら是非ご覧になって下さいませ。こちらから→続・ネクタイの距離

最後までお読み下さってありがとうございました!!
これが私の精一杯のほのぼの、でした(^▽^;)
あんまりほのぼのでもない気がするんですが、お許し下さい~っ
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00:00 | ネクタイの距離 | comments (27) | trackbacks (0) | edit | page top↑

ネクタイの距離 3話

「んで、俺らはこういうルートで周るって事でいいか? おい、聞いてるか学?」
「あ? ああ。悪い、いいよそれで」
「学、お前修学旅行の班長だってのに副班の俺が仕切ってどうすんだよ」
「頼りにしてるってー、古谷くーん」

 学たちのクラスはもうすぐ修学旅行に行く事になっていた。学は班長になれば旅行中も何かと柳に話しかけられるのではないかと安易に班長に立候補した。
 アイスを奢って貰った日から、益々募る想いは膨らむ一方だ。この修学旅行でさえも、まるで二人で行く初めての小旅行気分だった。
 ふと頬が上に上がるのが分かって、学はそっと掌でそれを下へ下ろした。

 ついに修学旅行の当日、色んな想定をして一晩中楽しんでいた学はトロンとした目でバスに乗った。
 自由時間なんかはあわよくば柳と二人で色んな所へ回る、カメラに柳を大量に収める、思い出を作る、いい雰囲気にだってなれるかもしれない、など沢山のシチュエーションとその予行練習はバッチリだ。
 早速一番前に座る柳の近くに座る予定だった筈が、女の子と仲の良い男友達による熱烈な拘束の為、すぐさまそのポジションは他の女子軍団に押さえられてしまった。
「チッ」
 つい舌打ちを打つ。
 それからも事あるごとに色々な場所へ行くが、柳と二人きりになるのはおろか、話す事も近づく事さえも叶わなかった。


「つまんねー……」

 風呂上がりにふてくされて部屋でゴロゴロしていると、他の男子生徒が「学もやろーぜ」とカードゲームに誘って来た。
「いい……眠いし」
 気分の乗らない学は寝不足からか、消灯前にウトウトと眠り始めてしまった。
 ふと目を覚ますと当たりは既に真っ暗で、スゥ―スゥ―と寝息があちらこちらから聞こえてきた。

(あれ? 今何時だ? 俺寝ちまったのか…)

 障子から洩れる外の明かりに時計をかざすと時刻は十二時を回っていた。他の皆も相当疲れていたようだ。
 女子が大好きな何人かの生徒の布団の中が空なのは、今頃まだ女子の部屋に行って遊んでいると見て間違いなかった。

「よし……なら俺も……」

 学はそっと部屋を抜け出すと一目散に柳の部屋へと向かった。
 廊下をそっと歩いていると、反対から見張り役をしていた生徒と出くわした。
「おいっ、あんまそっち行くなよ? そっち、先公の部屋だからっ」
 小声でその注意の言葉を受けて学はクスリと笑った。
「分かってるって!」

 柳の部屋の前に立つと、急に心臓がドクドクとうるさく鳴りだした。
 トントン……。
 なるべく小さなノック音をして暫く待つと、中から「はい」と甘く低い柳の声がしてドキッとした。
「あ、あのっ…大城ですっ」
「大城?」そういう疑問の言葉がしてガチャリとドアが開いた。
 和室の旅館だが玄関扉はドアになっている。

「どうした? 何かあったのか?」
 中から出てきた柳は風呂から出たばかりなのか、濡れた髪からキラキラと光る雫を垂らしていた。
 少し長めでサラサラとした柳の髪はしっとりとその綺麗なフェイスラインに掛ってとても綺麗だった。
 今まで見た事のない風呂上がりの柳の色気に学の血が沸き立つ。
 
「いや、あの……ちょっとお話が…」
「じゃあ、取り敢えず入りなさい」

 別に話など無かったが、そうでも言わないと中で二人きりになれないと思ったのだ。
 そしてドアを開いて中に入った学の視界に、柳の全身が入って来た。

(うっ……わ…ちょ、先生、色っぽ過ぎーッ)
 
 柳は部屋に用意されていた浴衣を着ていた。浴衣は一応生徒の分も揃えられていたが、生徒の大半は持参したジャージを着ていた。
 まだしっとりと水分を拭くんだ身体に、纏わりついた浴衣が柳の身体の線を妖艶に浮き彫りにしていた。
 ジッと見ていると、鼻から何か生温かい液体がゆっくりと流れてきた。

(ん? 鼻水?)

 動かずにジッとしている学の方を振り返った柳は急に驚いて駆け寄って来た。
「え……お前、鼻血がっ! 大丈夫か? ちょっとこっちに来なさい!」
「え? え!!」
 部屋に入り柳の姿を目にした学は途端に鼻血が出てきたようだった。

(何してんだ俺―ッ! 超恥ずかしいし!!)

 泣きたくなるような気分で布団に寝かされ、柳にティッシュで丁寧に拭かれていると、その気分も悪くないと思えてきた。
 心配そうに自分を覗きこんで世話をする柳を下から見て、学は幸せを噛み締める。
「あ、止まった」
 学の言葉に柳も少しホッとしたような表情になるが、それでも何か深刻な顔をして見つめてくる。

(先生、そんなに俺の事を心配してくれて……)

 ふと胸元のジャージを見ると垂れた血が付いてしまっていた。
「あ、ヤベっ、布団に付いちまうッ」
 急いでジャージを脱ぐと白いTシャツだけになった。

「あの……大城、お前もしかして……身体の具合が悪い……のか?」
「……え?」
「その……急に鼻血を出す事は……よくある事なのか?」
「いや……初めてですけど……」

(生身の人を見て鼻血出したのは)

「あ、そうなのか? じゃあ……話っていうのは……」
「え! もしかして先生、俺が病気か何かでその相談に来たとか思いました!? す、すみません! 話っていうのはその、俺、ただ先生と話がしたかっただけで」
 途端に柳の表情が和らいだ。
「なんだ……良かった。あ、メール……ちょっと悪い」
 急にヴ―ヴーというメール着信の音がすると、柳はクルリと後ろを向いて鞄から携帯を取り出し、カチカチと携帯を操作する音を立てた。
 学は胸の内側がキュッと締まるのを感じた。

「先生……色、白いんですね」

「ん? あ、ああ」

 携帯に集中しているのか振り向かずに返事をする柳にそっと近づく。
 白い項が真下に見える。学はゴクリと生唾を飲み込んだ。

「髪もサラサラで綺麗だなって、いつも思ってました……。先生……俺ッ」

 我慢を超えた気持ちはその衝動を引き起こした。学は徐(おもむろ)に柳を後ろからギュッと抱き締めた。

「ちょっ……大城ッ! 何してっ」
「お願いです。少しだけこのまま……このままで。そしたらすぐ帰りますし、もう変な事はしませんから」



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本当かね~( ̄ー ̄)ニヤ...
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ネクタイの距離 2話

「部活終わって話し込んでたら遅くなっちったな……」
 バスケの練習が終わって後輩と話していた学は既に暗くなり始めた群青色の空を見上げた。
 何となくいつもの帰り道と逆の方向から帰宅しようと門を出ると、丁度車に乗った柳も出てきた。

「あ! 先生!」

 学の声に気付いた柳が門のところでブレーキを踏み、助手席の窓を下ろした。
「大城、今帰りか?」
 薄暗くなった中でみる柳もやっぱり綺麗だった。
「はい!」
 思ってもみない偶然に学は嬉しくて飛び上がりそうになる。
「お前、家はどっちの方向だ?」
「え…えと、線路を超えて東公園の方です」
「そうか。なら乗って行くか?」
「いっ……いいんですか!? いや! 宜しくお願いします! お邪魔します!!」
 グダグダと遠慮してこんなチャンスを棒に振るわけにはいかないと思った学は勢いよく柳の車に乗った。
 途端にふわりといい香りがした。

(あ、先生のいつも付けている香水)

「シートベルト締めてな」
「あ、はいっ」
 柳はアクセルを再び踏むと、学の上半身がゆっくりと背凭れへ押しつけられた。
「生徒を乗せてるのを見られてちゃまずいからなぁ。少し遠回りして行ってもいいか?」
「はい! っていうか、寧ろ先生とドライブしたいですっ」
 学は自分で言っておいて自分に少し驚いた。まさかこんなに気になる相手に積極的に出る性格だとは自分でも知らなかった。
「あははっ。そうか。じゃあ、少し付き合ってもらおうかな」

 ちらりと盗み見るように見た柳の横顔は、あまりに綺麗で大人っぽく、まるで映画の主人公をスクリーン越しに見ているようだった。
 近くで見ても遠い距離を感じる。
 自分のような子供など、ましてや男などに興味を持つ筈もないという諦めと絶望が柳との距離を一層空けていた。
 学はこの時はっきり、柳を恋愛対象として好きだと自覚した。

――先生は車を運転している。スーツも着ている。格好いい時計をしている。香水だって付けている。仕事もして一人暮らしをしている。

 自分はただ助手席に座って家に送られている事が妙に気恥ずかしく、そして悔しくなった。

――俺が大人になれば少しは望みは叶うのかな。

「ちょっとそこのコンビニ寄るけど、いい?」
「あ、はい」
 コンビニに駐車する為にクルクルと回すハンドルさばきがとても格好良く見える。
 柳は車を前から突っ込んで停めた。
 学は柳の後を追うようにコンビニに入ると、柳が何かを探している間アイスコーナーで立ち止まった。

(うまそー)

「どれがいいの?」
「え?」
 急に後ろから話かけられて学は必要以上に驚いた。柳の手には夜に一人で食べるのか、お弁当のようなものが抱えられていた。
 学が欲しいアイスを選ぶと、「じゃあ俺はこれ」と言って柳も自分の分を選んだ足で、スマートに学の欲しいアイスも一緒に買った。

(俺……まるっきりお子様じゃん……)

 車の中に戻ると二人は早速アイスを溶けないうちに食べ始めた。
「あの、ごちそうさまです」
「あぁ。でも他の生徒には内緒な」
 内緒、という言葉に妙な親近感が沸いた。二人だけの秘密は遠過ぎる柳との距離を少しだけ縮めた気がした。

(アイスに感謝……だな)

 単純で前向きな学は勝手に落ち込んでいた気分を盛り返してアイスを口に運んだ。
 コンビニの駐車場で、車内に二人きりアイスを食べるのは緊張した。まるでデートでもしている気分だった。

「せ、先生の何味?」
「ん? ラテマキアートらしい」
 そう言って柳はペロリと棒に付いてる円柱型のアイスに赤みの差した舌を付けた。

(え……エロい……)

 人がアイスを食べる所をジッと見るのも不自然かつ失礼のような気もしたが、学は金縛りにでもあったように視線が言う事をきかなくなってしまった。
 その間にも、柳は懸命にアイスを頬張り、時には舌先で舐めまわしていた。

(ヤバイよこれ……予想以上にすごいかも……)

 学はそんな柳にあらぬ想像を掻き立てそうになる自分を今は必死に抑え込んだ。
 そして家に着くと一気に煩悩を解放した。



<<前へ      次へ>>

分かってます。総ツッコミが聞こえてきそうです(笑)
でも「ほのぼの」なんでっ!私だって脳内では激Rですもの!!ヾ(ーー )ォィ
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ネクタイの距離 1話

 例えば人を好きになる瞬間、「好きだ」と自覚する事は珍しい部類に入る気がする。
 一目惚れを除いて、その人に執拗に執着する事に気付いた瞬間が、「もしかして好きなんじゃ…」と気付く時でもある。

 大城学(おおしろまなぶ)は高校二年になった今、授業中にボーッとそんな事を思っていた。

「ここはテストに出るからしっかり覚えておくように」
 その声の主がクルッと振り向いて生徒である学とたまたま目があった。たったそれだけの単なる日常の一コマが、学にとっては一日中リピートしても飽きないシーンとなった。

 例えば、同性でも自分の好みの顔はあるだろう。綺麗だと思えば見惚れるものだ。
 最初は学ぶもそういう事だと思っていた。

(柳先生、マジで綺麗だ…)

 高校二年になって柳が担任になった時、学は正直嬉しかった。
 一年の時に他のクラスの担任をやっていた柳辰美(やなぎたつみ)がとても美しく目を引いていた。自分もあの先生が良かった、などとそのクラスの生徒を羨んだりもした。

 我慢した甲斐もあったのか、柳は学のクラスの担任兼英語の教師となった。だが実際担任になってみると、ただ見るだけの時に膨らんだ柳のイメージは少し違った。
 黙っていればクールに見えるその容姿は話すと意外と気さくで生徒に人気の拍車を掛けた。
 それでも落ち付いて大人っぽい色気がある部分は近くでみるとずっと魅力的だった。
 
「先生、俺分からないところあるんでこの後いいですか」
「ああ。いいよ」

 学は柳ともっと話したくて、何となく分からない部分を絞り出しては柳と二人だけの時間を作る事に成功した。
 お昼時、ご飯を一緒に食べながらの個人指導の一時間。
 本当は柳をただ見つめながら一時間ご飯を食べてもいいぐらいだ。

「で、ここが不定詞となるんだ。分かるか?」

 ふと柳の深く切れ長な瞳が学の視線を射抜いてドキリとする。
 至近距離で見つめられると自然と頬が熱くなり、おかしな気分になりそうだった。

(おかしな気分…?)

「あ! はい! 分かりました!」
 まるで軍隊員のような答え方に、柳はクスリと笑った。
「大城は基本的に出来てるから大丈夫だな」

(うっわ……可愛い)

 柳の笑顔に学の心は少し苦みの混じる愛しみが湧いた。
 昼休み終わりまであと二十分。

「先生さ、今いくつだっけ?」
「ん? 俺は26だよ」

(俺と九年も差があるのか……)

「そうなんだ、じゃあ兄弟とかいる?」
「弟がいるよ」

(へぇ……俺は兄貴がいるけど)

「ふーん。…じゃあさ、何で教師になろうと思ったの?…あ、いや、好きな食べ物とか」
 たたみかけるような早急な質問に柳が苦笑した。

「おいおい。何だか俺が家庭訪問受けてるみたいだな。どうした急に?」
「あ…、いや…、クラスの女子とか…さ、色々聞いて来いってうるさいし」
 ついいつも騒いでる柳ファンの女子のせいにすると、学は少し胸が重苦しくなるのを感じた。恐らく今の自分の言葉で柳がクラスの女子を意識をするのを想像したからだろう。
 だがクラスの女子たちも、柳のファンという事を利用してこうして何かと学に話かける機会を作っている事は、学自身知る由も無かった。

「そうか。全くしょうがないな。でも情報を仕入れないといけない大城の為に答えるか……でも女子だって本当はお前と喋りたかっただけかもしれないぞ? お前格好いいし」

 学は高校生にしてはスラリと背も高く綺麗に筋肉のついた体型をしている。ほぼ柳と同じ位の背丈だ。
 力強い眼と整った顔で無自覚にモテるが、当の学は自分が追いかけるような恋をした事がない。

 学生の頃というのは、特に十代は自意識過剰になりやすい。
 そして大人の表面的なやりとりが挨拶と変わりないものだという事を、若かりし時は大半が理解するまでに至っていない。
 学は、柳の言葉を真に受けて有頂天になりかけた。女子よりも自分の事を考えてくれた事に嬉しさが込み上げたのだ。

 何より柳に「格好いい」と言われた。
 
 脳内で柳の言葉を反復する度に顔がニヤけそうになった。
 嬉しさで身体が浮き上がってきているんじゃないかと思いつつも、すかさず調子に乗って色々な質問を投げかけ、それに柳は快く受け答えをしてくれた。

 無情にも昼休みの終わる知らせのチャイムがなると、たちまちキリッとした教師の顔で「お、質疑応答はここまでだな。じゃあ教室に戻りなさい」と言い放った。
 学にはこの言葉が自分と柳の間を遠く引き離すものに思えた。


 教師と生徒。

 こちらは学ラン、向こうはスーツ。質の良い、光沢のあるダークグレーのネクタイなんてして、まるで大人をやけに象徴しているように見えた。
 

 学は柳の英語の授業の時にやけに手を上げる自分に気付いた。
 意識してみると、常に柳と話すチャンスを窺っているのだ。

「まさか……な。男だし…。でも……」

 不安に思っている暇もなく、あちらこちらで見かける柳の姿を必死で追ってしまっていた。

――もっと見つめていたい。もっと話したい。もっと知りたい。

 気付くとどうやったら柳の気を引けるか、どうすれば距離を縮められるかを常に考えるようになっていた。



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ご無沙汰してすみません;
始まりました、「ほのぼの」です(^▽^;)
全4話です♪短く収められませんでした…。
久々に4日間に渡り、0時更新となります♪
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